ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ハロウィンの花嫁〈宇宙戦艦〉

 

 渋谷の街は混迷を極めていた。

 

 警察は表向きこのサイネージのジャックを「愉快犯によるもの」として処理して、過激な行動を取らないようにと通達を出した。

 渋谷には警官を配備して、大規模な不審物の捜索も開始。

 

 しかし人心とは操作できないもので。

 

 今回の件を面白おかしく配信しようとカメラを手に暴れる配信者やら、避難した住民の家を狙った空き巣やらが多発する事態になった。

 その上酔っ払ったまま道ゆく人をリンチしようとするやべーやつまで登場。

 「俺は街を救う英雄だ!」だとか訳のわからないことを叫びながら警察に連行されていった。

 

 まったく碌でもない。世はまさに大海賊時代というわけか。

 核の炎に包まれたわけでもなし、度し難いのは人の心というやつだ。

 

 

 ともあれ、事件には多角的にアプローチが取られた。

 

 一つ目が爆弾の発見、解体。

 二つ目が呪詛解除の可能性模索。

 三つ目がプラーミャの捜索。

 

 一つ目は、実はすでに発見されている。

 街中に隠された呪詛連動型の爆弾が、総数不明であちこちに散らばっていたのだ。

 

 しかし、外側からかなり強固に魔術を弾く加工がされていて、「ハスターの瞳」では見えないし俺が回収することも不可能。

 幸い肉眼で見えるし普通に回収、解体は可能だった。

 そのため各地から招集された警察官が大規模動員されて必死こいて探している途中である。

 

 でも数が半端ではなく、解体も困難。

 依然として一割も回収できていないだろうことが予想されている。

 

 

 二つ目の呪詛解除の可能性模索は念のため。

 

 俺の方で爆破呪詛の対処を頑張っている最中である。

 呪詛は肉体に付属しているため、爆発直前に呪詛対象者の魂を収集、保護。

 爆破後に肉体を再生するという案も一応あるが。

 やはり最終手段とならざるを得まい。

 

 その場合人命は最低限守られるが、渋谷の街も木っ端微塵に破壊されるし。

 魂を引っ剥がされて多くの人のSAN値が減ることは間違いない。

 

 

 やはりこうなると、三つ目が本題と言えるだろう。

 

 一応すでに長野県から呼んだ探索者組を投入済み。

 銀髪マフィアを加えて探索に向かってもらっている。

 

 やはり鍵は警視庁前で死んだ男のことだろう。

 彼の魂はすでに四散しており話を聞くことはできなかったが。

 かわりに男の歩みを俺がハスターの瞳でサルベージしておいた。

 

 情報は断片的だが、これで十分だったらしい。

 今は警視庁と連携して捜査にあたっている。

 

 

 こんな時にも止まぬ依頼の山に埋もれながら、探偵事務所で書類を捌く今現在。

 

 俺は隣で黙々と依頼をこなすコナン君に問いかけた。

 

「コナンくんは行かなくてよかったのか?」

「……興味がないって言ったら嘘になるけど。流石にあの人たちに僕が混ざったら連携を乱すよ」

「なるほど。阿吽の呼吸だもんな」

 

 鉄火場の一瞬でチラッと視線を向けるだけで全部通じ合ってる感じは間違いなくある。

 確かに、あれに割り込むのは少々ハードルが高いと言わざるを得ない。

 

 しかしコナン君はどこか悲しそうで、孤独そうで、やるせない憤りを抱えていて。

 それがきっと俺のせいなのを理解して、どうにも言葉が重たくなる。

 

 俺は間違いなく。

 彼の正しさと真っすぐさを、はるか昔亡くなったはずの一人の人間に重ねている。

 

 ハイパーボリアを建国した初代王。

 幼き彼が傷付いた俺を地上に引き留めたその姿を、おれは無意識のうちに彼に求めているのだ。

 

 浅ましいことだ。

 囲って守れば傷付くのは彼自身だというのに。

 

 長らく黙っていたが、ここらがそろそろ潮時だろう。

 俺は彼のはめたブレスレットにそっと手をやって、彼に囁きかけた。

 

「このブレスレット、実はいろいろ機能があるんだ」

「……え、その前振りなんか怖いんだけど」

「怖くない怖くない。『仮想魔術制御プログラム・エイボンの書』。俺の力作だよ」

 

 怯えるコナン君に、俺は笑いかけた。

 

 このブレスレット製作のうち半分の時間をかけて作った一大プログラムだ。

 全生活オーガナイザーにある魔術式補助システムの発展系とでも呼ぶべきものか。

 

 コナン君には安全圏にいて欲しかったからいままで黙っていたけれど。

 彼が悲しむのはもっとずっと本意ではないので、俺はその存在を明かすことにした。

 

「まず使うぞ!みたいな気持ちでブレスレットに念を送って」

「指示がぼんやり」

「いいんだよそのぐらいで。どう、繋がってる感じある?」

「なんか………え、何コレ。脳の先に何かある……」

 

 コナン君が困惑しておろおろと視線を彷徨わせている。

 

 魔術制御とは魂の制御、思念の制御だからな。

 思考が急に拡張されて戸惑っているのだろう。

 これには降谷さんの魂の調整で少々蓄えた思考制御技術も応用してあるため、己の体のようにスムーズかつ直感的に使い方かわかるはずだ。

 

「思考を回すスペースが広がっただろ?それと、横の方に知識棚もあると思う」

「……ん、って、これ物騒!!魔術、たぶんここに書いてある魔術全部僕の意思で発動できるって話だよね!?」

「だいたい正解。そこにあるのは基礎術式だけだから、『ハスターの瞳』を通じて俺にアクセスすればこの世にある大抵の魔術は使えるってわけ」

「やっぱ物騒なやつじゃん!!!」

 

 コナン君にポコポコと怒られてしまった。

 

 ようは、素人を一人前の魔術師に仕立て上げるシステムだ。

 宇宙戦艦に積まれた艦砲の制御プログラムとも言い換えられる。

 もちろん俺の得意技「魂の撃滅」は主砲として実装済み。

 

 流石に旧支配者は倒せないが、集中砲火を浴びせれば怯むので逃げる隙くらいはできるだろう。

 

「慣れるように今のうちにいろいろいじってみて。UIとか使いづらい点とかあったら改良するからどしどしお送りください」

「いやコレ流石に、流石に……でも待てよ、コレ使えば黄衣さんいない時に野良事件に当たっても怯えなくて済む…?」

「うん。魔術・怪異判定ぐらい簡単にできるよ。ハスターの瞳の最上位権限付きだし」

「よし!!!」

 

 急にコナン君が元気になった。現金なコナン君である。

 

「習うより慣れろだし、ちょっと行ってくる!」

「おう、行ってらっしゃいコナン君!怖いニャルラトホテプに会ったら『魂の撃滅』だからね!」

「不審者じゃないんだから…。うん、まだ使い慣れてなくて不格好だし、あんまりまじまじと見ないでね!」

「了解」

 

 コナン君は勢いよく、最近めっきり使わなくなったスケボーに乗って走り出した。

 

 それだけ今まで我慢して、弁えて、俺のために静かにしていたということだ。

 「………はぁ」と大きなため息をついて、ペシャリとデスクの上に突っ伏す。

 

 不安だ。

 囲って守るのが正解じゃないと知っているのに、たまらなく不安で胸が潰れそう。

 こんなことだからハイパーボリアで失敗したのだ。

 探索者達が見せたその力のように、予想を超えたところに人の魂は輝くことがある。

 

 いい加減。

 俺もきっちり立場を決めねばならないと、そう憂鬱に思うなどしていた。

 





・仮想魔術制御プログラム、エイボンの書
ずっとあったけどコナン君に教えられていなかったもの。
「戦艦」に例えられていた原因。
扱いは激ムズだが、きちんと動かせば正しく宇宙戦艦相当の働きが可能になる。
つまり人類の一部を乗せて、攻め寄せる旧支配者を砲撃で突破して逃げ延び新天地へ向かうための、神の方舟である。
戦闘用魔術に目が行きがちだが、探査・生存系術式も相当豊富。
なおこれが旧支配者ハスターのなかの一人前の魔術師基準だったりする。

・コナン君
最近しょげがちだった。
「居なくならないで!ここにいて!」と言外に怯える黄衣ハスタの様子を見て、最近はずっと大人しくしていた。
それが突然宇宙戦艦を渡してきて「あの人極端から極端にしか移れねーのか」と若干訝しがっている。

・その頃のニャル
こんがり焼き上がって帰ってきた。
メソメソ恨み言を言いながら、化身を寝床にして乗っ取った。
「───まったく。ハスターは固いことばかり。面白いゲームじゃないですか。ねえ?そこの6本腕の妙な羽虫。…いやこれ羽虫?うーん?」
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