ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ラストバトル談義

 

 その後、近くのコンビニからの目撃証言があり、あっという間に事件解決となった。

 

 もうほとんど現場は高INT軍団に席巻されていたからな。

 そこまで凝ったトリックでも無かったし、犯人の様子も露骨に怪しかった。

 

 ちなみに、今回は定番の自殺に見せかけた殺人だった。

 

 殺された奥さんは投資系ギャンブル中毒で、最近では家族の住むマンションを担保に金を借りる等悪行を繰り返していたようだ。

 家計も借金まみれ。

 灰皿を投げる等の暴力もあっての耐えかねての犯行だったとか。

 

 それを聞いた降谷さんが、容疑者達の後ろでひっそりと大層卑屈な顔になっていた。

 大まかにはギャンブル中毒とジャンルは同じだからな。

 横から諸伏さんに小突かれてて、飴をガリガリ噛み砕いてまた舐め出すなどの奇行に走っていた。

 

 ともかく、無事事件は解決だ。

 軽い事情聴取を済ませてから、徒歩で探偵事務所へと帰る。

 

 夕日がビルの隙間へと沈んでいく。

 帰ったら期限の迫った仕事から片付けていかねば、と算段をつけていく。

 

 ぽてぽてと気の抜けた歩き方で、降谷さんが口を開いた。

 

「ところで、相談したいことがあるんだが」

 

 パイン飴をまた一つ口に放り込みながら、柑橘類の香りを漂わせて難しい顔をする。

 

「俺が企画していたゲームの今後について意見が聞きたい」

「ああ、諸伏さんのお兄さんと銀髪組織幹部が怪異に挑む企画な」

 

 俺の言葉に、コナン君が「デスゲーム主催者じゃん」とシンプルな感想を漏らした。

 ぐうの音も出なくて降谷さんが梅干しみたいな顔をする。

 

 なんでも。

 当初の予定としては、各地を巡って怪異を封じながら木彫り仏の破片集めてもらい、木彫り仏を完成させる。

 それを用いて大ボスと相対する、ぐらいを考えていたらしい。

 

 あらましは聞いていたが、一応俺も念のため細部を確認していく。

 

「聞いてなかったけど、大ボスって何を想定してたんだ?」

「父なるダゴンだ」

「はっ倒すぞ」

 

 めちゃくちゃ碌でもないことを考えていたようだ。

 「僕だってこれはまずいと分かったさ!」と降谷さんが抵抗している。

 

 父なるダゴンはクトゥルフのアンチクショウの部下だ。

 深きものどもを統率する首魁でもある。

 育ち過ぎた深きものども的存在で、旧支配者にならないギリギリレベルの存在規模を持つ。

 

 能面みたいな笑顔を浮かべた諸伏さんが『ゼロ、帰ったら正座』と言い放つ。

 その場で降谷さんは90度に頭を下げた。

 

 

 ゲームのあらすじは詳しくは下記の通りである。

 

 発端は田舎町の釣具メーカー社長の怪死事件である。

 自社の製品の作成を通して、社長はルルイエという古代都市の存在を知ってしまう。

 それで深入りして、水面下で暗躍する深きものどもに命を狙われることとなった。

 

 魔術に詳しい佐比売党に助力を乞い、幾つかの交換条件のもと身を守るための青仏を受け取ったのだとか。

 

 だが同時に佐比売党の闇にも勘づき、社長は勝手に佐比売党の過去を探った。

 その挙句、深きものどもに殺された。

 

 その情報を隠して、降谷さんはジンに探索させた。

 ジンで遊びつつ、佐比売党の施設跡の調査をさせるために。

 

「じゃあ銀髪マフィアが集めてた木彫り仏は何だったんだ?」

「それは俺が用意した後付けのリワードだ。ステージクリアの報酬、動機付けみたいなものだ」

「突然ソシャゲ運営みたいなこと言い出す」

 

 一応組み上げてから、古文書の手順に従って儀式を成立させれば神話生物の退散術式になるらしい。

 大ボスを退散させるつもりだったとか。

 

 まあ、妥当と言えば妥当なギミックだ。

 

 深きものどもとダゴンとハイドラは、大半を彼方の星に移住させている。

 こっそり呼び出したそいつらを星に送り返すぐらいなら、この退散術式でも十分だろう。

 

『で、それのどこを弄ろうとしてるんだ?』

「放っておくとジンがヒロのお兄さんとつるみ出して、組織系のゴタゴタに巻き込まれる恐れがある。だからひと段落させてパーティを解散させたい」

 

 「警察官なのにジンと仲がいいの?」とコナン君が問いかける。

 ぺしょりと降谷さんの元気がなくなった。

 

「なんか怪異調査を通じてヒロのお兄さんとジンの奴がすごい仲良くなってしまって。今ではマブダチみたいな距離感なんだ…」

『嘘だろ兄さん』

「本当だ。ウォッカ並みに仲良い」

『嘘だろ。……嘘だろ』

 

 諸伏さんの語彙力無くなってしまった。

 息子が素行の悪い友達と付き合いだしたみたいな反応だ。

 

 あの人が、血も涙もない銀髪マフィアと友達とは意外……でもないな。

 ニャル野郎の陰謀に共に立ち向かう仲間だし。

 命を分かち合うと言っても過言ではなかったわ。

 

 俺の生ぬるい視線を察して、降谷さんがブーブーとむくれる。

 

「しかも僕はすっかり誤解されてラスボス扱いだし」

「それは本当のことでは?」

「いやそうだけど、こう、ヒロのお兄さんを乗っ取って警察を掌握する悪の権化にして黒幕みたいな扱いをされてるのが誤解というもので」

「ほぼ本当のことでは?」

「事実陳列罪は重罪だから逮捕するって言っただろ!!!」

 

 叫ばれるが残念ながら本当のことなんだよなぁ。

 

「加えて、人の手に余る退散術式も回収しておきたい。もし万が一木彫り仏の退散術式が僕に当たっても問題はないけれど」

「汎用退散か。そりゃ降谷さんの規模じゃ意味ないわな」

 

 仮顕現したダゴンを退散できるんだからかなりの規模の術だろうが、俺らみたいなものには効果がない。

 

 ふと、思いついた、という様子で諸伏さんがポンと手を打った。

 

『兄さんに取り憑いたゼロがラスボスで、それを退散させると兄さんはジンとの記憶を失っていた!とかどうだ?』

「すごいドラマチックな絵面じゃん」

『ゼロが取り憑いて守るんだから、普通に生きてるより安全まである。退散させるだけだから危険もないし、いい感じにバディ解消に持っていける気がする』

「なるほど」

 

 ジンの動きが読めないのは困るし、なにより諸伏兄にこれ以上ジンが接触されるのが問題。

 ということなら、退散と同時に諸伏兄の記憶を消してやればオールクリア。

 それだけ仲がいいってんなら、生きる世界の違いを思い出して勝手にジンの方から別れてくれるということだろう。

 

 コナン君がちょっと文句がありそうに口を挟んだ。

 たぶん汚い大人達を見かねたのだと思われる。

 

「でも、諸伏警部が怪異に関わりだしたきっかけが分からないんだし、また関わり出すかもしれないよ?」

「怪異を追うのはある程度はしょうがない。問題はジンとの付き合いは危険すぎるってことだ」

『あの組織は山ほど恨みをかってるんだ。ジンなんて特に恨み骨髄のやつが山ほどいる。いつ人質に取られてもおかしくない』

 

 なんとなく釈然としない顔でコナン君が黙り込んだ。

 たしかに、人情を逆手に取ってるみたいで卑怯くさいのは間違いない。

 だが他にいい解決策も無いし、ということなのだろう。

 

 別に頼まれれば諸伏兄の守護ぐらい俺がするのに。

 

 降谷さんが頷いて細かな設定を練り始めた。

 

「バーボン側の目的は…そうだな。新しい素体としての適性を測っていたとかその辺にしよう。この度全て試練を潜り抜けたので正式に依代に選んだとか」

「すごい悪役だね!」

「言わないでくれ本当に」

『でも自分の渡した木彫り仏で退散させられるって間抜けじゃないか?』

「多少はいいんだそんなの!」

 

 取り憑かれた友を救うために決戦に挑む。

 みなぎるような主人公力の波動を感じる。

 

 少年ジャンプの文脈なんよ、などと俺はこっそり思ったのであった。

 

 

 

 

 

 病院から諸伏高明が消えたことを知ったのは、その日の夜のことだった。

 

 やけに動きの早い警察が周囲を捜索している。

 奴の知人の警察官が動いているのかもしれない。

 だからジンが詳しい状況を確認することは相当な困難を強いられた。

 

 なんとか帰宅途中の清掃員を見つけて、内部の状況を聞くことに成功する。

 

「ああ、あの患者さんなら見たわぁ。なんだか気味の悪い仮面をつけてフラフラとね。心配だわぁ」

「………!」

 

 凍りついたジンの様子を気にせず、「じゃあおばちゃん帰るからねぇ」と朗らかにやや曲がった腰で去っていった。

 

 病院外周、出てすぐの噴水のところまで来る。

 そこで、ジンはわざとらしく手書きのメモが落ちていることに気がついた。

 先ほどまで捜索していた警官が見つけられないはずがない、噴水の端にそっと丁寧に置かれている。

 

 血で書かれているようで、ドス黒い乾いた文字が並んでいる。

 

 間違いなくバーボンの筆跡だ。

 「良い素体のようなので貰っていきます。素体の適性検査にご協力いただきありがとうございました」と。

 そのように書かれていた。

 

 血の滲まんばかりに唇をかみしめて、ジンは拳を震わせた。

 

 手がかりがない。

 あまり長居をすればサツに捕まる恐れがあるから、取れる手も少ない。

 ここで軽率に殺しをして、諸伏の立場を悪化させるわけにはいかないからだ。

 

 ふと裏を見ると、何か書いた跡のような僅かな凹みが見て取れた。

 街灯の光に紙を空かすと、ギラギラと不可思議な角度で光を放つ。

 

 「異論があるならこの素体と貴方が出会った場所で待っています」と。

 

 そこにはあからさまな罠が踊っていた。

 

 諸伏と初めて出会ったのは鉄道トンネルだ。

 今はなんの怪異もない、穏やかなトンネルとなっている。

 

 ジンはそこで命を助けられた。

 

 青白い手に引き摺り込まれそうだったところを、危険を冒してまで諸伏が助けたのだ。

 初対面の怪しい男に、そこまでする義理なんてなかっただろうに。

 

 二度目もそうだ。

 奴はジンが裏の人間だと気付いていたのに、人殺しだとわかっていたのに、躊躇いなくその身を投げ出して助けたのだ。

 

「………」

 

 諸伏は、両親の仇にこの佐比売党が関わっているから調べていると言っていた。

 

 だが、もし相手が怪異の力を使うだけの人間だったら。

 表の人間に怪異の力で人殺しをする殺人犯への対処はできないだろう。

 

 ならばそういう時こそ、そうしたしがらみのないジンの出番だ。

 代わりに後腐れなく怪人へ鉛玉をぶち込むことができる。

 そのぐらいしか返せるものはないが、ちょっとした礼ぐらいにはなるだろう。

 

 そのように、ジンは思っている。

 

 

 だから仇を取るまで、諸伏は死ぬべきではないのだ。

 

 鉄道トンネルまで、およそ車で3時間。

 ポルシェ356Aを走らせて向かう道のりは暗く入り組んでいる。

 

 組み上げた木彫り仏と読解済みの古文書を後ろに積んでひた走る。

 この運命に、決着を付けるために。

 





・降谷さんのコメント
冷静に考えたら僕、あの銀髪相手に捨て台詞吐いた上で退散したふりしなきゃならないんですか?
えっえっ嫌ですけど絶対。
まあどうせバーボンは退散しないので「分体の一つがやられたか…あれはニャルラトホテプ四天王のうち最弱…」で済ませられますけど。
つかわざわざ諸伏兄に憑依したままジンに会う理由って何だ?
勝利宣言で嫌味吐くため?
無駄に煽って自分であげた木彫り仏で爆散するのあまりにダサくないか?
やだやだ自爆系小悪党やるのはやだ!

・黄衣のコメント
でもニャルはそういうことやるタイプ(納得)。
無駄に凝ったことやって探索者に一泡吹かせられて自爆するとか割とよくある。

・諸伏さんのコメント
四の五の言ってないで行ってこい!
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