色々黄衣側で事件があったらしい。
なんかゲームマスターが爆散してにゃるーになってしまったとのことで。
黄衣の説明は要領を得ず、いまいちコナンには状況が掴めていない。
少なくとも、現在ゲームはニャルラトホテプの不在により制御不能なことは確かのようだ。
不安に過ぎる状況だが、コナンは準備を全て整えてゲームに挑むことしかできない。
コナンは星の精に声をかけて、最終確認とした。
「大丈夫?もうお腹は平気?」
【クスクス!】
星の精は触手で力こぶを作って健在をアピールしたようだ。
ルパンからもらったお菓子を、星の精が昨晩盗み食いしたらしいのだ。
今日朝からお腹を壊してグズグズ泣きながら持ってきた犬ベッドで寝ていた。
しかしコナンも治療には慣れたもの。
魔術も駆使して、半日ほどですっかりよくなったようだ。
「もう食べたらダメだよ」と言い聞かせておく。
星の精はまたダメだった…と言わんばかりに「クスゥ…」と酷く落ち込んでしまった。
可哀想だがこればっかりは理解してもらうしかない。
ルパンが心配そうに星の精を覗き込む。
「この怪物君、お腹弱すぎねぇ?単なる個包装の焼き菓子だったろあれ。そんなんで獲物食えんのか?」
「まだ子供で消化器官が発達してないんだ。本当なら親に餌を与えられてる時期みたいでさ」
「へー。まさに雛鳥ってわけだ。そんなの戦場に連れてきて大丈夫か?」
ルパンの心配はもっともだ。
コナンはむむむと唸った。
でも、部屋に置いてきたらきっと星の精は泣いて泣いて喚いてから勝手についてきてしまうだろう。
少し迷って、星の精へと視線を向ける。
星の精はやる気満々で、学校でする準備運動っぽい動きを始めていた。
今置いて行ったらひっくり返ってびいびい泣くだろう。
自分が絶対守り切る決意をして、ルパンに頷く。
「心配だけど、こんな見た目でも人間よりずっと丈夫だから大丈夫だよ。僕が魔術で大きくすればヒグマよりずっと強くなるし」
「おー怖。赤ん坊でも怪物君は怪物君ってわけだ」
「おい坊主、俺らに食いついたりしねぇだろうな」
次元が訝しげな顔をして遠巻きに星の精を観察している。
コナンは準備運動を一通り終えて誇らしげな星の精を撫でてやった。
星の精は触手を全部パタパタして喜んだ。
「小学校で大人しく授業を聞けるぐらい賢いよ」
「これ小学校で普段暮らしてんのか???狂ってんだろ」
「見た目で差別したら星の精が可哀想だよ」
コナンの言葉に同調したようだ。
星の精は「クスクス!!」と言って触手で地面に文字を書いた。
歪だが「こんにちは」と読める文字である。
星の精は勉強ができる!!と言っているのだろう。
コナンは「えらいね、星の精はとっても頑張り屋さんだね」と褒めてやった。
星の精はますます誇らしげになって、人間っぽい形に触手を動かして胸を張った。
今回も友達は星の精が守る!とのこと。
威勢よくシャドーボクシングを始めている。
次元はかなり迷って、「そうかい」と困った様子を見せた。
突っ込むのを諦めたようだ。
ともかく、城攻略本番だ。
侵入経路は古代ローマ時代に作られた水道橋。
ルパン達には潜水用具があるが、コナンは魔術で防水と空気を確保することにした。
水路の中は深さがあって、小さな体では動きづらい。
が、星の精が代わりに泳いでくれるから問題ない。
宇宙空間をものともしない、ルールによる移動力だ。
コナンは星の精に掴まっているだけで、本職モードのルパンを邪魔することなくついて行くことができた。
そして侵入後の道中、城内をしょぼしょぼうろつく銭形警部を発見する。
ルパンに釣り出されたが、カリオストロ伯爵にすげなくされたことで思ったように捜査ができず困っているようだ。
ルパンはヨシヨシと頷いて顎に手を当てた。
「あとはとっつぁんに変装して、俺はクラリスのところまで駆け上がるとすっか」
「ここまで怪異の姿が見えねぇな。どういうことだ?」
「さっきの水道橋には水に紛れて巨大なスライム状の怪異がいたけど、一応僕が動きを凍結しといたよ」
次元が「おお、やるじゃねーか」とコナンを褒めた。
コナンは照れ臭くてうまく反応できなかった。
友達が褒められた!うれしい!と星の精も喜んでハイタッチをしてくれる。
だが不自然に罠が少ないのも本当のことだ。
コナンの方で事前に城内の詳しい構造と罠、脅威の設置状況の調査をしてあったのだが。
これは妨害にあってマップ作成ができなかった。
恐らくこの城はニャルラトホテプによってゲームにふさわしい迷宮と化しているのだ。
だとするなら、もっとずっと罠が多くなくては不自然だ。
目の前で、ルパンがくるりと銭形警部に変装した。
門番により封鎖された門の突破を試みているのだろう。
コナンも魔術で透明に変じて、星の精に乗ってこっそり空中を移動した。
銭形警部に扮するルパンを前に、警備の兵二名が無表情で儀礼用の槍を交差させた。
奇妙な沈黙が満ちる。
ルパンは平然と銭形警部を装って言葉を紡いだ。
「なんだ?ワシはインターポールから正式に捜査を任された銭形…」
【神の名のモト、侵入者ヲ排除する】
「………!」
どろりと。
それは形が溶けるように、ゾッとするような白く油ぎったヒキガエルへと成り果てた。
巨漢というに相応しいサイズで、鼻のあたりに生えた触手を蠢かせながら三叉槍を凶暴に構える。
そこに人間性などかけらもない。
だというのに何故か、ニタニタと醜悪に嗤っているのだと感じさせる、悪意だけが伝わってきた。
「ほんじゃさいなら!」
ルパンがいつのまにか、その封鎖をするっと越えて通路の向こうにスタコラサッサと走り出していた。
変化を解く瞬間を狙ってすり抜けたのだろう。
ヒキガエル二匹は「!?!?!?」と驚愕して慌ててその後を追い始める。
次元は「俺はこっちで待機だ。坊主は好きにしな」と言って放任の姿勢を取った。
元々コナンの存在は計画にない。
独自の判断で臨機応変に対処しろという意味だろう。
その結果命を落としても面倒は見ない。
結果的に皆が仕事を終えられればそれでよし。
実に彼ららしいチームプレイの作り方だ。
コナンは「了解。邪魔にだけはならないから任せて」と宣言した。
少し迷ったが、コナンは謎の解明を第一とすることにした。
ルパンの第一目標はクラリス姫の救出。
自由を知るルパンは、姫様を重圧から解放して自由な世界に開放することをまず目指すだろう。
ならば己は真実を白日の元に晒すことを目標にしよう。
人々が不正な悪事に苦しめられないように、己の責務の中で正しく生きることを選択できるように。
そのために、まずはこの国の悪事を暴く。
コナンは再び城内のスキャンをする。
限られた範囲内ならマッピングができるようだ。
ならばこまめにスキャンして行くしかないだろう。
それに、どうやら人間の生活空間は最低限の罠しかないようだ。
ならば通常ルートはルパンに任せて、嫌な予感がする場所を先に片付けて行くべきだ。
ルパンが未来予知じみた直感で、華麗に落とし穴を飛び越えていく。
星の精の背に乗ったコナンは、そーっと後ろから近寄りヒキガエルを魔術で拘束した。
「──!?!?!!」とヒキガエルは驚愕したようだった。
その後、驚いたヒキガエルの隙間を通り抜け、コナンは穴の中に飛び込んだ。
この先から、強大な存在規模の何かの気配が漂っている。
倒せはせずとも、情報の収集とギミックの確認だけでもしておきたい。
星の精に捕まってゆっくりと落とし穴を降りて行く。
壁は不潔に錆びついている。
星の精が気色悪そうに触手を縮こめて口をへの字に曲げている。
汚いから触りたくないらしい。
ゆっくり下まで降りて暗視の魔術を使えば、下は剣山になっているようだった。
犠牲者と思しき白骨死体が服と共に引っかかって、下にもいくつも散らばっている。
服装はどれもボロボロだ。
時代も身分もかなり差があるように見える。
コナンは残されたわずかな手がかりから大まかな年代を推察して、ため息をついた。
科学的証明にはならないが、参考程度に使えるように白骨死体から死亡日時を割り出す魔術も作っておくべきか、と思案する。
はわわわわ、と怯える星の精に声をかける。
「ゴート札の正体を知った人間や、国内の反対派をここで処分してたんだ」
【クス……】
星の精が非業の死の概念を理解したかは定かではない。
が、触手を合わせてナムナムと冥福を祈る仕草をした。
同じくコナンも手を合わせて軽く黙祷する。
この負の連鎖を破壊すれば、きっと彼らの未練も晴らされると信じて、進むしかないのだ。
中は洞窟と建造物が複雑に組み合わさっている。
自然に存在した地下空間を利用しているのかもしれない。
加えて、何か非常に大きなものが通り抜けたような痕跡があちこちに見られる。
色が変わって石材の色が露出していて、それがつけられたのが最近なのだと推察できた。
擦ったような跡と、壁の端が崩れた跡。
それはいつも一定のルートを巡回しているようだった。
おそらく「出会ったらゲームオーバー」の類のもののはずだ。
それまでに脱出しないとまずいだろう。
同時に、「何らかの条件が揃ったら解放される」可能性も視野に入れてそちらの可能性も探るべきだ。
一通り歩き回ったが、普通には脱出できなさそうに見える。
薄汚い水路が張り巡らされているから、おそらくはそちらに脱出の手がかりが───。
瞬間。
「ぬわぁああああああ!!!」と大声と共に落下してくる、銭形警部の姿が見えた。
彼は顔面から鋭い金属の剣山を蹴散らしながら垂直に落下。
しばらくの沈黙の後、ズボッ!と壊れた石畳から頭を引き抜いた。
「痛たたたた、ワシを誰だと思っとる!!」とポコポコ上へ向かって怒っているようだ。
なお、この現象に魔術も怪異も一切検出されなかった。
コナンはあまりに怖くてつい物陰に隠れた。
コナンよりも優しい星の精は、銭形警部を心配して「クス…!」と空中をよしよしし始めたのだった。
・その頃のハスター達
ニャル復旧作業に従事してる。
治るまで絶対に口を開かないと固く決意してる降谷さんを添えて。
ニャルは「にゃるー」と鳴いて巫女服狐っ子姿でハスターに擦り寄っている。
ハスターは「このままであれば世界は平和…?」とアイディアでクリティカルを出した。
そして諸伏さんに「ゼロが可哀想じゃないのか!!」と怒られた。
まだハスターは自分の性癖が父上に見透かされた上に公開処刑されたことに気づいてない。
気づいたら絹を裂くような悲鳴をあげてハリ湖に引きこもる。
諸伏さんは「まさかな」と思ってる。
・全環境ユニット星の精
魔術より低コストかつ無音で自由に空を飛べる便利キャラ。
水中も自由自在。
汚水は嫌がる。星の精、便器の中には入らないもん…。
・ニャル化身達
無論だが念話もにゃるーしか喋れない。
「にゃるー(凪いだ目)」
「にゃる…にゃる…(顔を覆ってしくしく泣き出す)」
「にゃーる。にゃる(悟りの境地で肩を叩き慰める)」
「にゃるるるにゃにゃにゃるるる(トンツー話法)」
「「「!?!?」」」