ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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怪盗キッドのカラクリ箱〈イ=ス人の通信機〉

 

 昨日深夜、怪盗キッドへ向けた鈴木次郎吉氏の挑戦状がネットニュースに流された。

 

 一夜明けてTVでも取り上げられ、新聞、そのほかメディアとその話題でもちきりだ。

 キッドからも受けて立つと返事があったそうだ。

 平和で良い事である。

 

 今回のお宝は美しいムーンストーン「ルナメモリア」だ。

 新聞を眺めながら、コナン君は心配そうに俺に問いかけてくる。

 

「キッドが狙ってるってことはさ、不老不死の効果がある秘宝関連ってこと?」

「いや、別にそういうわけじゃないから安心してくれ」

 

 この宝石はパンドラ足り得ない。

 念のため朝一番でキッドに確認したが、普通に勝負を売られたから狙っているだけだそうだ。

 キッドも意外とプライドが高いからな。

 

 コナン君は一時興味を失った様だが、新聞を読み進めてある一点に目が止まり、驚愕に声を上げた。

 

「ふぅん……って!これ!三水吉右衛門のからくり箱に宝石が入ってるって書いてあるんだけど!?」

「うん。三水吉右衛門、つまりニャル案件だね」

 

 三水吉右衛門はニャルラトホテプの偽名だ。

 化身だったわけではないらしく、ニャル本体が手作りアーティファクトを世にばら撒く時のペンネームだったようだ。

 

 一応、この箱に危険はない。

 概ね普通のカラクリ箱として振る舞い、人に敵対的ではないからだ。

 壊されそうになると小さい鉄製の棘を出すが、それだけでもある。

 

 とはいえ、昨日は夜遅くに降谷さんから鬼電がかかってきて大変だった。

 

 あの三水吉右衛門の作品で、しかも俺の作った怪異一覧に載っていない品だ。

 どうして一覧から省いた、という降谷さんのお叱りから始まり。

 どんな危険性があるか、対処法は、予想される被害規模はとめちゃくちゃ詰められた。

 

 俺がどんなに危険はないと説明しても「過小報告するな」とドスの効いた声で言われる始末。

 本当に危険はないのに…。

 

 コナン君が訝しげ俺を見上げてきた。

 

「本当に危険はないの?大体大丈夫だけど、ちょっと弄ると人が死ぬとか」

「信用無さすぎないか俺」

「いやでも降谷さんの中の人…ニャルさんの作品なんでしょ」

「せやね」

 

 ………。

 うーん、ほな疑ってかかるべきやな。

 

 納得してしまう自分が悔しい今日この頃。

 でも、本当に今回は大丈夫だから、俺は渋々事情を説明した。

 

「あのな。あれ、俺との結婚を祝って作った、ニャル曰く『愛の箱』なんだ」

 

 この間のデートの後、浮かれホテプになった勢いでニャルが一晩で作ったアーティファクトなのだ。

 だから怪異一覧にも載っていない、最新の怪異として成立している。

 

 この箱を開くには正しい手順に加えて、愛が必要となる。

 愛を込めて仕掛けを動かせば開く、という非常に独特な機構は、無形のものを練り上げるニャルならではの魔術で満ちている。

 少女マンガ的、と言ってもいい。

 

 そして愛に無粋なものは不要、ということで呪詛も仕込まれていない。

 「愛の魔法以外は込めたくなかった」とのことで、箱を守る針は純粋なからくり仕掛けで出るという徹底ぶり。

 

 いかにニャルが浮かれていたかを示している。

 

「え、でも三水吉右衛門は140年前の人なんだよね?なんでそれがついこの間作ったことになるの?」

「まあ俺たちに時間軸とかあんまり関係ないし。ほら、コナン君がハイパーボリアの時代に来た時も俺達ちょっと話したろ?」

 

 俺は以前にコナン君がハイパーボリア時代へとタイムスリップした件を取り上げてみた。

 前にもちょろっと説明したと思うが、どうもコナン君はあれを別人として扱ってる節があるからな。

 

「あれ本当に丸々黄衣さん本人なの!?」

「そうだよ。あの場に合わせて振る舞ってただけで、少なくともこの夢の内においては全部俺は俺だよ」

 

 だからハイパーボリアが滅びることも知ってるし、コナン君に会うことも知っている。

 俺達は時を超越しており、過去と未来とは右と左ぐらいの違いでしかない。

 

 コナン君は難しい顔をして考え込んだ。

 

「それなら、例えば黄衣さんが過去で歴史を変えたらどうなるの?あのハイパーボリアを救うとか」

「うーん」

 

 俺はちょっと悩んだ。

 どう説明すべきか。時の状態は俺達にとっては自明なことだが、人の言葉で説明するのは非常に難しい。

 

「時そのものたる父神ヨグ=ソトースの生態の話になるんだけど。まず、因果関係ってモノ自体、実は存在しなくてぇ」

「うん、頭がおかしくなりそうだからやっぱ良いや」

 

 俺が頑張って言葉をまとめて走り出した途端、素早く話を打ち切られてしまった。

 なんでや。コナン君が聞いてきたんやぞ。

 

 コナン君はそのまま平然と話を終えて次の質問に移った。

 

「じゃあ、その愛のカラクリ箱とやらがなんで鈴木相談役のところに?」

「正気に戻ったニャルが真顔でそっと人の世に流したからだよ」

 

 完成後、正気に戻ってみたら流石に恥ずかしすぎたらしい。

 間違いなくキャラはおかしくなってたもんな。

 箱を壊すのは嫌だが、恥ずかしくて手元に置いておきたくなかったとのこと。

 

 可哀想な恥ずかしニャルは、箱を適当に流した後本性をあらわに俺に抱きついてきた。

 無論俺は胴体を捩じ切られて破裂した。

 散らばった俺の肉片を拾って「ねぇ、僕のこと、恥ずかしい奴って思いましたよね…」とニャルはたいそうメソメソしていた。

 

 まあ、怖い奴だとは思ったよ。

 

「というわけで、本当に危険ではないんだ。本物は俺も確認したし、ニャル制作としてはこれ以上なく穏やかなモノだよ」

「中の宝石も?」

「そっちは時間の彼方から飛来した精神生命体、イ=スの偉大なる種族の通信機だけど」

「おい」

 

 降谷さんバリの低音で凄まれ、俺は姿勢を正して反省のポーズを取った。

 どうして人類ってみんなこんなに怖いのか。

 コナン君は俺をジロリと睨みつけて、取調室さながらの冷気を漂わせて詰問してきた。

 

「それ、降谷さんに言った?」

「そういえば言ってなかったかも。………き、聞かれなかったし!深夜だし寝起きで!仕方ないというか!」

「骨拾わないからね、僕」

「拾ってもくれないのか」

 

 怒られてしょげ返る俺の姿に、犬ベッドで寝ていた星の精が気付いたらしい。

 もそもそとやってきて「クスクス…?」と俺の頭を触手で撫でてくれた。

 優しい星の精だ。みんなの仕草を見て覚えたらしい。

 

 良い星の精は沢山撫で撫でしようねぇ!

 

 もしゃもしゃもしゃ!と星の精を撫でくりまわせば、「ゲタゲタゲタッ!!」と星の精は上機嫌な声を出した。

 コナン君が「今すぐ電話!!!」とピシャリと俺を叱った。

 

 俺はいそいそと星の精を離し、スマホを取り出した。

 突然撫でられなくなった星の精が不満げにブツブツ文句を言っている。

 

 降谷さんに電話をかけるとすぐに繋がった。

 あんなに忙しいのに、2コール以内に繋がらなかったことはほとんどない。

 これだけで、どれだけ俺に思考を割いてもらっているかがわかるというものだ。

 

「すまん降谷さん、今いいか?」

『問題ない。それと、もしよければ鈴木相談役の説得に君も参加してくれないか。朝から話を持ちかけているんだが梨の礫でな』

「了解。じゃあ今から警視庁に行くから、その時に一緒に俺の要件も話すよ」

 

 そのように軽くやり取りして、俺は電話を切った。

 コナン君がジト目で俺を責めてくる。

 

「先延ばしにしたでしょ」

「んー、まぁ、そうとも言う」

 

 へへへ…今回マジで俺のうっかりだし。100%怒られるのが確定してると思うとどうしても腰が重くなってぇ。

 

 ニャルを連れていけば俺の味方をしてくれるかも、と思いつつ。

 いやでも話が拗れるしやめた方が無難だろう。

 三回転半では利かないレベルの拗れ方するはずだ。

 単なる説教場を紛争地帯にする必要はない。

 

 

 

 さて。

 俺たちはすぐに車で警視庁へと向かう事となった。

 

 メンバーは俺とコナン君、そしてコナン君のゆったりバッグに入れられた星の精だ。

 星の精はバッグからちょろっと触手を出してクスクス上機嫌そうに笑っている。

 

 最近、星の精はかなり元気になってきたからな。

 コップ血液を卒業して、大きな生き餌を強請るようになってきた。

 今のところ、買い付けた生きたニワトリとかをあげている。

 

 だがまだまだ小型なのに、勢い付いていてもっと大物が欲しいらしい。

 不満そうにニワトリを縊り上げて俺を見てくるのだ。

 豚を買い付けるか、と思いつつ。

 でもどうせ食べ残すし勿体無いしな、と悩みつつ。

 

 そんなこんなを考えながら到着した警視庁でビジターカードをもらい、会議室に通される。

 

 降谷さんはすでに準備が終わっていたらしく、会議室で資料確認しているようだ。

 

 相変わらず非常に忙しそうだ。

 諸伏さんは別件で出ているらしく、この場にはいないらしい。

 

 降谷さんはPCから顔を上げて少しだけ笑った。

 

「すまないな、突然来てもらって」

「いや。俺も話があったし。いつも来てるし問題ないよ」

「ふむ。それで話とはなんだったんだ?」

 

 気軽に聞かれたが、つい俺も目が泳いでしまう。

 俺がじっと黙って言いにくそうモゴモゴしているし、コナン君は目も当てられないみたいな呆れ顔だし。

 降谷さんも雲行きの怪しさを感じ取ったらしい。

 

 目が吊り上がって、しかしニコニコして俺を睥睨してくる。

 

「あー、その。つまりぃ」

「なんだ?言ってみるといい。事と次第によっては僕も穏やかでいられるかもしれない」

「それは絶対怒る奴では。あー。言い忘れてたんだけど。その」

「早く言え」

「うす。今回のキッドの狙う宝石、カラクリ箱の中身、神話生物由来の品でさ。具体的には科学による時間跳躍を可能にした超文明の生物の使う通信機でぇ」

 

 瞬間。

 降谷さんは背後に般若のスタンドを出現させた。

 凄い、旧支配者ハスターをぶちのめさんばかりの雄々しさと怨念、ドス黒い怒りの炎が篭っている。

 

 俺は頭を庇い身を小さくして言い訳を捲し立てた。

 

「待って!違うんだ!俺、俺は悪くねぇ!!」

「遺言か?」

「死刑が早すぎる!弁護士を呼んでくれ!!」

 

 俺は叫んでコナン君の後ろに隠れた。

 コナン君は「被告人の刑が軽すぎると思います」と平坦に宣言した。

 

「重すぎるんじゃなくて!?死刑の上って何!?」

「一理ある。いいだろう、刑の執行は延期にする」

「許された……いや、さてはこれ死までの猶予が少しできただけか?」

 

 降谷さんは「はぁぁぁぁ……」とクソデカため息をついた。

 「人を超越した異星人のアイテムがあるということは、その近くに件の異星人がいるわけで、人類社会存続のための大いなる脅威であって、唯一の頼みの黄衣君は昨今のマスコットキャラ並みにユルユルで…」と早口でブツブツ言っている。

 

 すまんね…いやでも相手は賢いイ=ス人だから安心じゃんね。

 

 俺が卑屈に笑うと、再び降谷さんに焼け焦げんばかりの視線を貰った。

 大人しく俺は机に額を擦り付けて謝罪したのだった。

 





・浮かれホテプのカラクリ箱
開ける人の愛する心を試す、ニャルラトホテプのアーティファクト。
愛が強ければ強いほど、開けた時美しいオルゴールの音色が響く。
ハスターが難なくニャルへの愛で箱を開けたので、しばらく超浮かれホテプだった。
用が済んだし恥ずかしかったので世に流したが、時間が経ってちょっと勿体無かったかなと思い直している。

・イ=ス人
とても賢い種族。
種族平均でコナン君ぐらいの知性がある。
ちゃんとハスターに許可をとって地球に移住して、細かくハスターと契約をしてから人間と交流している。
ハスターのことは信仰していないが、ハスターからはその知性を信頼されている。
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