ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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燃えるテントの怪〈心配性の神様と魔法少年〉

 

 今日はコナン君達はキャンプである。

 対して、俺と諸伏さんは2人でまったりお仕事でお留守番だ。

 

 そんな現在。

 諸伏さんはデスクの前で腕を組み、「むむむ…ハァ!」と激しく唸っている。

 その頭の上では星の精がグースカ寝息を立てている。

 

 最近、この星の精は昼寝はベッドじゃなくて人の頭の上でしか寝なくなってしまったんだよな。

 前までは夜は1人犬用ベッドでぶつぶつ文句を言って過ごしていたが。

 ある時からわめきまくってコナン君の部屋に突入して、一緒に布団に潜り込むようになったのだ。

 

 そして時々コナン君の寝相で蹴り出されて、翌日ずっと文句を言っている姿をよく見かける。

 

 諸伏さんは星の精を頭に乗せたまま、ずっとうんうん唸っているようだ。

 気になるので、仕方なく声をかける。

 

「どうしたんだ?何か考え事か?」

『いや。ポルターガイストでPCを動かせないかと試してた』

 

 「ふんぬぅぅうう!」と諸伏さんは念力を込めたが、画面はうんともすんとも言わない。

 俺は首を傾げて口を開けた。

 

「ん?諸伏さん、キーボードぐらいなら動かせるんじゃないか?」

『いやキーボード動かすなら手の方が早いし楽だろ』

「せやな」

 

 納得して俺は頷いた。

 しかし、とすると諸伏さんは何がしたいのか。

 相変わらず唸りながら諸伏さんは疑問に答えてくれた。

 

『俺は画面を不可思議な力でパッと切り替えたいし、「呪呪呪呪」とか赤字で表示したい』

「結構古典的に攻めるなぁ。でもそれはポルターガイストの範疇じゃないぞ?」

「うーむ」

 

 諸伏さんの亡霊としての能力は結構高いが、流石にルール範囲外の力は使用不可だ。

 と、思っていたら。

 

 パッと画面が切り替わって、赤いおどろおどろしいフォントで「呪呪呪呪呪」と表示された。

 見たことあるフリーフォントだ。

 有料フォントは使えなかったらしい。権利意識の高い律儀な幽霊概念。

 

 俺が思わず目を見張って諸伏さんを見ると。

 諸伏さんはげっそりした顔でパタリと机の上に倒れ伏した。

 

「うお、どうしたんだ諸伏さん!?」

『コレ……凄い……凄い疲れる……どう?画面いい感じになった…?』

「なってるよ!凄く呪いっぽくなってる!あとフリーフォント!」

『商用利用可だから良いと思って……!』

 

 それだけ言い残して諸伏さんはガックリと倒れ伏した。

 

 メディック案件だと思ったけど、意外と平気そうなのでそっとしておくこととする。

 諸伏さんが倒れ伏したまま「墓にはゼロの使ってる車をお供えてくれ……」と呟いた。

 

 めっちゃデカいもん供えさせようとしているやんけ。

 

 俺は自らの席に戻りながら、ふむ、と考え込んだ。

 

 しかし先ほどのあれは一体なんだ?

 単なる幽霊の構造体では無理な挙動だったが。

 どうやら魂に何かにアクセスすることに特化したシステムが組み込まれているみたいだが。

 まさかあのフォーマットは「彼方より来たりて饗宴に列するもの(feaster from afar)」へのアクセスに特化して………ううむ。

 

 分からん、と俺は思考を打ち切った。

 

 と、そのあたりで俺のスマホが着信音を鳴らしたてた。

 どうやらコナン君かららしい。今はキャンプ中だと思うのだが、一体何が起こったのやら。

 

 電話に出た途端、切羽詰まった声が聞こえてきた。

 

『ねぇ黄衣さん!?燃える火の玉みたいな怪物に心当たりある!?』

「お、何かに遭遇してるらしいな。ちょっと待たれよ」

 

 急いでハスターの瞳の視点を合わせる。

 

 東都の森キャンプ場を見ると、燃え落ちたテントと焼死体が見えた。

 その近くにいるのは少年探偵団と副担任の若狭さんだ。

 あとちょいと離れた場所になぜか1人キャンプする黒田理事官の姿がある。

 

 なんで公安の裏の理事官がこんなところでおしゃれなキャンプ飯を作っているのか。

 

 いや、公安にも休みの日ぐらいあるものか。

 分裂して仕事してる降谷さんが変なのだ。

 

 ともかく、件の化け物とやらを確認すべくジロリと視界を広げていく。

 

 すると、上空にそれらしい影が見つかった。

 炎の吸血鬼だ。

 人魂みたいな形の神話生物で、炎の旧支配者クトゥグァの配下である。

 

 俺は素早くコナン君にそれの正体を伝えた。

 

「怪物の正体がわかった。炎の吸血鬼と言って、水が弱点だ。消火器でもすぐ倒せる。それと、近くに召喚主がいるはずだ。普通は単体で現れない生き物だからな」

 

 魔術師が関わっているのは間違いない。

 

 が、少し仕事がへぼいと言うか。

 炎の吸血鬼は集団での幻惑能力こそ主軸なのに、なぜか一匹しか召喚していないらしい。

 近くに他の群れがいる様子もないし、まじで単に一匹だけ呼び出したのだろう。

 

 コナン君は聞きたいことは聞けたとばかりに「分かった!」と言い放った。

 

『じゃあこっちは僕がなんとかするから!降谷さんに連絡しておいて!』

「あっこら!俺も行………」

 

 もう通話が切れておる。

 

 すでに画面の切り替わってしまったスマホを前に、俺は激しく憤った。

 そして次いで不安に襲われた。

 

 ど、どうしようコナン君が悪い魔術師に酷いことされたら…!

 

 炎の吸血鬼を呼んでテントに火をつけて人を殺すなんて悪い魔術師だ。

 とても怖いことをされてしまうかもしれない。

 でも「自分がなんとかする」と言われた以上、勝手に駆けつけたら怒られるかもしれない。

 悪い魔術師に酷いことされるんだ!!

 

 おあーーーー!!!

 

 俺が発狂していると、諸伏さんが「九割杞憂なんだよなぁ」とまったり返事をした。

 

『少年は無敵の宇宙戦艦だろ?他の子を守りつつ怪物を倒して召喚主をとっ捕まえるぐらい楽な仕事だろ』

「怖くて悪い魔術師かもしれないだろ!!!」

『君永副総監ぐらい?』

「いやあれは別枠」

 

 公安信者さんはかなりの腕の魔術師さんだ。

 

 現代で旧支配者に一撃入れられる人はなかなかいないし、ハイパーボリアに生まれていれば一角の魔術師になれていたはずだ。

 

 まあエイボンに比べると全然だが。

 アレは俺もニャルも仰天する魔術技巧を見せつけてきたバグだから例外だろう。

 

 特に彼の作った「古エイボン式魔術」は、俺もニャルも現在までずっと使用しているぐらいの完成度だからな。

 あそこまでの傑物は人類で二度と生まれるか怪しいところだ。

 

 ただ、魔術に才能全部振りすぎて人格含めてほぼ全てがカスだったが。

 あれはもう古代ハイパーボリア初期でなければ許されないカスさだった。

 

 モラハラだし、言ってること9割嘘だし、俺のこと騙して豪邸作らせて「真に受けると思わなかった(笑)」とか言って鼻で笑った挙句その豪邸で優雅に暮らすし。

 ブツブツ。

 

 諸伏さんが俺の返事を聞いて、椅子の背もたれに体重を預けた。

 

『なら大丈夫だろう。君永副総監が前に「あの少年はこと魔術戦闘の分野においては私にも比肩します」って言ってたし』

「え……まあ、そうかもしれないけど」

 

 旧支配者の猛攻を凌ぎつつ、反撃しながら撤退。生存権を確保するソラの船。

 アレはそう言うコンセプトで作ったものだ。

 コナン君の拙い使い方でも、単純戦闘ぐらいなら人間に負ける道理はない。

 

 俺はくまのように彷徨いて唸った。

 

「それはそうとして不安で胸がはち切れそう」

『そろそろゼロに連絡しないと怒られるぞ』

「うす」

 

 俺は素直に頷いて、しょげ返りながら電話した。

 

 

 そして今日コナン君が帰ってこないことに気付いた星の精は、ずっとグスグス文句を言っていた。

 そしてどうしてもコナン君が帰ってこないことを理解すると、代わりに諸伏さんのベッドに潜り込んだのであった。

 

 俺のベッドじゃあかんかったんか……?

 





・コナン君
無事魔法少年として悪い魔術師をふんじばった。
少年探偵団も活躍した模様。
若狭先生は意味深に見ている。

・黒田兵衛
初手で絶対ヤバいと気付いて降谷さんに連絡した。
マジカル魔法少年にちょっとびっくりしている。

・星の精
ハスターのことはそんなに好きではない。

あいつ、星の精のことどうでもいいと思ってる。
怖くて大きいやつ。
でも怖くて大きいから、そばに隠れれば恐怖の大魔王が来た時も安心できる。
星の精はユーレイの奴と小さい友達が好き。
小さい友達は星の精をいつも撫でてくれるし遊んでくれる。優しい。
でも寝相が悪くて星の精を巣から時々蹴り出す。
良くない。
早く大きくなって、小さい友達を背に乗せて一緒に恐怖の大魔王を倒そう。
大きい星の精は強いから、小さい友達も守れるはず。
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