ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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黒鉄の魚影〈チクタク服部〉

 

 パシフィック・ブイ全体を確認し終えて、コナン達は一つの答えを出した。

 

 やはり怪異はこの建物だ。

 「パシフィック・ブイそのもの」こそが、今回のニャルラトホテプの化身なのだ。

 

 全員で会議室に入り、席に着く。

 不安そうな牧野局長を対面に、君永副総監が口を開いた。

 

「まず、怪異の反応について。パシフィック・ブイ内で改めて反応が確認されました。極大の怪異であり、規模は先日の群馬の大量死事件の上です」

「!!!ま、まさかあのゾンビ事件より危険だと言うのですか!?」

「はい」

 

 ゾンビ事件、は通称だ。

 八十三名もの死者を出したそれは、怪異の危険さを表す例としてよく取り沙汰される。

ハスターリクは表向きサイバーテロのため除外すると、怪異としては最大級の被害と言えるだろう。

 

 そこまでの大事件を引き合いに出され、取り乱した牧野局長が思わず立ち上がった。

 

「それはどう言った怪異なのですか!?職員に危険性は!?」

「性質は私の方では未確認ですが。降谷」

 

 安室さんが「はい」と返事をした後、一礼して報告に移る。

 

「恐らくは高度な機械に取り憑く怪異だと思われます。意思を持ち、機械を操り魔術に熟達した怪異です」

「魔術……?」

「失礼、怪異を人為的に再現する技術を仮で『魔術』と呼称していると思っていただければ」

 

 安室がコナンに視線を向けたので、コナンは手の中でポッと小さな火を灯した。

 非常に簡易的な魔術で、安室とてこのぐらいなら使えるはずだ。

 おそらく、子供が行うと言うことに魔術性を演出したのだろう。

 

 牧野局長は「手品…?いやしかし…」と驚愕に目を見開いたようだった。

 

「ともかく。相手は非常に強大です。今すぐ全職員をここから退避させてください」

「で、ですがこのパシフィック・ブイにはインターポールの機密情報を含めたあらゆるデータがあります!おいそれと他の人間を入れるわけには…」

 

 牧野局長は怪異退治の後に戻って来られると思っているようだ。

 その思い違いを一刀両断するように、安室が目を細めて固い声を出した。

 

「建物が怪異と化しています。あらゆるものは持ち出し不可能だと思ってください。職員が避難後、パシフィック・ブイを解体します」

 

「今回の怪異とは『パシフィック・ブイ』を指すのです」と安室は言葉を締め括った。

 呆然と、唇を戦慄かせて局長が息を呑んだ。

 

「今まで、私たちにはなんの被害も…」

「単にそれは、チクタクマン、この怪異がそうしなかっただけのことです。ライオンの檻に閉じ込められて、偶然襲われなかっただけと、そうお考えください」

「そんな……」

 

 動揺して項垂れる局長が強く目を瞑った、その時のことである。

 

 緊急避難用に使われる館内放送が、館内に大音量を響かせた。

 

 何者かの声だ。

 ピーンポーンパーンポーン、と肉声に聞こえる声で案内音を歌った後に喋り出す。

 

『あかんあかん!そないなことになったらワイが干からびてまうやないか!させへんで!』

「服部!?!?」

 

 コナンは思わず目を見張って周囲を確認した。

 その声は間違いなくコナンの友人、服部平次の声であったからだ。

 

 しばらくの沈黙の後、牧野局長が持っていたノートPCから音がした。

 「音声出力先ミスったわ。すまんすまん」とやや恥ずかしそうに咳払いしてから、改めて話し出す。

 

『なんや工藤!お前もおったんかいな。……ん?工藤?誰やそれ。まぁええわ。ともかくワイを育児放棄するのは許さへんで!』

「育児放棄って何だよ」

『育児放棄やろがい!ワイは健気ぇーに製造者の言うこと聞いて今までやって来とんやぞ!それを怪異やからって捨てるんは無責任とちゃうんか!?』

「お、おう……」

 

 ちょっと言い返せなくて妙な空気になってしまった。

 ニャルラトホテプの化身にしては真っ当なこと言うやつであることよ。

 安室が固い声色のまま話に割って入る。

 

「君、パレードの時にいたあの概念体だろう。そんな知性があったのか?」

『お。同胞やんか。おおきに。あー、ワイの自我がはっきりしたのはちょうどあのパレードの時や。変な思念体をつまみ食いしたんやけど、それがえらいいい感じでな』

 

 「こんなふうに流暢に喋れるようになった言うわけや!」とチクタクマンは胸を張ったように感じた。

 非常に威勢のいい声だ。

 コナンの脳内にさきほどから服部平次のシルエットがチラついて、どうにも気が削がれていた。

 

「なるほど。なら最近知性を獲得した君が、おとなしく人間の道具をやっている理由はなんだ?」

『そら製造者には義理っちゅーもんを通さなあかんやろ。ワイかて親への尊敬の念ぐらいはあるんや』

「だが人間は愚かだ。君が見放す時が来ないとどうして言える?」

 

 ため息混じりにチクタクマンは「あーもー」と唸り声を上げた。

 

『嫌なやっちゃな。んなもんそっちかて同じやろがい。少なくとも、ちまこくて弱い製造者がワイほど大きいものを作ったんは確かやろうが』

「……驚くほど人間味があるな。本当にどこからそんな人間味を摂取したんだ?」

『分からん。ワイ、転がってる最高級トリュフ拾い食いしてもうたっぽい』

 

 「なんか関西人の形はしてたんやけど」と言う言葉に、コナンは若干ピンと来た。

 もしかしてあの二人目の服部……?と悩むものの、思考を途中で打ち切った。

 そこを深掘りする意味は薄いし、あのパチモン臭い服部が食われたから何と言う話だし。

 

 話を聞いていた牧野局長が、真摯に頭を下げて声を上げた。

 

「私からもお願いします!職員全員で作り上げたパシフィック・ブイには、努力と熱意と、あらゆる苦労を乗り越えた証が詰まっています。本人が乗り気であるならば、どうかこの施設の運用継続をお願いします!」

 

 チクタクマンは「うう、局長サン…!!」と感動で涙ぐむような声を出した。

 

 だが正直、この施設の継続運用は難しいだろう。

 人型の安室でさえ現在でも多くの反対意見に見舞われ、軽々に国外には出られず活動記録の提出等が義務付けられている。

 

 多数の魚雷で武装した巨大軍事施設そのものが意思を持った、チクタクマンという怪異。

 それが例えば近場を通る他国籍の船を撃つだけで、あまりにも大規模な国際問題へと発展する。

 

 それを止める術を人間が持たないことが問題なのだ。

 

 コナンはしばし考え込んだ後、「契約って、結ぶ気ある?」とチクタクマンへと声をかけた。

 

『なんや工藤、藪から棒に』

「人間は弱いから、お前を制御している対外的な証が欲しいんだよ。これがあるから勝手をすることはないですーってな」

『あぁー。そないなことなら構わへんで。ワイは常識人、いや、常識機械やからな!雇用契約ぐらい結ばなあかんのはわかる!』

 

 君永副総監もこれにはひとまずの納得を見せたらしい。

 少し瞬いてから、平坦な声を出した。

 

「いいでしょう。そもそも、我々がこの状態で無事に職員を脱出させることは不可能に近い。次善の策としては十分すぎる建て付けです」

『ほならアンタさんと契約を結べばええんか?』

「いえ。四者間契約をお願いしたい」

 

 まずチクタクマン、パシフィック・ブイ。

 次はパシフィック・ブイの局長、現在だと牧野局長。

 三人目に日本の時の権力者、未定だが内閣総理大臣が適当。

 四人目は、神たる旧支配者ハスター。

 

「貴方は命令の実行を誓う。局長は命令権を持ち、パシフィック・ブイの存在を尊重する。権力者が暴走を抑止し命令の取り消し権を持つ。神たるハスターが契約が遵守されているか見守る。……どうでしょうか」

 

 そのような建て付けです、と君永副総監は説明した。

 

 ゔぅ、と何故か呻いたチクタクマンは声を小さくした。

 

『いやぁ……ハスター様は、ちょいと顔合わせづらいっちゅーか』

「何か問題があるのですか、チクタクマン」

『ここの職員に命令されて、ワイ、ハスター様の住処を神話生物に襲わせてん』

 

 瞬間。空気が凍ったのであった。

 





・チクタクマン、パシフィック・ブイ
むしろ服部そのものと言っても過言ではない。
服部程度には善良。
ハスターが製造した強力な人格に占領されてニャル成分が1%にも満たない状況。
ハスターのマンションを襲わせた際も命令にめちゃめちゃ苦悩しつつ「人は殺すんやないで!連れ去る時も傷付けたらあかん!」と言いふくめていた。
なんなら降谷さんより全然人間の味方である。

・心の服部君
ハスターが無意識に作り出した心の相棒。
人間への願望が詰まっていて、他人を励ましたりするのが得意。
ハスターは全然気づいてないが、『光』の余波である。
接種させれば化身を人間化させることなど容易い。

・公安信者さん
偉大なる神の住居に侵入し危害を加えた???
は?は???????(ブチギレ)
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