ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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入れ替わりの弊害コメディ

 

『ともかくこっちに来れるか?少し話したいんだ!』

 

 念話でそのように伝えると、ニャルがぴえんと泣いた。

 

『でも僕、今は化身が解けて本体が出ちゃってるんです!』

『大惨事じゃんけ』

『それで、羽虫が死んじゃうといけないので急いで上空に移動したんです。だからどこにもいけなくて…』

『ふむ?なら俺が魔術で補助するから、化身を作ってくれ。その上で俺が転送するよ』

 

 俺の普段使いしているそれは、通常通り化身を作ったというより、触手の先っぽを魔術で人間にしているものだ。

 だからニャルに切り替わった時に魔術が維持できず解けてしまったのだろう。

 

 見たところ、現在、ニャルは地球周辺にふわふわ浮いて困り切っているようだ。

 可哀想なので早くなんとかしてやらねば。

 

 しかし、妙だ。

 

 ニャルが顕現による人間の死亡を気にするとは思えない。

 特に平時ならともかく、こんな緊急時に気に掛けられる余裕があるわけもなし。

 うーむ?

 

 ともかく、魔術でニャルのガイディングを行う。

 元来無形のニャルだが、俺の体ということで手間取っているのだろう。

 「凄い作りにくいんですけど!変化!できない!!」と地団駄を踏んで怒っている。

 非常に可愛い。

 

 完成後、本体を格納できるよう多層に折りたたんだ空間に紐付け、体を押し込む。

 

『ちょっとこれ!?狭い狭い狭い!!!あまりに狭いです入らないです!!!』

『大丈夫、いつも俺が入ってるのと同じスペースサイズだ。触手を折り畳めばギリ入る』

『入らないです!!!羽虫用の瓶でももうちょっと広い!!!』

『わがまま言わないの』

 

 ニャルの体を異空間へと押し込めば、「むぎゅっ!?!?」と悲鳴が上がった。

 ほら入ったやないか。

 ニャルがポコポコ怒っているが無視。

 

 そのまま俺の元へと化身ごと転送した。

 

 

 転移したニャルは黄色の衣を羽織った美少女であった。

 俺に妹がいたらこんな感じかな、ぐらいの麗しい顔立ちだ。

 

 多分俺と違ってかなり頑張ってデザインしたんだろう。

 やはり化けきれず髪の毛の先が触手になってしまっているが、薄幸の美少女感が満ち満ちている。

 

 せっかくなので、俺も適当なイケメンに変化し直しておく。

 ニャルが女性型だし、合わせた方がいいと思ったからだ。

 

 黒髪褐色肌の青年に化けると、体型を黄衣ハスタに合わせたので洗濯バサミがいらなくなった。

 うむ。初めからこうすればよかったか。

 

 コナン君達がギョッとして俺を見た。

 

 転移したニャルは始めこそプリプリ怒っていたが、すぐに俺の声が近いことを確認して安心感が押し寄せてきたようだ。

 

 だんだん涙目になって、うううう、と唸って、最後には「我が夫!!!」とぐすぐすに泣き始めた。

 しかも目を閉じていて、よろよろと声を頼りに俺を探す始末。

 

 どうやら「ハスターの瞳」が使えなくて周囲の確認ができないらしい。

 

 俺は彷徨うニャルの手を取って引き寄せ、おおよしよし、と抱きしめて慰めてやった

 可哀想に、急に魔術が使えなくなってとても不安だったことだろう。

 

 まあ、十割ニャルのせいだけどな!

 

 ニャルは抱きしめられ、「う゛ぅぅぅぅ!!」と号泣した。

 よほど心細かったらしい。

 

「魔術全然組み立てられないし…!変身もできなくて!屋敷から移動もできなくて、誰もいなくて、僕、僕……!」

「怖かったなニャル。もう大丈夫だぞ、俺と一緒にここにしばらく泊まろうな」

 

 ガタガタ震える星の精が視界の端に見える。

 まあ、こんなニャルを放っては置けないから星の精にはしばらく我慢してもらうとしよう。

 

 星の精と同じくらいガタガタ震える降谷さんが見えるような気がするが、気のせいだろう。

 

 ニャルは周囲を確認する余裕が出てきたらしい。

 俺と手を繋いだまま、目を瞑って音だけで降谷さんの気配を察知したようだ。

 ぱっと声を明るくした。

 

「あ!化身!化身もいたんですね、おとといの漫画と小説楽しかったですよ!ありがとうございました!」

「ッッ!?!?本体が…人に感謝を示した…!?」

 

 降谷さんはのけぞって怯え出した。

 ニャルが「何か文句でもあるんですか?」と怒った様子を見せたので、「そんな、化身の身で意見などと大それたものは」と卑屈に引っ込んでいった。

 上下関係が魂の底まで掘り込まれている……。

 

 しかし確かに妙だ。間違いなくニャルの様子がおかしい。

 というかさっきも「ハスターの瞳」が使えないだけで肉眼では普通にものは見られるはずだったのに。

 わざわざ人間を慮って目を閉じているというのは、ニャルならざる気遣いだ。

 

 俺の視線に、ニャルは恥ずかしそうにもじもじした。

 

「僕、我が夫の身体になって妙な気持ちが湧き上がってきて……」

「俺の心がわかったとか?」

「はい。なんか羽虫が傷付くのを思うと、胸が苦しくて辛くて…それになんだか、羽虫のことが我がことように感じられるんです」

「おお!」

 

 ニャルが人間との共感を獲得したらしい。

 めでたい!!!

 

 そこまで考えて、俺はふと我が身を振り返って疑問が湧いた。

 

 ………ん?

 いや待て。

 とすると、俺は今どうなっているんだ???

 

 俺がカチコチに固まったのを見て、何やら察したコナン君がそっと距離をとった。

 

 同様に全てを理解した諸伏さんが咳払いして慎重にこちらに問いかけてくる。

 

『あー。黄衣。まさかとは思うが、羽虫を摘んで遊びたくなったり?』

「……い、今のところそれはない、はず」

『なら羽虫が生きようが死のうがどうでもいいとか思ってたり』

「………、…………」

 

 思えば。

 ニャルが地上で本性を露わにしたというのに。

 いくら田舎とは言え、俺は被害者が出ていないか確認もしていないような。

 

 降谷さんが気配を消して俺の視界に入らないように工夫している。

 

 大変むしゃくしゃしたので、後で降谷さんで遊ぶことを決意する。

 見とれよお前。

 洗脳してみんなの前で全力のソーラン節踊らせてやるからな。

 

 恨みを燃やすのと並行して、黄昏の館周辺の状況を確認する。

 山並みが影になったこともあり、確認できた被害者はごく少数であった。

 ニャルが素早く風を飲み込んで上空に逃げたのも被害を少なくしたことだろう。

 

 いつも通り被害者のSAN値を魔術で回復させようとして、上手くできないことに気づく。

 あらゆる魔術を直感的に編めるニャルの身体をして、あのSAN値回復魔術は使えないようだ。

 

 いや、正確には……今の俺には発動に必要な「熱量」が足りない、というべきだろう。

 

 状況はかなり深刻かもしれない。

 被害者の発狂を取り除いて家で寝かせるなどして、最低限のケアをして、ひとまず様子を見ることとする。

 

 俺は頷いて、深刻そうに声を低くした。

 

「あー、俺のニャル化が確認されました。各員、ニャルが二人に増えることを想定して動いてください」

『この世の終わりか?』

「どうしたら鎮まる感じ?僕実家に帰って昴さんと暮らす?」

 

 さらっと俺を見捨てようとしているコナン君に、俺は恨めしげな顔をした。

 工藤邸に押しかけて昴さんに取り憑いたあげく昴さんのふりして降谷さんとバトルぞオラ!

 

 ……ふむ。

 さっき降谷さんにむしゃくしゃした分の遊びはそれにするか。

 

 俺の邪念を感じ取ったのか、降谷さんと星の精が激しく振動した。

 君らそっくりだな…被害者の会とかか?

 

 俺は咳払いして、改めて口を開いた。

 

「ともかく、俺はニャルっぽくなってる。ニャルは俺っぽくなったが魔術使用不可。早急な入れ替わり解消は不可能に近い」

『術式投げてくれればワイも解析するやで?』

「うーん。ニャル、覚えてる?」

 

 俺が声をかけると、ニャルはぶんぶん首を振った。

 

「わ、わかんない…思いついたのをいい感じに組み立てましたから術式とかわかんないです」

「無理っぽいな」

 

 情報量ゼロのポンコツだったらしい。

 愛い愛い、と抱きしめて撫で撫でする。

 

 ニャルはほわわわわ、と嬉しそうに真っ赤に頬を染めた。

 

 降谷さんがちろっと物陰から顔を出して、「黄衣君は精神が安定してるから助かる」とだけコメントしてシュッと引っ込んだ。

 降谷さんの精神は安定していないようだ。

 

 コナン君がにがり切った顔で、パチンと手を叩いた。

 

「うん。とりあえずご飯にしよっか。そこで情報を整理しよう」

 





・ニャル
やや人の心を知り出した。
魔術が使えなくてベコベコに心が凹んでいる。
それはともかく、僕の身体の我が夫もかっこいい…♡
夫のストレートな愛が人の価値観としてダイレクトに伝わってきて(物理的に)破裂しそう。
現在は、アルビノのか弱い盲目の美少女となっている。

・ハスター
黒髪褐色肌の怪しい笑みの美青年。
本人は無意識だが、表情は大変ニャルニャルしている。
光で満ちていた精神が急速に減衰している。
が、ニャルへの愛は相変わらず大きめ。
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