ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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純黒の気配

 

 ルパンの頭の上に乗っかって、星の精は「クスクス!!!」と威勢よく鳴いている。

 

 まだふらふらとしか浮くことができないが、かなり元気になったようだ。

 人の頭の上に乗っかるのが好きなようで、こうして頭上でクスクス笑うことが多い。

 

 納得いかない顔のルパンは非常に訝しげだ。

 

 「流石にこのペットはちと悪趣味過ぎじゃね?」などとコメントを漏らしている。

 コナン君が隣で首もげそうなほど同意の姿勢を見せた。

 

「ニャルのところで飼ってたのを俺が保護したんだよ。というか、マモーさんになんかあるのか?さっきからすごい見てるけど」

「いんや。気のせいだ。俺は再封印業務が終わったって声かけに来ただけだしな」

 

 ルパンはソファでのびのびくつろいで、星の精のゼリー状の体をモチモチと伸ばしたり丸めたりし始めた。

 星の精が嬉しそうに「ゲタゲタゲタッ!」と鳴き声をあげる。

 すっかり人懐っこい星の精になってしまったようだ。

 

 特大のため息とともにルパンが口を開く。

 

「ったく、大変だったんだぜ?途中であの邪神がちょっかいかけて来てよお!」

「え、ニャルに何かされたのか!?」

「ああ。浅黒い肌の金髪の兄ちゃんな。封印先で変なトラップを山ほど仕掛けて来てさぁ!まったくこちとら本気で死にかけたっつの!」

 

 ルパンはプリプリと怒って星の精を激しくモチモチした。

 星の精はゲタゲタ笑っている。

 

 どうやら降谷さんの姿で好き勝手動いたようだ。

 いや、降谷さんを乗っ取ったのか、それとも洗脳したのかは定かではないが。

 

 ニャルも降谷さんのこと気に入っているらしくて、最近は特によく乗っ取って歩き回っているからな。

 特に降谷さんの職場に行くのがお気に入りらしい。

 

 どんな羽虫でもニャルの姿を見るだけで尊敬と畏怖をもって頭を下げるのがいいとかで。

 「なんか妙に周囲の羽虫が頭良くなるんですよ!」と新たな発見を教えてくれた。

 別に人間は頭が悪いからニャルのことが分からないわけじゃないんだけどな……。

 

 ともかく、苦労はして来たようで、俺は労りを込めてポッケの中をゴソゴソするなどした。

 

「お疲れ様。なんか報酬…」

「いらね。アンタの報酬は人の手に余るし、なにより刺激がなくなる。人生には刺激がなくっちゃな」

 

 ルパンはあっさりと手をぴらぴらさせた。

 「つかポッケ漁って何出すつもりだよ。飴ちゃん?」などとくしゃくしゃな顔をされる。

 まあたしかにあの仕草は生温かくなった飴ちゃん出すポーズだったけど。

 

 しかし、ルパンの人生哲学も強かなものだ。

 

 高い能力と強い精神に裏打ちされた、常に己を試そうとするプライドにも似た向上心。

 俺には到底提供できないジャンルの生き方であることは間違いない。

 一歩間違えば苦痛と死あるのみだし、彼自身多くの苦難を経験して来たはずだ。

 

 俺は人が酷い目にあってるの苦手だから、流石にこんな人を満足させられる環境は整えられない。

 

 ちなみに、そのため俺はホラー映画はかなり苦手な部類である。

 TV放送されてるのを見ることもあるが、コナン君と一緒に怯えて震えていたりする。

 

 何がダメって、怖い目にも酷い目にも遭ってるのに俺の加護が登場人物に届かないのがな。

 トラウマすぎて発狂ものである。

 凄く怖いシーンでは無意識に加護を連打して、何の罪もない俳優さんが謎に光り輝くなどするのだ。

 

 ルパンは星の精をモチモチするのをやめて手を離した。

 星の精が不満げに「ゲタ!!」と怒って体をルパンにすり寄せた。

 まだ満足できていないらしい。

 

 仕方なくルパンが「なにーもー」と言ってまたモチモチし始める。

 

「それと、なんか場末の弱小組織にあの邪神の兄ちゃんがいただろ?」

「あー、そだね」

「アレって放っておいていいヤツ?後腐れなく組織ごと潰したほうがいいヤツ?」

「放っておいて大丈夫。降谷さんは組織壊滅を目指してるわけだし」

「あっそ」

 

 ふーん、とルパンは大して興味なさそうに相槌を打った。

 だが、潰したほうがいいと俺が言えば容赦なく、かつ格上相手だろうと躊躇いなく立ち向かうのだろう。

 

 この人もこう、D&Dで言うところの「混沌にして善」的立場な感じがする人である。

 己の人情に従って、己の信じた道を進む、というか。

 社会秩序におもねらず、しかし悪逆と悲劇とを忌み嫌う。

 

 俺の周囲って警官が多いからか、コナン君を含めて「秩序にして善」が多いからな。

 社会秩序を守り自己犠牲的なまでの清廉さを維持する人々に囲まれていると、ルパンの存在はちょっと珍しく思えるのだ。

 

 

 雑談を聞いていたマモーさんが、やや苛立たしげにルパンを睨め付けた。

 

「いつまで神の御前でのんびりしているのかね、ルパン三世。コソ泥風情が」

「あーらら。随分な言われようだこと。客人にそんな態度をして、神様に怒られても知らねーぜ?」

「……っ」

 

 実に不快そうにマモーさんは舌打ちを飲み込んだ。

 なんか根本的に相性が悪い気配がある。

 

 ルパンはひとしきり揉み込んだ星の精を離して、触手をもしゃもしゃしてやった。

 まだまだ満足するラインまで達していないのか、星の精が「ゲタ…ゲタ……」と不満げにブツブツ文句を言いながら離れていく。

 

「ま、とはいえ、どうもあそこも近々動くらしいぜ?気をつけときな」

「なんかやけに組織を気にするんだな。弱小って言ってたのに」

「そりゃへっぽこが核爆弾持ってたら逆に怖ぇじゃん?」

 

 それはたしかに。

 俺もニャルがその辺のトクリュウとかで働いてたらビビって問い詰める自信がある。

 ルパンも、単にニャルというか降谷さんを警戒して注視してるだけらしい。

 

 しかし、組織に動きか。

 一体何があるのやら、今から怖くなる俺であった。

 

 

 

 

 

 

「悪いなウォッカ。それで、状況は」

「キュラソーが選抜されたそうですぜ。決行は明後日」

「ほう?」

 

 ウォッカの運転するポルシェ356Aに乗り、ジンはタバコに火をつけた。

 

 現在、ジンは定期報告だけ行って組織の任務からは手を引いている。

 それでも問題ない任務形態だからこそ、ひっそりと組織を抜けられたとも言う。

 

 だが直属の上司はRUMであり、バレるのは時間の問題だ。

 その間にできるだけウォッカと情報を共有して、彼が抜けられるよう手配しておく必要があった。

 

 ウォッカは上機嫌そうに笑って、組織の動きを教えてくれた。

 

「なんでも、警視庁のデータを盗んでNOCどもを炙り出すようですぜ」

「そうか。ならそのままバーボンに情報を流すとするか。よくやった、ウォッカ」

「このぐらい兄貴のためならどうってことねぇってもんよ!」

 

 へへ、とウォッカは嬉しそうにしている。

 こうして長年の相棒と共にいると、己の自分勝手な選択が、やはり不安になってしまう。

 

 ジンはちらり、と運転席のウォッカを見た。

 

「しかし、本当に良かったのかウォッカ」

「何がですかい?」

「………俺についてくると言う選択が、だ」

 

 むっつりとジンはそう言って黙り込んだ。

 

 公安が求めているのは組織の深くに関わり、かつ怪異対策の知見を握るジンだけだ。

 ウォッカはジンが頼み込んだ上で、「本人の様子が公安に従順であるのなら」と注釈をつけられた立場に過ぎない。

 むしろジンの司法取引の一部と言ってもいい状況だった。

 

 そんなものに勝手に付き合わされて、この弟分は不満ではないかも思ったのだ。

 

「待遇は悪いぞ」

「ははは!俺は兄貴が入るって言うからこの組織にくっついて来たんですぜ?兄貴が抜けるってんなら、一緒に抜けるに決まってる!」

「だが、バレれば命はない」

 

 裏切りは死あるのみ。

 そのように生きて来た。多くのNOCを始末して来た。

 当然、それは己にも適用されるルールである。

 

 ウォッカは軽く笑って、心外そうな顔をしてみせた。

 

「俺は兄貴の荷物持ちしてるときが一番嬉しいんだ。だから…置いてかねぇでくださいよ」

「………」

 

 幼馴染、というには泥に塗れた関係だった。

 兄弟というには血のつながりがなく、友人というには不均衡だ。

 

 だがこれまで一度だってジンはこの男に裏切られたことはないし、これからもそうだろう。

 疑い深いジンがそのように確信できることこそが、何よりの絆の深さを示していた。

 

「危険度の高い仕事も多い。しばらくは慣れも必要になるだろう。俺が教える。覚悟をしておけ」

「了解、兄貴。あの探偵もどきみたいな怪物相手でしょう?怖ェけど、全力でやるからよ」

「ふん。深入りはするなよ。ヤバいと思ったらすぐ逃げろ」

「へへ、任せてくださいよ!兄貴が教えてくれるってんなら百人力だ!」

 

 

 車がジンの現在の自宅前に到着する。

 諸事情もあり一軒家だ。

 

 中からワンワンと派手な鳴き声が聞こえてくる。

 どうやら長く一人にされたゴールデンは酷くご立腹らしい。

 

「上がっていけ、ウォッカ。もう遅いし、飯を食っていけ」

「そ、そんな!俺は適当に済ませますんで」

「いいから食え」

 

 ウォッカを家に引き摺り込んで、作っておいた夕食を電子レンジにかける。

 

 すかさず駆け寄って来たゴールデンがジンの服の裾を毛まるけにして喜んだ。

 わしわしと撫でてやると、一緒に来た同じような黒服のウォッカが気になり出したようだ。

 フンスフンスと匂いを嗅いで近づいて行く。

 

 「おお、賢そうな犬コロじゃねぇか!流石兄貴の犬なだけある!」と言って肩周りを撫でていた。

 ゴールデンは大層満足して尻尾をブンブンと振っている。

 

「…………」

 

 ふと、事務所で帰り際に会った少女について思いを馳せる。

 

 姿は間違いなくシェリーだった。

 子供だったが、間違いなくシェリーそのものと確信できた。

 怪異絡みか、それ以外かは分からない。

 

 因果なものだ、と思った。

 

 罪深いあの女が生き残ったのは、本人にとっても不幸だったろうに。

 弱い女だった。

 一人で立てない、周囲に威嚇して繊細さを隠そうとする、惨めな女だった。

 

 己の罪の重さに向き合えるとは到底思えないが。

 あるいは。

 あの女も、己の光と出会うことができたのだろうか。

 

 ジンはタバコに火をつけた。

 静かに煙を吸い込んで、これまでの綺羅星のような歩みに思いを馳せる。

 

 そうして足元でゴールデンがブエックション!!とくしゃみをしたので、慌てて火を消したのだった。

 





・ルパンの黒の組織に対する所感
木端弱小組織が核兵器(ニャル)持ってる!
しかもあの核兵器は自走式だ!
あまりに怖い。
組織本体に関しては別に思うところはない。
あーよくあるアレね、程度。

・ホラー映画
見せるとハスターが荒ぶる。
主演の女優さんがある日突然ディナー中ペカペカ光るとかいう謎事象に見舞われて、AARO(全ドメイン以上解決事務局)に聞き取り調査を受けた珍事がある。
あまりに迷惑。

・キュラソー
準備中。原作準拠。
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