ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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千葉のUFO難事件〈うっかりミ=ゴ〉

 

 UFOを見かけた、という話で俺の事務所に客が来た。

 

 和田陽奈という名前の杯戸高校の女子校生だ。

 空手部繋がりで蘭ちゃんの知り合いとして依頼をしに来たらしい。

 

 内容は「宇宙人を探して欲しい」とのこと。

 

 側で聞いていたコナン君が否定しづらい、しょっぱい顔でモゴついている。

 以前なら笑い飛ばしていたところだろうが、怪異を知ってしまった今、なんも変ではない訴えになってしまったからな。

 なんなら俺という宇宙人が目の前にいるし。

 

 和田さんは勢い良く己の見たものを訴えている。

 

「本当に見たんです!夏休みの部活中に、葉巻型のUFOを!でも誰も信じてくれなくて…」

「なるほど。それで黄衣探偵事務所に来たんですね」

「はい。蘭ちゃんのお父さんが探偵だって話を聞いて、本当は毛利探偵に頼もうと思ってたんですけど。『そういうのは黄衣に持ってけ』って受けてくれなくて」

 

 しょぼんと和田さんがしょげている。

 「黄衣さん有名人だし、こんなの受けてくれないと思ったんですけど」と困った顔で恥じらった。

 

 毛利さんナイス。

 危険なことからはさらりと手を引き手堅く探偵業務をこなしていて、俺としても安心できる。

 

 仕事ぶりも適性を考えた依頼を渡せば意外といい探偵として動いてくれるんだよな。

 INTが必要な殺人事件解決とかは俺とどっこいだが。

 浮気調査とか足が必要な依頼は着実に確実にこなしてくれて、俺も嬉しい限りだ。

 

 蘭ちゃんがぺこりと頭を下げて「ごめんなさい黄衣さん」と謝っているが、まあ、気にすることはない。

 これはガチのマジのUFOだしな。

 

 俺は「ハスターの瞳」から出力した画像を手早く具現化して、あたかも棚から出したように机の上に置いた。

 

「そのUFOってコレだった?」

「!!!それです!黒くて葉巻型で!」

 

 和田さんが目を見開いて立ち上がった。

 やはりそうだったらしい。

 

 話を聞いた段階で「ハスターの瞳」にて当時の状況を確認していたからな。

 

 なんにせよ、この宇宙人に女子高生を会わせるのは適切ではない。

 

 降谷さんが「知っているのか黄衣君」と雷電構文で聞いてきた。

 別に本人はそんな気持ちではさらさらないだろうが、俺が勝手にウケてるだけだ。

 

 俺は頷いて眉間に皺を寄せた。

 

「ああ。ユゴスよりのもの、あるいはミ=ゴって言ってな。マジのガチの宇宙人だ」

「やっぱり!!!私の見たのは間違ってなかったんだ!!!」

「よかったね陽奈ちゃん!」

 

 女子高生達がぱあっと明るく手を合わせて喜んでいる。

 

 対して「ああぁ…」と心配そうな顔をするコナン君と、眉間に深い谷を刻む降谷さんのお二人である。

 諸伏さんはここにいないが、単に食材の買い出し中なだけだ。

 そのうち帰ってくるだろう。

 

 降谷さんが色々な可能性を考慮してかなり険しい顔をしている。

 

「それは……危険はないのか?」

「無いと言えば嘘になるけど、あー、人間と同じで個々人による、としか」

「つまり利己的な人間以外の知性体と。危険だな」

 

 降谷さんは声を一段低くして、ガチ公安みたいな空気を出し始めた。

 和田さんがちょっと怯えて身を引いたので、「ああ、気にしないで。心配なだけだから」と安室の皮を被り直す。

 降谷さんもう最近ずっと演技がガバガバなんだよな。

 

 しかしミ=ゴとは珍しいものが現れたものだ。

 

 彼らは俺とニャルラトホテプを信仰しており、古い約束を守って地球には絶対に近付かない。

 おそらく宇宙船の故障で不時着したとかその辺のやむを得ない事情によるものだろう。

 

 彼らは菌糸類に近いキノコ人で、有翼種と無翼種がいる。

 宇宙空間を飛行できるが、羽のない奴らや、荷物を持って移動したい奴らは宇宙船を利用している。

 

 科学に関しては人間以上に発展している。

 特に医療はかなり極まっている感じだ。

 また、俺を崇める関係上、地球を「聖地」として扱い、禁足地として指定しており。

 余程のことがない限り地球には降りてこない。

 

 というか、件のミ=ゴも地球に入ったことがバレれば本国で死刑だと思うのだがな。

 だから帰るに帰れず、こそこそ地球に半年以上滞在しているのだと思われる。

 

 俺はヨイショと立ち上がって、和田さんに声をかけた。

 

「すまないが、ここから先は連れていけない。危険すぎてな」

「で、でもそのために空手の腕を磨いてきました!」

「高確率で銃器に類するものを持ってる。空手で飛ぶ電撃に対処するのは無理だ」

「………」

 

 それが無ければひ弱なので、蘭ちゃんと二人で立ち向かえばさほど苦労せず殴り倒せるだろう。

 奴らは頭脳労働係のキノコ人なのである。

 

 俺は安心させるように声を柔らかくした。

 

「大丈夫。ちゃんと話を聞いて、録画とか録音とかして持ってきて見せるから」

「本当ですか?」

「ああ。依頼人だし、それで依頼達成としてくれると嬉しい」

 

 淡く微笑みかけてやれば、和田ちゃんはポッと顔を赤らめて頷いてくれた。

 

 コナン君が「でも中身は黄衣さんなんだよなぁ」と小さく呟いている。

 「それが彼の味じゃないか?」とは降谷さんの言だ。

 中身が俺じゃあかんのかオラァン!

 

 一応、明日また結果を報告するということで、二人には帰宅してもらうこととする。

 「お願いします!」と頭を下げる二人を見送って。

 扉が閉まる音を確認して。

 

 「どうする?」と降谷さんがガラリと表情を変えて硬質な声を出した。

 

「まずは話を聞きに行く。不法侵入だが、情状酌量の余地があるかもしれないし」

「場所はわかっているのか?」

「妨害術式も何もなかったからな。見ればすぐわかる。人間に擬態してるみたいだけど、それだけだし」

「ッ!!!人間に化けられるのか!?」

 

 ああ、と俺は首肯した。

 ユゴスで使われる一般的な儀式用魔術で、普通のミ=ゴなら使えるだろう。

 本国では「神聖な生き物に化けて神の愛を得る」みたいな文脈で使われるものだ。

 

 降谷さんが嫌そうにため息をついた。

 

「異星人か。本当に厄介だな。外交の問題が出てくるし、下手に有益だと文化的な摩擦が無視できなくなる」

「人間がどうしても交流したいっていうなら俺もミ=ゴ側の渡航制限を解除しても良いけど。まあ、今回は世間には伏せた方がいいだろうな」

「ねえ黄衣さん、怖い宇宙人じゃないよね…?」

 

 コナン君が怯えているので、俺は咳払いしてサムズアップした。

 

「見た目はキモいけど俺がいるし怖くはないよ!俺がいるし!」

 

 不届きなミ=ゴだったら俺が爆散させてやるよ!

 俺がシュッシュッとジムに通い出してやや上達したシャドーボクシングをする。

 降谷さんが「パンチがフラフラ」とピシャリと言った。

 オォン文句あんのか!!まだ初めて二週間のド素人やぞ!!

 

 俺は荷物をささっとまとめ、出かける準備を整えていく。

 

「でも俺的にはミ=ゴはキモくて好きではないんだよな。適当に出てってもらうか」

「そんなキモい見た目なの?」

「海老の体にキノコの頭、キノコからは触手がパラパラ生えてる感じ。サイズは人間ぐらい」

「クリーチャーだな。黄衣君を信仰してるんだろう、加護とかは付与しているのか?」

「全然」

 

 俺は財布を持ったか確認してから、車の鍵を取り出した。

 

 ミ=ゴには正直興味がない。

 何となく気が向いた時に加護をやったり、騒がしかったら間引きしたりその程度だ。

 やっぱ人間しか勝たん。

 

 でも、太陽系に住まわせているのは俺の明確な慈悲だ。

 奴らの真摯な態度が無ければ、太陽系で繁殖した羽虫なんぞとっくの昔に滅ぼしてたからな。

 

 という旨の話をつらつらすると、何故かコナン君にドン引きされてしまった。

 

「え、怖………邪神じゃん」

「何が!?どこが!?」

「コナン君、これは一般的旧支配者のスタンスの中ではかなり穏当な方だ。穏やかな神、と言い換えても良い」

「ウッソ……宇宙怖い……神も仏もない」

 

 コナン君は怯えて腕の中の星の精を抱きしめた。

 星の精が「クス…?」と声を潜めて鳴く。

 きちんと「他に人がいる時に声を出してはいけない」と教え込んだため、いい子に大人しくできたようだ。

 良い星の精はヨシヨシしてやろうねぇ。

 

 そこにちょうど、諸伏さんが帰ってきた。

 

 なんか部屋が妙な空気になっていることを感じ取り、神妙に頷いて「今北産業」とだけ言った。

 コナン君が首を傾けて聞き返す。

 

「どういう意味?」

「ヒロ、古代語は伝わらないぞ。宇宙人に今から会いに行くところだ。お前も準備しろ」

『了解、3行で聞くべき内容じゃなかった』

「ねぇ意味は???」

 

 知りたがりコナン君が暴れているので、「今来たばかりだから3行でまとめて事情を説明してくれ、の意味だよ」と教えておく。

 コナン君が「へぇー」と納得した様子を見せた。

 突然楔形文字使い出して何かと思ったよ。

 

 

 

 さて。

 車で10分ほど行った先に、目的のアパートがあった。

 結構近所だ。

 

 203号室のチャイムを鳴らせば、ボサボサの頭のおじさんが出てきた。

 人間に化けたミ=ゴだ。

 魂の見える降谷さんはそれが人間でないことを悟ったのだろう。すうっと目を細める。

 

 チラッと見えた部屋の中はゴミ屋敷だ。

 衛生感はミ=ゴも人間も変わらないので、普通に汚部屋を作るタイプのミ=ゴなのだろう。

 

「はい、どちらさんすか?」

「黄衣ハスタです。ああ、偽名ですが……意味、わかりますよね?」

 

 俺は初手で男の耳元でうっそりと囁いた。

 もちろん肉眼で男をジロリと睥睨しつつ。

 

 男は目を見開き、ついで激烈に震え、動揺に眼球がぎょろぎょろと動いて「#^^…€**⁉︎」と謎の言語を叫んだ。

 

 ミ=ゴの言語は複雑だ。

 頭部の発光、ブザー音、念話を複雑に組み合わせ話すのだ。

 多分ブザー音に当たるものを出そうとして、人間の体のため失敗したのだろう。

 

 俺の隣にはニャル化身である降谷さん。

 さらに後方を一般大怨霊諸伏さんで固めている。

 コナン君は最後尾で震えて星の精を抱きしめている。

 完璧な布陣だ。

 

 焦りで真っ白になった思考がようやく戻ってきたらしい。

 ミ=ゴは腰を抜かして玄関を這いつくばった。

 

「ち、違う!違うんです!お赦しを!仕方なかったんだ!船に燃料詰め忘れてガス欠で!寝てて気付かなくて!」

「うっかりミ=ゴかよ」

 

 俺はチベットスナハスターになった。

 宇宙船もアラートぐらい出るはずだろうに、寝こけてたらしい。

 しかもミ=ゴは冬眠できるが、宇宙船の性能が良いためこの距離で寝る必要はない。

 ほぼ居眠り運転で事故ったのだと思われる。

 

 「ともかく話聞くから部屋に入れて」と凄めば、しずしずと部屋の中に案内してくれたのだった。

 





・うっかりミ=ゴ
ちょっと注意力の足らない個体。
悪い奴ではないが、ミ=ゴではあるため価値観が人間とは大きく異なる。

・ミ=ゴ、あるいはユゴスよりのもの
冥王星に…つまり太陽系内に住むことによって他の脅威から守られている種族。
荒ぶる神の袂に身を置いて恩恵を被るもの。
地球への立ち入りは神との旧い契約により禁止されている。

・人以外に対するハスターのスタンス
普通に怖めの旧支配者。
崇めれば気まぐれに加護をくれないこともない、巨大なる厄災。邪神。
一応奉仕種族のビヤーキーは可愛がっているが、それくらい。
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