ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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アフターナイ神父

 

 一夜明けて、俺は泥のような眠りから目を覚ました。

 

 場所は黄昏の館の中にある寝室……と言う名の米花サンプラザホテルだ。

 俺は触手丸出しで、半分人化が解けて空間が歪んでしまっている。

 寝相悪過ぎだな俺。

 

 そして隣にはニャルの姿もある。

 ニャルも同じく触手丸出しの本性のまま、俺の触手を半分食った状態でモゴモゴと寝息を立てていた。

 

 俺の触手また喰われてるやん。

 ホンマに美味いんか俺の触手?

 

 俺は悪戯心を出して、ニャルの耳元で囁きかけた。

 

「ニャール、そんなことするとお前の触手も食っちまうぞ」

【!!!!!】

 

 ニャルは瞬時に飛び起きて、全身をデロデロに液状化させた。

 沸騰したニャル液がグツグツとベッドを煮え立たせる。

 なんでや。

 

 ニャルはプリプリ怒って、しかし恥じらっているようだった。

 

【我が夫!そう言うのはセクハラって言うんですよ!……で、でも、夫が望むなら…僕に否やはありません…】

「なんて???」

 

 テレテレェ、と液状化した体から触手を俺に差し出して来た。

 

 食うの?前から思ってたけどなんで???

 あ、いや、待てよ。

 外なる神達は子作りの時融合したままお互いを貪り食うのが通常の睦事だ。

 だからなのか……?

 

 いやでも、だからってそんなゲソ食うみたいなテンションになるもんなのか?

 

 とりあえずいつぞかの様にニャルの触手をもぐ、と歯を立てた。

 痛いだろうし、カプリと小さくはむだけにする。

 

 ニャルは瞬間。

 激烈に液状化した体を沸騰させて、蠕動しながら触手をのたうち回らせた。

 怖ェよ。

 

 ともかくニャルの機嫌も良くなったらしい。

 朝食を終えてから分裂して、片方を動かして俺の家に帰ることにしたのであった。

 

 

 

 家に帰ると、コナン君も爆睡していた。

 しかもベッドまで辿り着けなかったのか、ソファで星の精を枕にして寝ている。

 

 星の精も心底幸せそうにグースカいびきを響かせているようだ。

 夜はそれぞれ別々に寝ていたのだが、本当は一緒に寝たかったらしい。

 

 というか星の精っていびきかくんだな。

 構造的にどんな理屈なんだ?

 

 ともかく、コナン君へと声をかける。

 

「オハヨー」

「んぁ……あ!黄衣さん!大丈夫だった!?」

「おうよ。こっちは一件落着。そちらは昨晩何かあった?」

「一悶着はあったけど無事だよ」

 

 大欠伸をしながらコナン君が伸びをしている。

 

 どうやら松田さんと組んで頑張ったようだ。

 詳しく話を聞くべきだろうが、まぁ後でよかろう。

 

 コナン君のために作り置きのおかずを温めて、出してやる。

 「黄衣さんは食べないの?」と聞いてくるから、「俺はもうあっちで食べたからいいんだ」と返事をした。

 

 コナン君はギョッとして顔をこわばらせた。

 

「降谷さんの中の人の…手料理を……!?」

「うん。今回は煮え立つ金属を食わされた。みりんは入ってた」

「一周回ってなぜみりんが入ってるのか分からない」

 

 コナン君が戦慄している。

 

 口に含むと固形化して、食ったやつを貫こうとする意志を持つ金属だ。

 煮え立つ液体金属の中には、いい感じに煮えたじゃがいもとレンコンが入っていた。

 

 きちんと肉じゃがの味がしたから、あとちょっとだと思われる。

 どんどん料理が上達して、ニャルが料理上手になる日も近いな。

 

 俺が頷くと、コナン君は怯えて縮こまってもそもそご飯を口の中にかっこんだ。

 気持ちはわかる。

 だがこう言うのは将来性に投資するしかないのだ。

 

 ご飯を終えたら二人で事務所に向かう。

 今日は後始末で降谷さんも諸伏さんもいないようだ。

 

 マモーさんも最近忙しいし、なんだか事務所が広く感じる。

 

 

 

 事務所を開けてしばらく。

 一人の来客がやってきた。

 

 エレベーターから上がって来たその人物は、黒いカソックに身を包んだ、白髪褐色肌の男性だ。

 コナン君が見知らぬ人物の姿に少し驚いて凝視している。

 

 俺は片手をあげて男性に挨拶した。

 

「お、ナイ神父!昨日は悪かったな、ニャルのお遊びに付き合わせて」

「いえいえ。わたくしの方こそ御方の手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした。我ら同胞を代表し、謝罪をさせてください」

 

 ナイ神父は恭しく一礼した。

 本当に落ち着いた化身なんだよな。

 

 コナン君が「誰?」と小声で俺に言うから、解説してやることとする。

 

「彼はニャルラトホテプの化身の一人、ナイ神父だよ。かなり昔からいる化身でね、今はアメリカにいるんだっけ」

「はい。星の智慧派の指導者をしております。お見知り置きを、神子殿」

 

 おっかなびっくりのコナン君の前で穏やかに笑って、ナイ神父は口を開いた。

 

「御方が神子を据えるのは六億年ぶりでしょうか。かのハイパーボリア興隆の時の神童以来。何か心境の変化でもございましたか?」

「いやいや。そんなんじゃなくて、俺が面倒を見てる子ってだけさ」

「六億年前もそのように仰られておりましたが。いえ、これ以上は無粋でしたか」

 

 くすくすと笑うナイ神父に、俺はヴッと言葉を詰まらせた。

 やっぱりこの神父さんは人の心への理解がありすぎるんだよな。

 性根は割とサイコパスだが、それをうまく隠せるだけの社会性があるのだ。

 

 ニャルの中にある落ち着きと大人らしさを全て凝縮した化身とも言える。

 

 だから本体があんなパッパラパーになっちゃったのかなと、俺は昔から訝しんでいたりする。

 

 ナイ神父は柔らかく笑ってニャルラトホテプをフォローした。

 

「我らが本体をお許しください、御方。いつだって本体は貴方に夢中なのです」

「今回はホント何しでかすかと思ったよ。奴め東京で虫入り琥珀作ろうとしおってからに」

「本体の歩み寄りは拙くはありますが、全ては御方を思ってのこと。どうか温かい目で見ていただけますと、我らも安心いたします」

 

 そうだな、と俺は頷いた。

 旧支配者的に俺の方が変なのは間違いないんだから、感謝せねばなるまいよ。

 ニャルはいつも、俺に対してとんでもなく歩み寄ってくれている。

 

 得難い、唯一無二の親友だ。

 

 俺が表情を緩めると、ナイ神父もどこかホッとした様な顔をした。

 そのまま、軽く話題を変えることにしたようだ。

 

「ところで、我が星の智慧派の魔術師達を連れて、近々東京に観光に赴こうかと考えております」

「お、まじか。サークル旅行?」

「はい。昨晩の異空間で行われた魔術合戦、そして東都に刻まれた極大召喚魔術に皆興味津々なようでして。一度見学できないかと思っております」

「なら来日したら俺が解説でもしようか?」

「!!それは望外の喜びではありますが…良いのですか?」

「それくらいなら手間もないしな」

 

 若干心配そうに眉を顰めていたが、指摘しないことにしたらしい。

 こういう時のナイ神父の懸念はよく当たる。

 俺は恐る恐るナイ神父を見つめると、観念して懸念事項を教えてくれた。

 

「新しき同胞の彼、黒い風に一言伝えた方がよろしいかと。魔術師が大挙して入国するのですから、懸念は伝えておくべきでしょう」

「神か。うん、降谷さんに伝えてから返事するから待っててくれ。これ、電話番号だから」

「いえ。御方の力になれたなら何よりです」

 

 こいつマジで気づいとらんかったんか、という顔をしたのは一瞬だった。

 気を取り直したナイ神父は、懐から白い封筒と本を一冊取り出した。

 

「それと、これは皮膚の兄弟団より御方に渡すよう依頼されていたものです」

「ん……手紙か」

 

 中には、ニャルラトホテプ降臨の地である東京に観光へ行きたい旨と、本を作ったので献本したい旨が書かれていた。

 

 本の方は印刷所で作られた薄いフルカラーオンデマンド本であった。

 表紙にはおしゃれなイラストが踊っている。

 タイトルは「神の魔術読解してみた!」とポップな字体の日本語でデカデカと印刷されている。

 

 俺は再びまじまじとナイ神父を見つめた。

 ナイ神父は平然とニコッと笑って俺の言いたいことをスルーした。

 

「私も執筆に協力いたしましたゆえ。降臨された我が本体が最近使っていた魔術をピックアップして、詳しい術式解説を入れたものになります」

「いや装丁がバリバリの同人誌」

「同人誌ですから。電子書籍版も販売中だそうです。我ら星の智慧派の者もかなり購入しているそうですよ」

「同人魔導書……」

 

 新しい概念が生まれちまったようだな!

 

 だが昨今ハードカバーで本を作るなんてあまりにハードルが高い。

 個人が本を作るならこうなるのも宜なるかな、と言うやつかもしれない。

 いやでも流石に妙だな……。

 

 俺はぱらりと内容を確認していく。

 意外とガッチリ纏まっていて、ちょっとびっくりした。

 ここまで踏み込んで高度魔術を解析した本が、この露出の多い魔女っ子の表紙で本当に良かったのか?

 

 分からん。

 ともかく俺は降谷さんに連絡して、神父に返事を返すタスクをこなすべきだろう。

 

 ナイ神父とはその後少し雑談をした。

 降谷さんはどうだった、とか、ハイパーボリア再興って考えてる?とか。

 ナイ神父は意外と降谷さんのことを心配していて、「彼が人のつもりで振る舞うなら、完璧に己の人外性を把握していなくてはならないというのに」と眉を顰めていた。

 

 そうしてしばらく話した後、ナイ神父は来た時と同じように、あっさりと帰っていった。

 

 神父は帰り際、コナン君を少しだけ見てから俺へと笑いかけた。

 

「植物に水をやり過ぎれば根が枯れるというものです。御方もほどほどになさいますよう」

 

 そのように、柔らかく忠告したのだった。

 





・恥じらい沸騰ニャル
我が夫、超エッチじゃんになってる。
ハスター「分からん……なんも分からん……」
ハスターは人間のエロ本恥ずかしくて見れないタイプの筋金入りの羽虫マニア。
旧支配者の睦事に一ミリもエッチさを感じられない。

・ナイ神父
ニャルの性根に有り余る社会性と常識力を兼ね備えたスーパー化身。
コンセプトは「羽虫の群れに投入して、擬態してその生態を調べる化身」。
早々に観察に飽きたニャルに放って置かれたので、好き勝手生きている。
地に足ついた人。

・魔術同人誌
96pフルカラー魔術式解説本。
表紙はマットPPのA4サイズ。
ニャルを観察している中で目撃したちょっとした魔術を集めて読み解いた、内実はガチガチの魔導書。
超上級者向けだが、その確かな知識と秘奥が伝わる、公安信者さんも驚愕の逸品。
表紙は日本風の魔女っ子。全部現代日本語…というかハイパーボリア語。
電子書籍版は5ドルで販売中。
これまで頑張って資金を集めてようやく出した新刊なので、皮膚の兄弟団はワクワクで売り上げページの更新を連打しているようだ。
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