ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ハロウィンの花嫁〈正体〉

 

 しばし風見さん達に着いて、逃走した爆弾犯の調査をした後。

 諸伏さんに話を聞くべく、俺たちは事務所への帰路へと就いている。

 

 コナン君に加え、風見さんと松田さんも一緒だ。

 

 探偵事務所は帰った時既に明かりが点いていて、朝出てくる時に残してきた諸伏さんがまだいるように見えた。

 ならば話は早い。

 

 中に入ると、予想に反して諸伏さんは出かけていたようだった。

 

 代わりに降谷さんがデスクに向かい、一人で静かに目を怜悧に細めて書類を見ていた。

 ぴしっと風見さんが慌てて姿勢を正す。

 

「た、ただいまー……どうした降谷さん?」

「ああ、君か。ちょうど良いところに来た」

 

 静かに微笑んでこちらを見る。

 その瞳の奥に赫赫と燃え盛るドス黒い怒りの炎が見えた。

 

 ちょっと話を聞くのが怖くて、刺激しないよう姿勢を低くして中腰に近づいた。

 「野生動物に近づくんじゃないんだから」とコナン君に突っ込まれる。

 仕方ないだろ怖いんだから。

 

 なお、松田さんは「あ?ゼロの旦那マジギレじゃねーか。なんだ?カリフォルニアロールの写真でも見たか?」とか言っている模様。

 多分彼は心臓に剛毛が生えているのだろう。

 

 降谷さんは外野を無視して、俺に一枚の書類を渡して来た。

 

「『俺こそは地獄の復讐鬼。さあ、ラストバトルを始めよう』……?」

 

 紙面に印刷された文章は一週間後の午後6時を指定しているようだ。

 ちょうどハロウィンの日だ。

 

 物騒な文言が並んでいるが、前に降谷さんに見せてもらった東都タワー爆破未遂の時の暗号文の形式によく似ている。

 

「これは?」

「警視庁に僕宛てで来たFAXを印刷したものだ」

 

 どうも降谷さんをご指名のようだ。

 というかFAXってお前、生きとったんかワレェ!

 

 コナン君が目を細めて声を上げた。

 

「例の爆破事件の犯人が降谷さんを直接指名する意図がわからない。あの時、降谷さんは名前を出して動いてなんていなかったよね」

「それは僕も気になっていたところだ。あの時も最終的に動いたのは捜査一課としたはずだが」

 

 自走するバッグと化した松田さんが、デスクをよじ登りトコトコと降谷さんのいる机の上に腰を下ろした。

 

『さあな。だがやることは一つだ。あのクソ野郎を監獄へぶち込む。違うかゼロ?』

「お前は単純すぎる。風見をいつも引き摺り回して、自重しろ」

『やだね、死んでまでどうして良い子ちゃんに振る舞わなきゃなんねーんだよ』

 

 ペンダントは勢い付いているようだ。

 風見さんは胃が痛そうな顔をして懐を探っている。

 取り出した胃薬はチュアブル錠タイプらしく、そのまま水無しで口に含んだようだ。

 おお、いつでもどこでも胃薬を持ち歩く風見さんに幸あれ。

 

 降谷さんは大きくため息をついて口を開いた。

 

「ひとまず黄衣君は待機だ。下手に動かれるとまた可笑しな事になりかねないし」

「俺がやらかす前提みたいな発言は如何なものか」

「何か釈明があるなら聞いてやっても良い」

「無いです。すみませんでした」

 

 ギロっと怨念の籠った視線が突き刺さって、俺は素早く降参のポーズをとった。

 幾度もご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした…。

 

 そのあたりで、突然闖入者の気配があった。

 ノックもそこそこに勢いよく入室して来たのは複数人。

 

「失礼します!少し聞きたいことが…ッ!」

 

 声を上げたのは佐藤刑事、後ろから高木刑事と目暮警部も伴っている。

 目暮警部までともなると、一体何の事件があったのか。

 

 佐藤刑事が鋭い視線で降谷さんへと視線を向けた。

 そしてそれを押し留めるように、目暮警部が咳払いして前へ出る。

 

「お久しぶりですな。安室透さん」

「………ええ、ご無沙汰しています目暮警部。最近は立て込んでおりましてお会いできませんでしたが」

 

 にこっと降谷さんが安室透の顔をしてデスクから立ち上がった。

 机上のバッグはただのバッグのふりをしている。

 

 午後の逆光が事務所の室内を照らし出し、降谷さんの表情を暗く隠している。

 

「それで、何のご用でしたか?」

「…今日の午前にあった警視庁前の爆死事件についてはご存知ですかな?」

「噂程度は。それが何か」

 

 目暮警部の面持ちに緊張が宿る。

 高木刑事も佐藤刑事も、やはり同様に体を固くして息を殺しているようだ。

 

「その被害者の男性の懐から、3年前殉職した捜査一課の松田刑事の名刺が出て来ました」

「ほう。それは奇妙なことですね。何か関係があると言うことでしょうか?」

「我々もそう考え、当時の状況を洗ううち、フルヤレイの名前に辿り着きました」

「…………」

 

 目暮警部が一歩、前へと踏み出す。

 

「松田刑事が同期と墓参りで集まったと言うのであれば、その人物もおそらく警察官。警察官でその名で真っ先に思いつくのはただ一人」

「………へぇ?」

「先日の組織変更で異例の昇進を遂げた、警視庁公安部公安総務課長───降谷零警視長、その人だ」

 

 風見さんが息を押し殺そうとして失敗し、咳き込んでいる。

 

 降谷さんは人外じみたその面貌を美しく笑みの形に彩った。

 多分要約すれば「風見、お前後で来い」となるだろう。

 風見さんの顔面が蒼白になった。

 

 バッグが風もないのにカタカタ小さく揺れている。

 おそらく笑いを堪えているのだと思われる。

 

「それはそれは。一大事ですね。それで、その件と僕に何か関係が?」

「…我々も警視長に会おうとしたのですが、多忙故に会えずに困っておったのです。それでその時ちょうど彼の顔写真を持っている課員に会えまして」

 

 降谷さんも、警察庁で顔出しは最低限に控えている。

 一応形だけはまだ潜入捜査中であることだし。

 メディアにも映らないようにしていたようで、名簿データも顔写真は残さないようにしていると聞いている。

 

 とすると、普通にイケメンの極みだから隠し撮りされたか。

 それとも捜査中に偶然映り込んだのを消去せず持っていたのかもしれない。

 

 降谷さんはガラリと気配を変えた。

 その相貌に凍えるような無機質な厳しさを伴って、彼らを睥睨する。

 

「───なるほど。こちらの教育不届のようだ。該当人は絞るとして、引き締めを図らねばならないな」

 

 逆光が強い。

 夕方に移り変わるやや赤みのある光が視界をくらませ、室内には沈黙が満ちている。

 

 するりと細められたスカイブルーの瞳はガラス玉のように色がなく。

 彼らを動揺させたようだった。

 

 

「改めて。降谷零警視長だ。君たちの無礼な訪問を許そう。………僕に、何の問いがあってここに来た?」

 





・松田バッグのコメント
「ラスボス面は吹く。流石ゼロの旦那(笑)」
腕を中に収納してただのバッグのふりをしている。
中身は腕の6本生えたペンダントの他、風見さんの私物がごちゃっと入っている。
一般人が中を見た場合、蠢く多数の青白い腕を目撃してSAN値チェックがある。
実はクラゲ型旧神由来のため、本気を出せば腕の本数を増やせる。
しかしこれ以上あっても邪魔なだけなので基本は6本に留めているようだ。
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