ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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太閤恋する名人戦〈犬くん〉

 

 コナン君はやはり納得しかねるようで、あれからずっと文句を言っていた。

 

「やっぱさぁ、でもさぁ。分かるけど。分かるけど心が納得しないって言うかさぁ」

 

 などとぶつぶつ言いながら、わしゃわしゃとゴールデンレトリバーを撫でくりまわしている。

 犬はコナン君に撫でられてご満悦らしく、尻尾をブンブンと激しく振り回した。

 

 

 

 あれから、長野県警の面々は無事に全員が目を覚ました。

 

 初めは半ば信じられない気持ちだったようだが、じきに飲み会に発展。

 ホテルのルームサービスを利用して、ささやかながら喜びを分かち合うようにパーティを始めた。

 

 降谷さんはかなり卑屈な顔で遠慮しようとしたのだが、諸伏さんにパーティ部屋へ投げ込まれた。

 黙って消えようとした銀髪マフィアも諸伏兄に捕獲され、会場に引き摺り込まれていった。

 諸伏兄弟の捕獲の腕前すげぇな。猟師か?

 

 そうして一晩中ささやかに飲み食いした後。

 長野組は連れ立って地元に帰還。

 銀髪マフィアは降谷さんと諸伏さんと共に警視庁へと向かったようだった。

 

 帰り際にホテルの支払いでまごついたようだったが、後ろからぬっと現れたマモー氏が「いいから帰って休養しなさい」と一喝。

 脈絡なく現れた財界の帝王に動揺する一同をよそに全ての料金をカードで支払っていた。

 

 黒くてシックなデザインのクレジットカードだ。

 コナン君が「お、父さんと同じやつだ。アメックスセンチュリオンカード!」と感嘆の声を漏らしていたので、たぶんいわゆるブラックカードなのだと思われる。

 つか優作さんもか。金持ち率高ぇんだよなぁ。

 

 珍しいし、マモーさんに見せて見せて!と強請ると、マモーさんは瞬時にピンと来た顔をした。

 やば。

 

「あっあっあっ、作って欲しいわけじゃないです紛らわしいこと言ってすみませんでした」

「私の招待ならすぐに発行できますし、会費も支払額もこちらでお支払いします!招待(インビテーション)基準など私が言えばどうとでもなります!」

「いやいやいやいや」

 

 この大金持ちはついにクレカを奉納しようとしている!

 いやじゃ!ワシはクリーンな宗教を標榜としているから信者の搾取はしないんじゃ!

 

 コナン君が「どうして黄衣さんは自爆するの…?」などと哀れなものを見る目をしている。

 俺は!純粋にブラックカードが見たかっただけだなのに!

 

 

 まあそのようなコントもありつつ、今回の大事件はひとまず収束したのであった。

 

 今後銀髪マフィアは司法取引とかそういうのがあるのだろうが、俺には関与できない分野の話だ。

 俺たちはただ日常へと戻り、平和に過ごすのみである。

 

 

 

 そうして、今日はまったりと少年探偵団を連れてパワースポット巡りをしている。

 

「ゴールデン君、早く飼い主見つかるといいね」

「あ、黄衣の兄ちゃん帰りうな重食おうぜ!」

「元太君僕そろそろうな重飽きたんですけど」

「なんだと光彦!もういっぺん言ってみろ!」

「はいはい、喧嘩しないの」

 

 言い争う子供達をクールに諌める志保ちゃんは慣れたものだ。

 

 喧嘩が怖かったのか、一緒に乗る犬くんが大きな身体を丸めて「ヒィン…」としょげ返って元太君に寄り添った。

 それで熱も冷めたのか、元太君と光彦君も仲直りの雰囲気になる。

 

 犬くんの首輪の名札には「ゴールデン君」という名前の書かれたメモ用紙が入れられていた。

 だから俺たちもそれに倣い、彼をゴールデン君と呼んでいる。

 

 子供達にわしゃわしゃされた犬さんはテンションが上がってきたようだ。

 そのままベロンベロンに顔を舐められて、子供達は顔中デロデロになってしまった。

 

 コナン君は持ってきたウェットティッシュを渡して、子供たちを拭いてやった。

 

 

 この犬は、先日ニャルの封印状況を見にいったら、月をふわふわ彷徨いていたのだ。

 

 俺を見るなり遠くから全力ダッシュしようとしたのだが、重力差でうまく力が入らず転けるなどしていた。

 それで「クゥーン…」と酷く傷付いていたのが可哀想で、俺の方で保護したのだ。

 

 もちろん、月で普通に暮らしてる犬などいるわけもない。

 

 彼は魔術によって組み立てられた仮想肉体に、犬の魂が入れられたもの。

 可愛いが生きていない、肉体を持つ幽霊犬だ。

 

 まあ、本人がそれに気付いているのかは疑問なところだ。

 

 とりあえずドッグフードは食べるし、おやつのジャーキーはもっと食べる。

 おしっこもしようとするが幽霊はそんなもの出ないので、足を上げたまま非常に訝しげな様子を見せる。

 とはいえ概ね普通の犬なので、フリスビー遊びをすると飛び跳ねんばかりに喜ぶのだ。

 

 首輪がついているということは、おそらく以前は誰か飼っていたということ。

 

 月に埋めたニャルに聞いても「……んー、なんでしたっけ?」だし、飼い主はまだよくわからない。

 ひとまず事務所で預かっているが、早く飼い主を見つけねばなるまい。

 

 どうも首輪の時間的連続性が断絶していて、時流遡行してもうまく飼い主の行方が追えないんだよな。

 絶対ニャルが関与してるに決まってるんだが。

 奴は悪いことたくさんしすぎて、逆に心当たりがありすぎてよくわからないのかもしれない。

 

 とかく、ふわっふわの犬はとても愛らしく、飼い主が恋しくて夜はスピスピ泣いている。

 

 早く見つけてあげたい一心で、対応術式をせっせと組んでいる今日この頃である。

 

 

 と、そろそろ目的地に着いたようだ。

 

 明治神宮は意外と混雑していて、駐車場はギリギリ入れる程度だった。

 なお、犬は基本的に神宮内に立ち入り禁止なので、運転手の黒服さんとお留守番だ。

 

 ドッグランの帰りのついでのパワースポット巡りだから、犬も満足して寝る……ことはないな。

 ゴールデン君はドッグランでテンションがぶち上がったのか、車の中をドゥルルルルと駆け回っている。

 やはりマモーさんが貸してくれた黒服さんに遊んでもらうしかあるまい。

 

 車を降りている間にも、黒服さんは突進してきた毛玉にもみくちゃにされた。

 スマートに黒スーツの懐から取り出したボールに犬の目が輝いた。

 うむ。すまんね黒服さん。

 

 

 そんな感じで、明治神宮参拝をさらっと終えたあたりのことである。

 

 絶対妙な雰囲気満載の羽田名人が明治神宮に駆け込んできたのは。

 

 和装でピシリと決めた彼は、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。

 焦りに身開かれた目に険しい表情は、どう見たって事件の香りだ。

 

 コナン君も気になったのだろう。

 近寄って「どうしたの、太閤名人?」と声をかけている。

 

 羽田名人は大袈裟に身体をびくつかせてから、しどろもどろに視線を彷徨わせた。

 

「ああ君か、いや、ちょっと神頼みにね」

「でも今日名人のタイトル戦だよね。山梨のホテルで」

「……まあ」

 

 タイトル戦は今日だったらしい。

 彼は現在六冠王。

 この名人を取れば、史上二人目の七冠王になるとTVでも連日取り上げられていた。

 

 というかいいのかその本番でこんなところにいて!

 

 山梨といったら、ここから車で二時間はかかるだろう。

 つまり間違いなくおかしい上に、名人位を投げ出すことすら選択肢に入る緊急事態が起きているということだ。

 

 事件だとして、誰にも何も告げずに一人で彷徨くとしたら、口止めされているのか?

 もしかしたら誰かに見張られている可能性もあるかもしれない。

 

 としたら、脳内に囁くのが一番早い。

 

 もちろん、テレパシーなんて始められたら俺の素性に疑問は出るだろう。

 でも羽田名人と俺は知らぬ仲ではないし、宮本さんの惚気話とか聞いている。

 助けるのに理由はいらないはずだ。

 

 俺は羽田名人にそっと念話を繋いだ。

 

『驚かずに聞いてください。今、俺は貴方の脳に直接声を届けています。害はなく、また他の何者にも聞かれる心配はありません』

「!!!!」

 

 羽田名人は驚きに身体を硬直させた。

 続けてゆっくりと落ち着かせるように声をかける。

 

『俺に声を届けたい場合は脳内で声を前に押し出すように思考してください。それで通話できます』

『………聞こえているかい?』

『ええ。問題なく。会話にコナン君を入れても構いませんか?』

『っ、頼むよ。はは、本当にどうしたものかと思っていたから、なんだか光明が見えてきた気持ちだ』

 

 光明が見えてきた、というには羽田名人は暗い顔をして頷いた。

 コナン君をグループに入れながら、俺は子供達の様子を確認した。

 

 子供達は黙り込む俺たちを不思議そう首を傾げている。

 

「どうしたのコナン君、急に黙って」

「……なんでもねーよ。それより、太閤名人は何か見たい場所ある?僕たち見て回ったばっかだから案内できるよ!」

 

 コナン君が雑談をするように見せかけながら、念話で同時に話し出した。

 

 毎回思うけど凄い器用さだ。

 俺なんて体に口が沢山ついてるけど、同じことしか喋れないのに。

 

『太閤名人、僕に適当に話を合わせておいて。それで、何があったの?』

『由美たんが攫われた。歩きながら話すよ』

 

 

 事件はいつだって待ってはくれない。

 かの太閤名人が語る事情へと、俺達は耳を傾けた。

 





・月犬「ゴールデン君」
100層ダンジョンにいたあの犬。
ニャルは実装したのを忘れてるだけ。
「手間がかからず人間が喜ぶ施設」として設置されていた。
崩壊の時偶然ニャルと一緒に排出されて、ぐにゃぐにゃになったままニャルごと月に射出されていた。
非常に人懐っこく元気いっぱい。

いつもの人たちがくれるおやつが恋しい今日この頃。


・ブラックカード
後日断りきれずに手渡されることになる。
気に入ったビルとかあったら買ってね!
せっかくなのでマモーさん誘っていいところに食事に行く時に使う予定。

・最近のニャルラトホテプ
そろそろ月に埋まってるの飽きてきた。
化身に語りかけても飴舐めてるせいで面白い催しを開かない。なんもおもろない。
100層ダンジョンにいた時は良かった。
ダンジョン攻略も良かったし。
そうでない時も化身にそっと語り掛ければ、甘美な本能に惑い苦しみ、羽虫達を手にかける直前で我に返って絶望する様子が見れた。
あの浮島から化身が投身なんてしても意味ないのに、可哀想。
あっ、Switch2の良さげな新作ゲーム出てる。買お。

お気に入りのゲームは最近買ったゼ◯ダの伝説。
冒険っていいよね、ドリームランドの一部を切り取って次の遊戯会場にしようかな、などと考えている。
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