ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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騒ぎとTVと米国と

 

 ひとまず俺は、相談後に全世界の魔術師信者さんへのお告げでの口止めを終わらせた。

 

 内容としては「人型になって人間を視察してるから黙っててネ!」と言うような感じだ。

 お願いベースのふんわりした口止めだが、守り続ける限り俺の軽い加護が与えられるようにしておいた。

 

 拷問とかされない限り、誰も俺のことを漏らすことはなくなるだろう。

 

 とはいえ、逃亡・潜伏中のカルコサ新党のような狂人はどうか分からないが…。

 こんなに公安が頑張って追跡中なのに行方が掴めないとは。

 一体どこに逃げたのやら。

 

 そんなわけで、仕事を終えた俺は公安組から解放された。

 

 「大人しくしてろ!!!」と厳重注意を受け、家へと帰宅。

 先に帰ってまったりTVを見ていたコナン君に「ヤバいよ黄衣さん、凄い事になってて笑う」と半笑いで番組を見せられるなど。

 

 見ると、TVはシンガポールに現れた怪物の件で持ちきりだった。

 

 今やっているのはどうやらワイドショーのようだ。

 心理学者やら神学者やら元警官やらの専門家を招いた討論が行われていて、シンガポールに降臨した怪物に侃侃諤諤な纏まりのない議論をしている。

 

 ともかく、怪物は危険なので自衛隊を出動させて討伐すべきらしい。

 法的には害獣駆除として災害派遣になるとのこと。

 俺、討伐される件。

 

 コナン君がぼんやりTVを見ながら口を開く。

 

「黄衣さんって駆除できるの?」

「できたら旧支配者って言わねぇよお。痛いからやらないけど生身で太陽の深部で遊泳もできる」

「なら無理かぁ」

 

 再生力を爆上げして蒸発する瞬間から再生を繰り返す感じだ。

 魔術で防げばもっと簡単に遊泳できる。

 

 番組表を見ると、どこもその手の話題でいっぱいだった。

 『怪異とは何か:伝承と現実の狭間で』とかいう真面目な特集番組が本日ゴールデンタイムに放送予定とのこと。

 

 そんな番組を取り留めもなく眺めていると、一本の電話が俺のスマホにかかってきた。

 相手は馴染みのプロデューサーさんだ。

 

 何か仕事の話だろうし、通話開始ボタンを押して特に気負わず電話に出る。

 

「はい、黄衣です。何かありましたか?」

『黄衣君もう帰ってきてるよね!今日生放送番組出れる!?!?』

「えっと……?」

 

 凄いテンションのプロデューサーさんが息を荒くして捲し立てる。

 

『旅行先、シンガポールって言ってたじゃないか!君、見たのか!?』

「ま、まぁ避難先から遠目には…」

『良しッッッ!!来たぞ来たぞ来たぞ!すぐに局に来てくれ!「あの探偵黄衣ハスタも見た!怪物の真実の姿とは!」行ける、行けるぞッ!!』

「お、おお……」

 

 荒ぶっておられるようだ。

 念のため後で降谷さん達に出演していいか確認の電話を入れよう。

 

 ひとしきりプロデューサーさんは盛り上がった後、トーンを落として囁くように俺に問いかけてくる。

 

『やっぱりあれかい?公安の怪異対策課に協力してて、今回のシンガポール行きも例の怪物の視察だったって話、本当なのかい?』

「あーーー、俺にはなんとも」

 

 どうやらどこからか情報が漏れてるらしい。

 マジですぐに降谷さんに相談しないとまずそうだが、向こうも今は手一杯だろう。

 

 念話に音声を込めて留守電として術式作成。

 降谷さんと諸伏さんに送り込んでおく。

 任意のタイミングで開封して、俺の言葉が聞けると言う仕組みである。

 

 もし聞きたいことがあれば留守電術式の返信機構を使って俺へと掛け直すことができる。

 これらは届いた瞬間に脳に使用方法が流れ込むため、直感的に操作が可能だ。

 

 よし、これで終わりと。

 プロデューサーさんの質問の嵐に適当に誤魔化して対応しつつ、通話を終了。

 

 TV局に行く前に風呂と着替えをせねばなるまい。

 コナン君に「俺風呂入るから、電話きたら教えて」と声をかける。

 「んー」とコナン君は生返事を返した。

 番組では化け物が繁殖するかどうかの議論に移っていた。

 小型の個体が民家を襲うなどしたら大変とのこと。

 

 繁殖すると言えばするが、べつに小さいハスターが生まれてくるわけではないので難しいところである。

 

 お湯を張る時間はないので、シャワーのみで体を洗い出す。

 

 そのタイミングで降谷さんから返信があった。

 どうやら留守電を聞いたらしい。

 

『こちらでも該当番組を調べた。出演してもらって構わない』

『了解』

『それと、情報漏洩の件通報感謝する。人員の機密管理体制を再確認させてもらうよ』

『おお…よかった。そういえば、政治系って今後どうなる予定なんだ?』

 

 降谷さんがふむ、とやや唸るように声を漏らした後教えてくれた。

 

『現在、政財界では怪異を経済活動上のリスクと捉える向きがある。つまり災害と同じだな』

『ほう』

『だから怪異の存在を「長年」公安が秘匿して来たことを、各界は酷くお怒りだ』

 

 色々含むように「長年」と強調したあたり、鬱憤が溜まって来ていたのだろう。

 そりゃいくら秘密主義の公安だって、最近知ったものの件で責められちゃ辛いところではあると思われる。

 いや秘密主義だし仕方ないけど。

 

『針の筵は今更のことだ。が、問題の性質上全公開するのは問題が多すぎる。近いうちに、君には関係各所に配るための怪異の説明資料を作ってもらいたいと考えている』

『なるほど、それなら了解した』

 

 下手するとSAN値チェックものだし、公開資料には細心の注意を払わねばなるまい。

 

『それと、米国大統領からの追加のアピールは来たか?』

『飛行機に乗ってる間に水無さんから連絡が来てたな。まだ結論は出ないのかって催促』

『チッ、流石にもう限界か。分かった、米国への内々の返事は済ませたし、オーケーの返事を出しておいてくれ』

『うっす……やだよう…怖いよう……』

 

 俺の泣き言を完全にスルーして、降谷さんはため息をついた。

 

『米国は君を利用価値の高い兵器として考えている。もっとも、大統領顧問団の中ですら激しく意見が対立しているようだが』

『怖……人間が扱う戦力としてはビッグがすぎると思うんじゃが』

『本気を出せば銀河団を消し飛ばせるものを人間同士の戦争に使おうだなんて、お笑いにも程がある。君は何を聞かれても「羽虫に拘う暇はない」とでも答えておけばいいさ』

『圧倒的「じゃあなんで面会許可したんだよ」感!』

『特別に御姿を眺めさせてやったんだろ。泣いて喜ぶべきじゃないか?』

『すげーな降谷さんてばニャルラトホテプじゃん』

 

 降谷さんが苦虫を千匹ぐらい噛み潰したような声で「本体の名を出すのはやめてくれ…トラウマが蘇る…」などと苦言を呈した。

 

 

 さて。

 そのあとはTV局への顔出しだ。

 

 日売TV本社へ行くと、満面の笑みを浮かべたプロデューサーが出迎えてくれた。

 

「待っていたよ!!!もうこれで今日の視聴率は完璧だな!樽岡さんの『どちらのスイーツでSHOW』がポシャって危機の今、君が局の光と言っても過言ではない!」

「は…はは…恐縮です」

「今をときめく売れっ子なのに謙虚な姿勢を崩さないのもいい!うんうん、今日もよろしく頼んだよ!!」

 

 めっちゃ持ち上げられてるが、それに比例するように期待もバカ高くなってるので俺は震えるしかないのである。

 

 第一今日の生放送ってあれだろ、怪異特集シンガポールに出現した怪物を添えてだろ。

 俺がコメントできるのは「空に怖げな怪物がいましたよぉ〜怖いですね〜」ぐらいのものなのに。

 

 恐ろしくなってコナン君に念話を繋ぐなどする。

 

『ねえねえコナン君、今日の怪異番組、俺どうやってコメントしよう』

『……おかけになった電話番号は、現在使われておりません』

『嘘つき!!!念話にんな状態ねーよ!』

『お空に怖い怪物がいるねぇ怖いねぇでいいじゃん』

『それさっきの俺の発想だし俺レベルにIQ下げないでよ…』

 

 コナン君から「面倒臭ぇな」という念がバシバシと叩きつけられる。

 泣くぞこら。

 

『見た限りの怪異の特徴と性能、通常の怪異と比較してどの程度のものなのか、今後日本にやってくるかの可能性の議論。そのぐらいじゃない?』

『なるほど。あとはお題と進行に合わせて、か』

『たぶん日本に来たらどう対処するかが一番熱が入るだろうけど、直接怪物を見てる黄衣さんなら見た限りの特徴と性能を詳しく聞かれると思う。事前準備するならそっちじゃない?』

『コナン君頼りになり過ぎか?美味しそうなお土産買って帰ります』

『僕今夜お寿司がいい。回らないやつ』

『仰せのままに』

 

 テンパってたけど、俺まだ撮影用にINT上げてなかった。

 上げてればコナン君に手間をかけず普通に考えが巡ってたかも知らない、などと若干後悔しつつ。

 

 分かってて付き合ってくれるコナン君の得難さを再確認しながら、俺は撮影に挑んだのであった。

 





・米国軍の怪物戦力調査
見る限り、空間を割って出現、退去している。
これが空間転移なのか不可視化なのかはわからないが、気付けないまま強襲を受ける恐れが高い。
各種センサー類での事前検知が可能か急ぎ調査が必要。
約2km四方に凄まじい暴風を巻き起こす力を加味すれば、兵器として運用された場合かなりの被害となるのは間違いない。
一刻も早く、このモンスターの討伐、あるいは捕獲が必要となる。

・黄色の印の兄弟団米国本部の声明
(中略)
米国は今、神を信じぬ愚かで怠惰な者達によって支配されている。
神を讃えよ。背教者を廃し、今こそ米国を神の国とするのだ。
その時にこそ神は舞い降り、古代にあったように地上は楽園の姿を取り戻す。

・日本政界の姿勢
えー、この件の質問は多く寄せられておりますが。
怪異とはあくまで災害、現象の一つに過ぎないと認識しております。
例の、あー、怪物?も、災害であって、日頃からの備えと、災害対策の強化をもって対応してまいりたいと……

・黄衣氏のコメント
本当にすまんかった。
こんなつもりじゃなかったんだ。
あと日本政府には王笏渡してるはずだけど完璧に知らんぷりできるのすげーな。

・王笏
ひとまず見なかったことにされて封印された。
事なかれ主義。
多分渇水とかで農作物に影響があるとこっそり動員される。
今は農水省がおっかなびっくりで持ってる。
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