ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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キッドVS高明狙われた唇〈全能の苦悩〉

 

 現在、キッドに簀巻きにされて倉庫に入られた俺である。

 

 俺は口をへの字に曲げてキッドに抗議した。

 

「旧支配者愛護法違反だ!こんなぐるぐる巻きにして!旧支配者が可哀想じゃないのか!」

「いやアンタいつでも出れるだろ!」

「うん。でも誘拐被害者ごっこみたいで新鮮で」

 

 キッドは「ほらー!!!」と憤慨している。

 

 

 フェアリー・リップの展示会場にて、俺も先ほどまで気ままに彷徨いていたのだ。

 俺なら煙幕を無視してキッドの動きを視認できるし。

 キッドの変装も瞬時に判別可能だ。

 

 まだ犯行予告の時間まで余裕があったため、俺は怪異品が無いかの確認も兼ねて、他の展示品をぶらぶらと見て回っていたというわけだ。

 

 すると、怪盗キッドが突然忍び寄って来て。

 

 「アンタがいると仕事にならねーから着いてきてくれ!」と言われて拘束。

 仕方ないので無抵抗で縛られたのである。

 

 俺はえっほえっほと倉庫の奥に隠されつつ、

キッドを見上げて言った。

 

「ところで、盗んだら宝石は返すんだよな」

「勿論。これは次郎吉のじーさんのお誘いに乗っただけだしな。『本来』の持ち主に返すさ」

 

 おや、少しばかり含みのある言い方だ。

 

 おそらくは、このコンクパールの本来の持ち主から、現在の所有者が犯罪まがいの方法で奪い取った件のことを言っているのだろう。

 それが鈴木財閥に貸し出されて今に至るわけだが。

 

 俺は少し眉を下げて言葉を落とした。

 

「でもキッドが本来の持ち主に返したとして、効果は限定的だぞ?」

「だろうな」

 

 キッドはこちらに視線を向けなかったが、異論はないようだった。

 

 一時的には本来の持ち主の手に宝石が戻ったとして、その後現在の持ち主が求めれば返さざるを得ない。

 

 おそらく。

 その後各TV局がキッドの不可解な動きの裏事情を大々的に報道して、多くの注目が集まるはずだ。

 それは必ず警察の目に止まり、事件化されるだろう。

 

 キッドもそれを狙って、本来の持ち主に返すことを計画している。

 

 だが、今回の件はなにぶん証拠が殆どない。

 法廷に持ち込んだとして、事件性を立証するのは難しかろうよ。

 

 少しだけやるせない顔をして、怪盗キッドが俯いた。

 

 俺はふうむと悩んでから頷いた。

 ちちんぷいぷい。

 目の前にポン!と魔術でメモ用紙を出現させた。

 

「ん?なんだこれ」

「あの男が『コンクパールを仕入れた場所』と言い張ってるとこの詳細と、奴が自らの所業を語った酒の席の客の名前。深掘りすれば良い情報が出るかもよ」

「!!!」

 

 「ハートフルなら最後まで面倒見ろよな」と俺は微笑んでウィンクした。

 

 神が手を下せばあまりに大事になってしまうが。

 キザな怪盗が動く分には美談で終わる話だろう。

 

 つまり八方よしということだ。

 

 キッドはややむすっとして、俺を展示用のケースに押し込んだ。

 ムギュ。そんな押しても小さくはならんわい。

 

 俺をしまって箱に白い布を被せると、キッドは俺の横にしゃがみ込んだ。

 静謐な視線と、物音ひとつしない暗い倉庫にキッドの声が響く。

 

「アンタほんと何でもできるんだな」

「まあ神様だしな」

「………なあ、何でもできるってどういう気分なんだ?」

「己の無力に嘆く日々です」

「なんでだよ!?全知全能に程近いって紅子も言ってたぞ!?」

 

 すごく突っ込まれてしまった。

 俺はうごうごと展示ケースの中で丸まりながら返事をした。

 

「何でもできると理想って高くなりがち。一切れ一万の高級肉で豪勢してたら、いつのまにか30円の駄菓子のあの美味しさを忘れてたみたいな?」

「あー」

「全然違いなんてないのに桁が二つも違うワイン飲んでさ。無駄に散財しては、貧しいあの日入った屋台の大根おでんの味を気付けば求め続けてるわけ」

「すげー解像度で早口に話し出すじゃん」

「全知全能って罪だよな」

 

 俺はほろりと涙を落としたが、キッドには引かれてしまったようだ。

 なんやワレ、自分で聞いてきたくせに。

 君の幼馴染に有る事無い事吹き込んでやるぞ。

 

 キッドは「怖……早く仕事に戻ろ」と言ってそそくさと退散していく。

 

 そして少しだけ振り返って、ニカリと屈託ない笑みを浮かべた。

 

「あんた、本当に人間らしいんだな」

「…………」

 

 

 そうだろうか。

 

 そうだったら良いな、と。

 俺は思って、もう一度詰められた展示ケースの中で丸まったのだった。

 

 

 

 

 

 うつらうつらしていたら。

 コナン君が「黄衣さん!!!」と叫んで倉庫内に入ってきた。

 

 複数の足音がこだまする。

 俺の救助に来てくれたのは諸伏さん達と、あと服部君と諸伏兄。

 俺の事情をよく知るメンバーのみだ。

 

 「おーーい。ここ、ここにいる!」と叫べば、すぐにみんなやってきてくれたようだ。

 

 展示ケースにかかっていた白い布をとった瞬間、コナン君が悲鳴を上げた。

 

「ギャッ!?!?液状化してる!?」

「あっやべ。ちょっと寝てたから。待って待って、今元の姿に戻る!」

 

 ぬとーー、と形を元に戻してヌルンッ!とケースの外に出る。

 一緒に諸伏さんと降谷さんも居たが、めっちゃ素早く後ろに下がった。

 

 服部君が「意味わからな過ぎて反応できひんかったわ」と目をまん丸にしている。

 すまんね、変な生態で。

 

 諸伏兄が「大丈夫ですか?体に不調は?」と真っ当に心配して膝をついて俺の様子を確認してくれる。

 優しい人やで……。

 

「全然問題ないよ。縛られたまま箱に詰められたから窮屈でさ。うつらうつらしてた時に思わず液状化しちゃっただけだ。心配かけて悪いな」

「そうでしたか。怪我がないなら何よりです」

 

 俺が液状化したために抜けた縄も回収できた。

 俺全体がややヌトっとしているが、もう10分もすればきちんと清潔な乾燥ハスターが出来上がるだろう。

 

 コナン君が「というかこれ、黄衣さんならいつでも脱出できたでしょ!!」とプンスカしている。

 

「え、もしかしてキッドは俺に化けたのか?」

「そうだよ。言動がいつになく知的だったから気付いたけど」

「いつもの俺が知的じゃない論争は人権に反するので良くないと思う」

 

 どうやら侵入経路の考察でキッドが知的に振る舞い過ぎたらしい。

 

 俺は普段「その時不思議なことが起こった!」の気持ちで発言しているからな。

 ついキッドも論理立って推理を述べて、自らの疑いを晴らそうとしてしまったのだろう。

 

 俺はややむしゃくしゃして腕を組んだ。

 全身がまだちょっとヌトヌトしている。

 

「そういや、魂が見える降谷さんならすぐに分かっただろ。俺が本物じゃないって」

「……まあそうなんだが。黄衣君の方にも何か目的があるのかと思ったんだ。なぜ普通に箱詰めされてるんだ君は」

「そういうこともある」

 

 形勢不利のようだ。俺は戦略的撤退を決めた。

 

 別に何にも考えてなくて、ただ誘拐されてみたかっただけとかそういう話ではない。

 違うってば。

 

 

 

 そのように。

 キッドは無事コンクパールを盗んで、仕事を終えたのだった。

 

 後日、キッドから「名探偵の連れてるキモいペットに絞められた!!」と泣き言が来た。

 俺は「お大事にな」と言っておくにとどめた。

 





・黄衣ハスタ(怪盗キッド)
明確にいつもよりINTが高い。頭良さそう。
どうやら探偵という肩書きとTVでの姿、全知全能の触れ込みで頭良さそうに演じ過ぎてしまったらしい。
思ったより神様ってのは大変なんだな。

・降谷さん
色々考えてあえて動かなかったのに、当のハスターは箱に詰まってグースカしてた。おこ。
背後にいる魔術師を警戒し、怪盗キッドは積極的に逮捕しようとはしない。

・服部君
普通に和葉ちゃんとチューした。
勝ち組。なのにまだ告ってない。

・星の精
友達にいけっ!て言われたから悪いやつに絡みついた。
食べ物ではないのでガブっとはしない。
人間の首程度ならコキュッと360度回せるけど、そうすると痛いと知っているのでちょっと締めるだけ。
思いやりのある優しい星の精である。
人のものを盗むのは悪いことだって学校で習ったのに!あの白いの悪いやつ!くすくす!!
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