あれから、気が向いてちょっとだけハリ湖にある俺の屋敷の方にも顔を出した。
すると、めちゃくちゃ大歓迎されて気合の入ったおもてなしを受けた。
出迎えのディ◯ニーパレードみたいなやつ、気合の入った舞台ショー、可愛いぬいぐるみなどの贈呈などなど。
定期的に舞台ショーはあるのだが、今回は殊更気合が入って燃えるドラマに殺陣も使われていた。
いつもの子が豪華な飲み物を持って来てくれたので、それを飲みながら鑑賞する。
スタバの新作みたいなシェイク風の甘いやつだ。
この近くでサトウキビとカカオを生産していて、味もシンプルではあるもののきちんと美味しい。
その昔、地球から仕入れて頑張ってビヤーキー達が育て出したものだ。
食べ物はまだまだグロモツに毛が生えた程度だが、飲み物はだいぶ良い感じになって来たからな。
俺もかなり気に入っている。
いつもの子は可愛らしい仕草で膝に乗って来て、擦り寄ってきてくれた。
きゅるんとして凄く可愛かったので、たくさん撫でてビヤーキー達への加護を追加付与した。
嬉しそうにさらに擦り寄って来てくれて実に可愛い。
しかし今日はすごい歓待だ。
最近あんまり顔を出してなかったから寂しかったのだろうか、と俺は少し反省した。
やはり定期的に顔を出さねばなるまい。
まあ、そんなこんながありつつも、今日はキッド案件の仕事だ。
世界最大のコンクパール、妖精の唇(フェアリー・リップ)。
それが鈴木博物館に展示されるということで、キッドは鈴木次郎吉氏の挑戦を受ける形で盗みに入ることにしたようだ。
宝石は狭い室内に巨大な氷に閉じ込められる形で展示されていた。
透明度の高い氷の中に、まるで宙に浮く様な薄いピンクのコンクパールは非常に美しい。
これなら確かに、魔術でも使わない限りすぐに盗むのは難しかろうよ。
今回は服部君も、和葉ちゃんを連れて参戦している。
元々服部君達は俺たちと美術館に遊びに行く予定だったのだ。
本当は服部君の恋愛相談とコナン君との東京観光なだけだったが。
和葉ちゃんもコンクパールを見たいと言って来たらしい。
「だって妖精の唇言うんやろ?アタシも可愛いし見たい!」とのこと。
服部君は顔を赤らめて和葉ちゃんを見て「お前の方が可愛い」とでも言いたげな顔をしていた。
俺がコナン君とニマニマして観察していたら、「何見とんのや!散れ!散れ!」と怒られてしまった。
えへへ。
すっかり人間社会に堪能になった星の精も、コナン君のポケットからちょろっと触手を出して「クスクスゥ…」と忍び笑いをしている。
つがいか?つがいを作るんか?とのこと。
さて、しばらくすると次郎吉相談役とともに二課の中森警部、そして諸伏兄がやって来た。
中森警部は「どうしてこいつが」と言わんばかりの険しい顔で諸伏兄を見ている。
諸伏さんが瞠目して立ち上がった。
『どうして兄さんが!?』
「……なんだお前、黄衣探偵事務所に弟がいるのか」
「ええ。景光、奇遇だな」
中森警部の問いかけに柔らかく笑って頷き、諸伏兄が一歩前に出る。
そこに諸伏さんが駆けつけて、非常に嬉しそうに顔を綻ばせた。
この兄弟も仲が良いんだよな。
降谷さんが「一体なぜ東京に?」と話しかける。
「長野の怪異案件と思しきものがありまして。回収した怪異品を警視庁に届けに来たんです」
「ブッ!?!?」
降谷さんが思わず吹き出してしまったようだ。
さらっと言われた内容だが、最近回収された怪異品ということで、降谷さんの方も諸伏兄が何を警視庁に届けたか察したらしい。
顔を青ざめさせて戦慄いている。
ちなみに何かというと、ハスターの落とし子そのものだ。
俺の抜け毛である。
うっかり前に完全顕現した時に気付かず落とした奴が、諏訪湖でまったりしているのが最近発見されたらしく。
もちろん、俺の抜け毛なので人を襲うとかは無い。
ただめちゃデカキモタコが湖に現れたということで話題にはなっていた。
降谷さんが耐えきれずに詰め寄った。
「いやあんなデカい生き物どうやって回収したんだ!?三メートルはゆうにあったんですが!」
「ん?コンタクトをとったところ、自ら小さくなって、偶然持っていた猫用キャリーケースに入ってくれましたよ」
「………」
まあ俺の抜け毛だし、多少はな。
外に置いておいても問題しかないし、現在は俺が回収して体に取り込み直している。
なお、猫用キャリーケースは保護猫の関係で本当に偶然車に積んであったものらしい。
そこにシュルシュル縮んだ落とし子を入れて、警視庁にトコトコやって来たというわけだ。
道中猫用の餌もやったが、落とし子は食べなかったとのこと。
図太いの権化かよ。
話を聞いていた中森警部が嫌そうに「怪異案件か。キッドは違うとは思っているが、実際どうなんだ?」と唸った。
確かに最近キッドと怪異の話題は盛んだし、中森警部としても無視できない内容なのだろう。
諸伏兄が俺の方を向いて口を開く。
「たしかキッドには魔術師による保護魔術がかかっているのでしたよね。ならば捕獲は容易ではないでしょう」
『ああ。……もし本当に捕まえられたのなら、その後に出てくる魔術師の方が問題なくらいだな』
諸伏さんの言葉に、中森警部は頭をかいて苦虫を噛み潰す様に大きなため息をついた。
既にキッドにかけられた保護魔術は、皆の知るところになっている。
以前に盗みに入った現場で、偶然警官がキッドの体に組まれた夥しい魔術の跡を配布された俺製メガネで目撃しているのだ。
キッドのマジックの正体は怪異だった!とTV各局はそれをセンセーショナルに報道した。
これには流石のキッドも憤慨したらしい。
可哀想に、念話でずっと俺に涙ながらに愚痴っていた。
まあ、今マジック業界も「本物の怪異を使っていないからこその価値」が問われているしな。
屈辱なのもわかるが、そこは小泉さんとよく話し合ってもらうしかあるまい。
コナン君がふうむ、と若干興味ありそうな顔をして俺に質問してくる。
「実際、その魔術師さんってどのぐらいの腕前なの?」
「うーん。君永副総監をミシュランの三つ星シェフとするなら。あの魔女さんは老舗の名店の14代目みたいな感じかな」
どっちが美味しいか単純比較はできないが、どちらもその腕前は確か、という意味だ。
降谷さんが難しい顔をしている。
服部君はもっと難しい顔をして、唸りながら少し遠くに美術館を見て回る和葉ちゃんを凝視した。
コナン君が半目でヒソヒソ話し出す。
「いやさっきからどうしたんだよお前」
「和葉にどう告ったもんかまだ決まらへんのや。急がへんととは思うんやけど、せやかて軽々に口に出せば良いってもんともちゃうやろ」
「早口だな」
「うっさいわいてこましたろか!!」
服部君は荒ぶっているようだ。
諸伏兄が有識者の顔をして頷く。
「告白なら急いだ方がよろしいかと。後回しにすればするだけ拗れるのが常なので」
「お、おう……なんや身近にそういうのがおるみたいな口ぶりやな」
「ついにこの年になって友人が幼馴染同士で結婚式の予定です。具体的には二週間後。それだけでいかに深刻かの察しはつくかと」
俺たちと呼ばれている由衣さんと大和警部の結婚式だ。
諸伏さんが「楽しみだな、兄さん!」とニコニコした。
服部君が真面目な顔をしてどこで告白するか真剣に悩み出した。
諸伏さんが困った顔をして「俺もどこかに良い幽霊とかいないかなー」と謎の軽口を叩いている。
しかし降谷さんが犯罪者の顔をしているからその言葉はすぐに撤回した方がいい。
そいつ良い幽霊を用意する気だぞ。
コナン君一人だけ余裕の表情で腕を組んでいる。
既に両親への挨拶は済ませ、卒業後の結婚を予定しているらしい。
意外にそつのない男であることよ。
まあ俺もめっちゃ可愛い奥さんいるし?
勝ち組であることは間違い無いのである。
・ビヤーキー
これで見捨てられたら死ぬ覚悟で全力の歓待をした。
飲み物持って来てくれた子はビヤーキー界の頂点に立つNo1アイドル。
かなりの高齢だが、子犬級の言葉なき大胆な愛らしさでその寵愛を不動のものとしている。
ひとまず主なる神が加護を付与してくれて一安心したが、教育体制は全力で見直し中。
緊急研修も実施して、基礎的なカワイイを全ビヤーキーに叩き込んでいる。
・キッド
己の渾身のマジックが「ただの怪異」呼ばわりされて悔し涙に暮れる日々。
でもパンドラを追う上で魔術的防護がないのは単に死にに行くみたいなものだし。
最近では日本国内にあるパンドラ疑惑の品を盗んで回っている。
が、来歴とかを調べてもいまいちピンとこないし、怪しげな組織が釣れる様子もない。
ただ怪盗キッドの名声に傷が付いただけ。
わーん!!!!(憤怒)
・ハスターの落とし子
ハスターの抜け毛。
見た目はサイケデリックな色をした巨大タコの怪物。
日本語をやや解すため、諸伏兄の言いたいことを理解して自分から猫用キャリーケースに入った。
人間相手なら非常に優しく従順。ペットとかにもできるし芸も覚える。
ミ=ゴとか他の神話生物を見ると、餌だと思って獰猛に襲いかかる。
・ニャルラトホテプ
大勝利ダブルピース。
最近フォーマルハウトに二人で新婚旅行に行って来た。
クソほど迷惑そうなクトゥグァに散々結婚自慢して大満足で帰って来た。