ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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漆黒の追跡者〈ニャルニャルパレード〉

 

 七夕当日。

 

 術式はぐるぐると巡り、星を中心に組み代わり、発動の時を待っている。

 

 降谷さんが眉間に皺を寄せて腕を組んだ。

 

「コナン君はどうしているんだ?姿が見えないが」

「なんか事件の犯人がわかったとかで出てったよ。服部君と電話していたのは見たけど、その先は確認してない」

「まったく、今日が当日なのを彼はわかっているのか?」

 

 事件を目の前にすると無鉄砲になる傾向は前々からあったからな。

 探偵たるもの謎に食いついたら離さない、ということなのだろう。

 

 現在、俺たちは東都タワーのトップデッキにやって来ている。

 

 眼下には東京の街並みが見下ろすことができ、美しい文明の光が地平線まで広がって見える。

 ほう、と俺は息を吐いた。

 いい眺めだ。

 

 術式の核になる東都タワーは、現在周辺地域ごと公安によって一般人立ち入り禁止となっている。

 万が一があったらまずいし、俺の術式の核にもしたかったからだ。

 

 

 それでは、術式発動までもう10分を切った。

 俺も準備に入るとしよう。

 

 のそのそと構えようとしたあたりで、風見さんがやって来て降谷さんへと声を掛ける。

 直前の点検が終わったらしい。

 相方の松田さんと共にエレベーターで昇って来たようだ。

 

「封鎖は完了しております。配布された眼鏡を使って不審な術式が無いかも確認済みです」

「ご苦労。これから黄衣君が防護術式を展開するところだ。後学のため君も見ていくか?」

 

 降谷さんが風見さんへと淡く笑ったので、風見さんは狼狽えて「は、はい。よろしければ!」と答えた。

 

『なんだ、ゼロがやけに機嫌がいいじゃねぇか。万年むっつりのくせに』

「うるさいぞそこ。せっかく五体を取り戻したのにまた毟られたいのか」

『ったく、なんとか言ってくれよヒロの旦那。傍若無人さに磨きがかかってんじゃねーか』

「お前の口が減らないのが悪い」

 

 軽口を叩き合う降谷さん達に、風見さんが静かに震えている。

 松田さんのとばっちりで一体幾度彼は降谷さんに絞められたのか。

 それを思えば、今日の降谷さんが上機嫌なのは本当のことであった。

 

 いや、普通にニャルの幸せ波動のせいでずっと幸せ洗脳を受けているだけだけど。

 

 自覚があるのか、降谷さんは難しい顔をして黙り込んだ。

 もう俺魔術式の展開始めちゃっていいかな。

 よしいいと言うことにしよう。

 

 

 パパッと足場になる基礎を東都タワーに打ち込み、その上に術式を多層展開していく。

 広がっていく無数の術式に、降谷さんが目を丸くした。

 

 人への物理保護、魂の保護、精神保護、情報的保護。

 ニャルラトホテプの化身が外へと出ないように閉じ込める術式、危害を加えることを禁ずる術式、位置把握、性質把握。

 丁寧に一つ一つ編み込んでいく。

 

 「壮観だな」と降谷さんが息をついて目を細めた。

 現在風見さんがかけている眼鏡は俺が配布したもののようだ。

 「魔法陣…のようなものがすごい勢いで動いていますね。アニメのエフェクトのようです」とシンプルな感想を漏らす。

 

 見えてない諸伏さんが暇そうにぼんやり俺の方を見ている。

 

『なんかちらっと光ってるのは魔術の発動した光ってやつか?』

「それは黄衣君が発動状態のチェックのためにわざと光らせているだけだ。通電確認みたいなものだ」

 

 だろう、と問いかけられて俺は頷いた。

 

 術式が正しく回ったら光るだけの仕込みが入ってるのだ。

 println(コンソール文字出力)でプログラムのデバッグをするようなものだ。

 原始的だが、分かりやすく気軽に使えるためいまだに俺は使っている。

 

 全ての術式を展開し終えたら一旦終了。

 

 ニャル化身はこの東京から出られないようになったし、この東京の人と建物はニャル化身によって傷つかないようになった。

 たぶん。

 化身が一丸となって対抗して来たらちょっとわからん。

 

 と、そのあたりでエレベーターチャイムが鳴り響いた。

 何か緊急事態でも起きたのか、風見さんが勢いよく振り返る。

 

 しかし、上がって来た人物はコナン君であった。

 タタタっと俺たちのところに駆け寄って来て、首を傾げる。

 

「黄衣さん達、ここにいたの?」

「おうよ。ニャルの魔術に対抗するためにな」

 

 立ち入り禁止のはずのここにスケボーを持って颯爽と現れた小学生に、降谷さんが圧の強い笑みを浮かべる。

 

「それで?君はどうして公安で封鎖してる場所に平然と出現するのかな?ん?」

「あっ……僕、偶然迷い込んじゃっただけでぇ」

「魔術で隠形でもしたのか」

「え?別に普通に街路樹の向こうに隠れたりしてここまで来たけど」

「………」

 

 降谷さんは鬼の形相でグルンと風見さんを睨みつけた。

 全員躾直しか?と背後に般若のスタンドを立ち上らせている。

 

 風見さんは星の精並みに震え上がった。

 反抗的な松田さんは「チッ、ゼロの教育が悪ィから坊主が来ちまったんだろうがよ」と吐き捨てた。

 

 笑顔の降谷さんと幽霊松田さんが睨み合う。

 風見さんが小声で「お助けぇ…お助けぇえ…」と泣いている。

 可哀想に。

 

 俺は咳払いしてコナン君に声をかけた。

 

「コナン君はなんでここへ?犯人を追ってたんじゃなかったのか?」

「犯人は分かったよ。……ここが一番犯人の滞在先としてあり得そうだったから来たんだ。死に場所として、一番適しているから」

 

 「どういうこと?」と俺が問うと、皆の視線がコナン君に集中した。

 コナン君は手短にあらましを説明してくれた。

 

「犯人は亡くなった恋人の仇を討つために連続殺人を犯してたんだ。それが終わった今、残るは自らも死ぬだけだ。殺人現場は北斗七星になぞらえてあって、残る場所はこの港区芝公園周辺のみ」

「……なるほど。自殺のために東都タワーに登るだろうと、君は考えたわけだ」

「うん。犯人は星を見るのが好きだったみたいだしね」

 

 そこまで説明があって、ようやく俺はこの事件とニャルのやらかしの関連性を把握できた。

 

 北斗七星になぞらえた殺人と、空の星を照応して召喚術式に組み込んでいたのだ。

 殺された人を捧げられた生贄と見立てて、大規模召喚の呼び水とする。

 よくあるやり方だ。

 

 が、もっともこの地球上でニャルを召喚するにはあまりにも捧げたエネルギーが足りなさすぎる。

 犯人に囁いて殺させたのだろうが。

 単純に北斗七星がロマンチックだからニャルがついでに思いつきで組み込んだだけだろう。

 

 あのニャル野郎!

 殺人にロマンチックさを見出すんじゃありません!

 羽虫が恋人の仇討ちのために殺人をしていてもです!

 

 と、そこで風見さんのスマホに着信があった。

 部下かららしい。その表情は険しい。

 

「この東都タワーに強行に侵入だと!?捕えたのか!いや、なに!?……まさか、すぐに吐き出させろ!!」

 

 そしてぶつん、と最後の鍵が揃った音がした。

 

 神々が降りてくる。

 百鬼夜行の時間のようだ。

 

 

 まず、空から光が落ち、星々の光の全てが暗闇に包まれる。

 

 天の中央に輝く北極星のみが残り、世界は暗闇に包まれる。

 地上の光も弱まり、薄暗く火の消えたような静かさが満ちる。

 

 そんな中、煌々と輝きを強く大きく主張する、北極星の姿がある。

 

 輝きはやがて物質的に力を持ち、大きな橋を編み上げていく。

 まるで宮廷劇にでも出てくるような、古風な橋が連なり連なり、星の彼方から地上へと伸びてきた。

 

 そうして、橋は東都タワーの天辺と融合した。

 

 そこから雨霰のように、尋常でない数の化身が降りてくる。

 闇を彷徨うもの、月に吠えるもの。

 有名な化身の姿もあれば、最近では滅多に見ない獣型の化身の姿もある。

 これは過去未来現在、全てに存在する化身達が可能な限り呼び出される極大魔術だ。

 

 塵も積もればなんとやら。

 総量を合わせれば、ニャル本体にすら届きうるだろう。

 

 その物量をもって描くは織姫と彦星の再演だ。

 俺が東都タワーに来るのは分かっていたのだろう。

 地上の光を天の川と見立てて、橋をかけて渡る愛の印。

 

 「どんな側面の僕もあなたのことを愛しています」というメッセージの込められた、ニャルの愛の返礼品だ。

 

 俺は赤面してしゃがみ込んだ。

 おいおいおいニャル野郎はさぁ、小っ恥ずかしくてさぁ。いい加減にしたほうがいいべ。

 

「なぁ降谷さんこれどう思う流石に恥ずかし……あれっ降谷さんおらへんやん」

『始まると同時に「ギャッ」って叫んで消えたよ』

 

 生温い顔をした諸伏さんに説明された。

 どうやら術式側に呼び出されたらしい。

 

 ならいいか。

 そのまま橋を渡れば元の場所に帰って来れるし、多分逆らえなくて無理やり連れ去られただけだ。

 術式が終われば解放されるだろう。

 

 それに、降谷さんは新入り化身だ。

 

 これを機に同僚と話とかしてもいいだろう。

 意外と話の通じる化身もいっぱいいるし、ニャル化身としての生き方のコツとかも聞けるかもしれないしな。

 

 化身達はあらかじめ巡回するべく定められた順路があるのか、それにそって順にぞろぞろと街を練り歩いていく。

 

 その中に、キョロキョロと何かを探すような仕草をする化身が一つ。

 見知った化身だ。

 俺は東都タワーの窓越しに彼に手を振った。

 

 神父さんの姿をした化身は、俺に気付いて王侯貴族にでもするように一礼した。

 優しい穏やかな化身で、昔話したことがある。

 でも人の心を知りすぎて逆に人の心がないタイプの人でもあった。ニャルらしいことよ。

 

『あ、ゼロじゃね?』

 

 松田さんが指差す先を見れば、降谷さんが黒い風状態でトボ…トボ…と意気消沈して歩いていた。

 

 神父さんの隣だ。

 何やら二人で雑談してしているようで、ポン…と神父さんに肩を叩かれている。

 慰めてもらっているようだ。

 

 他にもその辺りには人型勢が固まっていて、絶世の美男美女の集まりができている。

 ほぼパリコレのようだ。

 

 神父の仕草で俺の姿に気付いたらしく、皆大盛り上がりで俺に手を振った。

 芸能人にでもなったみたいだ。

 いや実際人気芸能人ではあるのだけれど。

 

 皆の様子を見て降谷さんが訝しげな顔をしている。

 あれは黄衣君だぞ?みたいなセリフが聞こえてくるようだ。

 

 顔からセリフが飛び出して来てるんかと思うレベルのわかりやすさに、俺は憮然とした。

 俺じゃ悪いんかオォン!?

 

 コナン君が少しだけ憂い顔をして、改めて俺に向き直った。

 

「それで、現状奇妙なエレクトリカルパレードなわけだけど、それで終わりなの?」

「まさか。奴なら間違いなく次を用意してるはずだ」

 

 化身の群れを呼んで、一定のルートを周回させて。

 きっとなんらかの仕掛けがあるに決まってる。

 

 また、ルート周回の任務が終わったら化身達は自由の身になるはずだ。

 そこで東京で大暴れさせないため、俺も全力を出す必要がある。

 

 というか、この術式に化身を送り返す効果は無いから、俺が頑張って全匹元の場所に送り返すしかないし。

 

 

 街に繰り出した化け物に、街の人がパニック…にはなっていなかった。

 

 警官が総出で交通整理をしていて、前もって降谷さんが手配していた通りに道を空けていたからだ。

 突然の仮装イベントか何かかと思っているらしく、人々は物珍しげに記念写真とか撮っている。

 

 百ニャル夜行は、今の所平和に進んでいるのであった。

 





・人型化身達
だいたい気分は同窓会。
ハスターは「TVで見たことある有名アイドル」みたいな立ち位置。
みんな多かれ少なかれブロマイドとか持ってるファン。
時々ガチ勢がいる。

・降谷さん
皆全然知らない相手なのに仲間って感じがして困惑している。
本体に好き勝手動かれて大変辛い、という話をしたら「HAHAHA、流れに身を任せるのさ」みたいな答えが返って来て意気消沈中。
しわしわピカチュウみたいになって歩いてたら化身達が優しくしてくれた。
酒とかも分けてもらった。
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