ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ゾンビが囲む別荘〈ゾンビブレイド(真)〉

 

「ど、ういうことだ!従者は全て屠ったんじゃなかったのか!?」

 

 降谷さんの叫びに、緊急事態を察したコナン君が魔術を装填して、外の様子をサーチした。

 そして息を呑む。

 

 森の中から現れたゾンビの軍団は無言でゆらゆらと揺れている。

 

 服部君も窓から離れて、のっそりと森から現れたそれらを視認したらしい。

 「何なんや一体!?」と焦りをあらわにした。

 

「新しく作られた従者みたいだな。まだみんなフレッシュな死体だ」

「……ねえ黄衣さん。外のゾンビたちは随分ボロボロで、フレッシュそうには見えないけど」

「ボロボロの服を最初から着て、メイクもしてただけだよ。肉体的にはとても新鮮だ」

 

 何故そんな格好をしているかは知らん。

 今日撮影のティザー映像に出る予定のゾンビさんだった可能性は、まぁ高いだろう。

 それが本物のゾンビにされてしまったのは不幸としか言いようがない。

 

 可哀想だが治療不可能だ。

 既にグラーキの体液を摂取し、魂が溶かされてしまっている。

 

 グラーキの従者というのは、従者という言葉がもたらすイメージと違い、どちらかといえばグラーキが操作するドローンに近い。

 液状化した魂をグラーキが乗っ取り、空の肉体を手足として使うのだ。

 

 あーーーもうね、もうね。

 あのウニ野郎の棘全部折って丸裸にしてボールにしてやんよ。

 ニャルと一緒にサッカーの練習に使うんだ。

 

 俺が静かに怒りをたぎらせていると、降谷さんが何故かもじもじし出した。

 恥じらって俺を見ている。

 

「何何何?ニャル発作?今遊べるおもちゃは無いよ!?」

「ほ、本体が悪い!君とこの後遊びに行く予定を感じ取ってワクワクしてるんだ…そのワクワクが僕にまで…ックソ!」

 

 じっとしていられないのか、降谷さんが小さく足踏みしている。

 そうか、ニャルもやる気らしい。

 俺は満足してパキパキ指を鳴らした。

 

 服部君がコソコソとコナン君に話しかけている。

 

「これ、なんや心配して損した感じか?」

「単に二人の頭が変なだけだ。人間は普通に死ぬ」

「さ、さよけ」

「聞こえてるよコナン君。誰の頭が変だって?」

 

 地獄の耳の降谷さんが圧の強い笑みを作る。

 コナン君がキュルンキュルンにぶりっ子して「えぇー、僕わかんないぃ!」と嘯いた。

 服部君が真剣な顔で二人を観察している。

  

「俺もなんかオモロいネタ探しとかんとホンマに出遅れてまうで…!」

「服部君服部君。僕らは別にボケてるわけじゃなくてね」

 

 降谷さんが弁明しているがこれはボケの奥義、シリアスシーン崩壊の御業である。

 

 もうめちゃくちゃだが、俺はきちんとその間にこの別荘に結界を張っているのでご安心を。

 さらに外側にドーナツ型に結界を張り、ゾンビが逃げ出さないようにもしてある。

 

 ゾンビ達は動きが遅く、ゆらりゆらりとこの建物へと近づいてきている。

 可笑しいな、グラーキの従者は人間程度には素早いはずなのに。

 

 さて。

 そのあたりで隣の部屋からも悲鳴が聞こえてきた。

 

 どうやら別室待機させていたスタッフさんが、ゾンビに気づいて悲鳴をあげたらしい。

 下手に外に逃げようとされたら厄介だ。

 

 俺は「コナン君たちはここにいてくれ!」と伝えてスタッフさん達を呼びに行く。

 死体のある部屋に篭るのは嫌だろうが、死体を何に使われるかわからないし、仕方のない処置だと我慢して欲しい。

 

 別室のスタッフさんたちは酷く動揺して、カメラマンさんの女性さんも半泣き。腰を抜かした太っちょ男性が、ずりずりと窓から距離をとっている。

 

 照明スタッフさんは俺が怪異案件の知識もあるとTVメディアの報道で出ていたことを知ってるらしく、「こ、黄衣さん!!あれ!助けてください!!」と叫んだ。

 

「大丈夫。ひとまず俺たちのいる部屋に来てください」

 

 そう言えば、大人しく全員俺の指示に従ってくれるようだった。

 

 しかし、やけに落ち着いてる人物が一人。

 主演女優さんだ。

 まるであのゾンビが偽物だと確信しているように、気軽に後ろからついてきている。

 

 ともかく一部屋に集まって、追加の防護魔術を発動させよう。

 全員が部屋に入ったら魔術を発動。

 

 まず、この場にいる全員を魔術的に登録。

 その上で結界を多重構築。

 対旧支配者を想定して編み込んだ強固な壁だ。

 流石に完全顕現したグラーキに追突されたら壊れるが、従者や人類程度での突破は不可能だろう。

 

 ついでに、汎用性のある核部分に関しては降谷さんの頭の中にも叩き込んでおく。

 降谷さんが「!?!?」と目を白黒させた。

 

 将来降谷さんもこのぐらいできるようになるといいやで。

 頑張りぃや。

 

 あとはゾンビを対処すればそれでOKだ。

 降谷さんが難しい顔して俺に問いかけてきた。

 

「彼らをなんとか治療できないか?できないなら、遺族も考慮してなるべく傷無く無力化したい」

「治療は無理。けど無力化はできる。リンクを切って溶けた魂を消し飛ばせばいいだけだからな」

「………あんな人数が、もう死んでるんだね」

 

 コナン君が悲しげな顔で呟いた。

 

 たしかにとんでもない被害だ。

 グラーキが何を考えているのかは定かではないが、ちょっと真面目にボコるのを検討したほうがいいだろう。

  俺たちの話を聞いた女優さんが、困惑して首を傾げている。

 

 「あれ、プロデューサーが用意したエキストラじゃないの?」とのこと。

 他のメンバーは知らなかったらしく仰天している。

 

「え、原脇君そんなの用意してたの!?」

「聞いてないけど…」

「こっそりホームページで告知出してたわよ。オーディションするからこの時間に集まれって」

 

 俺は彼らの言に、嘆息して首を振った。

 

「残念ながら本物だね。本当は偽物だったんだけど。どうやら死んだプロデューサーさんに、怪異由来の品で何かされたようだ」

「!!!」

 

 プロデューサーさんがどんな意図を持ってそんな凶行に及んだかは分からない。

 だが少なくとも、大量殺人の犯人ではあったのだろう。

 

 あのゾンビ達は皆、細かく砕いたグラーキの棘を水に入れて、飲ませられたのだ。

 

 お茶とかなんとか言って配ったのかもしれない。

 たぶん飲まずに運良く従者にならなかった人もいただろう。

 そういう人は逃げ延びられたか、あるいは犠牲になったか。

 

 今後森の中も捜索する必要がありそうだ。

 

 太っちょの男性が、この部屋の扉が開かないことに気付いて動揺した様子を見せた。

 「大丈夫、俺が怪異を使って一時的に開かないようにしてるだけだ。すぐ開けられるから」と安心させておく。

 

 さて、ゾンビどもの処理の開始だ。

 

 この屋敷の周囲を含めた、半径50km以内て全てのグラーキの従者を標的選択。

 破壊力としては最小限の力だが、妨害も想定して術式突破も組み込んでおく。

 防御結界や術式解体を受けても発動するように仕上げる加工セットだ。

 

 組み終えたら、魔力を込めて全装填、83連。

 コナン君が「スパコンかよ」と半笑いで小さく呟いた。

 何をいうか。ハスターリク討伐の際の数十億分の一の規模やぞ。

 

 余剰の魔力が電流のように発光して立ち上がりパチパチと閃光を散らす。

 

 スタッフさんが「ひえ!?」と言って距離をとった。

 まずは小手調べだ。

 

「標的再確認。人類種なし。妨害突破術式装填。全連結。『魂の撃滅』───『外宇宙の放逐』」

 

 起動した魔術が、不可視の一撃となって外にいたグラーキの従者へと殺到する。

 降谷さんが目を丸くして術式を見ていたので、これも降谷さんの頭の中に叩き込んでおく。

 

「待て!止めろ!それをされるとトンカチで頭をかち割られている気分になる!!」

「んな大袈裟な」

 

 降谷さんが「大袈裟な要素は一ミリもない!!」と激怒されておられる。

 またまた、このぐらいの術式ニャルならコンマ秒もいらないで編み上げられるのに。

 

 その間にも、外の従者は速やかに駆逐されていく。

 意外にも妨害は無かったようだ。

 

 そのまま第二波が来るのを警戒して外を見張るが。

 10分経っても特に動きは無し。

 降谷さんが眉間に皺を寄せて窓に近寄る。

 

「僕が外を確認してこようか。僕なら不意打ちを受けてもある程度受け切れる」

「頼む、降谷さん」

 

 降谷さんは頷いて、開けた窓から身を踊らせた。

 スタッフさんが悲鳴をあげるが、彼ならば2階から飛び降りても風の補助で普通に着地できる。

 

 デコイの役も含めてぐるりと周囲を一周してもらったが、やはり動きは無いようだ。

 

 訝しんで、術式破壊されることを覚悟でグラーキの現住所を遠隔確認。

 

 グラーキはモゾモゾと名も無き星の湖で療養に励んでいた。

 ボコボコにされた体を寒そうに震わせながらバキバキになった身体を修復している。

 敵意はないようだ。

 

 でも後でもう一回シメることにしよう。

 覚悟しとけよオォン!!とガンつけておく。

 

 グラーキは俺の視線に気付き、ますます身体を縮こまらせて湖の奥に隠れようとした。

 

 うーん???

 

 わからんが危険は去ったようだ。

 俺がパンパンと手を叩き、「とりあえずゾンビは倒しましたー。解散解散」と結界を解いた。

 

 女優さんが「え…」と困惑の表情を見せる。

 窓のカーテンの隙間から、すっかり倒れ伏したゾンビの群れが確認できたらしく。

 「本当に……?」と実感も何も無いまま終わった危機に呆然としていた。

 

 そんな中でも冷静なコナン君が「早く警察に連絡しないと!」と大人達をせかす。

 たしかに。俺たちも早く動かねば。

 

 車に乗って電波の通じる地点まで向かい、俺たちは110番通報をしたのだった。

 

 

 

 

 

 死者、83名。

 

 怪異を使った大量殺人「ゾンビ事件」としてセンセーショナルに報道されていたその事件は、被疑者死亡のまま書類送検された。

 怪異の危険性を広く知らしめる大事件として、TVでは一週間はその話題でもちきりだった。

 怪異法成立の後押しにもなるだろうと、降谷さんも忙しそうにコメントを残した。

 

 しかし今回の犯行、結構後始末が厄介だった。

 

 グラーキの棘を砕いて飲ませたため、肉体と融合した棘を取り出すことができなかったのだ。

 しかも水に入れたため、飲みこぼしが服についてたら、それに触れても死あるのみ。

 遺族との面会の前に、俺と降谷さんが一体ずつ服を着替えさせて身体を清める作業に従事することになった。

 

 水の入っていた紙コップを捨てられた森も立ち入り禁止だ。

 除染方法は考え中。

 

 オーディションのため遠方から来ていた被害者もいたため、身元の特定にも苦労が多かった。

 若者が多く、家族も突然の訃報に驚愕、なんてことが多発したらしい。

 

 おまけに普通に火葬したら大災害になるため、一括して俺が魔術炉に加工した場所での火葬となった。

 散々と言えば散々だ。

 

 

 俺は降谷さんにドチャクソに叱られた。

 

 確かに俺はきちんと探したが、こういうことは結果が全て。

 俺の努力程度が被害者遺族の心を慰めることはない。

 

 なお、説教の途中でニャル本体が降臨して「ちょっと、我が夫を虐めるのは許しませんよ!」とぷりぷり怒りながら庇ってくれた。

 不機嫌な降谷さんを添えて。

 

「本体はソレを甘やかしすぎなんだ。今回だって被害が多数出た」

「違います我が夫が羽虫を甘やかしすぎなんです。本来、羽虫が生きようが死のうがどうでもいいのに身の程を知らないんですか?」

「世話するなら責任を持つのは当然だろう。野良猫に餌だけやって満足するのは無責任だろう」

「は??羽虫如き、餌もらえるだけでもありがたいでしょう。伏して崇めるべきです」

 

 俺はあわあわと恐竜を宥めるポーズをとって、「おいお前ら、ニャル同士で喧嘩するな」と距離をとりながら声をかけた。

 

 昔からニャルはニャル同士で喧嘩することが多かったんだよな。

 俺を取り合って、だとか、お遊びの方向性の違いで、だとか。

 

 そして高確率で取っ組み合いになる。

 木端化身は違うが、もう降谷さんは大規模名付き化身と言っていいサイズだし。

 とりあえず喧嘩するなら地球外に行って欲しい所存である。

 

 

 

 

 ともあれ、そんなわけで事件は収束した。

 

 全然別件でプロデューサー殺害の件で女優さんが逮捕されたが、それはまた別の話。

 どうやらプロデューサーは追加でまだグラーキ棘粉を隠し持っていたらしく。

 本番撮影でもゾンビを量産しようとしていたようだ。

 

 ある種、皮肉にも英雄になってしまった女優さんは「八年前の殺人の件をバラすと脅されて映画主演を強制されたから殺しただけなのに」との旨の供述をしているという。

 

 プロデューサーさん、ゾンビ映画に命懸けすぎだろ。

 そのように思いながら帰宅する、俺なのである。

 





・グラーキ
無事この後ボコられた。
だから!!!無罪だっつってんだろ!!!
ヤンキーどもは療養してた湖を踏み荒らしてオラついていた。
「オォン王宮に引き摺っていってアザトースの腹に投げ込むぞオラッ!!!」
「それやると僕も爆散するんですが」
ヤンキーどもはコントもしていた。
何されるか分からなくてグラーキは震え上がった。

・ニャルニャル群
基本的に仲が悪い。
どの分体もハスターが好みだが、基本ハスターは本体が独占しているので各所から批判が殺到している。
降谷さんはハスターラブではない珍しいニャル化身。
次回は甘々(?)ニャルデート回。たぶん。
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