ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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星の智慧派の魔術講習会!

 

 パシフィック・ブイ沈没からしばらく。

 

 大事件になった今回の事件は、大規模なテロ事件としてニュースでも取り上げられられた。

 幸いにも多少の怪我人は出たが死者はゼロ。

 爆弾が人通りのない場所にあったことと、迅速に避難が完了したことで被害は最低限に済んだ。

 

 そして、四者間契約は未だ条文を練っている最中だ。

 

 契約内容はかなり揉めたようだ。

 ICPOに怪異の権限を渡すべきではない、これは日本の問題だ、ということらしい。

 日本領海内に沈む巨大怪異が、もし他国の手に渡ったら。

 それは確かに国防上の大きな懸念点となりうるだろう。

 

 結局、人類への攻撃と取られる行動は一切禁止、という方向で話を進めているとのこと。

 つまり装備してる魚雷等は使用不可になるわけだが。

 こればっかりは仕方あるまい。

 

 俺も契約の守り手として事の推移を見守っていきたい所存である。

 

 

 

 さて。

 話は変わり、今日は星の智慧派の日本観光旅行当日だ。

 

 既に彼らは飛行機で出立しており、日本に到着済みのはずだ。

 人数は40名程度。

 空港からバスを使って東都タワーまでやってきて、そこで俺の講習を聞き。

 その後徒歩でニャルパレードの順路を回る予定とのこと。

 

 その後は近場のホテルでひたすら研究&現場の再確認を繰り返すらしい。

 4日後には再び空路で帰国するとのこと。

 

 大部分が自由時間だが、人によっては気晴らしに観光したいらしく。

 オプションでいくつかガイドツアーも企画されているらしい。

 意外と至れり尽くせりだ。

 

 俺はこれから彼らへの講師役をすべく、東都タワーの下でポヤポヤと彼らの到着を待っている。

 

 展望デッキでニャル術式解説と、ニャル化身VS俺の戦いについて魔術戦説明をする予定だ。

 

 今回、向こう側は頑張って東都タワーのメインデッキを貸切で予約している。

 雑踏に邪魔されずに俺の話を聞きたいらしく、気合を入れて貸切にしたらしい。

 まあ、俺も人間に対して魔術講義なんて久しぶりだし、楽しみにしてくれるのは嬉しい限りだ。

 

 がんばるぞい!と気合を入れていると。

 どうやら彼らのバスが到着したようだ。

 

 大型バスが東都タワーの駐車場へと入っていく。

 

 俺はぴらぴらとツアー用の旗を掲げながら自己主張した。

 魔術師さん達なら古エイボン式の術式も見えるだろうし、一般人は見えないのが利点だ。

 魔術式を改造して空中のよく見えるところに「星の智慧派御一行様 術式案内はこちら」と表示させるようにしてアピールする。

 

 もちろんそんな術式まともに発動しないが、これは純粋に案内のために打ち上げているので問題ない。

 

 駐車場に止まった大型バスから、団体様が降りてくる。

 どうやら遠くの方から俺の案内術式を専用器具で激写しているらしい。

 

 待って何故ただの案内看板を撮るのだ。

 

 一番先頭で先導を務めていたナイ神父が、朗らかに笑ってこちらへ近づいてきた。

 

「お待たせしてしまい申し訳ありません、黄衣の王よ。本日はよろしくお願いいたします」

「おうよ、なんか緊張してきたな……分かりづらかったら言ってくれよな?」

「ははは。貴方ほど魔術の最奥を理解し、かつ人に寄り添う術式を作るものはおりませんよ」

 

 相変わらずヨイショが上手いニャル化身の話を聞き流しつつ。

 次々やってきた後続の団体客ご一行も、おぼつかない仕草で祈りを捧げてきた。

 古代ハイパーボリア式の神への礼だ。

 

 ナイ神父に、あらかじめ「これは今回の解説に対する礼ゆえに加護の付与等は不要」と言い添えられているから、名残惜しいが加護は付与しない。

 ひとまず俺もぺこっと小さく頭を下げておく。

 居心地が悪いが、押し付けも良くないからな。

 

 ともかく、全員集まったらまず東都タワーに登ろう。

 

 時刻は既に夜の9時。

 貸切が夜時間しか空いてなかったからだが、まあその辺は俺が臨機応変に対応すればいい。

 

 遠くの方にはチラリと公安の見張りの姿が見える。

 メインデッキにも職員に扮した公安が紛れ込んでいるそうだし、なかなかに大変だ。

 

 広いメインデッキへエレベーターで昇ると、美しい夜景が広がっているのが見えた。

 

 いく人かは当時の術式の全容を確認しようと、遠見の魔術を発動しているようだ。

 だが、夜であることもあり、流石にここからでは見にくいだろう。

 

 あらかじめパイプ椅子を並べてあるから、皆に座ってもらってから俺も前に立つ。

 軽く咳払い。

 若干緊張しつつ、俺は口を開いた。

 

「改めまして、俺は旧支配者。黄衣の王の名前で知られるものだ。今回は先日起こったニャルラトホテプ大量召喚に連なる一連の術式、そして魔術戦について解説していきたいと思ってる」

 

 拍手は普通の熱量だったが、その眼力の強さは並大抵ではない。

 凄まじい熱視線だ。

 星の智慧派は魔術ヲタクの集まりだし、そりゃ旧支配者のガチンコ勝負は興味津々か。

 

 俺はやや全身の触手をへなっとさせながら言葉を続けた。

 

 「まず当時の映像を再現しよう」と言って、メインデッキの大きな窓をスクリーン代わりに映像を流す。

 

 空から星々が消えて橋がかかり、ニャルの軍勢が降りてくる当時の映像だ。

 それがこのメインデッキから見たらどうなるか、を時間を切りとって再現している。

 日時も端っこに映せば、情報としては完璧だろう。

 

 おおお!!!と星の智慧派の人たちが歓声を上げた。

 

 なにやら器具でメインデッキの窓ガラスを激写している。

 いやその器具で撮ると、映像じゃなくて裏で動いてる時間回帰と位置補正と映像出力の魔術式だけ写っちゃうんやけど。

 まあええか。

 

 後は順番に解説を入れていく。

 魔術式全体像の図解を一番最初に。

 あとは分かりづらいトリッキーな動きをしている箇所の補足説明とかを加えていく。

 

 魔術戦については皆さんの許可を取ってVR形式で上映した。

 脳に当時の状況を流し込み、五感で体感してもらうのが目的だ。

 俺の魔術の組み方を体感するのも面白い体験になるだろうと思ったわけだ。

 

 半分以上、血走った目になってる人も多々見受けられたが、気にしないこととする。

 

 それと、講習のお土産の通知も忘れず行わねばなるまい。

 

「俺が使ってる組み代わり型の防御魔術は、人間が使いやすいように改良した術式をこの説明会後に配布予定だ。お土産に持って帰ってくれ」

「!?!?良いのですか神よ!!」

「ああ。出力が足りないから強力な魔術には無力だし、組み換え速度も粒度も荒い。そこは各自チューニングしてくれ」

 

 星の智慧派の面々がどんどんギラギラとしてきたので、だんだん怖くなってきた俺氏である。

 勢いが怖ぇんじゃよ。

 

 ふと、後ろにいる警備員さんが立ったままメモを取ってるのが見えた。

 別に問題ないんだが、なんとなしに視線を向けて。

 

 よく見ると……それは公安信者さんの変装であった!

 いやなんでだよ!?仕事どうしたよ副総監!

 

 でも口に出すこともできず、俺はもやもやしながら講習を続けるしかない。

 警視庁の仕事は大丈夫なのだろうか。

 重要な稟議がストップしてたりしないだろうか。

 というか夜だし、もしかして仕事終わってから来たのか?

 すごいバイタリティだ……。

 

 いろいろ考えつつも説明を続ける。

 時間は有限なので、貸切時間内に内容を詰め込み終えねばならないのだ。

 

 一通り説明し終えたあとは、魔術についての概要とTIPSだ。

 

 ハイパーボリアにおける魔術概論で今回の分野がどこに位置付けられるか、とかを説明していく。

 加えて、魔術式を組み立てる時と、逆に相手の魔術式の作成を妨害するときのコツを添えておく。

 

 組み立てに関しては複雑になりすぎて組み立て途中にわけわかんなくなりがちだし、適宜コメントアウトする方法を伝授した。

 魔術式にコメントアウトを組み込むためのシンプルな方法は、今では廃れて久しいからな。

 

 おまけに古ハイパーボリアの技術者が愛読していた指南本の複製を配布しておいた。

 術式をクリーンにしておく方法とか、「ハスターの瞳」に接続するときのバージョン管理とか。

 今では失伝している内容が多いからためになるだろう。

 

 公安信者さんが後ろから穴が開くような視線で見てきたから、後で増刷して渡すことを決意する。

 そんな見られたら俺、穴が空いてまうんやけど…。

 

 また、魔術戦については相手の式読み取りに重点を置くことにした。

 妨害は魔術戦の核だからな。

 どれだけ相手の術式を素早く読み解けるかが生死を分ける。

 

 魔術式の読み方における16通りのパターンを解説して、俺のまとめたスライドを配布する。

 また窓に大映しに図解を表示しながら、原始魔術の類型をさらっと押さえておく。

 

 以上で終了。

 時間は足りないが、上手くまとまったのではないかと思われる。

 

 質問時間は少ししか取れなかった。

 

 鬼のように寄せられたそれのごく一部しか答えられなかったのはかなり残念だが、仕方あるまい。

 皆サメよりもがっついていたので、彼らの有意義な時間にはなったと思う。

 

 お土産の防壁魔術の魔術式は宝石に込めて配布した。

 一緒に術式解説も同封したから、使い方はすぐわかると思われる。

 

 皆、技術指南本と合わせて絶対誰にも渡すまいという強い決意を見せており、盗難防止魔術をガチガチにかけたりしていた。

 いや無くしたら再配布ぐらいするって、と思いつつ。

 

 

 最後にナイ神父が軽く締めの挨拶をしたあと、10分の休憩ののち東都タワーを降りて行った。

 お次はニャル化身が行脚した順路を巡っていくようだ。

 

 ナイ神父は別れ際、朗らかに笑って頷いていた。

 

「ありがとうございました。私も大変ためになりましたよ」

「またまた。神父さんも相当魔術巧者だろうに」

「私はどうしても感覚的に魔術を組みがちですから。ここまで体系立った説明を聞けたのはとても良い経験でした」

 

 神父のニコニコとした表情に嘘はなさそうだ。

 

 ハイパーボリアの魔術形態は既に失われて久しい。

 たしかに、「魔術教育」という分野はこの時代において未知の分野かもしれないな、などと思いつつ。

 

 俺も公安怪異対策課向けに魔術塾とか開くかぁ、などと思案した。

 

 緊張にまだ体が強張っている。

 多くの人の前に立つのは、何度経験しても慣れぬものだ。

 

 興奮冷めやらぬ生徒達の後ろ姿を目に、俺は東都の夜景をぼんやりと眺めていたのだった。

 





・旧支配者ハスターの魔術解説
唯一無二の価値を持つ超希少講座。
失われたハイパーボリアの知識をふんだんに用いた約二時間の解説。
体系立った魔術全体像と、躓きやすい点を踏まえた分かりやすい詳細解説を含む。
配布は古代ハイパーボリアの現場新人教育用のベストセラー指南用と、旧支配者ハスターが自ら組み上げた愛用の防護魔術の魔術式。
魔術式は過度な複雑性が取り除かれ、効果を担保しつつ人間でもギリギリ発動可能な術式に改良されている。

・受講者のコメント
「家に帰るまでの四日間、安全な工房内に本と宝石を運び込むまで気が気じゃなかった」
「マジの魔術の神本人が講師なんて、正直5度見ぐらいした」
「講義中にさらっと超高度魔術でスライド動かしたり実物模型出すから頭が破裂しそうだった。録画録音装置持ってきておいてよかった」
「おそらくだが、この数千年で私たちより恵まれた魔術師はいない」
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