今日はコナン君と二人でご飯である。
いや、星の精がいるから三人か。
なんでも、降谷さんと諸伏さんと赤井さんと銀髪マフィアで、世にも奇妙な飲み会を開催するとのことで。
今日は諸伏さんはご飯は食べないのだ。
めちゃくちゃな因縁のある四人が一堂に会するなんて、こんなの絶対野次馬するしか無い!
俺はもちろん、コナン君といそいそ用意を整えて野次馬の準備を整えた。
そして諸伏さんに「来たら明日の朝ごはんに納豆出すからな」と言われて、触手全部しおしおにしたのである。
俺納豆苦手なんよ。
ミ=ゴが献上してくるネチャッとしたPOWの塊みたいでな……。
見たかったな、元組織飲み会。
というわけで。
俺はコナン君と美味しく夕飯の時間となっている。
テレビでは、ドラマ「探偵は窓より見下ろす」の劇場版公開を記念してのTVスペシャルが流れている。
主演は俺であるため複雑な心境だが。
こうして出来上がった作品を見るのは、あの撮影がこんな形で見えるのかとちょっとした驚きもある。
コナン君がテレビ画面を見ながら少しだけ箸を止めた。
「黄衣さんってアクションシーン撮る時はどうしてるの?」
「普通に俺がやってるよ。魔術で集積した『理想』そのものが演技になってるだけだし、その延長線上かな」
「なんかずるい気がする」
「それはそう」
俺はご飯をもぐもぐと飲み込んだ。
今日は机の中央の鍋で牛ミニすき焼きだ。
美味しくできたし、全員揃ってる時もまたやろうと思うなど。
星の精は子供用プレートに、血を成分ごとに形作った簡単なオムライスみたいなものを乗せて出している。
ストロー付きマグにいつもの血を添えて。
星の精は行儀良く席について、上機嫌でスプーンを使っている。
器用にすくって味の違いを楽しんでいるようだ。
最近ではすっかり人間の気持ちになってしまったらしい。
星の精は飲み物だけ!!どうして!!!と憤るようになったのだ。
そして人間用のご飯をつまみ食いしてお腹を下して泣く、の繰り返し。
小さいからまだ胃腸が強くないようで、噛み砕いた獲物の肉や骨を食べられないようだ。
それを繰り返すうち自分が友達と一緒のご飯を食べられないことを理解して、めちゃくちゃ泣き喚いてぐずぐずになってしまった。
流石に哀れだったので、こうして形だけでもそれっぽい料理を出してやることにしたのである。
食べ終わったら皿を自動食洗魔法に洗わせて、まったりとリビングでのんびり過ごす。
俺が最近組んだ魔術で、皿洗いだけでなくこびりつき汚れの自動追加洗浄や皿拭き、食器棚への収納まで全てやってくれる優れものだ。
そのほか、俺の家事シリーズは結構溜まってきた。
洗濯機を回すところから干して回収して畳むところまでワンストップでやってくれる魔術とか。
ゴミ出しを自動化する魔術とか。
ゴミ出し魔術はちょっと失敗で、最近ゴミを捨てようとしたら先に魔術が発動してあんまり入ってないゴミ袋が歩いていってしまった。
めっちゃ追いかけて捕まえたが、あれは事故であった。
マンションの人に見られたら言い訳できないし、何か他に方法を考えねばならぬだろう。
星の精は満腹で眠くなったのか、コナン君の頭の上でうつらうつらしている。
「クスクスゥ…」と寝言を漏らしながらゆらゆらシャドーボクシングを始める。
最近でも友達を守るための鍛錬は欠かしていないらしい。
今日など、昼に会った京極さんの強さに感銘したらしく、弟子になりたそうにクスクス言っていた。
京極さんは仮面ヤイバーさながらのかっこよさで代理スタントマンとして大活躍していたからな。
ああいう強い星の精になりたいのだろう。
あれからずっと何事かたくさんコナン君にしゃべって、その感動を伝えようとしていた。
俺はソファによっこいしょと座り、新聞型に出力したデータをパラパラ眺め始める。
コナン君が「ん?それ何見てるの?」と俺の手元を覗き込んだ。
「『古のもの』の発行してるニュースを見てるんだよ。偶然ニャルが遊びに行ったみたいだから、気になってな」
ぱらりと新聞を開いて日本語に翻訳してコナン君に見せてやる。
一面は「厄災『ニャルラトホテプ』の齎した被害!」。
あと「山間部に季節外れの雪化粧」とか「新都市££££の市長就任」とか。
結構人間的感性の内容が踊っている。
コナン君は目を丸くして新聞を受け取った。
「え、人間じゃ無いよねこれ?」
「うん。人間の前に地球で栄えたもの。『古のもの』だよ」
古のもの。
形は……そうだな。
木の樽にコウモリの羽を五枚生やして、ヒトデ型の頭をつければいい具合に似てくるだろう。
とても賢く強いが、人間程度には愚かな種族だ。
「写真載って……ってこれ、すごい見た目!!」と戦慄している。
俺はピンと人差し指を立てて解説した。
「実は人間の原型を作ったのはこの古のものなんだよ」
「………え」
「小さなネズミみたいなものから、古のものが奴隷用に類人猿を作成したんだ」
それが分かっていたから、俺も古のものには手を出さず尊重した。
人の創造後にも滅ぼさず、丁寧に別の星を用意して移住してもらったし。
で、それを俺が進化を待ちきれずさらに手を加えて。
みんなのよく知る人間、正確にはハイパーボリア人が完成したというわけだ。
コナン君が顔を真っ青にして「それ、僕が知ってていやつ?」と震える唇で俺を見上げる。
なんで?全然隠してない世界観設定だけど。
俺は新聞を返してもらって、パラパラとめくっていく。
ショゴスが労働者の権利を訴えて運動を起こしているのが社会問題になっているらしい。
あと海中都市の温度上昇により、熱中症で病院に放り込まれる古のものが多発。
ミ=ゴとの政治的摩擦により緊張状態が続いていたが、冥王星拠点の壊滅によりパワーバランスが崩れた……ふむ。
有識者のコラムがある。
ポップな字体で「旧支配者有益度ランキング!」と俗な記述が見つかった。
ほーん。いい度胸しとるやんけ。
コナン君が「なんかニャルさんに似た顔してるよ」と居心地悪そうに俺から距離をとった。
そんな。ニャルと似てるだなんて。
圧倒的一位に輝いているのは、ヒキガエルに似た神たるツァトゥグアだ。
おおむね理不尽に殺してこないし、ひとまず祈れば命は助けてもらえるし、加護ももらえるSSR環境トップ神らしい。
シュブ=ニグラスもよっぽどのことがない限り悍ましいことにはならないので良さげ。
俺こと旧支配者ハスターも、話が通じるという意味でかなり上位に位置している。
ただ、この神の加護を得る上で必須のカワイイ概念は本当に意味分からんしビヤーキーはキモいとのこと。
なるほど。
もう殺すしかなくなっちゃったよ……。
俺が暗黒の炎を燃やしていたら、コナン君が目を三角にして「族滅するの?」と俺を責めてきた。
はっはっは。
俺が下等生物の言説程度で目くじら立てるような神に見えるのかね。
俺はフォッフォッフォッ、と鷹揚に笑って星の精を撫でた。
星の精は俺に触れられてハッ!?と目を覚ましたらしい。
夢の中で強大な敵と戦っていたようで、友達を頑張って触手で庇いながら「クスクスクス!?」と慌てて触手を丸めた拳を構えている。
こんなグロモツの集合体みたいな見た目なのに非常に可愛い。
俺とコナン君が撫でてやる。
すると安心したのか、再び星の精は丸くなってうつらうつらし出したのだった。
・古のもの
意外と人間的感性もある種族。
ミ=ゴと覇権を争ってドンパチしがち。
現在は特に神を持たないが、定期的に「信奉する神を作って庇護下に入った方がいいのでは?」という意見が出てくる。
ハスターに地球を追い出されたが、魔術的に好環境を整えてもらった上でのことなので円満解決している。
一都市がニャルゲームで壊滅した。
まさかネタコラムが神の目に留まったなんて気付いてない。
・飲み会
暗黒飲み会。
ジンは降谷さんだけ誘ったつもりだったが、気付いたらフルメンバー真っ暗組織オフ会になってしまった。
怪異って怖ェな…みたいな話題で意外と盛り上がるる模様。
ジンニキ体験談がかなり受ける。
降谷さんは居た堪れない顔をする。