来年も拙作をどうぞよろしくお願いいたします!
冬休みはゲーム三昧なり。
ニャルが新作ゲームを発売して、子供達の間で大人気になっているからだ。
サンドボックス探索&クラフト、クトゥルフ神話風味物理演算付き、みたいなよくある味付けのゲームだ。
今回もドット絵風。
マインクラフト風……というかテラリア風か?に土を掘り道なき道を開拓しつつ、好き勝手拠点を作っていけるのが下地となっている。
特徴的なのは一ピクセルごとに物理演算が利いているところで、掘る穴も自由形状なところだろう。
モンスターに遠距離攻撃するのも、罠を仕掛けるのも物理演算が働く。
建物も気をつけて作らないと崩れるし、戦闘中火の粉が飛んできて、拠点に着火しボーボー燃える。
そういう諸行無常系高難易度を誇る。
無論仕掛けが増えればそれだけCPUにも負荷がかかる。
携帯端末では荷が重いはずのそれらを、プログラムの裏で魔術を動かして解決している。
そのため、どちゃくそ重いゲームなのに古い機種でもサクサク軽快に作動だ。
スマホだとアクション難易度も高いが、魔術でプレイヤーの思念を読み取り快適なアクション操作性も提供している。
少々ずるくないか、と思えど。
まあ自主作成のゲームだし俺がケチつけられる範囲でもない。
スマホ用とPCゲーム用にストアで500円で販売されると同時に、ランキング1位を獲得。
ゲーム系記事でも傑作として頻繁に取り上げられていた。
凄まじいボリュームだし、作り込みも素晴らしいしな
この手のゲームにありがちな浅いクローンキメラにとどまらず、随所にニャルのこだわりが光り。
単独ビッグタイトル五つ分みたいな仕上がりで器用万能にまとまっている。
一部ではキメラティックオーバードラゴンと呼ばれているらしい。
どういう意味かはわからんが強そうだ。
ニャル、ゲーム中毒なだけあってゲーム作らせるとめちゃくちゃ作り込むからな。
今回も二週間ぐらい黄昏の館にこもって作ってたし。
寝食忘れるどころか時間を何重にも折りたたんでいたから、実際は開発期間はもっとずっと長いと思われる。
そんなわけで、俺達も購入。
ぴこぴことコナン君と協力プレイしている今現在である。
DLしてわかるのだが、明らかに本体スペックに比して重すぎるのだ。
それを魔術で演算領域を賄って動いていて、めっちゃずるい感じが湧き上がる。
コナン君は生え抜きのゲーム弱者なので、先程から何回も死んでいる。
今回も……ああ。物資を運んでる途中で敵に襲われ、そのまま抵抗もできず昇天した。
「あっ……黄衣さん、防具取り返すの手伝って」
「いいよー。というかこれ普通少年探偵団とやるやつじゃね?」
「僕下手くそだから練習しないと。大事な資源持ったまま海の底に沈んじゃって光彦達に叱られるんだ」
「いやこのゲーム思考読み取り機能付きだからよっぽど下手でもない限り意外とサクサク進むんだけど」
コナン君は沈黙した。
可哀想に、ニャルの想定を超える下手の民だったらしい。
俺の同情を察知して、コナン君がゲジゲジと足を蹴ってくる。
コナン君の頭の上では星の精がまったりとしていて、カツラみたいにもさもさ動いている。
すっかりコナン君のことも気に入ったようでなによりだ。
なお、ニャルは降谷さんの親族として自らの口座を持っているのでご心配なく。
あれから降谷さんが方々からチクチク言葉を受けて萎びていたからな。
「自分の口座ぐらい満足に管理できんのか?あ?」みたいに詰められたらしく。
めっちゃ関係各所に謝っていたらしい。
そのようにゆったり休日朝を過ごしていると。
私服姿の降谷さんと諸伏さんがやってきた。
そういえば今日は探偵の仕事やってもらえる日だったか。
「二人とも久しぶり。一週間ぶりくらいか?」
「ようやくキュラソーの件と、あとハスターリクの後始末が終わったんだ。二人は何をしてるんだ?」
『お、ゲームだ』
「ニャルが作ったゲーム。一昨日発売でストア一位独占中」
「また本体か!」
降谷さんが至極嫌そうな顔をした。
「でもゲーム制作なんて平和的な趣味に没頭してくれて嬉しい限りじゃないか」と俺に言われて考えを改めたらしい。
キリッと真面目な顔で頷き出す。
「ほー、いい出来じゃないか。こういう趣味で留めておいてくれれば僕も助かるんだが」
『でもゼロは犯罪者でデスゲームしようとするじゃん』
「僕は不要な廃材を有効活用しようとしたまでだ」
諸伏さんが「こいつ見てくれよ」とでも言いたげに降谷さんを指差した。
俺は深く頷いて同意する。
「ヒネたニャルですね。ちょっと予後が悪かったかも」
『余命宣告する医者みたいな顔するじゃん』
「え、でもまだやらかしてないよな俺?」
降谷さんは素の一人称をまろび出させつつ、愕然と俺を見つめている。
全然心当たりがないらしい。
俺は哀れなニャル化身を憐れんで、デフォルメした鶏の形のストラップを渡してやった。
「これは降谷さんがやらかすと鳴くストラップです。相棒にどうぞ」
降谷さんが恐る恐る両手で受け取る。
瞬間、カッと鶏が目を見開いて鳴き始めた。
【コケコッコッッッ!!!昨日深夜のお遊びはやらかしッコ!!!】
「!?!?!?!?」
『うお、喋るのかこいつ』
ゲームに集中していたコナン君が「ちょっと!ゲームの音聞こえない敵の弾の発射音が聞こえなくて死ぬ……あっ」などと悲しい声を出した。
どうやら死んだらしい。
「もう!もう!!!」と憤っている。
後で装備を取りに行ってやろう。
諸伏さんがジト目で「昨日深夜?」と降谷さんを睨みつける。
降谷さんは乙女のように恥じらった。
「いや……単に外食しようと街をぶらついてたら、麻薬取引現場を目撃してな」
『ちょいと遊んだ?』
「いや。いい遊戯が思いつかなかったから遊んでない。でもおもちゃの路上販売とは気が利くな、と思って摘んで保管してある」
『ぺっしなさいぺっ!!!』
諸伏さんに肩を揺さぶられて「な、なんでだよ!?」と降谷さんは喚いた。
別に麻薬密輸業者は路上売りしてるオモチャじゃないんだよなぁ。
ふと確認すると降谷さんの懐に瓶があって、縮小された人間が二名、瓶詰めにされていた。
普通に縮められたわけじゃなくて、形而上の小人みたいな形に変形させられているらしい。
だからご飯も呼吸もいらない、意識のある凍結に近しい状態だ。
絶望の表情で小人達は瓶の壁を叩いている。
なお、これは無意識の原始魔術と呪詛の産物だ。
旧支配者などなら当然できる本能の類だ。
妖精的所業、とも言い換えられる。
まあ、なんにせよこれは流石に可哀想だ。
俺は「ちゃんとマトリ(麻薬取締官)に任せましょうね」と言って被害者達を適当な交番の近くに転送しておいた。
降谷さんが「ああ……」とがっかりした声を出す。
遊ぶために大事に取ってあったのに、急に取り上げられてがっかりしたらしい。
でもいくら罪の重い犯罪者とはいえ、ニャルに弄ばれる末路を迎えるほどの罪とは言えないし。
降谷さんはやりどころのない不満を隠すように視線を彷徨わせた。
「そう言えばあの星の精がいないな、どこにいるんだ?」
「さっき降谷さんが来ると同時に俺の懐の神域に飛び込んできた。凄いスピードだった」
星の精のDEX(素早さ)を明らかに超えてるスピードであった。
よほど生存本能を刺激されたのだろう。
可哀想に、降谷さんの姿がチラッと見えた瞬間にかっ飛んで来て、俺の懐にジャストインしたのだ。
今は俺の中でガタガタと震えている。
降谷さんはがっくりと肩を落とした。
そして諸伏さんを揺さぶりながら「責任とってくれよヒロ〜〜」とだる絡みし出した。
『揺らすな揺らすな。ゼロもゲーム作ったらいいじゃないか」
「僕がそんな時間取れるわけないだろ。でもそうだな、なんか本体の悦楽が流れてくるし…ちょっとだけやってみるか」
『お、完成待ってる』
「圧かけるのはやめてくれ。まずツールの使い方とプログラミング言語の習得からだぞ?先が長すぎる」
コナン君が「へー、完成したら探偵団の奴らともやるから見せてよ」と乗ってきて、降谷さんにさらなる重圧をかけた。
降谷さんはむすっとしている。
でも降谷さんはこういう圧を跳ね除けて人の上に立つのが好きだし、問題はなかろう。
多分プログラミングの基礎ぐらいは知ってるだろうし。
「というか、神社の方はどうだったんだ?君、式典出てきたんだろう?」
「そっちは無事に。いい感じのところだったし、御神体を俺とリンクさせて帰ってきたよ」
「それは大丈夫なのか?例えば御神体に危害を加えられたとかあったら」
降谷さんが眉間に皺を寄せるが、そこは別に問題ない。
人間で言うなら髪の毛結んでおいたぐらいの意味合いでしかないし。
もし粗末にされても俺が悲しいだけだ。
なお、普通の旧神の御神体を同じように粗末にした場合マジの呪詛が飛んでくるのでお勧めしない。
祠壊したんかお前は洒落になりません。
注意しましょう。
それより、である。
今朝早くにお参りに来た人が結構切実だったのだ。
「ねえ、ねえねえねえねえ降谷さん、俺叶えてあげたい参拝者の願いがあるんだけど」
「ダメだ。約束だろう」
「いやだって!小児癌の息子がいた!転移もあって死んでしまうかもって!!ねえ降谷さん!」
「ダメだって言ってるだろ!」
俺が縋り付くと、降谷さんは至極迷惑そうな顔をした。
俺願われたのに!祈られたのに!小指を振る程度の労力すらなく治せるのに!!!!
「オオオオオンッッッ暴れてやる!暴れてやるぞ!!」
「静まりたまえ!!!僕にしがみついたまま暴れるな旧支配者!」
「コノ恨ミ晴ラサデ略!!!」
「なぜ略した」
『いいじゃないか、別に願いを叶えるくらい。何か問題でもあるのか?』
諸伏さんが助け舟を出してくれたが、降谷さんはため息をつくばかりだ。
というよりこれは俺への助け舟じゃないな。
降谷さんに「丁寧に説明してやってくれ」と言ってるだけだ。
オォン……呪ってやるぞ……。
致命的なところでズボンのチャック閉め忘れる呪いをかけてやるぞ……。
「今のところ、僕は宗教対立を作るつもりはない。本当に願いの叶う神が居ては困る。それが大衆に認知されれば、人は容易くとんでもない願いを神にぶつける獣になる」
「……でも、でもでもぉ……あ゛ーーーーッ」
俺は薄情な降谷さんを捨て、泣き喚いてコナン君に抱きついた。
コナン君は鬱陶しそうに眉間に皺を寄せたが、俺を蔑ろにするつもりはないらしい。
優しい子には加護をあげようねぇ……。
ブレスレットの加護スロットに追加するように細やかな加護を装填していく。
それに合わせてコナン君がペカペカと光った。
コナン君はチベットスナギツネの顔をしている。
俺は多少満足して、コナン君を離して話を元に戻した。
いいや、後でこっそり病気の子供は治しとこ。
「あー、ともかく。御神体はなんでもいいけど、問題は本殿に保管してあるアーティファクトだな」
「何か公安が回収したアイテムで問題があったのか?」
「いや、そっちはいい。宮内庁の保管物の方がな」
俺はうーん、と少し思い悩んでそう口にした。
儀式などでギリ保ってるだけのとんでもねータイプのものとかがゴロゴロあるのだ。
よく今まで正しく保管できていた、と驚愕せざるを得ない。
危険だったので俺の本殿で保管させてもらったが、いつ北半球が吹っ飛んでもおかしくなかった。
ヤマンソに通じる灯籠とか。
グラーキの棘を磨いて作ったナイフとか。
「ま。ともあれ、俺の方で管理するから心配はしなくていい。なんであろうと俺の本殿にある限り、外に危険は及ばない」
「君がいて助かるよ。こういう外宇宙の脅威に関してだけは、人の手だけじゃどうにもならない」
『割とゼロも外宇宙の脅威側だけどな』
「うるさいぞそこ。早めに瓶に詰めるぞ」
『どっちにしろ瓶には詰めるんだ……』
諸伏さんがしょげている。
降谷さんが慌てて「え、瓶ロボット型にするけどダメか?戦闘機型の方が良かったか?」とオロオロしている。
そう言う問題じゃないんだよなぁ、と思いつつも、諸伏さんはキリッとして降谷さんを見た。
『ロボットは可動式がいい』
「無茶言うな」
『そのくらいゼロならできるだろ!正座もハイキックもできるやつな』
「どんどん難易度が上がっていく…」
わからんが、可動式のロボ瓶って何?
俺が静かにチベットスナハスターと化していると、隣でコナン君が「あっあっ、また死、死、あっ……」と悲痛な声を漏らした。
また死んだらしい。
そろそろ俺が救助に向かわねば恨まれてしまうだろう。
俺は再びスマホをつけて、コナン君のいる地下へとキャラを向かわせたのだった。
・チベットスナハスター
特徴的な目つきをした触手生物。
どこか遠く、白痴の王宮とかに想いを巡らせているようだ。
・ニワトリのキーホルダー
やらかすと鳴いてお知らせする親切なニワトリのキーホルダー。
中に一般的な価値観がインストールされており、一定以上倫理に反する行動をするとコケコケ鳴く。
なので、公安的違法捜査でもコケコケ鳴いたりする。
・降谷さんのゲーム作成進捗
ニャル由来の超高INTゴリ押しでどれほど学習効率が良くとも、そもそもの余暇が無いので遅々として進まない。
UnityとC#を教本複数冊片手にあっという間に習得。
今は素材のイラストを作成しようと画像編集ソフトなどを触っているところ。
そこで初めて自分が画伯であることを知る。呆然。
音楽とBGMは黄衣が「俺が作るよ」と言ってくれたのでそれをありがたく使うつもり。
「なんのゲーム作ろう。ヒロはどう思う?」
『警察の偉い人として部下のタスク管理するゲームとか』
「それは楽しいのか???」
・ニャルゲーム二作目
謎の惑星に落下した未来の地球人が、母星への帰還と母星への資源持ち帰りを目指してサバイバルするゲーム。
美麗かつ可愛い家具ドット絵が沢山あって家を作りこむのも相当楽しめる。
ゲームを始めると、意外と親切なチュートリアルに従って粗末な家を建てて、まずモンスターを倒しつつ地下に潜る形になる。