ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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緋色の弾丸〈魔術師の影〉

 

 暗闇の中を、悪意をもって徘徊する人間が一人。

 

 それは小太りの男だった。

 見覚えのない顔だ。多分これまでに会ったことはないだろう。

 俺は別に光で景色を認識している訳じゃないから、停電で真っ暗な会場でも良く見える。

 

 困ったことに、そいつは静かに素早くこっちにやって来た。

 

 諸伏さんも見えているようだ。

 前から暗闇も見えていたのか、最近「成長」して獲得したのかは知らないが。

 流石で冷徹な瞳で男を確認している。

 

 男はゴツいヘッドセットようなものをつけたまま、醜悪に笑って俺の隣──鈴木会長へと突進した。

 右手にはスタンガン。

 ということは、ヘッドセットは暗視ゴーグルか。

 

 瞬間。

 軽くコン、と諸伏さんが右足を出した。

 

 油断し切っていた男は派手に転けて、絨毯敷きの会場の床に顔面を叩きつけた。

 取り落としたスタンガンが床を転がっていく。

 その上から諸伏さんが無言で拘束。

 激しく暴れる男が「このっ、放せェェエッ!!」と叫ぶ。

 

 無意味に暴れる男に諸伏さんが不愉快そうな顔をした。

 その拍子に、諸伏さんが呪詛を漏らした。多分無意識だ。

 男にヤバめな呪詛が張り付いたため、俺が軽く祓ってやる。

 

 諸伏さんも無意識に人を殺しかけてたと知ったらショックを受けるだろうしな。

 しかし諸伏さんも霊としてなんだか成長して来たし、事故が起こる前に自覚的に制御法を学んでもらうべきだろう。

 

 というか霊が成長ってなんやねん。

 見たことないやで。これ、もしかして怪異混じりなのか?

 

 周囲のお偉いさんが動揺して怯える声がする。

 「一体何だ!?何が起こっている!」「明かりはまだ点かないのか!」などなど。

 

 そして、ようやく明かりが復旧。

 ガチガチの装備で取り押さえられる、男の姿が白日の元に晒されたのであった。

 

 諸伏さんが冷たい瞳で口を開く。

 

『暗視ゴーグルをつけたまま、そこのスタンガンを鈴木会長に振り上げていましたので取り押さえました。安全のため少し離れていただきますようお願いします』

「な……鈴木会長を狙っていただと…!」

「早く警察に連絡を!」

 

 当然、会場は騒然。

 絶叫して暴れる男は完璧に動きを封じられたまま、警察に引き渡されることになったのであった。

 

 

 

 

 警察到着後。

 俺たちはしばしの事情聴取を受けることになった。

 

 やってきた目暮警部は「君、今後パーティ会場には行かない方がいいんじゃないかね」などと半目で俺を糾弾した。

 

「誤解ですぅ。俺の事務所は今回防いだ側でぇ」

「分かっとるわそんなの。それと、レジャー施設や休日の観光名所もやめた方がいいだろうな」

「露骨に被害少なくしようとして来ますね…」

 

 今回体で防いだ諸伏さんはちょっとだけ褒められた上で、「会場は真っ暗だと聞いとったが、どうやって周囲を把握したのかね」と聞かれていた。

 諸伏さんは「夜目が利く性質なので」と言い訳していた。

 マジに真っ暗だったから夜目だとしたら利きすぎなんだよなぁ。

 

 鈴木会長は己の身に起きそうだったことにゾッとしながら、諸伏さんの両手を取って深々と頭を下げた。

 

「すまない、君には本当に助けられたよ。もしあれで犯人に連れ去られていたら、何をされていたことか…」

『身代金誘拐なら、もしかしたら他に共犯がいたかもしれません。今後しばらくは身の回りにお気をつけて』

「ああ。SPを増やして対応するよ」

 

 俺たちの会話を聞いていた目暮警部がうむ、と頷いて口を開いた。

 

「今回捕らえた男はリニアの開発チーフエンジニアである井上治というらしい。井上には、先の件も含めてみっちり捜査する予定だ」

「動機は何だったんですか?」

「まだ吐いておらん。ちょっとイタズラするだけのつもりだったなどと容疑を否認している」

 

 俺の質問に、目暮警部はやや難しい顔でそう答えてくれた。

 それは面倒臭いが、しっかり捜査を進めていくしかなかろう。

 

 コナン君が「先の件って?」と聞くと、その質問は隣の高木刑事が答えてくれた。

 

「先週起きた誘拐事件だよ。三塚製菓の社長さんが誘われてね。すぐ見つかったみたいだけど、社長さんは随分怯えてしまってね」

「それと関係があるって、どうして思うの?」

「FBIから協力要請が来ているからだよ。もしかしたら15年前の事件をなぞらえているかも、って」

「!」

 

 俺は少し驚いた。

 こんなまだ被害者も出ていない状態で動くとは。

 米国で莫大な商業価値を誇るWSGが関わるといっても、所詮は他国の誘拐事件だろうに。

 

 ふむ、と首を傾げつつ事情聴取終了。

 俺たちはホテル会場を帰されることとなった。

 

 スマホを見ると、ごっそりと着信履歴が残っている。

 

「うお……降谷さん降谷さん赤井さん降谷さんマモーさんマモーさんマモーさんマモーさん降谷さんマモーさん…」

『地獄みたいな着信履歴だな。ゼロに早く電話してやってくれ』

「了解……」

 

 一番最近の履歴から掛け直すと、一コールで繋がった。

 

『会場は爆散していないな!?』

「そんな酷いこと俺しませんけど!!!」

『ならいい。あとFBIは神の前でカッコつけたいだけだから無視しろ。本件は日本が片付ける』

「ソデスカ…了解。それと、この件の怪異について、」

『ッ、まさかこの件に怪異が関わっているのか!?』

 

 一気に険しさを帯びた降谷さんの声に、俺は慌てて言葉を繋いだ。

 

「いや、なんか魔術師が裏で動いてるかも…?みたいな。犯人に妙な魔術がかかってたから」

『具体的には?』

「多分『自分の言っていることを信じさせる』タイプの魔術。扇動されたんだと思う」

 

 俺の知る限り魔術「セクメンケネップの言葉」が一番近いだろう。

 単純な支配系じゃなくて術者本人がきちんと言葉を練って説得したとき信じて貰いやすくなる魔術、というべきか。

 

 人心支配系魔術は各地にいろんなバリエーションがあって本当に困る。

 取り締まっても取り締まっても新しい魔術がポコポコ生み出されて。

 無駄に苦労させられた記憶がある。

 

 降谷さんが大きなため息をついたのがこちらまで聞こえてきた。

 

『………この後会って話そう。都合は問題ないか?』

「俺は問題ないよ。というか降谷さんこそ大丈夫か?働き過ぎて目の前で分身が破裂したりしないよな?」

『それは、まあ。善処する。たぶんまだ破裂までは行かないはず』

「すごい不安な返答」

 

 降谷さんの限界は近いらしい。

 流石に知り合いが破裂したら心が痛むため、何とかしてやろうと心に誓うなど。

 

 予定を軽く合わせてから電話を切る。

 

 お次は赤井さんかマモーさんか公安信者さんかエトセトラ。

 迷っている間にも電話は鳴る。

 

 助けを求めるようにコナン君を見たら、コナン君はサムズアップのみで返した。

 自分でケリをつけろってことらしい。

 スパルタコナン君に涙がちょちょぎれる。

 

 俺はとりあえず今かかって来ている電話に出ることにした。

 

『神よ!!!!子飼いから現場で何かあったと連絡がありましたが!』

「マモーさん落ち着いて、落ち着いて俺は無事だから」

『………やはり神が暮らすには現在この星は穢れ過ぎている…浄化せねば…二度と神が星を離れずともいいように…我々は見捨てられぬよう、不断の努力をしなくてはならない…』

「待って!!!!!」

 

 なんか危険な思想が漏れ聞こえて来たので慌ててストップをかける。

 降谷さんといい俺の周りってこんなのばっかである。

 

 ひとまず頑張って宥めて「今の人間もいっぱいちゅき♡」(意訳)と伝えて納得してもらった。

 「たとえ猿と成り果てようと、人の愚かさを、醜さをも愛すと…そうおっしゃってくださるのか…!」とかなんとか。

 壮大な話に昇華されているが、俺は落ち着いてその暗黒思考を捨てて欲しいだけだ。

 

 後連絡しなければならない先は山ほど待っている。

 そして降谷さんとの打ち合わせ時間も迫っている。

 コナン君はマンションに送り届けねばならない。

 

 やることが、やることが多い………!

 

 俺はどこぞの犯人みたいな思考で冷や汗を流しつつ、「僕もいく!!」と叫ぶコナン君を引き連れて警視庁へと向かうことになったのである。

 魔術絡みだけど、と言った瞬間コナン君はUターンしたが、今更逃さぬ。

 相談相手は多い方がいい。地獄の道連れも多い方がいい。

 

 そのように、俺は笑顔の諸伏さんと「捕まった宇宙人」の写真みたいにコナン君を連行していったのであった。

 





・幽霊諸伏さんのスペック
実は順調に成長している。
亡霊として最適化され、ある種の怪異としてのルールを獲得して来ているともいう。
現在はだいたい貞子ぐらいの強さ。
必ず3日以内にビルの屋上で自死する、感染性の呪詛が得意なはず。
本人は気付いてないけど。

・降谷さんの現状
わりと後ちょっとで破裂する。過労破裂。
破裂したところで死にはしないが、黒い風が警視庁で暴発するのと降谷さんの心が傷つくなどする。
ニャルラトホテプは「何故自ら羽虫の奴隷に…?」と宇宙猫になっているようだ。
僕の化身が壊れちゃった…(困惑)。
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