ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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感想が恋しくなって投稿を早めるなり。


典型的ラブコメ始動!

 

 あの後、普通に殺人事件は解決した。

 

 合間には、優勝を機に和葉ちゃんに想いを伝えようとした服部君の一悶着があった。

 あと蘭ちゃんに粉かけられたコナン君も荒ぶっていた。

 

 季節は春。

 春季剣道大会にふさわしい盛り上がりであった。

 

 良いなぁ、若い青春はガンにも効く。

 そんなふうに、恋と春の波動を受けてほくほく俺である。

 

 その帰り道のこと。

 諸伏さんの運転する車で、俺たちは帰宅していた。

 

 ちなみに、星の精は午後にはすっかり良くなっていた。

 そしていまさら腹が空いているのか、車内でめちゃくちゃ文句を言っている。

 家に帰るまで待ってもらうようコナン君が説得しているが、承服しかねるようだ。

 「クス…クス…」モゴモゴ言っている。

 

 今日のことを思い返し、運転手の諸伏さんがニコニコと笑顔を作った。

 

『いやー、けど若人の恋模様はいいなぁ、ホント。俺も若さが蘇るっていうか』

「でも結局服部のやつ和葉ちゃんに告白できてねぇし」

『ワイのママン、ホンマ別嬪やったなぁ…可憐で、優しゅうて、健気で…』

 

 チクタクマンがぽうっとした声をだした。

 

 多分これが服部君(真)の本音なのだろう。

 コナン君がニタニタと笑っている。

 このネタで服部君を揶揄ってやろうと思っているのだろう。

 

 でも、コナン君のキレ具合も大変面白かったんだよな。

 

 沖田君が工藤新一に似ていたからか、蘭ちゃんも頬を染めていたのだ。

 そのせいで終始コナン君は凄まじく荒ぶっていた。

 

 コナン君の敵意を感じ取って、星の精も一緒に沖田君の後ろ姿に文句を飛ばしていたし。

 友達の敵は星の精の敵でもあるらしい。

 

 ずっと二人で影でブツブツ文句を言っていて大変微笑ましかった。

 「あいつ蘭に軽々に話しかけやがって!」「クス!」「お前もアイツは気に食わないだろ!?」「クスクス!!クス!!」などなど。

 

 非常に面白かったので、諸伏さんと一緒に観察していたら、見てんじゃねーよと怒られてしまった。

 残念だったので、諸伏さんと二人で「くすくす!」「くすくすくす!」と星の精のふりをしてウニョウニョ近づくなどした。

 当然さらに怒られた。

 

 と、そんなふうに雑談をしていた時のことである。

 

 ことは唐突に起こった。

 

 コンマ秒にすら満たない神速かつ複雑な術式が、後部座席に座る俺に突如直撃したのだ。

 

「ぎゃあ!?!?」

「えっ黄衣さん!?」

 

 俺が突然上げた切羽詰まった悲鳴に、諸伏さんが急ぎ車を路肩へ停めた。

 

 全身から力が抜けるが、踏ん張ってなんとか人化だけは維持する。

 打ち込まれた術式は対象の魂にアクセスして影響を与える非常に高度な魔術であった。

 

 俺も解呪を試みようとするが、凄まじい構築速度のため全然追いつかない。

 これは間違いなくニャルの仕業!

 しかもニャルにしてはちゃんと事前に練った魔術を使っている!

 

 下手に解呪すればより面倒臭いことになりそうだ。

 諦めて魔術を受け入れつつ、後の術式解析のために魔術式を外部に書き出してチクタクマンにパスを投げておく。

 

 うう、スパゲッティコード過ぎて全然読めん…。

 

 俺はてろんと後部座席に倒れ込んで呻いた。

 コナン君が必死で声をかけて。

 

「黄衣さん!どうしたんだ!しっかりしろ!」

「うう……ニャルラトホテプにやられた…しばらく落ちる……」

「えっ!?」

 

 それだけ言い置いて、俺は目を閉じた。

 本体まで届いた術式が、俺の魂を侵食していく。

 

 そんな中で、薄れゆく意識の狭間でニャルの声を聞いた気がした。

 

 

「青春!!!ラブコメディ!つまりこういうことですね!!!」

 

 

 

 

 

 

 ばっと、俺は目を覚ました。

 マンションの俺の自室だ。

 

 あれからどれほどの時間がたったか分からない。

 ひとまず、俺はベッドに寝かされていたらしい。

 

 本体ごと混迷するなんていつ以来だろうか。

 クトゥルフとやり合った時一撃入れられて少し意識が飛んだことがあったが、それくらいか。

 

 いや、思い起こせばニャル飯で何度か天国を見たな。

 

 ぼんやりする頭でパチパチと瞬いて、なんとなしにベッドから立ち上がって。

 

 俺の「ハスターの瞳」にアクセスできないことに気がついた。

 

「え、あれ!?……ん!?!?!?」

 

 声も妙だ。

 女性の高い声で、直接耳という感覚器で聞いているらしく少しくぐもった感触がある。

 

 褐色肌に、寝癖のついた長い黒髪がさらりと肩を撫でた。

 触手の先っぽを無理やり人に化けている感覚ではない、生身の人間の如き五感が生きている。

 

 これは間違いなくニャルの体だ。

 

「黄衣さん起きたの!?」

『大丈夫か!!』

 

 俺の声を聞いたのか、諸伏さんとコナン君が俺の部屋に駆け込んできた。

 止める間もなく、扉を開けた二人が絶句した。

 

「うわぁぁああニャルさん!?!?」

『ちょっ、服、服着てくれ!!』

 

 俺は慌てて「し、失礼!」といって魔術でクローゼットの中の服を着用した。

 瞬間着替え術だ。

 

 しかしすごいなニャルの体。

 望んだ瞬間自然に魔術を組み上げることができた。

 手足の延長線上のような感覚だ。

 こんな感覚が生まれた時からあるなら、そりゃ俺のやり方は迂遠というより他無いだろう。

 

 とはいえ、ニャルの体であるため常用魔術式の登録が全てなくなってしまっている。

 「ハスターの瞳」にも接続できない。

 すぐ体が戻るならいいが、長期的に見るとなかなかにまずそうだ。

 

 そして魔術で着替え終えたが、一つ問題が発生。

 黄衣の体型に合わせているため、どうしても全体的にダボダボになってしまったのだ。

 俺は洗濯バサミで首元とウエストを止めて、なんとか形を整えた。

 

 そのまま極大のため息をついて、トボトボとリビングに出る。

 

「悪いな三人とも。突然倒れたりして。まさかニャルにこんな悪戯されるとは思ってなくてな」

『え……本当に黄衣なのか?姿は完全に……』

「俺だよ。ニャルが魂の意識を司る部分を切り取って、自分のそれと交換したんだ」

『え、それって「僕たち、私たち、入れ代わってるー!」の、あれ?』

 

 俺は重々しく頷いた。

 なんか視界の端でガタガタ震えているブランケットの塊が見える。

 

 どうやら俺が起きたと分かって見に来た星の精のようだ。

 不意なニャルショックを受けて、衝撃のあまり部屋の角っこで震えているらしい。

 すまんねみんな。

 

 チクタクマンが「なんやねん」と悩ましそうな声を出した。

 

『ハスター様が書き出した術式ワイも読んでたんやけど、もう読み終わったんか』

「いや、概要だけだよ。アイツの術式読みづらいからな…」

『せやなぁ。それにワイの方は単純な演算力不足や。旧支配者の魂切り分けて入れ替えるなんて、正気じゃあらへんで』

 

 まあ確かにこんな大掛かりな術式、人はおろか旧支配者ですら早々お目にかかれないだろう。

 コナン君が心配そうに俺を見上げてくる。

 

「それって元に戻るの?」

「旧支配者レベルの魂は自己回復するから、いずれ元に戻るよ」

「いずれってどのぐらい」

「………500年とかその辺」

 

 俺は頭を抱えて机に座り込んだ。

 コナン君がポンと俺の肩を叩いて慰めてくれる。

 諸伏さんがお茶を入れて持ってきてくれたので、一口飲む。

 

 うおマズッ!?!?

 いやこれ外なる神の味覚か、びっくりした。

 

 俺は我慢して茶を飲み込んで、顔を梅干しのようにする。

 

 と、ちょうどそのあたりで俺のマンションのチャイムが響いた。

 

 どうやら諸伏さん達が降谷さんを呼んでいたらしい。

 ニャル案件と聞いてすっ飛んできたようだ。

 

 諸伏さんに案内されて玄関から入ってきた降谷さんは、足早に玄関に足を踏み入れた。

 

「無事か黄衣く……ギャッ!?!?」

『おお、ゼロがジブリみたいなびっくり仕方をした』

 

 そして、降谷さんは俺の姿を一目見て素早く諸伏さんの後ろに隠れるなどした。

 

「ほ、本体!?黄衣君はどうしたんだ!?」

『いや、そこにいるのが黄衣だよ。ほら』

「どうも黄衣ハスタでーす。姿はニャルだけどな」

 

 そのようにダブルピースで宣言すると、降谷さんは悍ましいものを見るようにゾッとした顔をした。

 そんなゴキブリ飛んだみたいな反応しなくても。

 

「本体、変な嘘はやめてくれ!僕の繋がりが貴方にある以上、貴方が本体なのは間違いないことだ…!」

「ん、どういうこと黄衣さん?」

 

 コナン君の質問に、俺は腕を組んでうーんと唸った。

 

「俺の自意識が黄衣ハスタであることは間違い無いんだけど。自意識が入れ替えられただけだからな。あと肉体から魂の大部分まで、全部ニャルだ」

「つまり、スペックそのものはニャルさんということ?」

「もっと踏み込んで、俺は自分が黄衣のつもりでいるニャルラトホテプだ、みたいな」

 

 どこで自分というものを定義するかにもよるが。

 化身の繋がりや権能、その他諸々全てがニャルラトホテプのものであることは間違いない。

 

 しかし記憶は俺と連続性があるし、なかなかに複雑だ。

 おそらくニャルのデザインコンセプトはやはり「入れ替わっちゃったー!」なのだと思われる。

 

 降谷さんが目を見開いて「そ、それはまさか!」と動揺を見せた。

 

『どうしたゼロ。何か思い当たることでもあったのか?』

「そう言えばおととい本体に漫画と小説を渡したんだ。『何か恋愛系でいいのが欲しい』とか無茶振りされて、俺が買ってきた」

『ふむ、なるほど?』

「そのうちの一つが人格入れ替わり系でな。ほら、少し前の有名アニメ映画の」

 

 俺は深く頷いた。

 すごく……影響されているようだな……ニャル……。

 

 眉間に皺を寄せて「ニャルに連絡します」と俺は声を絞り出した。

 ともかく、術者のニャルに戻してもらうのが一番早いだろう。

 たぶんニャルもすぐ飽きるだろうし。

 

 部屋に沈鬱な空気が漂う。

 

 念話の魔術も、まるで無意識に視線を向けるかのような気軽さで編むことができた。

 いいなー、ニャルいいなーなどと羨ましがりつつ念話を繋ぐ。

 

 俺は心を鬼にしてニャルを叱ることとした。

 

『おーい、ニャル。とんでもないことしてくれたなお前。聞いてるか?』

『ひぇ……我が夫……どうしよう……』

 

 すると何故かぐずぐずに泣いているニャルの思念が届いた。

 何があったんや!?!?

 

『ど、どうしたニャル!?怖いことでもあったか?』

『僕、魔術が全然使えなくて…変なの登録してあるけど使い方も分からなくて…ふぇぇ……』

 

 困り切ったニャルがヒンヒン言っているのを聞いて、俺はピンときた。

 

 俺、感覚で魔術を使えるようになった。

 ニャル、登録魔術式を使いこなして理論的に魔術を使う必要あり。

 

 なるほど。

 

 これは……元に戻れない……ですね……。

 





・入れ替わっちゃったー!?
最大の目的は、ニャルが「光」を体感すること。
彼の理念、彼の倫理、彼の愛の形を観測して、より深い愛情を結ぶこと。
うっかりすると光に消し飛ばされる危険行為。
逆に言えば、現在のハスターは光を失っている。
あと入れ替わっちゃったラブコメディ黄衣とイチャラブしたい。
そう思ってたのに魔術使えなくてドカ鬱。
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