ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ホワイトアウト〈即時解決〉

 

 風の落とし子とは通常、旧支配者イタクァと人間の間の子を指す。

 

 彼らは感情の昂りと共に天候を悪化させる力を使うことができる。

 嵐、雷、暴風雪。

 種類は多様だが、雪と気温の低下を伴う変化を得意とするものが多いようだ。

 

 そして基本的に、肉体的には人間のそのままの能力しか持たない。

 

 その昔、イタクァの血が濃かった頃はイタクァに似た巨人の姿にも変身できたのだが。

 今は完全に人に紛れ、自覚すらない落とし子がほとんどだろう。

 

 イタクァも出禁だし、「人と交わるの禁止!!!」も俺が厳命したため新たな風の落とし子が生まれることもないしな。

 

 ニャルはケタケタ笑っていたが、「部下ともどもマジでキモいなー」と思っていたのが丸わかりの表情であった。

 

 ともかく。

 そんな無自覚な風の落とし子が、今回の被害者だ。

 

 自らの命の危機に、思わず風の落とし子は吹雪を作り出した。

 しかしそれで命を守るわけもなく、落とし子は殺されてしまった、と言うのが真相だろう。

 

「だとして、この吹雪はいつまで続くんですか?おそらく私たち以外にも多くのスキー客がまだ残っているかと」

「だな。怪異案件ってことはこっから更に何かあるといけねぇし、客達をスキー場の外に避難させておきたい」

 

 長野県警警部の二人はすでに仕事モードのようだ。

 厳しい表情で俺に質問を投げかけてくる。

 

 子供達が暴風雪と殺人とに怯えて一ヶ所に寄り集まって固まっている。

 かわいそうだし早くなんとかしてあげたいところだ。

 

 俺はピンと指を立てて説明した。

 

「問題はいくつかあって。一つがここに向かってる犯人について。見た感じ三人組。たぶん吹雪に乗じて歩美ちゃんの口封じを狙ってると思う」

『この期に及んで逃げないでいてくれて何よりだ。それは後で適当に逮捕すればいいさ』

「念のため聞くが、被害者の風の落とし子とやらは戸籍とかはあるのか?」

 

 降谷さんが若干迷ったような声を出した。

 

 つまり「法的に人間扱い可能なのか?」ということだろう。

 殺人容疑で逮捕しようにも、それが人でなければどうしようもない。

 

 俺は頷いて「表の身分もきっちりしてる人だね。本人自体、神話生物の自覚は一ミリもなかったと思う」とフォローしておいた。

 

 現状、神話生物が殺されても法的には扱いが難しい。

 怪異対策関連法は「人間が怪異によって危害を加えられたら」という趣旨で成り立っているが故のことだ。

 

 今後はおそらく「人間と同一の意思を持つ怪異に人権を認めるべきか」みたいな話も出てくるだろうが……。

 怪異をどう裁くかすら曖昧な今、そこまでいつ辿り着けるのやら。

 

 二つ目の懸念点についても同様に説明を続ける。

 

「あと、吹雪は全力の権能の行使だったから、一週間は続くと思う。気温も多分どんどん低下して、-40℃とかになると思う」

「……流石にまずいな。僕の力でなんとかできると思うか?」

「まあ。風だけなら降谷さんで権限奪取できると思う。存在規模は降谷さんの方が遥かに上だし」

 

 いくら死に物狂いの発動とはいえ、小ネズミとゾウの綱引きだ。

 風を止ませるぐらい降谷さんにはわけないと思われる。

 視界が確保できるかどうかでは避難難易度がだいぶ違うしな。

 

 まあ、あんまり俺はやりたくないが。

 

 降谷さんが「よし」と言って俺たちから少し歩いて距離を取った。

 そして天に手を伸ばすようなポーズをとる。

 

 手から漏れ出た黒くおぞましい風がホワイトアウトした視界に蟲のように這い回り、一瞬空を覆い尽くす。

 ある意味、冒涜的な光景だ。

 雪の中を疫病の風が浸透していく。

 

 次の瞬間。

 吹雪はゆらりと力を失って、ただのドカ雪となって降り積もり出した。

 

 降谷さんが険しい顔をして俯いた。

 諸伏さんが首を傾げて駆け寄る。

 

『どうしたゼロ?』

「……風が固かったのもそうだが。本人も無念だったんだろうな。風のコントロールを横取りするときに嘆きが伝わって来た」

 

 やはりそうか、と俺は少しだけ黙祷した。

 

 ルールや権能には感情がこもる。

 死者の断末魔の悲鳴を無理やり解除なんて、俺はどうしても気が乗らない。

 被害が出るとなったらやらざるを得ないのはわかるが……ううむ、降谷さんには嫌な役回りを押し付けてしまったから、あとで補填しておかないと。

 

 由衣刑事がスマホを取り出してどこかへと電話している。

 風が止んで電話しやすくなったから、長野県警に連絡を入れているようだ。

 

 緊急の怪異案件ということで、電話の先が騒ついている模様。

 「至急お願いします!」と由衣さんが言い切って電話を切った。

 

 諸伏兄が進み出た。

 

「ともかく、スキー場のスタッフに連絡しましょうか。死体自体の捜索もそうですし、複数犯ということで確認し次第念のため検問も張る必要があります」

「そうだな。ひとまず俺らも降りるか。しかしすげえな、手を向けるだけで風を止めるなんてよ。悪いな、降谷警視正」

「……降谷でかまいませんよ」

 

 大和警部の軽い礼に、降谷さんは柔らかく笑って嬉しそうにした。

 

 素直な降谷さんは少し怖いが、諸伏さんのお兄さんとその仲間に労わられて意外と嬉しかったのだろう。

 まるで素直な後輩みたいな仕草ではにかんでいる。

 

 ほんま根がニャルそっくりなんだよな。

 一部の人にだけ異常に愛想がいいが、あとは独裁者というか。

 

 と、そこに飛んで火に入るなんとやら。

 

 やってきたのは殺人犯のおじさん一名だ。

 ほか二名は下で待ってるようで、車の中で凍えながら缶コーヒーを啜ってポテチを分け合っているのが見える。

 仲良いかよ。

 

 歩美ちゃんが「あーっ!そのおじさんだよ!!」と大声を上げた。

 

 おじさんはにやりと近寄って来てから、俺たちが固まっているのに気付き慌てて弁明する。

 

「だめじゃないか。さっき下でおじさんにイタズラしただろう?下で仲間が待ってるから、おじさんと一緒に来て謝ろうね」

「!?歩美いたずらなんてしてないもん!」

「そーだぞ!歩美は嘘なんてついてねーぞ!」

「そうですよ!!」

 

 軽いジャブを兼ねてか、諸伏さんが冷静に問いかける

 

「この子が先ほど、私たちに声をかけて来まして。なんでもこのリフトを上る中腹であなたがナイフで人を刺しているのを見たと」

「嫌だなあ。この子達は嘘つきでして、さっきもそう言って私を誘拐犯扱いして来たんです。一週間前も、変なことばかり言われて、悪ガキですよまったく」

「とすると、貴方はこの子達の知り合いですか?」

「ええ。近所に住んでいましてね。今日もスキーに連れて来ていたんです」

「失礼だがあんたの名前は?」

 

 おじさんの言い訳に実に興味なさそうに鼻を鳴らして、大和警部が口を出した。

 それに気分を害したらしい。

 おじさんは片眉を吊り上げて不愉快そうにした。

 

「そう言うアンタこそ、どんなわけがあって首を突っ込んでるんだ?」

「俺はこういうもんだが」

 

 懐から警察手帳を取り出して、大和警部がぞんざいに掲げた。

 

 いやオフじゃないのかよ!?!?と俺も静かに驚愕する。

 由衣さんがこっそり「貴方の接待で何が起こるかわからないからって許可取ってたの」と教えてくれる。

 俺氏接待、時間外労働扱いだった件。

 悲しみかな?

 

 おじさんは本物の手帳の迫力に流石に言葉を飲み込んだらしい。

 「あ、いや……その……」とモゴモゴ言うばばっかりになってしまった。

 

「アンタは下で今まで何をしてたんだ?」

「その、部下と、ずっと食事を…」

「なるほど。そこに子供達が来た、と」

 

 警察を前にして嘘を重ねても、残念ながらまるきり土台から信じていない俺たちには通用しない。

 

 俺は懐からスマホを取り出して、一枚の写真を見せる。

 それは「ハスターの瞳」から出力した、殺人の決定的瞬間を捉えた映像であった。

 

「聞きたいんだが、これってあなただよな?」

「ッ!?!?!?」

 

 おじさんは驚愕に目を見開いた。

 次いで、もはやここまでと悟ったらしい。

 「こ、このガキがどうなってもいいのか!?」とナイフを手にコナン君を人質にしたではないか。

 

 なんだァ、テメェ………。

 

 キレた星の精が「ヴヴヴヴ!!!」と唸っている。

 流石に星の精を暴れさせるわけにはいかないから、ちゃちゃっと手早く縛り上げねば。

 

 と、思ったらいつのまにかニコッとした諸伏さんが犯人の後ろまでやってきていた。

 

 幽霊ポーズで『呪呪呪〜〜〜!』と変な掛け声を出し始める。

 しかしその格は本物の大怨霊。

 MPを吸われた犯人は、その場であえなくノックダウンした。

 

 怖くてピィピィ鳴いた星のチワワがコナン君の顔面をデロデロにするのを見ながら。

 

 ひとまず俺たちは、応援が駆けつけるのを待ったのであった。

 




・ニャル
イタクァのことを羽虫と交尾する超キモい奴と思っている。
我が夫の教育が悪かったからあんなんになっちゃったんかな…可哀想……。
「次回!冥王星ニャルゲーム開催!お楽しみにね!!」

・降谷さん
諸伏兄と大和警部相手には真面目で素直な後輩みたいな顔する。
それより年上の部下を顎で使っておいて。
次回ゲーム自機役。
ニャルニャルサバイバー。

・星の精
友達が酷い目にあった!!!!!!
星の精は守れなかった!強い星の精なのに!友達を守れなかった!!!(号泣)
帰ってから、星の精は体を鍛えるべく空中走り込みや触手の筋肉を鍛える運動を始めた。
仮面ヤイバーを見ながら触手をシュッシュッ!って突き出したりしている。
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