ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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迷宮の修学旅行ロード〈京都炎上〉

 

 京都に到着して現在まで、おおむね工藤新一は平和に修学旅行を楽しむことができていた。

 

 世良真純に戯れ程度にかまをかけられつつも、それは戯れの域を出ない。

 毛利蘭とのたわいない会話も、一緒に美しい京都の景色を写真に撮る行為も、新一の心をときめかせた。

 まさに人生の春である。

 

 躊躇いがちに蘭と手を繋いだまま、清水寺を歩くだけで幸せが胸に満ちる。

 蘭がそっと新一へと声をかけてきた。

 

「ねえ新一、そのバッグ…どうしたの?」

「あ、ああ。依頼で預かってる大事なものが入ってんだ。悪いな」

「もう、そんなの旅行に持ってこない方がいいよ?」

 

 新一は蘭の指摘に「ははは」と空笑いだけで応えた。

 

 星の精は実に大人しくしてくれている。

 時折人混みに押されても「ムギュ!?」と悲鳴を小さく上げるだけで我慢しているし。

 時折触手を握ってやれば、嬉しそうに小さく触手の先を振るだけだ。

 

 同じ班の中道が「お熱いこって!」とヤジを入れながら、一転して眉を顰めて新一を心配そうに見つめた。

 

「それよりお前本当に大丈夫なのかよ。なんか死んだとか噂になってたし。毛利も鈴木も時々会ってるからガセだって話になったけどよ」

「あー、いや、表向き死んだ形にしてるのは間違いないっつーか。ちょっと厄介な事件に首突っ込んじまってさぁ」

「マジか。スパイ映画じゃんかよ」

「大体合ってる…かも」

 

 半分はファンタジー成分で一杯だが。

 もう半分は、本職のスパイたる諸伏と降谷と共に過ごす本物のスパイ映画の世界観だ。

 彼らと共に過ごして、自分がどれだけ脇が甘いかを実感する日々である。

 

 欠かさない盗聴器の確認。

 物事に集中するのは常に安全圏でのみで、あとは必ず周囲に気を配ることを欠かさない。

 かつ決断は大胆に。迅速に。

 新一にとっても、彼らは良いお手本であり、良い大人であった。

 

 中道は「それより」と人目を忍ぶ様子で新一に囁きかける。

 

「毛利と正式に恋人になったって本当かよ?」

「………お、おう」

「やっぱそうなのか!いやぁ、いつ付き合うのかで中学の頃から周囲をヤキモキさせた伝説の両片思いがついにか!」

「うっせーな!誰が伝説だ!」

「いやお前、ベッドイン秒読みみたいな関係のままずーっと寸止めはねぇよ。長期連載ラブコメだってもうちょっと進展あんだよ」

 

 新一は無言で顔を真っ赤にして憤慨した。

 周囲が新一の恋愛模様を週刊連載代わりに楽しんでいたのは知っているが。

 進行速度を論評される謂れはないのである。

 

 むっつりと唇を尖らせていると、背後から不意に覚えのある声がかかった。

 

「なんや工藤、お前もおったんか」

「へ、服部?」

 

 西の高校生探偵、服部平次であった。

 眉間に皺を寄せた彼の姿は只事ではない様子である。

 

 中道に「知り合い?」と問われたので、頷いて肯定しておく。

 ともかく何があったかだけでも確認せねばならないだろう。

 

「どうしたんだよ、なんか事件か?」

「せや。………怪異かも知れへんけどな」

「!」

 

 深刻で静かな声。

 新一はそれを聞いて、思わず表情を引き締めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 一時間ごとにネットを巡回しつつ、現在午後四時。

 

 降谷さんから着信があった。

 

 すぐに対応できるようにデスクでずっと構えていたから、瞬時に電話を取ることができた。

 隣のニャルに絡み付かれながら、通話ボタンを押す。

 

「何かあったか降谷さん!」

『緊急事態だ!京都上空でナイトゴーントの大群と雲を纏った巨大な亜人、そして山のような大きさの星の精が三者相争っている!!』

 

 ????????

 俺は背後に大宇宙が広がるのを感じた。

 神話大戦じゃないんだから。

 というか山のような大きさの星の精って何?新手の旧支配者とかか?

 

 俺は目を白黒させて聞き返した。

 

「せやかて、そうはならんやろ?」

『なってるから電話している!!!!』

 

 降谷さんに激怒されて、俺はしおっとした。

 同時に真面目にハスターの瞳を駆動して、ここまでの情報を取得しておく。

 

 つまりだ。

 

 あるノーデンス信奉者が、ナイトゴーントを召喚して殺人を計画していた。

 しかし偶発的に古美術窃盗団に命を狙われることになり、正当防衛がてら反撃した。

 

 それに待ったをかけたのが古美術窃盗団の命を狙っていたイタクァだ。

 既に失効しているはずの命令を今更思い出したのか、イタクァは俺の秘宝を悪用した古美術窃盗団に天罰を下さんと顕界。

 獲物を横取りしようとしたノーデンス信奉者を攻撃したのだ。

 

 かくして、ノーデンスとイタクァの全面戦争が勃発。

 

 ノーデンスの加護を受けた雲海の如きナイトゴーントの群れと、俺の命令を実行しているつもりになっているイタクァが京都上空で激戦を繰り広げることになったのである。

 

 それを防ぐべく、第三者の工藤君が星の精を巨大化させて対抗しているというわけだ。

 

 やっぱそうはならんやろ。

 

 たぶん工藤君は京都全域を覆うような結界がまだ作れなかったのだろう。

 そこで星の精を結界で覆って、その上で巨大化させて肉盾になってもらうことを思いついたのだ。

 土地を核にするより生物を核にしたほうが防壁を張るコストは低いからな。

 

 でも流石に絵面が酷すぎる。

 なんだあのでっかい星の精。

 めちゃくちゃ喜んでたじゃんか。

 

 降谷さんが死ぬほど険しい声で俺を詰めてくる。

 

『京都は大混乱だ。早く君の方で全部始末してなんとかしてくれ』

「いや工藤君と星の精は街を守ろうとした側だろ」

『ウルトラマンは人類社会の手には持て余すんだ。とりあえず一刻も早く掃除してくれ。特にあの巨人は君の部下だろう』

「それはすまん。俺の教育が足りなかった。イタクァは直ぐに絞って地球から叩き出しておく」

 

 降谷さんは枯れた声で「頼んだ、俺も急ぎ現地に向かう…」と宣言した。

 一人称が取り繕えないぐらい現場は混乱しているのだろう。

 チラッと見えた現場、めちゃくちゃパニックだったもんな。

 降谷さんの電話越しにも警視庁の怒号が漏れ聞こえてくる。

 

 諸伏さんに「来客対応頼んだ!」と言って転移準備を整えた。

 

 当たり前のようにニャルも一緒に来るらしい。

 俺に腕を絡めて「京都旅行もいいと思ってました!」と宣言する。

 どうやら工藤君が置いていった旅行雑誌を読んだようだ。

 

 俺は咳払いして、ニャルを覗き込んで確認した。

 

「暴れないって約束できるか?」

「お祭り中なんですよね?なら僕がイベントを企画するまでもないでしょう」

「ほんまか?脚本がつまらなくても自分で手直ししたりしないって誓える?」

「頑張ります!」

 

 俺はうむと大きく頷いた。すごく不安。

 

 しかし時間もないし、なによりここに諸伏さんと二人で留守番させたら恐ろしいことになる。

 具体的には帰ってきた時には諸伏さんが名状し難い触手付きの生き物に改造されている気がするし。

 ここは連れて行くしかなかろう。

 

 覚悟を決めて、門の創造を京都へと繋げる。

 

 門をくぐると、まず開幕からまるで何かが爆発するかのような轟音を耳をつんざいた。

 

 街は戦場さながらの大パニックであった。

 防壁を抜けて、冷気を纏った風が吹き下ろして家々が一部凍結している。

 警察官が避難誘導しているが、あまりにも人員が足りていない。

 人々は逃げ惑ったり上空にスマホを向けて写真を撮ったり、車が詰まって道が塞がったりと大惨事。

 

 ニャルは「わあ!賑わってますね!」と手を叩いて喜んだ。

 

 はぐれたら大変なのでニャルの手を強く握る。

 ニャルが頬を染めて握り返した。

 はぐれたら京都が大変という意味だが、まあニャルが嬉しい分には良いことだろう。

 

 現地入りした途端、ナイトゴーントを統べる神であるノーデンスから俺に連絡があった。

 

【───、───】

『分かってる。不慮の事故だ。イタクァはこっちでしめておく。ナイトゴーントを引かせてくれ」

【─────】

 

 凄いネチネチ文句言うじゃん……。

 

 盗み聞きしていたニャルが目を三角にして「矮小な土着神のくせに生意気ですよね。僕らで蹴り転がしますか?」とヤンキー精神をオラつかせた。

 

 でも今回は俺も悪いのでニャルを止めつつ、ノーデンスに謝罪を入れた。

 

 イタクァが適当なのは前からわかってたけど、今更忘れてた仕事思い出した挙句地球立ち入り禁止を忘れて堂々と出現は絶許なんよ。

 ロイガーとツァールを見習ってくれよ。

 

 俺が何度言っても人間捕まえてハリ湖まで連れてきて死骸見せてくる癖直さないから、お前は地球出禁にしたんだよ。

 頼んだ仕事忘れるし。手順飛ばすし。

 そろそろクビにするぞお前。

 

 ニャルは至極不満そうに「また我が夫とサッカーできると思ったのに…」としゅんとした。

 ノーデンスサッカー……などと名残惜しそうに小石を蹴っ飛ばすなどしている。

 

 愛い愛い。

 なら雲隠れしたグラーキをまた見つけて、今度またいい感じにサッカーしようか。

 

 まあそれはともかく、まずイタクァの処罰だ。

 

 視覚阻害の魔術を発動し、かったるい調子で戦っているイタクァの頭上に触手を出現させる。

 

 ぐるんと首を縛ってイタクァの体を持ち上げる。

 

【!?!?】

『おい、地球は立ち入り禁止だっつったよな?』

【─!?───ッ!?!?】

 

 なにやら言い訳を捲し立てている。

 

 反省の色が足りないそのまま締め上げて、乱暴に宇宙へと退散させる。

 「イタクァの退散」だ。

 さっき作った折檻部屋に放り込んだから、あとはねっちょりお話しするだけだ。

 

 それをノーデンスの方も確認したのか、ナイトゴーントの群れもさぁっとかき消えていく。

 

 ビッグな星の精はイケイケGOGOとテンションMAX状態だったが。

 敵がいなくなってあれ?と周囲を確認。

 

 状況を理解した工藤君によって直ぐに元の大きさへと戻された。

 静寂の戻った京都の空に、遠目から工藤君がほっとするのが見えた。

 

 小さい星の精は、自身が元のサイズに戻って大層がっかりしたようだ。

 工藤君の肩に張り付いてグスグス泣いている。

 

 後には、戦火の残る京都街並みのみが残った。

 

 ところどころくずれた家屋から出火し、消防が出動している。

 逃げ惑う人々に邪魔されて現場に到着できず、苦戦しているようだ。

 

 すっかり事件解決した気持ちのニャルが「清水の舞台ってところが観光地で良いらしいですね!いきましょう!」と息巻いている。

 

 うーん、間違いなくそれどころではないし降谷さんは100%マジギレすることだろう。

 俺の難しい顔に、ニャルは頷いて得意げになった。

 

「化身には僕から言っておきますよ。化身は後片付けのみに注力しろと」

「うん。ありがとう。でも降谷さんが憤死しかねないからちゃんと俺から言っておくよ」

 

 俺はニャルの気遣いに感謝して撫でくりまわした。

 

 ニャルはえへへ、とホワホワ笑って俺に擦り付いたのだった。

 





・星の精
大きくなった!!!!(大歓喜)
ブイブイ言わせていた。おっきい星の精は無敵なんだ!
工藤君が星の精を起点に防御魔術をかけていただけである。
なぜ友達が大きくならなかったのかが疑問。
星の精は大きいのに…???
その後萎んでめちゃくちゃがっかりした。
大きかったのに…星の精はすごく大きかったのに…(泣)

・ノーデンス
おおむね善神だが感性は神。
信奉者を襲われたし、イタクァが人々を襲って危険だから反撃しただけ。
ナイトゴーントの群れが出て人のSAN値が傷つくことは考慮していない。
でっかい星の精の盾は「おお、人間も工夫してるなぁ!」ぐらいに思った。

・イタクァ
サボりがち社員。
最近仕事してなかったのを唐突に思い出して言い訳がてら仕事に入ったけど、地球出禁になってたの忘れてた。
このあとみっちり教育される。
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