ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ニャルゲーム開催!

 

 ニャルラトホテプは凝り性だ。

 いつだって全力で、好きだと思うことはあらゆる所に手を出して来た。

 

 そんな今、ニャルの心を悩ませているのが。

 来たる結婚式の演出である。

 

 これはこの間プランナーとか言う羽虫と話した時に、にわかにニャルの中に立ち上がって来た問題であった。

 

 日取りと招待客、予算等は一応決定済み。

 招待客リストも作成してある。

 内々に招待客にはスピーチを依頼してあるし、そこまではいいだろう。

 

 問題となってくるのは、式を盛り上げる演出についてだ。

 

 プランナーなる羽虫によると、そこは結構ご夫婦によって色々らしい。

 代表的なところだと、乾杯酒をゲストみんなで開けるボトルオープンだったり。

 抽選会を行なってゲストにプレゼントしたりなどが挙げられる。

 

 ニャルとしては、凝ったゲームの実施なんかが面白いと思ったのだが。

 

 ハスターには「来客のSAN値を激減させるわけにはいかない」として却下されてしまった。

 でもニャルだってやるからには独自の色を出したい気持ちでいっぱいだ。

 

 悩みに悩み、飼っていた星の精の触手を一本ずつ引っこ抜いてため息をつく日々。

 これには星の精もずいぶん衰弱してしまい、クスクス上機嫌そうに鳴かなくなったし、食事もあんまり取らなくなってしまった。

 

 これではいけない。

 そう思い切って、本日ニャルラトホテプは気合を入れて遊びに来たわけなのである。

 

 あの銀髪の羽虫を選んだのは、最近見た中だと比較的面白い催しを演じてくれたからだ。

 化身の企画はオーソドックスではあったが、古典的な中にも筋が通ってたし。

 銀髪の羽虫の頑張りもあり、まあニャルとしても楽しめた。

 

 本当はあのサル顔泥棒の羽虫達が一番楽しいんだが。

 あちらは今別の催しの最中だ。

 

 なんにせよ、アウトプットにはまずインプットの量が大切と聞く。

 ともかく行動が大切だ。

 

 そうして、化身の姿を借りて、ニャルラトホテプは銀髪の羽虫の前へと姿を現したのだ。

 

 

 

 

 ニャルラトホテプが廃倉庫の暗闇に足を運ぶと、銀髪は立ち止まって舌打ちした。

 

 アジトでまったりしていたこの銀髪へと声をかけて、ここまで連れてきたのだ。

 銀髪は特に何も文句を言うことなく一緒に来てくれたが、静かにこちらへの警戒は続けていた。

 

「………何の用だ、バーボン」

 

 その瞳には強く確かな敵意と恐れが滲んでいる。

 可愛らしい羽虫だ。

 どうやって遊び尽くしてやろうか、とニャルラトホテプは思案した。

 

 化身はこの羽虫が気に食わないようだが、ニャルは優秀な羽虫は嫌いではない。

 頑丈で長く遊べる羽虫はもっと好印象だ。

 

 うっそりと、三日月型に嗤ってニャルラトホテプは口を開いた。

 

「僕も少し新しい刺激が欲しくなってしまって。ねぇ、貴方達は不老不死を欲しているんですよね?」

「…………」

「ゲームにクリアしたら、この指輪を差し上げましょう。装着者に不老不死を授けるアーティファクトです」

「……ッ!!!」

 

 するりと取り出した指輪が妖しく光を放ち、銀髪羽虫は息を呑んだようだった。

 

 先ほどちゃちゃっと作った代物だが、中々いい出来ではなかろうかと思っている。

 

 指輪には魂を固定する仕掛けが施してある。

 肉体から魂を取り上げて、その意思のあり方のみを指輪に焼き付け、用済みの魂はエネルギー源として消費する、という仕組みだ。

 意思ある指輪として不老不死になれるわけで、手軽かつ確かな品だとニャルラトホテプは自画自賛した。

 

 ニャルラトホテプとしては、ハスターが不老不死を難しがる理由がよくわからない。

 

 不死を授ける方法なんていくらでもあるのに、あんなまだるっこしい方法で魂を改造したりして。

 単純に意思パターンのみを劣化しないものに複写すればいいだけのことを、なにを変にこだわっているのか。

 

 銀髪の羽虫はますます警戒して、じろりとこちらを睨み据えた。

 

「それより、そこで盗み聞きをしている奴らはどうする気だ」

「ああ。貴方も気付いてたんですか」

 

 廃倉庫の奥の棚の影から、こちらを見守る風が二人。

 

 どうやら別件でここに来て、そのまま偶然この会話を盗み聞きすることになったらしい。

 「出てきてください。せっかくなので顔でも見ておきたいので」と優しく声をかけておく。

 

 普段は遊ぶ用の羽虫のことなんてそんなに気にしないが。

 この国で遊ぶ以上、ハスターに怒られたらまずいからだ。

 

 出てきた羽虫は、片足を杖で支えている男と、女が一人のペアであった。

 

 ニャルラトホテプはやや首を傾げた。

 

 どこかで見たことがあるような、無いような。

 よく思い出せない。

 しかし思い出せないと言うことはどうでもいいということで。

 なら多少遊んでも構わないか、と結論付ける。

 

 松葉杖の羽虫の方が顔を険しくした。

 

「おいアンタ。黄衣探偵事務所の人間だな。こんなとこで何してやがる」

「問答は受け付けません。そういう場ではないので。ああ、でしたらゲームにクリアしたら答えてあげましょうか。なんでも教えて差し上げますよ?」

「……さっきも言ってたな。そのゲームとやらは一体なんのことだ?」

 

 ゲーム参加の意思が見えたので、ニャルは大いに頷いた。

 

「ふむ。ゲームには三人いれば十分ですね。では参加決定と。これより盤面に移動します」

「待て、足手纏いを連れて行くつもりはない。それと………テメェは本当にバーボンか」

 

 銀髪の羽虫に水を差され、ニャルは少しだけ不機嫌になった。

 羽虫がごちゃごちゃと、黙ってオモチャになるぐらいの簡単なことがどうしてできないのか。

 

 ため息を飲み込んで、ニャルラトホテプは記憶を振り返った。

 

 プランナーとか言う羽虫が言っていたが、演出としてゲームをするなら、来客にはなるべくわかりやすいものがいいとのこと。

 複雑だと余程慣れてない限り着いてこられない方も多いとかなんとか。

 

 なるほど、大勢を相手にするのが専門なだけあり、羽虫にしては慧眼だ。

 羽虫はたいてい愚かで物分かりが悪いから、細かいことは理解できないからだ。

 

 となると、ふむ。

 飼ってるペットの曲芸とかもいいかもしれない。

 星の精は最近元気がないし、新しくシャンタク鳥を仕入れて触れ合い会とか企画するのはどうだろうか。

 水族館でもやってた催しだ。

 よく躾けてお手とかも覚えさせれば和やかに盛り上がると思われる。

 

 ともかくニャルラトホテプは現在、類を見ないほど優しく穏やかだった。

 うるさい羽虫達をプチっと潰さず、懇切丁寧に説明しようと思う程度には。

 

「ソロでの挑戦は推奨しません。苦しんで死にたいなら別ですが」

「…………チッ」

「それと、僕がバーボンかどうか、なんて今さら関係ないじゃありませんか。ふふ。そもそも誰のことをバーボンって言ってるんです?」

 

 降谷零とはもはやニャルラトホテプであり、ならば己で間違いない。

 そこに区別をつけようもないことだ。

 

 さて。あとはゲームに移ろう。

 

 ゲームの内容としては、ちょっと味変してローグライトがいいだろうか。

 ハスターが家に来たとき一緒にやった記憶がある。

 繰り返し死んで覚えて、だんだん強化して進んでいくというゲームシステムは、ニャルとしてもまあまあ楽しかった。

 

 すぐ死んでしまう羽虫にはちょうどよかろう。

 

 パチンと指を鳴らせば、魔術が発動。

 三人を亜空間に揺らぐ今五秒ぐらいで作った空の彼方へと案内する。

 

 

 

 

 転移先は、空にぽっかりと浮かんだ浮島だった。

 

 上は夜空。

 島は魔術の光で覆われていて、青白く照らされている。

 

 広さは四方一キロ程度。

 3人プレイとしては比較的広く作ったから不自由はしないはずだ。

 

 転移させられた羽虫達は、思わず体勢を崩して尻餅をついたようだった。

 銀髪の羽虫だけは姿勢を低くして転倒を防いだらしい。

 

 ここはエントリーゲートたる桟橋であり、遥か下の景色が見下ろせる絶景ポイントだ。

 現実の東都の大都会が一望できる。

 美しい文明の光が見渡す限りに広がっていて、羽虫にしては意外と見栄えがする景色である。

 

 転んだ拍子に松葉杖が遥か下まで落下し、音すらしないその高さに幻覚でないことを思い知ったのだろう。

 松葉杖の羽虫が下を見下ろして息を呑んだ。

 

 この景色はプレイヤーのモチベーションアップの意味も込めている。

 つまり「ここから降りないと現実世界には帰れない」という意味だ。

 

 高所による強風が吹き荒び、松葉杖の男は思わず身をすくめ、「……マジかよ」とだけ呟いた。

 女の方は絶句しているようだ。

 

 テンポも悪いし、そろそろルール説明に入った方がいいだろう。

 

 パンパン、と二度手を叩いて注目を集める。

 

「それではご説明しましょう。ここは亜空間に設えたゲーム会場です」

「………どう、いうことよ」

「あなた方が脱出し生きて現実に戻るには、あの穴から地上までひたすら降りればいい。至ってシンプルなルールです──ああ、別に飛び降りても構いませんよ。生きていられるならね」

 

 目の前にある穴を降りたところが一階。

 そこからさらに降りるには、各階の階段を見つければ良い。

 

 と、そこまで言ったところで、足が不自由なプレイヤーがいることにニャルは思い至った。

 他の二人に降ろさせればいいのだが、まだるっこしいしプレイ感覚を損なう。

 何より見てて面白くない。

 

 もう一度パチリと指を鳴らして、男の足を元の状態に戻す。

 これで問題無いだろう。

 

「もし穴の中で死んだ場合、蘇生後この最上階まで戻されますのでご安心を。進行状況によってコンテンツが開放されたりもします」

「……まるきりゲームだな」

 

 松葉杖の羽虫はまだ足が治ったことに気付いていないようだ。

 体勢を慎重に戻して、這うように端から離れた。

 まあいいか、とニャルラトホテプは頷いた。

 

 説明は済んだし、お楽しみタイムと洒落込もうではないか。

 

「では、健闘を祈ります」

「おい待てッ!聞きたいことが山ほどッ」

 

 

 松葉杖の男の叫びを無視して、ニャルラトホテプは特に気にせずその場から離脱した。

 

 階層は全100階。

 この空間は時間的影響を極めて受けづらいから、たっぷり攻略に時間をかけてもらって構わない。

 ギミックもあるだけ詰め込んだ。

 化身が「報酬(リワード)は大事」って再三言ってたし、それも完備した。

 

 あとガチャとか。

 最近の羽虫が考えるゲームは小賢しくていけない。

 アプリ内パスはすぐに解約し忘れるが化身が払ってくれているのでそれでよし。

 ゲームサブスクも最近登録したので楽しんでいる。

 

 なんにせよ今のニャルは最近の羽虫のゲームの知識がたくさんある。

 一味違うのだ。

 

 

 そのように意気揚々と、ニャルはゲーム観劇の姿勢に入ったのだった。

 





・可哀想な星の精
触手を毟られて回復させられてを繰り返し、精神的に萎びてしまった。
美味しい血液も喉を通らない。なんもいいことない。
今は黄昏の館の檻の端っこで静かに毛布にくるまって震えている。

・今回のゲーム
化け物の徘徊する全100層の洞窟を下まで抜ければクリアのよくあるゲーム。
ちなみに致死ダメージは無効化して最上階まで転送してくれるが、死ななければ発動しないため割と詰む。
もし完全にロストした場合、優しいニャルラトホテプが「仕方ないですねぇ」と言いながら過去から魂をサルベージして複製してくれる。

・ハスターとニャルの日常ゲーム
実はハスターに勧められてスマホゲームも作ってる。
羽虫の作るプログラム縛り企画。
ハスターの作るゲームが「虚無ゲー」「味のしないガム」「未来の老人ホーム用」「ヌルゲ過ぎて5分でコンテンツ無くなる」と酷評だったのに対し、ニャルゲームはかなり好評だった。
丁寧に作られたクトゥルフ系鬼難易度アドベンチャーアクション(メトロイドヴァニア)。
ニャル手打ち(手打ちでない)ドット絵アニメーションが美しい。
大ボリュームにハスタ氏手がけるBGM、良好な操作性、ニャルも満足の爽快感と成長曲線とコンテンツ解放。コントローラー対応。
スマホ買い切りゲームで今もランキング上位にいる。
収入は適当に登録された降谷さんの口座に振り込まれている。
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