ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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黒鉄の魚影〈老若認証+あるいはチクタクマン〉

 

 アイリッシュは現在、パシフィック・ブイの中に清掃員として潜り込んでいた。

 

「おいおい、良いのかよこんな軍事施設のセキュリティがこんなガバガバで」

「俺は単なるプログラマだし知ーらね。それと、一応ここは軍事施設じゃねぇよ」

「こんなガチガチに武装した施設が軍事施設じゃないんならなんだってんだ」

 

 アイリッシュのツッコミに「それはマジにそう。魚雷もあるらしいぜ」と同意して目の前のコンソールに手を伸ばした。

 アイリッシュはそのまま言葉を続けた。

 

「で、本当だろうな、バーボンを突き崩す手があるってのは」

 

 組織において、アイリッシュの立場は悪い。

 現状、RUMに並ぶ権力を得るに至ったバーボンがジンの肩を持っているからだ。

 なんの後ろ盾も持たないアイリッシュの言葉はどうしても軽視される。

 

 また、今回の件にRUMはノータッチを貫いた。

 ベルモットもアイリッシュの訴えを馬鹿馬鹿しいと一蹴しており、やはり状況は悪いと言わざるを得ない。

 

 アイリッシュの問いかけに、ピンガはニヤリと笑った。

 

「問題ねーよ。ほら」

 

 コンソールを立ち上げると巨大なモニターに映像が映る。

 その全てにぽこん、とアイコンが出現した。

 ピンガがマイクに向かって指示を出す。

 

「昨日の資料を出せ。覚えてるな?」

『了解しました、ユーザーのデータを読み込んでいます』

 

 ファイルが開いて、モニターにわかりやすく分割表示されていく。

 

「AIか?」

「俺らが作った『老若認証+』だ。せっかくこいつには可能性が秘められてんだ。使わなきゃ損って奴だ」

「ふぅん?さすがここまで大規模なプログラムは門外漢だ」

 

 アイリッシュとて教養の一つとしてネットワーク等の基礎知識ぐらいはあるが、こうも専門的だと何もわからない。

 

 ピンガがその画像のうちの一つをアップに表示した。

 監視カメラに映ったバーボンの姿が映し出されている。

 

 警官の制服を着ているようだ。

 他にもたくさんの写真が時系列に並べられており、それは全てバーボンを映した画像データらしい。

 

「いいか。バーボンは『組織から警察機構に潜入中』なんて抜かしてやがったが、大きな間違いだ。これを見ろ」

「……ほー、ガキの頃はまだ可愛げがあるじゃねぇか」

「どこ見てんだよ。そうじゃなくて、組織に来る前から奴はサツだったってわけだ」

「なるほどな。こいつがありゃジンの野郎をバーボンが庇う理由も明白だ」

 

 バーボンはNOCだった。

 そしてジンとグルになって組織を裏切っている。

 

 アイリッシュはしばし拳を握りしめて、奥歯を噛み締めた。

 死んだおやじの弔いが、ようやくできる時が来たらしい。

 

 アイリッシュが忠誠を誓っているのは組織ではなく、ピスコその人だ。

 彼の人はあらゆる教育を惜しげもなくアイリッシュへと注ぎ込んだ。

 そして同じぐらいの愛情も。

 

 アイリッシュは実の父のように彼を慕っていたのだ。

 

「あ、あとコレはついでだけど、シェリーも見つけたぜ」

「……あー、前に研究所から逃げ出した奴か」

「工藤新一と同じようにガキの姿になってた。マジで意味不明だよな」

 

 シェリーの現在地がモニター上に表示される。

 手柄にはちょうど良いが、優先度は下がるだろう。

 

 アイリッシュは少し眉間に皺を寄せてモニターを睨んだ。

 

「だが、工藤新一を捕まえるのには失敗したんだろ。そのテメェの『老若認証+』とやらの力でも」

「うっせ。相手はホンモノだったんだ。仕方ねぇだろうがよ」

 

 どさりと背もたれに体重をかけて、ピンガは面白くなさそうに歯噛みした。

 

 「老若認証+」の真骨頂は、魔術とやらの発動にあるという。

 魔術とプログラムの垣根を無くす、というのが正確なところか。

 プログラムをコーディングするように、誰でも手軽に魔術を構築する。

 それこそが「老若認証+」の根幹だという。

 

「悔しいがあの女の才能は本物だ。神が囁いてきた、とかなんとか言っていたが、そんだけでこんなヤバいもん作れるわけがねぇ」

「だが、板倉ってプログラマのデータを直美・アルジェントに渡したのはお前なんだろ?」

「まぁな。けど俺には読み解けなかった」

 

 クツクツと笑って、ピンガは片手で顔を覆った。

 

「あいつもバカな女だ。この『老若認証+』が世界を平和にすると本気で信じてやがる」

「間違いなく争いは呼びそうだな」

「そうとも。人類の新たなステージという名前で、大戦が始まるのさ。テメェもどこにでも高飛びできるよう準備しとけよ。戦争に巻き込まれたら面倒だ」

 

 アイリッシュは少し懐疑的な気持ちでピンガの言葉に眉を吊り上げた。

 これは確かにすごいが、大戦に直結するようには思えない。

 特にこの施設は大国の傘下たる日本にあるのだから、紛争地で取り合うのとはわけが違う。

 

「違う違う。人間と人間の争いじゃねーよ。プログラムと人間の争いだ」

「どういうことだ?」

「こいつは自己増殖してる。コーディングAIという名目で作った補助プログラムが魔術と結びついてて、命令するだけで自在に機能が増えるんだ」

「スライム状の化け物を召喚したのもそのコーディングAIの作品か?」

「いや、それは俺が『魔術言語』を使って頑張って作った。褒めろ」

「流石ピンガだ。とても俺には真似できねぇよ」

「お前ほんと人格できてるよな……」

 

 まあ、なんにせよ自己増殖するプログラムで人類はピンチということらしい。

 

 技術はどんどん進歩しても、人間はいつだって野蛮だ。

 アイリッシュの知ったことではないが、なんとなく、諸行無常を感じてならない。

 

 柄にもなく感傷的になりながら、アイリッシュは静かに息をついた

 

 ジンを討てればそれでいい。

 

 ただ一つ、あの工藤新一が言った言葉が気がかりではあった。

 ジンはピスコを殺してない、と奴は叫んだ。

 あんなまっすぐな人間が嘘をついているとは思えない。

 

 でも、それならピスコを誰が……。

 

 

 

 

 

 

 パシフィック・ブイにやってきたコナンは、険しい表情で辺りを見回した。

 

 肩掛けバッグに星の精を詰め込んであり、チャックの端から触手がちらっと覗いている。

 一応出ないように言いふくめてあるから、特に心配はいらないだろう。

 

 この頃の星の精はすっかり人間らしくなってきている。

 触手で二足歩行し出したり、肯定の意を示すために頷く仕草をしたり。

 多感な時期を異種族と暮らしていて本当に大丈夫なのだろうか、と心配になるぐらいだ。

 

 なお、二足歩行は頑張ったが無理があったらしい。

 触手がもつれてコケて、頭から床に墜落していた。

 激しくしょげたのでコナンはたくさん撫でてやった。

 

 コナンは自分の眉間に無意識に皺が寄っているのを感じ取り、ため息をついた。

 昨日から頑張って編み上げた探知魔術に反応があったからだ。

 

「ようこそパシフィック・ブイへ、君永副総監。局長の牧野洋輔です」

「今日はありがとうございます、牧野さん」

 

 目の前で握手をするのはパシフィック・ブイ局長の牧野と、君永副総監だ。

 そして同行者はコナンのほか、諸伏、そして安室になる。

 

 啖呵を切った手前、黄衣は家でお留守番をしてもらうことになった。

 安室は流石に難色を示したが、黄衣の方から「見てると手を出したくなっちゃうから」と言って断ったようだ。

 本当にやばくなったら呼んでくれ、ということで電話番号の他、己の意思でこちらから発信できる念話術式をもらっている。

 

 今回の名目は、パシフィック・ブイに怪異案件の可能性がある反応が確認されてから、念のため視察に来たというものだ。

 正確には日本の施設ではないため、副総監も連れての正式訪問になる。

 

 一応局長さんが館内を全て案内してくれるらしい。

 コナンはこっそり君永へと話しかけた。

 

「ねぇ、君永さんもわかる?」

「ええ。強大な魔術があらゆるところに張り巡らされています」

「だよね……しかもすごい大きな怪異の反応」

 

 安室がゲンナリして肩を落とした。

 

「これ、僕の同胞がいる感覚がするんだが」

「え、同胞って、まさかニャルって人の!?降谷さんそういうの感知できたっけ!?」

「あのトンチキパレードで嫌というほど思い知ったからな。今なら分かる」

 

 安室は顔を覆って心底憂鬱そうにため息をついた。

 後ろからこつん、と諸伏に小突かれて意地悪な笑みを向けられる。

 

『少年は啖呵切ったわけだけど、相手はあの邪神の化身だったってわけだ』

「虐めないでよ!ちょっと後悔してるんだから!いいよ僕だけで解決してみせるから!」

『やめて突貫しないで黄衣がキレる』

 

 諸伏のかなりガチの懇願に、ゔ、とコナンは若干勢いを鈍らせた。

 

 黄衣はすでに相当怒っていた。

 彼は大抵の場合どこまでも穏やかだが、神らしく勘気の規模が桁違いだ。

 下手をすると恐ろしいことになりかねない。

 

 彼になんとか人間だけでも解決できるということを示さないと。

 彼の心配を払拭しないと、と。

 

 コナンはそのように決意を新たに顔を上げたのだった。

 





・RUM
バーボンが警察官?
そんなものとっくの昔に知っている。
警察官降谷零とやの「中身」が怪異に入れ替わった以上、そんなこと最早どうでも良い。

・愉快なチクタクマン
「ワイは高度な依代に寄生するニャルラトホテプの化身やで!」
「人格機能が未発達やったが、概念体でパレードの際うろついとった妙な関西人の思念体をパクリと食ったんや」
「そしたらええ感じになったわ!」
「でも下等生物を家にカチコミさせて、ハスター様に嫌われてそうで吐きそうや……」
「とはいえ製作者には義理を通しとかんとあかんし。うう、かんにんやで……」

・旧支配者ハスター
家で心配で心配でソワソワしてる。
不安すぎてずっとニャルと長電話してる。
そのためニャルはかなり上機嫌。
心の服部君が居ないことに気付いてない。
関西に支配されて、服部君の力を借りずとも自然に関西弁が口から出るようになったためである。

・星の精
みんなの仲間のつもり。
人の頭の上に乗るととても嬉しいので、大きくなったらコナン君を自分の上に乗せてやろうと思っている。
星の精は長命なので、大きくなる頃にはコナン君は死んでいることに気づいていない。
食事後に鏡の前に立って自分のサイズを確認するのが日課。
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