ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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這いよる混沌

 

 無事にハスターリク退散は完了した。

 

 追い出されたハスターリクはめちゃくちゃ文句たらたらであった。

 入り口を閉じてからも、もそもそ悪態を吐きながら名残惜しそうにこちらを振り返るなどしていたし。

 

 この後えっほえっほと遥々地球まで空路で来られても困るので、去り際にお手製のベッドセットをプレゼントしておいた。

 真菌の群れを魔術で外側から弄って、宇宙空間で単体で増えられる仮設ベッドだ。

 仮設とはいえ改造して好きに拡張できるし、非常に頑丈で長持ち。

 もちろん魔術で囲って範囲内には出られなくして、人にも感染しないよう配慮してある。

 

 ベッドセットを向こう側に放り投げておくと、ハスターリクも若干納得した様子を見せた。

 「ふーん。まあこの辺にしといたるわ」「狭ッ…枕以下のサイズやんけ」「⭐︎1」など。

 ほんまうるさいなこのベッドマニア。

 誰が⭐︎1やねん。

 

 

 

 さて、今度は社会の様子についてだが。

 

 無論だが大量のデータが突如消えた影響で、世間は大混乱へと陥っていた。

 内部データが全部吹っ飛んだリニアは機能停止。

 受付中のWSG東京開会式のチケット確認もシステムが落ちて利用不可。

 

 まさに散々の結果となったのである。

 

 幸いなことに、データが消し飛んだことによる国内の死者は今のところ報告されていない。

 組み込みシステムが死んだら場合によっては即死のときもあるからな。

 

 大々的にニュースで取り上げられたからか、まだ工場で怪我人とかそのぐらいで留まっている。

 米国のサーバー等が感染した影響も大きく、まだまだ混乱は続きそうだ。

 

 

 

 そんなわけで、俺たちは「門の創造」で帰宅することとなった。

 

 改札のサーバーがダメになってしまったので、新幹線が使えなかったのだ。

 飛行機も同様にダメ。

 公共交通機関がほとんど麻痺しており、代替のため臨時でバスなどでピストン輸送されていた。

 

 全くとんでもない事態になってしまった。

 いや、ハスターリク降臨としては軽傷も軽傷の部類だけれども。

 

 帰ったらコナン君を事務所の前におろし、お土産を渡しに黄昏の館へと直行する。

 ささっとお土産を渡してから降谷さんのところへ状況を聞きに行こうと思ったのだ。

 

 ちなみに、お土産は七宝焼の懐中時計だ。

 外から俺が魔術的にヨグ=ソトースと接続してあり、多機能かつ正確。

 モードを切り替えることで各種魔術的時刻を表示することも可能だ。

 

 黄昏の館についたら、チャイムを鳴らす。

 しかし反応がない。

 

 寝てるのかな、と思ってそーっと黄昏の館の中に入る。

 気心知れた仲なので、返事がない時も入っていいと許可はとってある。

 しかし、探せどもどこにもニャルがいない。

 

 まさか。

 外出…しているのか……!?

 

 念話もつながらない、というか意図的に切ってる反応だ。

 

 すぐさま降谷さんに電話の態勢に入る。

 今ハスターリクの後始末で鬼ほど忙しいだろうが、これは間違いなく緊急事態だ。

 なんならハスターリク並にとんでもない事態となる恐れがある。

 

 電話をすると、つながった向こう側から怒号が飛び交う様子が聞こえてくる。

 野太い悲鳴に紛れて『次は何があった!?』と降谷さんの声がした。

 すまんな厄介ごとばかり運んできて…。

 

「黄昏の館にニャルの姿がない!外出してるっぽいけど、『ハスターの瞳』でも姿が追えない。降谷さんは何か知らないか!」

「!?!?!?」

 

 降谷さんは寝耳に水だったようで、ひゅっと息を呑んで震える吐息を漏らした。

 

 向こうでは「記者会見が…」とか「WSGへの影響…」とか「長期的な経済への打撃…」など物騒な話題で満載だ。

 ともかくとんでもねぇ修羅場であることは理解できた。

 

 始まったばかりの怪異対策に加え、まだ続く米国との折衝、シンガポール対応、WSG警備体制見直し、カルコサ新党捕縛計画、今回の大規模データ消失による社会不安。

 

 超ビッグイベントが目白押しだが、それでも犯罪者は待ってはくれない。

 いつだって黒の組織は蠢いていて、ローンオフェンダーは爆薬を山ほどこしらえている。

 そして添えるようにニャル行方不明。

 

 降谷さんはカタカタと声を震わせて息を整えようとしている。

 倒れたい気持ちになっているだろうことは間違いない。

 

 やめて!今降谷さんが倒れたら、次は公安信者さんが首をくくるしかなくなっちゃう!

 お願い、死なないで降谷さん!

 次回「降谷さん死す」デュエルスタンバイ!

 

 流れる次回予告。笑い事じゃねぇなこれ。

 

『俺は今は分身を三人とも警視庁に据えて事態の対処に専念している。もうまもなくカルコサ新党の一斉摘発もある。外の様子は把握できていない……すまない』

「なら降谷さんにちょっかい掛けに行ってるわけでもないのか。すまん。俺の方で探ってみる」

『本当に助かる。助かる……所在がわかったらすぐに連絡してくれ』

 

 降谷さんの声が弱りきっている。

 

 たぶんニャルは俺に内緒で悪巧みしているのだろう。

 ニャルラトホテプが人間に化けて本気で隠れたら、見つけるのは至難の業だ。

 

 公安信者さんにも電話したが、やはり知らないとのことで申し訳なさそうな声が伝わってきた。

 

 仕方なく帰宅する。

 

 事務所では、ひと足先に家に着いてたコナン君と、事務所に居座るマモーさんが和やかに談笑などを交えていた。

 相変わらずよく分からん絵面である。

 

 「流石は神の魔術」「アレ夜に見ると花火みたいで綺麗なんだよね」だのなんだの話している。

 微妙に恥ずかしい。

 

「あーー、ただいま」

「黄昏の館に行ってたんだよね。安室さんの中の人どうだった?」

 

 コナン君が高級そうなティーカップで高級そうな紅茶を楽しんでいる。

 コナン君は割とこういうの気にしないというか、高級品に舌が慣れてる感があるんだよな。

 初めて飲んだ時も「…美味しいねこれ!どこの茶葉?」って聞いてたし。

 

 俺は大きなため息を肩でして、眉間の皺を揉み込んだ。

 

「ニャルラトホテプ、行方不明な件。どうしよう…」

「ええ!?!?なんで!?」

「たぶん悪いこと考えてる…暇になったんだと思う」

 

 まあ、館への封印も長く持った方だった。

 通常ニャルは飽きっぽすぎて、ひと所に長く滞在しないし。

 今までが幸運すぎたと思わねばならないだろう。

 

 ハイパーボリア人としてことの重大さを理解するマモーさんが眉間に皺を寄せて口を開いた。

 

「それは…探し出すのは難しいでしょうね。神がほぼ完璧に管理していたハイパーボリアですら、紛れ込んだ邪神の特定は困難を極めたのですから」

「ああ。でもアイツがちょっかいかけるとしたら俺の知り合いだと思うし。地道に当たっていくしかなさそうだ」

 

 スマホの連絡先を開くと、ずらりと並ぶ偉いひとの名前に圧倒される。

 突然電話をするのはやはり気が引ける。

 

 苦し紛れにひとまず赤井さんと諸伏さんへと電話したが、あまり成果は得られなかった。

 

 赤井さんはなんのこっちゃという反応だ。

 諸伏さんの方はと言えば、「ヒィ」と思わず悲鳴を上げていた。

 ニャル搬入の短い間だけでも、アレの傍若無人さを嫌というほど思い知ったのだろう。

 どちらにせよ二人はハズレだった。

 

 次に諸伏兄、次目暮警部達、有希子さんなどを当たっていって。

 これでダメならそこまで親しくもない偉いひとに上から順番に試して行くしかない。

 

 諸伏兄に電話をかけると、しばらくして彼の落ち着いた色合いの声が帰ってきた。

 

『諸伏高明です。どうかしましたか、黄衣君』

「人探しでね、浅黒い肌をしたとびきりの美男美女を探してる」

『それは景光の親友の彼では?』

「まあそうなんだけど」

 

 本当にそうなんだけどそうじゃなくて。

 

 俺がまごまごしていると、どこか電話越しの諸伏兄も同様にどこか焦っているような気配が伝わってきた。

 忙しかったのかもしれない。

 「すまん、忙しかったならまた今度」と言って電話を切ろうとすると、「いえ。少しこちらも相談したいことがありまして」と言って呼び止められた。

 

『友人が危機的状況に陥っている可能性がありまして、失礼ですが、ご助力願えないでしょうか』

「ッ、何があったんだ?」

「メッセージで『バーボンには近づくな』と。それだけ送って来て返事がない状況が続いています。おそらく、そのバーボンとやらに接触したのかと」

 

 一瞬バーボン?と思ったが。

 そういえば降谷さんの潜入捜査時のコードネームがそんな感じだった気がする。

 

 いや待て、だとしたらおかしい。

 

「それっていつ?」

「昨日です。彼はいつも返信がかなり早い。彼はいつも特にそのバーボンを気にしていたので、何か危険な怪異に巻き込まれていなければいいのですが」

「昨日……」

 

 やっぱり変だ。

 降谷さんは先ほど最近三人体制で仕事をしていると言っていた。

 

 軽く組織案件を片付けにバーボンを向かわせただけとも取れるが。

 それならあの銀髪マフィアと遊んでいる時間なんてないはずだ。

 いくら降谷さんがニャル寄りになってもこの地獄みたいな修羅場で遊べるほど頭は沸かないだろう。

 

 とすると、考えられるのはニャルが降谷さんのふりをしている、と言うことになる。

 

 別人がキッドみたいに変装してる可能性もなくはないが、それならそれで無害で安心だろう。

 最悪の事態を想定して動くべきだ。

 

 俺は思わず声を張り上げた。

 

「今諸伏警部はどこにいる!?」

『東都湾の倉庫街まで向かっています。先週彼が立ち寄っているのを見ましたので。それと、同時に仮面を持ったまま敢助君達が居なくなって連絡が取れていません』

「長野県警の主力メンバーが!!」

 

 集団誘拐されているではないか!

 

 まさか探索者を集めてデスゲームしてみましたじゃないだろうな。

 俺も一度この手のゲスト枠で招かれたので、反射でポカッてニャル野郎をぶったことがある。

 

 親父にもぶたれたことないのに!って言いたそうな顔をニャルはしていた。

 君の親父にぶたれたら万物は消滅してしまうのでしかたないことではあるのだが。

 

 ともかく急がねば銀髪マフィアが危ない。

 あれは近年稀に見る歴戦の探索者なので、世のため人のため救っておいて損はないだろう。

 

 まあ、俺はまだ夜道で襲撃されて銃で撃たれたのは許してない……けど。

 それとこれは別の話だ。

 

 合流の約束をして、俺は電話を切って急ぎ現場へと急行した。

 





・現在の公安ほか
死地レベルの忙しさ。
全世界的に起きた大規模サイバーテロでてんやわんや。
恐らくはウィルスの類だと思われている。
その被害規模は凄まじく、特にバベッジインコーポレイテッドとシンドラーカンパニーの米国二大IT企業のWebサービス群が一時停止したのが致命的だった。
現実で言うならAWSとAzureが同時に死んだぐらいの事態。
大手SNSや決済サービスを含めたあらゆる分野が麻痺。
必死で各社エンジニアが復旧をしようと奮闘しているところ。

ちなみに、被害としては非常に軽い方。
あと15分遅かったらPC兼人類汎用感染が始まってた。
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