ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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招き三毛猫の事件〈明日の惨劇まであと一歩〉

 

 猫の飼い主だと主張するのは三人だ。

 

 フリーターの雨澤さん。

 会社社長の益子さん。

 主婦の舎川さん。

 

 雨澤さんは露骨にまたたびの匂いがするから除外。

 というか普通に問い詰めたら逃げて行った。

 

 どうやら金目当てで猫を受け取りに来たらしい。

 大尉はオスの三毛猫で、かなりの金額になることが予想されるからな。

 悪い人間だ。猫を飼う資格などない。

 

 残りは社長さんと主婦さんだ。

 

 コナン君が何やら話しているのを尻目に、ひとまず、猫語…というか思念で会話を試みることにする。

 大尉にやさしく、丁寧に声をかける。

 

『なあなあ、君の飼い主ってどの人だい?』

【─────】

『あのトロ臭そうなのが自分の奴隷?うーんどれ?』

 

 あれだよあれ、と言われてしまった。

 わからん。

 詳細を聞けばまったく使えねぇのっぽ扱いされてしまった。

 

 なんでも、お猫様は奴隷2人と共に穏やかに暮らしていたらしい。

 猫の言うことを良く聞く、いい奴隷だったとのこと。

 

 しかし最近奴隷が1人いなくなってしまって、そうしたらじきに巣に変な奴らがやってきた。

 猫はその変な奴らから逃げ延びたが、トロ臭い奴隷が逃げ遅れたから心配している。

 

 と、いうことらしい。

 

 とするなら本当の飼い主は会社社長さんに違いあるまい。

 最近妻が亡くなって、引っ越しをしている時に居なくなったと話していたからな。

 

 大尉に「飼い主が迎えに来たから、引き渡しまで少し待っててね」と伝えてやる。

 大尉は非常に満足げだった。

 

 奴隷は無事だったかと安堵しつつ、迎えが遅いと照れ隠しのお怒りを見せた。

 また、俺もトロ臭そうなのに珍しく賢い、として特別にお腹を撫でさせてもらった。

 しかしひと撫でしたところで撫で方が悪いと怒られた。

 お猫様は気難しくてよくわからぬ。

 

 猫をもふもふする俺を放って、コナン君の推理が続く。

 主婦さんが探していたのはどうやらメスの三毛猫であるらしい。

 主婦さんは納得し、探す際の助言を聞いて去っていった。

 

 そうして最後に残った飼い主である会社社長さんに大尉は引き渡された。

 大尉の本名は漱石というらしい。

 風流な名前である。

 

 無事解決後、俺達はお礼に無料のコーヒー貰ってまったりとお茶をして帰ることにした。

 

 

 帰り道。

 少し遅くなってしまったので、もう日はどっぷりと暮れている。

 今日はマンションに直帰でいいだろう。

 

 コナン君が俺を見上げて問いかけてくる。

 

「ねえ、なんか本当の飼い主がわかってたみたいだけど、もしかして黄衣さん猫語喋れたりするの?」

「喋れなくもないけど、どうして?」

「大尉がお腹撫でさせてくれるのって滅多にないから」

 

 やはりお猫様の腹は安くはないらしい。

 俺は頷いてコナン君の言葉を肯定した。

 

「前によくウルタールって猫の街に遊びに行ってたから、会話手段はいくつか持つようにしてたんだ」

「ウルタール?」

「おう。猫がいっぱいいてめちゃくちゃ可愛いんだ」

 

 旅行のたびに頼み込んで撫でさせてもらっていたことを思い出す。

 もちろん、対価の美味しい物もきちんと渡した。

 ウルタールの猫の間では「のっぽの割には頭がよくて手土産も忘れない」と俺は評判だったのだ。

 

 しかし、ひょんなことから黄衣の王の本性を晒しかけてしまい。

 猫達は2度と俺の前には出てきてくれなくなってしまった。

 もう影も形も見ないレベルで避けられた。

 

 ウルタールの街を荒らしてもアレなので、俺はそれを機にあの街に行くのをやめたのである。

 悲しい事件だった。

 俺は猫天国を失い、悲しみに暮れたまま家でビヤーキーをたくさん撫ぜるしかなかった。

 

 猫は人間と違って危険察知能力に優れる。

 でもその時ばかりは人間の鈍感さを見習ってほしいと思ったものだ。

 

 コナン君も興味深げに話を聞いている。

 

「まるで猫好きの楽園みたいな場所だね」

「行ってみる?ドリームランドっていう夢の中の世界にあってね、気軽に行けるよ」

「へぇー、うん。今度休みの日に一緒に行こうよ」

 

 ウルタールは深き眠りの門から少し離れているが。

 「門の創造(ドリームランド対応版)」を使えば日帰りも十分可能だ。

 

 ついでに港町ダイラス=リーンで観光してもいい。

 中世ファンタジーって感じで、あれはあれで実に趣ある街だからな。

 

 

 

 てくてくとシャトー米花マンションに到着。

 

 ロビーに入ると、そこには壁に背を預けて俺たちを待つ水無怜奈の姿があった。

 

 「少しいいかしら」と話しかけられたので、ここで内緒話は難しいし、マンションの自室に案内する。

 

 茶を出そうとしたら、すぐ帰るからと断られた。

 彼女もかなり忙しい人だ。

 次の予定も詰まっているのかもしれない。

 

 水無さんは単刀直入に口を開いた。

 

「明日の会談場所について知らせに来たの」

「お、ありがとう水無さん」

「話し合いがどう進むかはわからないけど、是非とも米国を贔屓にしてくれると嬉しいわ」

 

 水無さんは自然に笑ってリラックスした様子を見せた。

 俺たちも知らない仲じゃないし、俺の性格もよく知っている。

 悪いことにはならないと確信しているのだろう。

 

 コナン君がぱちくりと瞬いて小首を傾げた。

 

「会談場所?もしかして米大統領に会う話?」

「ええ。詳細は極秘で私も知らないけれど、米国の怪異対策について話があると聞いているわ」

「なるほど」

 

 できる限り近い日程で、と言われて急遽設けられた会談だ。

 俺も降谷さん達と相談して一通り台本組み上げたが、どう出るかわからない以上限界もある。

 なにせ降谷さん達も同席も許されない極秘会談だ。

 

 SPをつけるという話も出たが、俺にとって人間は守る対象でしかない。

 刺客とかが襲いかかってきたらSPさんが怖い思いをするので断らせてもらった。

 

 おそらく代わりに遠巻きに監視がつくのだろう。

 

 それだけ伝えて、水無さんは「じゃあ、今後も良いお付き合いをしましょう」と柔らかく微笑んで去っていった。

 

 あとはご飯を食べて、風呂へ入って、まったりしてから寝るだけだ。

 

 本日のご飯はハイパーボリア風パスタ醤油風味だ。

 

 魔術で作り出された麺の形が非常に独特だが、意外に麺に絡んで美味しい仕上がりだ。

 本来は魔術で発酵させた魚醤を用いるのものの、今回は醤油で代用させてもらった。

 

 加えてローストビーフの盛り合わせを添える。

 こちらも手作り。

 魔術でするりと火を通した牛肉を、オリーブオイルとニンニクで焼き色をつけた一品である。

 ソースはみりんと玉ねぎと醤油を使ったハイパーボリアの伝統風。

 

 今回も満足いく出来栄えになった。

 「おいしー!」とコナン君に喜んでもらえて、嬉しみの限りである。

 

 

 さて、そのあたりで突然脳内に念話が入り込んだ。

 ニャルが話しかけてきているようだ。

 お遊びの話ならスマホを使うし、何かあったのかもしれない。

 

 念話に出て一言目から、ニャルは大概物騒であった。

 

『突然ですが皮剥ぎがいいでしょうか、内臓を取り出して食わせましょうか、脳をいじって自らの手で親族を襲わせましょうか』

『何何何何何!!!俺めっちゃ怒られてる!?』

『いえあなたは何もしてませんから安心してください。こう、愚かな人間へのお遊びですよ』

 

 ややイラついているようだ。

 でも人間相手にそんなやばいことをさせるわけにはいかない。

 暗黙の了解として、ニャルが勝手にやってる分には俺も言葉を挟まないようにしている。

 だが聞かれれば止めるし、話したなら邪魔もする。

 

 そのようなルールで今までやってきている。

 

『うん、落ち着け。人間はか弱い。そーっと傷付けず解放してやるんだ』

『えー。でもこいつら…まあいいでしょう。あなたの言うことですし、適当に記憶を弄って解放してやりましょうか』

『めっちゃ助かる。この埋め合わせは必ず』

『はい、待ってます♡』

 

 なんかわからんが人間がいくらか救われたようだ。

 

 明日の会談が終わったらニャルの様子を見に行くことにしよう。

 止められることが分かりきってるのに、突然念話を繋げてきた理由がいまいち判然としないし。

 ニャルがイラついていたのもかなり怖い。

 

 俺は重い息を吐いて、明日を憂いてパスタを口に突っ込んだのだった。

 





・ウルタールの猫
まあまあ使える下僕として有名だった黄衣が実はやべー奴だと知って猫界は騒然とした。
無論のこと黄衣は出禁になった。

・水無さん
ガチで何も知らされてない可哀想なCIA。
なんか凄い力を持つ黄衣君と米国が協力関係になるんやな!めでたい!
などとその気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ。

・お怒りのニャルラトホテプ
まったりしてたら突如黄昏の館に米国特殊部隊が強襲してきた。
ちょっと不愉快。

米国特殊部隊は黄衣ハスタの人質の確保をしに来たようだ。
日本警察内に潜むスパイからの情報を元に調査し、ここで女が一人住んでいることと黄衣ハスタが不明な方法で日参してると判明。
誘拐を試みた。

無論、ニャルは屋敷に入ってきた羽虫を反射で捻り潰した。
が、つまらんと思って蘇生。
手慰みに無限プチプチをしていた。
それも飽きて、結局何だったのかなと脳を覗き、事態を把握。
若干不愉快ながら黄衣に念話したのである。

そーっと解放しろと言われたので、羽虫を直した上で仕方なくニャル誘拐に成功したように思い込ませて解放した。
加えて自身の代わりに飼ってたナイトゴーントを渡しておいた。
「可憐な女の子のように振る舞え」と命じたので、ナイトゴーントは悲しそうに震えながら連行されていったのだった。

今考えたら誘拐された悲劇のお嫁さんごっこも良かったかも、などとちょっと後悔している。

米国で遊ぼうかとも思ったが、黄衣が代わりに動くなら自粛していようと思った気遣いの神。
もし彼が手出ししないなら代わりに遊んであげますね!

僕の大切な住まいに土足で入り込んだんですから、当然ですよね?
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