ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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感情の行方

 

「僕のいない間に!族滅した!!!」

【クスクス!!!】

 

 俺は現在、二人に責められてしょぼん中である。

 

 なぜかお通夜の空気になった事務所に、コナン君はタイミングよく帰還してきた。

 そして沖矢さんから事情を一通り聞いて、俺は目を三角にしたコナン君に怒られているというわけである。

 

 沖矢さんの話はおおむね「冥王星に住み着いた化け物の群れを安室君が駆除していたんだ。恐ろしい化け物だった…!」という感じだった。

 非常にハリウッド映画的な理解だ。

 

 ほら!怖い化け物だったんだって!

 ミ=ゴは人間の敵だって降谷さんも言ってたし!

 あんな生物どうでも良かったんだって!ね!

 ブツブツ。

 

 コナン君の怒りに同調して、星の精も一緒にぷんすかと怒っている。

 

 友達を怒らせた!お前は悪い奴!!!ということらしい。

 せやな。言い訳しようもない。

 俺はぺしょりとしょげかえって項垂れた。

 

 

 降谷さんは降谷さんで、後ろのデスクでぺしょぺしょに萎れている。

 

 「ヒロ〜〜、身体があの悦楽を忘れられないんだ〜〜!」と諸伏さんに縋り付いてないているらしい、

 欲望を満たす至福のひとときが終わって、反動が来ているようだ。

 

 沖矢さんは「戦闘ストレス反応というやつか」とうむうむ頷いている。

 米国ならその手の研究も豊富だろうし、知識としてもあるのかもしれない。

 

 まあ人間の機序とはだいぶ違うが。

 黒い風にとってこれまで長く遊べなかったのが相当強いストレスであったのは間違いない。

 

 降谷さんは突っ伏したままぐずぐずと諸伏さんを抱きしめた。

 

「なあヒロぉ、自由に遊んで壊していいものは何かないか…?できれば生物、知的生命体がいい」

『うーん。なら俺のガンプラやるよ』

「知的生命体?????」

 

 ぬるっと完成済みのガンプラ(エントリーグレード)を取り出した諸伏さんが、降谷さんにプラモデルを持たせた。

 

 素組みしただけのものようだ。

 つるっとした白い機体を指差して、「中に知的生命体が乗ってる設定だしちょうどいいだろ」と笑顔を作る。

 

 降谷さんは迫真の審議中の顔をした。

 

 というか宇宙世紀ってこの世界で放送されてたっけか。うーむ。

 まあいいかと礼を言って、降谷さんがその四肢を引き抜こうとする。

 

 その途中で諸伏さんの顔を見て、思い直して丁寧に風の爪を使って部品ごとに分解に切り替える。

 諸伏さん、勿体なさそうな顔してたもんな。

 後で再組み立てできるようにという配慮だろう。

 

 なんか趣旨が180度変わってきたような。

 まあ楽しそうなのでよしとしよう。

 

 のんびり部品を見学する沖矢さんが「ほー、細かいな。銃の分解みたいで楽しそうだ。俺も買おうか」などと漏らしている。

 比較が銃の分解なのは本職コメントすぎて笑うんだが。

 

 ちなみに、入れ違いで銀髪マフィアは帰宅している。

 

 帰る際には俺もゴールデン君を撫でさせてもらった。

 ゴールデン君はたいへん人懐っこく、俺が視線を向けただけでバフバフと尻尾を振りたくっていた。

 

 たっぷりの毛を思う存分撫で回す俺に、慎重な顔をした銀髪マフィアが話しかけてきた。

 いわく、「お前にとってあのミ=ゴとかいうバケモンと犬はどう違うんだ?」などなど。

 

 俺は心底質問の意図が分からなくて困惑した。

 

「え、どう見ても可愛さが違うだろ」

「……そうか」

「もふもふで尻尾振ってお目目くりくり。おお、ゴールデン君は可愛いな!」

「ヘッヘッ!」

 

 撫でくりまわした時に出すおっきい舌まで可愛い。

 気持ち悪いばっかのミ=ゴそのほか神話生物なんかとは違うのだ。

 

 ゴールデン君はにこー、と笑って心底嬉しそうに目を輝かせている。

 この笑顔、護らねば。

 犬猫鳥そのほか可愛いに栄えあれ。

 

 そして微生物を俺が可愛がっている事実がニャルは気に食わなかったらしい。

 「僕は!?!?!?」と犬を押し除けて横入りしてきた。

 ニャルも偉いし可愛いので、すかさずしっかりと抱きしめてやる。

 

 ゴールデン君はとっても迷惑そうな顔で傍に退いた。

 可哀想だが、ニャルに消滅させられなかっただけ幸運だと思ってもらうことしかできない。

 銀髪マフィアは素早くゴールデン君を保護して、青ざめながら危険地帯から脱出していった。

 すまんね……。

 

 

 というわけでニャルもスキップしながら帰宅した今、事務所には俺たちだけである。

 

 「安室さんは大丈夫なの?」とコナン君が降谷さんに声かける。

 降谷さんはへにゃりと恥ずかしそうに頬を赤く染めてそっぽを向いた。

 

「………ああ。限界まで我慢していた本能と欲望が満たされたわけで。その、これ以上ないストレス発散にはなったよ」

「それ、次はどうするのさ…」

 

 コナン君の困ったような声に、降谷さんは深刻な表情で「そうなんだよな」と頷いた。

 

 今後は暴発しないように、異星の無人の荒野か何かで風の発散をさせたい、などと唸っている。

 今まで自覚はなかったが、どうやらかなり溜め込んでいたのだと今回の件で実感したようだ。

 

 俺はポンと手を打って提案した。

 

「今の冥王星ならちょうど無人だし、生命はいないけど擬似的に破壊行為ができると思う。どうだ?」

「む、無理に決まってるだろう。地球からどんだけ距離があると思ってるんだ」

「でも恒星風の権能で宇宙は移動できるようになったろ?」

 

 恒星風は、恒星から放出されるプラズマのことである。別名太陽風。

 

 これはもちろん黒い風の権能とは原義的に異なる現象である。

 しかし権能の拡張により、現在はそれを「風の一種」として定義して降谷さんの支配下に置けるようになっている。

 

 大気のない宇宙空間の移動に使えるかと思って取得したのだが……。

 降谷さんは首を振って、俺の皮算用を否定した。

 

「僕の存在規模では磁気嵐を扱うのが関の山だ。プラズマの風に乗ったところで多少の操作と加減速がせいぜいさ」

「うーむ。そうか、風の速度操作で光速を超えるのは別の権能が必要だったか。なるほど」

 

 俺はうむうむと眉を顰めた。

 俺が時々横着するために宇宙背景放射を操作してチャプチャプ移動するみたいな手は使えないらしい。

 あれ、浮き輪でゆっくりしてるみたいで楽でいいんだがなぁ。

 

 とすると、自らをプラズマの嵐に変性し星々を吹き飛ばすみたいな技も難しそうだ。

 

 「黒い恒星風」の権能は、ニャルと合同で俺の風の権能を付与して作られたものだ。

 風の操作は俺の十八番。

 

 風とは形なきものの動きの全てであるからして、故にこそ俺は星間宇宙の帝王とすら呼ばれるのだ。

 

 まあ、現状権能が大きすぎて少し取り回しに難が出ているようだ。

 自家用車にロケットエンジンを積んでしまったようなものか。

 

 とはいえ、繋がり自体はすでに確立している。

 俺が追加で存在規模を流し込んでやれば普通に使えるようになるだろう。

 

 シュッコシュッコと繋がりを辿って力を流し込んでやる。

 降谷さんは瞬時に顔を土気色に染めた。

 

「!?!?オゲェ…!?」

『せ、ゼロ!?!?』

 

 降谷さんは口から黒い風と力を吐きこぼして具合悪そうに倒れ込んだ。

 なんでや!!!

 

 慌てて流し込んだ力を回収。

 オボボボ…となっている降谷さんから疫病の蔓延を防ぐ魔術をかけてやる。

 諸伏さんが心配そうに背中をさすって俺を非難の顔で見た。

 すまん…本当にすまん……。

 

 ゼエゼエと息を荒くして、降谷さんは俺を睨みつけた。

 

「そ、そんな一度に突っ込んだら吐くに決まってるだろ!!人間だって突然一口で満漢全席胃に突っ込まれたら吐く!」

「なるほど!!すまん!!!」

 

 俺としては自然増加する力のかけらを、ハムスターにやる程度に小さく千切って一口サイズに渡したつもりだったんだが。

 

 ニャルの時は自然に受け入れていたし油断していた。

 化身慣れしているニャルのことだし、時流操作を組み合わせてよほどうまくやっていたのだろう。

 もっともっと細かくして、次は慎重にラインに流し込んでみる。

 

 降谷さんは気持ち悪そうにウップスとなった。

 

 「ちゃんこ鍋をわんこそばみたいに次々流し込まれてる感じがする…」とのこと。

 もっと少なくだと増加が感じられなくなってしまうのだが。

 まあいいか、長い目で見ていけばいいだろう。

 

 ひとまず降谷さんが吐き気をもよおさない程度に調整してよしとする。

 降谷さんが「フォアグラの強制給餌が禁止された理由が魂で理解できた」などと頷いた。

 おかしいなぁ。ポタポタとスポイトで一滴ずつしか流し込んでないのに。

 

 星の精が、まだ具合の悪そうな降谷さんの背を触手で撫で撫でしている。

 「クスクス?」と心配そうに様子を伺っている。

 

 学校に行くようになって、これが人間の調子悪い時のポーズであると学んだらしい。

 恐怖の大魔王相手にもきちんと思いやりを持てる優しい星の精だ。

 良い星の精は美味しい血液を後であげようね!

 

 星の精に気味悪げにのけ反りながら、沖矢さんが「ふむ?」と降谷さんに声をかけた。

 

「降谷君は人間ではないのか?」

「今更だな貴様…不気味な黒い風を操って-230℃の空間を駆け回る人間が居てたまるか」

「スーパーマンという可能性もあるだろう」

「それは結局宇宙人だろうが。というかいつまでいる気だ?」

 

 降谷さんが口元を拭って座ると、沖矢さんがため息をついた。

 

「俺もジンについて聞きたくてな。あれはなんだ?本当にジンか?」

 

 穏やかな口調だが、そこには敵意と等量の困惑が含まれている。

 拭いきれない強い憎悪だ。しかし同時に非常に理性的でもある。

 

 降谷さんはそっけなく、しかしどこか思うところを込めて言葉を紡ぐ。

 

「怪異関連案件に関わる内に心境に変化があったらしい。僕が組織から引き抜いて、今は組織で動くスパイ兼怪異回収係になっている」

「奴が組織を裏切ったのか?あの狂犬が?」

「そうだ」

 

 降谷さんは沖矢さんを…否。赤井さんを真っ直ぐに見つめ返した。

 

「怪異は人の人生を変える。良くも悪くも。悍ましいほどに。貴様とて知っているだろう」

「…………」

 

 赤井さんはしばらく沈黙して。

 手で顔を覆って、くつくつと自嘲の笑いをこぼした。

 

「仇討ちなどくだらないと思っていたが。なんてことはない、俺も知らず知らずに囚われていたということか」

「ふん、馬鹿なFBIだ。………そう簡単に、人が恨みを捨てられるわけもないだろう」

 

 降谷さんが吐き捨てる。

 

 「君のいう通りだ。ままならないものだな」と赤井さんは溢して、軽く手を振って彼は事務所を後にしたのだった。

 





・犬猫などへのハスターの認識
ネイチャー番組とか好き。ペットも可愛い。
人間の感性で可愛いものは好き。
可愛くなくても人間の生活に欠かせないもの、前世知識を通して生態系を支えるものと知っているものへの尊重は人間並みにある。
つまり神話生物は可愛くもないし不要ってことだ。

・オボボボ降谷さん
素直に吐く(吐いた)。
めちゃくちゃ大きくなったが、存在規模的にはハスター達などとは雲泥の差である。
おっきめのダンゴムシぐらい。
ちなみに、他の化身には「黒い風いいなー、めっちゃ楽しそう」「でもお前、そのために本体のオモチャになれるか?」「……やっぱあいつすげーよ」みたいに思われてる模様。

・星の精
全面的にコナン君の味方。
おまえ!友達が怒ってる!(怒)
友達を怒らせるなんて悪い奴だ!(怒)
あやまれ!!!クスクスクス!!!(怒怒怒)
人間的情緒がだいぶ育ってきているが、まだまだ星の精。
ミ=ゴへの感想は「怖い」「しかも美味しくなさそう」。
学校に通い出したので、生き餌に噛み付くんじゃなくて汁物カップに血を入れて、スプーンを求めるようになった。
血がうまく掬えなくて憤怒する今日この頃。
多分もう少しするとストローを所望し出す。
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