ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ハロウィンの花嫁〈松田陣平の結論〉

 

 裁定者が如く、降谷零は警察官諸君を睥睨している。

 

 冷たく、温度のない瞳だ。

 それに気圧されぬよう、目暮警部は眦を強く気合を入れ直したようだった。

 

「まず、松田刑事の名刺を持った人間の心当たりを伺いたい」

「その件に関しては既に公安預かりとなった。故に君たちが知る必要はない。先ほど通達したはずだが」

 

 ヒヤリとしたナイフのような詰問の気配を、目暮警部はさらりと躱した。

 

「そうでしたか。今まで捜査に集中しておりましたので。警察無線を聞き逃したようです」

「………」

「それと。本件は純粋な殺人事件に類すると思われますが、公安が担当する理由をお聞かせ願えますか?」

「爆発物を扱ったテロの危険性がある。改めて、君達に捜査権は無いことを理解しろ。急なこともあり、今回の連絡の行き違いは大目に見よう」

「ありがとうございます、警視長」

 

 なんか見てるだけで俺も胃が痛くなってきた。

 

 空気が張り詰めすぎて、皆動けないで突っ立ったままだ。

 降谷さんもニャルニャルとは対極の位置にある態度だが、どちらにしろ俺には荷が重い。

 触手の先っぽもだいぶ萎びてきた気がする。

 

 これ以上ここにいたら俺は旧支配者の干物になってしまうだろう。

 コナン君は脳内でホームズを読み返しているのか、ぼんやり遠くを見ている。

 

 目暮警部は生唾を飲んで、もう一度慎重に口を開いた。

 

「二つ目は、警視長がなぜこのような場所で偽名を名乗り探偵を行なっているのかについてです」

「それこそ、君たちが知る必要のないことだ」

「っ先日の小翠リャマの件も!今回も!貴方達は突然出て来て一体何を考えて───」

「止めんか佐藤君ッ!!!」

 

 思わず叫んだ佐藤刑事を目暮警部が泡を食って止めたが、降谷さんの視線は既に佐藤刑事に移っていた。

 絶対零度の相貌が佐藤刑事を捉える。

 佐藤刑事は息を呑んで一歩下がったようだ。

 

「……研修実施状況はどうなっているんだ?君の管理者の資質について疑わねばならなくなるんだが」

「申し訳ありません!佐藤は亡くなった同僚について感情的になっており…如何様な処罰も受け入れます!」

「ここは公式な場ではない。だが、ここにおいてのみだ。それまでに教育は見直しておけ」

「はっ!」

 

 すげーな、胸糞悪い偉い人ムーヴが上手すぎる。

 風見さんがこそこそと二錠目のチュアブル胃薬を口に含んだ。

 気持ちはわかるが多用するのは良くないぞ。

 

 降谷さんはぴくりとも表情を動かさないまま、彼らを追い返すべく言葉を落とそうとして。

 

『ゼロの旦那、そいつはちょっとばかり言葉足らず過ぎるんじゃねぇか?』

「ッ…!!!」

 

 松田さんが動かぬバッグの中で、静かに降谷さんを注意した。

 思わず目を見開いて、佐藤刑事がヒュッと喉を鳴らす。

 

「な………え、今の声は、松田、君……?」

『よう、久しぶりだな。俺がおっ死んだ後も元気にしてるようで何よりだぜ』

「え、え…?どこから、何処にいるの!?」

 

 動揺した佐藤刑事が慌てて部屋の中を確認するが、それらしき人影は無い。

 目暮警部も高木刑事も左右へ視線を向けて、困惑しているようだった。

 

 能面のようだったかんばせを激怒に歪ませて、降谷さんが拳を握りしめた。

 

「なぜ口を出した。接触しないようにと言ったはずだが」

『テメェが口下手過ぎるからだろうがよ。無駄に威圧してんじゃねぇ。コミュ障も大概にしとけ』

「………」

 

 視線で場所がバレるからか、降谷さんは睨むこともできずギリと拳に力を込めて怒りを散らそうとしている。

 

 これは後でガチバトルだろう。

 俺の事務所で怪獣決戦だけは始めないでほしいところである。

 ナンマイダブナンマイダブ。

 

 佐藤刑事が震える手で口元を覆って、信じられないと言ったように言葉を漏らす。

 

「松田君、生きて…いたの…?」

『いいや。怪異ってのは便利な言葉だな。ひょんなことから現世にしがみつく羽目になったが、ゴタゴタ理屈をこねなくてもいい』

 

 ただ「怪異のせいで」だけで説明が済む。

 

 そのようにケタケタと笑って、松田さんは優しく笑顔を作ったように感じた。

 彼のペンダントは表情を表出する機能はない。

 それでも、そこには確かな親愛が宿っているように思われたのだ。

 

「松田、君……」

『悪いな。あの時は亡霊のメールなんざ薄気味悪いモンの処理を任せちまって。病院の方の爆弾を伝えてくれてありがとよ』

「っ、そんな、の!」

 

 震えて、震えて。

 嗚咽を必死で堪えて、佐藤刑事は溢れる涙を拭ってなんとか返事をしようとしている。

 松田さんは少しだけ困惑して、少し舌をもつれさせながら口を開いた。

 

『おいおい、三年前にたった7日ぽっち一緒にいた相手だぜ?泣くほどのことか?』

「それでも、よ…!どれだけ貴方のことが忘れられなかったか!」

『はっ、なんにせよこの件は俺らの事件だ。悪いが、アンタの出る幕は無ぇ』

「それは、どういう……」

 

 佐藤刑事の疑問に、松田さんは挑戦的に笑って返事をしたようだった

 

『どうもこの件に俺と萩を殺したクソ野郎が関わってるみたいなんでな。自分の仇を他人に任せる趣味はねェし。ゼロもやる気だ』

「!!!」

『んなわけで、この件は俺らに任せな。女に尻拭いさせるなんざ格好悪い真似、させないでくれよな』

「………この、格好つけ…ッ!」

『うっせ』

 

 まだ次々と溢れる涙に、やはり松田さんはタジタジしているようだ。

 

 いい感じの雰囲気に後ろで高木刑事がしょんぼりしている。

 可哀想に、幽霊に彼女を取られかけて落ち込んでいるのだ。

 心配せずとも既に高木刑事と佐藤刑事との仲は確かなものなのに。

 というかこのカップルも結婚式まだなんか。

 

 降谷さんが大きくため息をついて、バッグを上から手でくしゃりと潰した。

 潰された松田さんが「ぐえ!?」と声を上げる。

 

「本当にお前は面倒臭いことしかしないな。また瓶に詰め直してもいいんだぞ」

『はっ、やってみろよパツキン大先生がよ。ヒロの旦那にあることないこと吹き込んでやる』

「それは止めてくれ。あいつの悪口のレパートリーがこれ以上増えたら立ち直れない」

『伝説の地雷男、コミュ障公安概念の擬人化、新ジャンルモラハラ幼馴染、あとなんだっけ』

「はっ倒すぞ。というか新ジャンルモラハラ幼馴染って何だ。ヒロそんなこと思ってたのか?」

 

 酷く傷ついたらしい降谷さんが露骨に萎びている。

 

 基本的に自分にも友人にも要求レベルが高過ぎてな。

 ただの他人には世間体の仮面の裏に「所詮求めるレベルには達さぬ有象無象か…」みたいな見下しが滲み。

 要求を満たすレベルの人間には急に親しげに近づいて来る怖い人である。

 

 そりゃ女子の間で伝説の地雷男と言われるわけだ。

 

『ま、ともかくそんなわけだ。世に蔓延る悲劇はたくさんある。この件は俺とゼロで対処するから、アンタは他の方を頼むぜ』

「………わかったわ。それにしても、降谷警視長と随分親しいのね」

『同期だしな。随分偉くなっちまったが、志を同じくしてることに間違いはねぇよ。当時からとんでもねぇ口下手だとは思ってたけど』

「松田。松田。いい加減にしておけよ松田」

『最初から適当なところまで事情を説明すればいいってのに、ホントにこのパツキン大先生はな。草葉の陰で萩も大爆笑してるだろうよ』

「腕全部切り落とされたいのか???」

 

 キレ散らかす降谷さんは実に不恰好だったが。

 でも、そこに人間味を見出したのだろう。

 佐藤刑事は微笑んで、「失礼いたしました。降谷警視長。出過ぎた真似をいたしました」と深々と頭を下げた。

 

 降谷さんは若干文句がありそうな様子をみせながらも、もごもごと口の中で言葉を噛み殺したようだった。

 

 佐藤刑事が松田さんの今について詳しく聞くことはなかった。

 

 それを聞けば幻想が壊れてしまうとでも思っているように。

 少しだけ声の在り処を探すそぶりを見せながら。

 それでも、自分から聞くことだけは決してすることはなかった。

 

 

 そんなふうにして。

 刑事達は一応の結論を携えて、探偵事務所を後にしたのだった。

 





・高木刑事
へにゃついている。
やっぱり僕は松田刑事に勝てないんだ…(しょぼん)
もし直接松田さんがこれを知れば「え、でも俺は千速一筋だし(困惑)」ってなる。
謎の電波を受信した千速さんは「だが断る」ってなる。

・コミュ障パツキン大先生
ニャル成分がいい感じに増えれば「羽虫に変な期待をするのやめましょう」となってコミュ力が上がる。
今は飴の影響で人間成分強めなので度し難い地雷男。
バランスが難しい男である。
この後バッグで蹴鞠しようと思っている。
ポンと蹴りゃ、ギャン!と鳴く…。

・神話的バッグ
ドゥルルルルってキモい感じに逃げて無事。
風見さんは心労のあまり吐きそうな顔になってる。
多分そのうち黄衣印の胃薬を差し入れられる。
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