ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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緋色の弾丸〈諸伏兄と真相と神と〉

 

 通い慣れた警視庁の会議室に到着。

 

 一般入庁者用のビジターカードを首から下げ、現在降谷さんの到着を待っている。

 すぐに、足早にやって来た降谷さんが短いノック音ののち入室してきた。

 

 入ってきた降谷さんは、全くもってげっそりしていた。

 可哀想に、ここまでやつれたニャルの化身は見たことがない

 後パイン飴の香り。

 懐にはパイン飴袋の姿もある。

 

 この間会ったニャルも困惑して「化身が変になっちゃったけどどうしよう…」みたいなことを言っていたけども。

 きっと無限の体力を手に入れた社畜の末路がコレということなのだろう。

 諸行無常。南無阿弥陀。

 

 可哀想なので魔術でエナドリを作成し、降谷さんに渡してやることとする。

 心を癒し集中力を高める効能が期待できる。

 

 苦痛に耐えられぬ時飲むがいい…。

 

 すっと黄衣印のエナドリを30本一箱でお渡しすると、降谷さんはしずしずと受け取ったようだった。

 

「これ。体力回復にどうぞ。効能は精神力回復と集中力増進、疲れを癒す一本です」

「……ありがたく受け取る。良ければ後日追加で貰えると嬉しい」

「らじゃです」

 

 本当に疲れて疲れているようだ。

 降谷さんはよろよろとエナドリの箱を受け取って、パイプ椅子に腰を下ろした。

 

 飴と言いエナドリといい薬物漬けな気がしないでもない。

 基本降谷さんには無害だから気にすることもないのだけれど。

 なんとなく健全でないような気がする今日この頃。

 

 根本的に業務量がバグりすぎてるのをなんとかせねばなるまいよ。

 

 降谷さんがするりと真面目な顔つきになって、本題へと入った。

 

「それで、魔術師が事件に関わっているとのことだったな。詳細を聞きたい」

「ああ。術式系統からしてたぶん銀の黄昏教団じゃないかな。アメリカにも支部があったはずだし」

 

 銀の黄昏教団。

 外宇宙の神ならなんでも来い!なカルト教団だ。

 

 純魔術師のみで構成され、どちらかというと魔術同好会の形に近い。

 活動もたいてい魔術の研磨や情報交換のみ。

 閉鎖的だが腕のいい魔術師が多く、意外と厄介だったりする。

 

 今回あの小太りの男を魔術で扇動した犯人は、家族が教団員だったようだ。

 多分本人は銀の黄昏教団に入れるほど魔術の腕はないと思われる。

 

 だがその魔術の教えを受けていたのは確かで、今回の犯行に至ったのだ。

 

 正体としては十五年前の事件の犯人の娘らしい。

 何故今になって動き出したかは不明。

 俺はポリシーとして、なるべく人の心は盗み見ないようにしているので。

 

 ポリシーって格好よく言ったけど、実際は普通に人間不信になりそうなだけだからである。

 人のココロ、ドロドロしがち。怖や怖や。

 

 降谷さんが眉間に皺を寄せて不機嫌そうにした。

 

「またFBI絡みか。WSGスタッフとして潜り込んでいるところを見るに、自分の父を逮捕したFBIへの復讐とかな?」

「あー、そうか、マッケンジー氏は元FBI長官って言ってたもんな」

 

 とすると、やはりそこまで強力な魔術は使えないのだろう。

 本職の魔術師なら、スタッフに潜り込むなんてまだるっこしい真似をせずともよかったからな。

 とはいえ油断は厳禁。

 

 降谷さんは冷徹に目を細めて硬質な声色で結論を述べた。

 

「そこまで分かれば、あとは身柄を押さえるだけだ。情報提供感謝する」

「え、その人が共犯だって証拠はないぞ?ただ扇動しただけだし」

「無ければ作ればいいだけだ。どうせ魔術師関連法案の成立はまだ遥か先だ。非合法な手を使うしかない」

「法案あるんだ……」

 

 法案が通るにはまず魔術とはなんぞやと、魔術を掛けたか否かを科学的に証明せねばならないと思うのだが。

 想像しただけでとんでもねぇ重労働に聞こえて仕方がない。

 法治国家である以上、法案を通さねば話が始まらないのは分かるんだが。

 

「ともかく、日本国内でアラン・マッケンジー司法長官が殺されるなんて事態があってはならない。WSGは日本の国家事業だ。変なケチがつくことだけは避けたい」

「なら、一応相手は魔術師だしサブでついてようか。もし暴れられたら大事だし」

「それなら心強い。それと、今回の捕物は俺が直に出る」

「降谷さんが?」

 

 赫赫と厳しさに満ちた瞳で降谷さんは言い放ち、頷いた。

 

「相手は魔術師だ。一般の警察官を当たらせるのは危険だろう」

「まあ降谷さんなら大抵の魔術は効かないだろうけど。気をつけろよ。魂への直接打撃とかされたら結構痛いぞ」

「そんな凄腕だったらな」

 

 一通り重要なことは話したというこので、降谷さんは席を立った。

 そしてぴら、と手を振ってそのまま部屋を出ていったのだった。

 

 もちろん俺の渡したエナドリを大事そうに抱えてだ。

 帰り際に「降谷さん!それ危険だから他の人にはあげちゃダメだからな!」と言い添えておく。

 降谷さんは「了解した」と背中越しに返事を返したのだった。

 

 扉が閉まる。

 諸伏さんが「な、ゼロめちゃくちゃ疲れてるだろ?」と俺に同意を求めた。

 

 確かに萎びたほうれん草を無理やりお湯で戻したみたいなテンションではあったな。

 表面上シャキッとはしているが、中身はしおしおというべきか。

 

「諸伏さんは大丈夫なのか?」

『俺は言っても定期的に休憩貰えるからな。風見さんと松田ペアもいい具合にやりくりしてるみたいでよく牛丼屋にいるし』

「6本腕のペンダントが牛丼屋にいるのはまずくないか?」

『上から毛布かけて誤魔化してるらしい』

 

 雑……圧倒的に雑……!

 それでよく他のお客さん何も言わないでいてくれるな!

 それとも、この霞ヶ関近くの牛丼屋なんて極度に疲れた人しか来ないとかいう地獄みたいな論理が働いているのだろうか。

 

 コナン君が「外食したい気持ちはわかるけどバレたら阿鼻叫喚の地獄絵図だよ」と口を突っ込んだ。

 

 何にせよ、普通そんなクリーチャーが現れたら、そりゃ明日の一面を占拠すること間違いなしだろう。

 

 え、俺のせいでクリーチャーになったって?

 ちょっとよくわかりませんね……。

 旧神の糠漬けは美味しいしなにより滋養強壮に効く。間違いない。

 

 

 その後、諸伏さんはそのまま警視庁に監禁されることとなった。

 めくるめく労働タイムの始まりだ。

 諸伏さんは病院に連れてかれる犬みたいな顔をしていたが、こればっかりは仕方ない。

 

 南無三。

 過労死が取り沙汰される現代社会の闇を見た、と俺は静かに冥福を捧げるのみだった。

 

 

 

 

 さて、事務所に帰ると。

 そこでは来客用のソファに座り、諸伏兄とマモーさんが穏やかに会話していた。

 

 我が事務所で何が起こっとるんや。

 

 俺達の帰宅に気づくと、マモーさんが立ち上がって俺を歓迎した。

 

「おお!お待ちしておりました!今茶を用意しますので、しばしお待ちを」

「さらっと事務員みたいな顔するやんけ。別にいいけど。あ、諸伏警部、どうもです。あれから危険なこと等はありませんでしたか?」

「ええ。このキーホルダーに助けられましたから」

 

 赤女の事件では諸伏兄を随分と酷使してしまったからな。

 あの時は劣化版宇宙からの色とタイマンバトルさせてしまったし。

 同時に世良さんを大変な目に遭わせてしまった。

 

 それによる心身の不調を心配しての言葉だったのだが。

 次の瞬間俺は息を呑んで絶句することになった。

 

 諸伏兄が掲げたペンダントが色を失って魔術式が霧散してしまっているではないか。

 

 見ると、ハート型のチャームが真っ二つに割れている。

 つまり残機が失われて効果が無くなってしまって、諸伏さんは今身一つでここにいるということ。

 

 つまり実質1回死んでるってことだ。

 あまりにびっくりして、ついつい二度見して確認してしまう。

 コナン君も「あわわわわわわ」と隣で小刻みに震えている。

 

「ど、っどどどうされたんですかこれ!?」

「少し怪異でヘマをしまして。本当に助けられました」

 

 軽く言われた言葉に、俺はドッと背中に冷や汗を垂れ流した。

 これ本気で死んでたんやぞお前!という言葉が喉元からまろび出そうになる。

 前からこの人とんでもねぇと思ってたけど!

 

 そのあたりでマモーさんが戻って来た。

 

 茶を入れたお盆を持って、上機嫌で茶を置いている。

 

 マモーさんぐらいの金持ちなら、こんな下っ端の仕事なんてずっとした覚えもないだろうに。

 というかこういう仕事の人を顎で使う立場だろうに、嬉しそうにニッコニッコと笑顔を煌めかせている。

 

 茶を一口含むと、鼻に抜けるような香り高い茶葉の風味がした。

 露骨にいつも使ってる特売の茶葉ではない。

 

 あと専用のティーカップが一揃い増えている。

 薄く繊細で、模様からして多分ひとつずつ職人の手作り。

 

 目の玉飛び出るほど高価そうなティーカップがさらっとお出しされて、俺は静かに震えた。

 俺が弁償ってなったら立ち直れん出費なんねんて…。

 

 諸伏兄が頭を下げてティーカップを持ち上げ、「素晴らしい」と茶を言葉短く褒め称えた。

 この人も紳士然として、絵になる人ではあるんだよなぁ。

 

 諸伏兄が茶を少しばかり堪能してから口を開いた。

 

 

「それはともかく。今回こちらを訪ねたのは、貴方に少しばかりお聞きしたいことがあったからです」

「ふむ。といいますと?」

「古い遺跡に描かれる『空に跨る神』と、黄色の印の兄弟団の崇める『黄衣の王』、シンガポールに現れた怪物、そして貴方───黄衣ハスタ」

 

 これらは、同一のものと考えてよろしいでしょうか。

 

 真っ直ぐに俺を見つめる視線が、俺を捉えた。

 





・エナドリ
魔術式を液状化させた特殊な認可外の医薬品。違法薬物とも。
ニャルが元気一杯になる成分などが入っている。
ニャルは1日3瓶まで。化身は1瓶まで。
箱には「神格でないものは服用禁止!」とデカデカと印刷してある。
グレープフルーツ味。

・諸伏兄の残機減 
こっそりカルコサ神党の襲撃に遭って死にかけてた。
長野組が巻き込まれ、残機のある諸伏兄が二人を庇って1アウトした形。
犯人には逃げられている。
まだ諸伏さんも降谷さんも知らないが、たぶんマジで荒ぶる五秒前ぐらい。
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