ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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マリッジ邪神と結婚式

 

 今日はノーマルな1日である。

 

 コナン君の姿に戻ったコナン君は、平日であるため通常通り登校予定だ。

 「あー、早く組織をぶっ潰して気持ちよく大人の姿に戻りてー」などと不満たらたらでマンションを出て行った。

 

 そういえばあの方の所在が掴めそうとか降谷さんが言っていたが、進捗はどうなったのだろうか。

 

 それどころじゃなさそうな気もするし、そっとしておくべきか。

 コナン君のためにも早めにマフィア達には壊滅してもらいたいところである。

 

 俺の方は事務所を開けて依頼の整理を進めていく。

 シンガポールでやらかしてからは降谷さんも諸伏さんもちっとも来ないし、俺がやるより道はないのだ。

 

 というか降谷さんは探偵の仕事をやるために分身を作ったはずなのに誰も居ないとはこれいかに。

 まさか二人体制で公安の仕事を片付けているのだろうか。

 流石に一般公安警察官さんがSAN値減らないかな…と不安になりつつ。

 鬼上司が物理的に二人になったとかちょっとオモロいまであるかも、などと思考を飛ばした。

 

 溜まった依頼の雑務を魔術で手早く片付けた後は、長野にある「黄昏の館」へひとっ飛びだ。

 

 「門の創造」を潜り抜け、いつ見ても大きく立派な洋館前へと転移する。

 玄関のインターホンを鳴らすと、すぐにニャルが玄関扉を開けてくれた。

 

 どうやら今さっきまで寝ていたようだ。

 グネグネとヘドロとムカデと芋虫が合体したような悍ましい邪神が出現する。

 邪神は【あっ、来てくれたんですね!】と脳を蝕むような声で笑った。

 

 多分人間だったらSAN値が直葬されていたことだろう。

 1D10/1D100。つまり死あるのみって奴だ。

 

 ニャルラトホテプに促され、中へと入る。

 内装は米花水族館、米花サンプラザホテル、ショッピングモールがグネグネと組み合わさっている。

 

 かつて二階にあった動物園が一階に降りてきており、可哀想なナイトゴーントの他に星の精が追加されていた。

 

 星の精は犬用の水入れに入れられた血液を吸っていた。

 特に不満はないらしく、クスクスと鳴き声を漏らしている。

 

 ナイトゴーントの方は痩せたように見える。

 縮こまったままドン!と床に直置きされた生肉を千切ってもそもそと食べている。

 

 なんか動物愛護法か何かに違反してそうな哀愁が漂っているような気がしてならない。

 

 ふとみると、奥に謎の空間が新設されていた。

 形容し難い、扉のついた四角い部屋のような空間だ。

 

「お。ニャル、あの場所なんだ?」

【趣味部屋です。ほら、こうすると槍が飛び出したり魔術でミンチになったり】

 

 仕掛けをガタンと動かすと、扉から致死性のいやらしい呪いが噴き出した。

 どうやら羽虫を閉じ込めて遊ぶ時の仕掛けを検討するための部屋のようだ。

 

「お、おお………凄いな…」

【最近はクローズドに凝ってるんですよ。やっぱ原点ですよね。シンプルであるからこそ物語が光るっていうか】

「………」

 

 なんか邪悪なお遊びを続けているようだ。

 ほどほどにねとしか言えない悲しみが去来する。

 

 実際他の旧支配者とかと比べたら非常に穏当だし、弁えてくれてもいるからな。

 

 

 そうして部屋を見終わったら、いつものように不気味に沸き立つ紅茶を入れて軽く雑談。

 いつものホテルのスイートルームだ。

 

 ヴルトゥームがまだ文句垂れてきてうるさいとか。

 最近のヨグ=ソトース歪んでて変じゃない?なんか機嫌悪いんかな、とか。

 ウボ=サスラがまた変な生物を産んだらしい、とか。

 

 TVも点けっぱなしにしながら、ダラダラとソファに座って取り留めもないをしていく。

 ニャルは俺にしなだれかかったが、絵面は今にも人間がムカデの怪物にとって喰われそうな感じにしかならなかった。

 

 机の上には置打ちっぱなしのチェスがある。

 

 俺たちが本気でチェスをしても先攻とった方が勝ち的な無意味さがあるからやらないが…何だろうか。

 

 よく見ると、チェス盤に掛けられた魔術がなにか大きな異空間と繋がっているのがわかった。

 そこで人間が数名、ムーンビーストと戦わされているようだ。

 

 ………良くないものを見てしまった。

 

 たぶんコマの配置で仕掛けが作動する仕組みになっているのだろうが。

 途中で飽きて放置したのだと思われる。

 

 人間とムーンビーストは互いに息を切らせて膠着状態に陥っていた。

 人間に対して魔術的バフをかけようかめちゃくちゃ迷ったが、ムーンビーストも被害者ではあるのでやめておくことにした。

 

 やっぱ後で一言言おう。

 

 ともかく、頭を振って思考を振り払う。

 今日は日課をこなしに来たのもあるが、ニャルに対して別の用事もあるのだ。

 

「ニャル、今日はお前にちょっと相談したいことがあってな」

【ん?なんですか?】

 

 小首を傾げて──ムカデに見える何かがカクッと崩れるような仕草のことだ──こちらを見てくる。

 

「結婚式をしようと思って。どうか一緒に思い出を作ってくれないか?」

 

 帰国後、京極さんに真相を伝えるついで園子ちゃんと少々話をしたのだが。

 その時に結婚式について大盛り上がりしたのだ。

 なんでも園子ちゃんの方でよければ結婚式場の紹介をしてくれるらしく。

 

 それで俺も具体的に式について考えるようになったのだ。

 

 詳細はニャルと決めていけばいいが。

 せっかくだし、皆にニャルを紹介したい気持ちもあるので俺としては結婚式をしたい気持ちである。

 

 とはいえ、式の間ニャルがじっとしていられるかは本気で疑問が残る。

 細かく俺が身を挺してサービスすれば惨劇は起きないのではないかというか細い期待を抱きつつの開催となるだろう。

 

 その際俺はたぶん触手を引っこ抜かれ過ぎて丸ハゲになるに違いない。

 仕方のない犠牲ということで、多めに触手を生やしておこうと検討するなど。

 

 俺の言葉に、ニャルはビャンっと立ち上がって急に人間の姿を取った。

 黒髪褐色美人さんだ。

 麗しい顔を細かく震わせて、俺をキラキラとした目で見つめてくる。

 

「ほ、本当ですか!漫画で見たハピエンシーンのやつですよね!」

「ちょっとわからないけど多分そう。で、その時にこの結婚指輪を渡したくて」

 

 上質なリングケースに入れた結婚指輪を見せて、微笑んでやる。

 

 植物園とナイトサファリに触発されて作った物だ。

 

 地球の生物圏そのものを写しとって作られており、魔術的に組み上げられた生命活動の縮図となっている。

 すなわちこの星で生けるもの全ての歩み、生物の歴史そのもの。

 

 二つで一つで、使い方次第では遠い遠い億年の彼方でも地球生命を再誕させられる。

 

 そしてなによりこれは不変。

 父なる神ヨグ=ソトースに頼んで分けてもらった肉体を純粋に組み替える形で作ってあり、例え宇宙が再誕しても持っていける唯一無二の品物なのだ。

 

 ニャルがうるうると感激に浸りながら言葉をつかえさせた。

 

「凄い、めちゃくちゃ、凝ってますね」

「せっかくの結婚指輪なんだ。俺の一番大切なものを共有したいし。それに、次の宇宙でも、その次でも、俺らの仲は変わらないってことで」

「!!!」

 

 ニャルは立ち上がって俺に抱きついた。

 残念ながら力が強すぎたため俺は派手に破裂した。

 ぐちょっと中の触手が飛び出たため、もう一度化身を組み立て直して立ち上がる。

 

 ニャルはてへぺろと誤魔化した。

 

 まあ、なんというか、独りよがりな気もしないでもない。

 結婚指輪って二人で相談して買うもののような気がするし。

 そこに地球を織り交ぜた俺の自己満足感もバリバリにある。

 

 俺の心配を魔術的に読み取って、ニャルは顔を綻ばせた。

 

「あなたが変神なのは前からのことですけど。でも、これがあなたの愛の証なら、これ以上嬉しいことはありません」

 

 嬉しいことを言ってくれるものだ。

 俺も、どこぞの映画のように格好をつけて跪き、リングを差し出した。

 

「どうか俺と結婚してください」

「────喜んで」

 

 ニャルは本当に嬉しそうに、俺に口付けした。

 

「結婚式も。僕は羽虫には興味はないですけど、貴方が僕のものだってことを見せつける場というのなら、喜んで参加しますとも」

「今度パンフレットもらってくるよ。タイミングがあったら話を聞きに行こうか」

「ええ。そうですね」

 

 長く、俺たちはゆったりと手を繋ぎながら過ごした。

 

 

 

 帰ってからは日売TVに顔出しだ。

 

 番組の打ち合わせと、今後仕事を絞るかもしれない旨の説明をせねばならないからだ。

 シンガポールの件を受けて公安系の仕事が来たら、いくら俺が時間を重ねて分身しても無理が来そうだったからだ。

 

 そして、プロデューサーさんに俺が結婚する旨も伝えねばなるまい。

 そろそろメディア向け発表も必要だし、俺も女性ファン多いからな。

 

 結婚の話をすると、プロデューサーさんは驚いて声を上げた。

 

「ええっ!?!?本当なのかい黄衣君!お相手は!?」

「一般人です。幼馴染で、3ヶ月ほど前から付き合いだして」

「おめでとう!!!そうか!そうか!後で公式発表のためのコメント文面も作ってもらわないとな!」

 

 3ヶ月というのは時空異常にて圧縮された上で3ヶ月換算している。

 修正値を用いるなら2年ほどか。

 

 すっかり子供を作るから仕事を絞ると思っている感じのテンションでプロデューサーさんが顔を綻ばせている。

 地球の平和のため子邪神を作る気はないが、まあ納得してもらえるならそれでいいか。

 

 ドラマも番組も沢山出ているので、順次減らしていかねばなるまいよ。

 というか俺芸能界に出過ぎだな。

 本職が探偵なのを忘れそうなのでこれからは程々にしよう。

 

 

 

 

 そんな感じで各所を回ったら、休憩も兼ねてポアロでコーヒーを飲むとする。

 

 すると、なぜかポアロ前でコナン君と少年探偵団が梓さんと会話してきた。

 少年探偵団は学校の帰りのようだ。

 梓さんは何か雑誌のようなものを手に持っていて、悩ましげな顔をしている。

 

 一応声をかけてみるべく、彼らへと近寄った。

 

「あれ、どうしたんですか。何かあったんです?」

「あっ、黄衣さん!いいところに来てくれましたね!」

 

 ぱあっと梓さんが明るい顔をした。

 時々朝食のためにポアロには行くから、彼女とマスターとは俺も顔見知りだ。

 

 ここはコーヒーが実に美味しい。

 コナン君もポアロのアイスコーヒーをかなり気に入っているようで、俺も勧められて飲んだことがある。

 

 客は少ないがこだわりの知る人ぞ知る名店、みたいな感じだろう。

 

 梓さんが難しい顔をして雑誌を見せてきた。

 

「実は、この間ポアロが雑誌に載ったんですけど。うちによく餌をねだりにくる大尉って猫ちゃんが問題になっていまして」

「大尉は自分の飼い猫だっていってるやつが三人もいるんだぜ!」

「大尉大人気だね!」

「嘘ついてまで大尉を欲しがるなんて奇妙ですよね」

 

 少年探偵団が梓さんの言葉を補足した。

 確かにそれは少し奇妙だ。

 嘘つき程度コナン君がいればすぐ見抜けるだろうが、子供だけではそもそも話を聞かせてもらえない可能性も高い。

 ここは俺が出るのも悪くはあるまい。

 

 

 というわけで、俺は猫の真の飼い主探しを手伝うこととなったのであった。

 





・黄衣ハスタ結婚報告
本日昼、公式SNSにて結婚発表。
黄色の印の兄弟団はあまりの驚愕に言語能力を失ったままふらふらと右往左往した。
神が……結婚……????????
公安信者さんは三時間悩んだ挙句、混乱のあまり異界の言語みたいになったメールを黄衣へ送信。
黄衣から「お相手はニャルラトホテプ本体だよ(意訳)」と返信が来て無事墓に入った。
翌日、一周回って「古の邪神はついに打倒され神の配下となった」という正式な発表が黄色の印の兄弟団本部より発せられた。
その日は祝祭日となった。

・降谷さん
二人体制で仕事してる人。
バーボンは組織の仕事しつつこっそり内職してる。
結婚報道で黄色の印の兄弟団が発狂してるのを見て卒倒した。
大人しくしてろって……いったのに……(死)

・米国
着々と黄衣ハスタ捕獲計画を立ててる。
人に化けた神なら檻に放り込んで真の姿に戻れなくしてやればいい。
そうして米国に持ってきて拘束。大切なものを人質に言うことを聞かせれば良い。
反対派は解任した。行け行けGOGO!

・日本
その頃何も知らない日本政財界は怪異について学び、「つまり八百万の神かぁ」「荒ぶる神か?」「社立てると良いって聞いた」「妖怪もおるんか」「デカい荒ぶる神がシンガポールに出たんか」「ほな社建てれば日本は安全やな」「せや」などと激論を交わした。
魔術的にも神話生物対応的にも間違いではない。
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