ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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カリオストロの城〈育児ノイローゼ〉

 

 早くも育児ノイローゼになりそうな俺氏である。

 

 にゃるーは秒ごとにあらゆる悪いことをした。

 まず不機嫌になると信じられない爆音で鳴いて、結界を破壊した挙句半径5キロの窓ガラスを粉々にする。

 

 もちろん、範囲内の人間も粉々になる。

 予兆もよく分からんし、俺が必死で強力な防護魔術を組んでトントンだ。

 なんだあの鳴き声。

 こんな時だけ機嫌悪い時のアザトースに似なくてもいいのに。

 

 しかもそれは序の口だ。

 

 気まぐれにコネコネした謎魔術を人の目を盗んであちこちに設置するイタズラもする。

 うっかり作動すると南米が大陸ごとなくなる魔術とか、とんでもない罠を大量に仕掛けるのだ。

 俺も核地雷みたいなのを踏んで危うく消し飛ぶところだった。

 

 あとなんとなく無限増殖して、一斉に外に繰り出そうと押し合いへし合いしたりもする。

 しかも最終的に自分自身と乱闘騒ぎを起こして、恒星を消し飛ばすレベルの魔術を繰り出し合う。

 喧嘩の仲裁は折りたたんだ時間で半日かかった。

 にゃるーはみんな飽きっぽかったのが幸いした。

 

 事務所内のあらゆるコンセントを引っこ抜いて、書類を全部落として、本棚からファイルを落として遊ぶのも流行った。

 発見が遅れて、冷凍庫に入っていた俺のアイスはお陀仏になった。

 ちくせう。

 

 そして今は降谷さんの頭をガジガジしている。

 降谷さんが情けない声を上げて俺を見た。

 

「にゃるー……」

「いや分かってる。その上で頼む、耐えてくれ降谷さん!」

 

 降谷さんは大層恨めしげに「にゃる…」と低い声を出した。

 翻訳するなら「覚えてろよ」に違いない。

 

 現状、にゃるーが大人しくしている時間はごくわずかだ。

 

 俺が抱きしめて抱っこしてる時と、降谷さんをガジガジしている時のみ、比較的いい感じになる。

 どちらも長くは続かないが、貴重な休息タイムにはなるのだ。

 

 一応、そうして満足したにゃるーは不意にランダムな魔術をぶっ放す程度だ。

 あまり悪いことをしないので、その間に部屋の片付けや仕事の処理などができる。

 

 つまり、降谷さんは尊い犠牲というわけである。

 

 お、マモーさんが買い出しから帰宅したようだ。

 ガチガチに防護魔術を固めたまま俺の横までやってきて、俺の頼んでいたものを差し出してくれる。

 

「食事をお持ちしました!ゼリー飲料です!」

「ありがとうマモーさん。俺達がニャルを押さえておくから、そっちはどこか諸伏さんと外食して来てくれ」

「そんな!神の非常事態に呑気に食事などできようはずもありません!」

 

 俺が3秒チャージ用のゼリー飲料を受け取ると、マモーさんはさめざめと泣いた。

 

 諸伏さんも「ああ!掃除は任せろ!」と掃除機とクイックルワイパーの二刀流を構えてみせた。

 降谷さんが心配なのはわかるが、にゃるーにうっかり消し飛ばされたら取り返しがつかないので避難してほしいところである。

 

 今のところ、めちゃくちゃになった室内は常にマモーさんが魔術で復元して、その後諸伏さんが細かい部分を掃除している。

 その努力の甲斐があり、事務所は空き巣被害にあった家程度の荒らされ方を晒すだけで済んでいた。

 とんでもねぇにゃるーである。

 

 俺の方はにゃるーにせっせと復元力増強の魔術をかけている最中だ。

 なんとか元のニャルに戻せないかと奮闘しているのだ。

 

 外なる神の回復力をもってして、普通にしていれば復元に千年はかかる惨事だからな。

 俺がどんなに頑張っても、回復には明日の晩までかかるだろう。

 

 にゃるーは降谷さんをガジガジして上機嫌のようだ。

 

 降谷さんはあらゆる苦難を煮詰めた顔で正座して、されるがまま耐えている。

 存在する力自体をガジガジしているらしく、降谷さんの規模が一回り小さくなってしまっている。

 

 降谷さんがマジもんの扇風機になってしまう前になんとかせねば、と俺は気合を入れ直した。

 

 

 

 

 

 

 そのあたりのことである。

 コナン君から俺宛に連絡が来たのだ。

 

『黄衣さん、少し聞きたいことがあるんだけどいい?』

『もちろんだとも。何かあったのか?』

 

 コナン君は現在場所を移動して、城のかなり下層の方にいるようだ。

 重厚な機械に囲まれているのを見るあたり、どうやら偽札製造工場に潜入しているらしい。

 

 データと原版を抜いて証拠写真を撮って、と大忙しだ。

 それと並行して会話できる頭脳のマルチタスク適正は圧巻の一言である。

 

『マモーさんってそっちにいる?』

『いるよ。マモーさんも会話に加えるかい』

 

 「お願い」とコナン君が言うので、マモーさんに一言いい置いてから念話グループに加える。

 マモーさんが「何か私に聞きたいのかい」と問いかけた。

 

『できればで構わないんだけど、どうすれば世界恐慌を招かずにこの城の悪事を潰せると思う?』

 

 コナン君の困った様子に、俺はあー、と少しだけ察しがついた、

 

 もしカリオストロの悪事を公にした場合、世界は出回る偽札による経済ショックに見舞われる。

 それは下手をせずとも、カリオストロ公国が人知れず消して来た人間の数よりも多い被害を生むだろう。

 

 しかしクリアのためにクラリス姫を解放するには、カリオストロの闇を放っておくわけにはいかない。

 つまり痛し痒しというわけだ。

 

 ふむ、と少しばかり考えたマモーさんは、すぐに穏やかな顔でこう答えた。

 

『それならば簡単だよ。物理的に破壊すればいい』

『………それって』

『単に偽札製造の機器や資料、データの類を全て破壊して修復不可能にする。できれば職人も消せるといい。クラリス姫には、派手に爆発する城を見せるのもいいかもしれない』

 

 マモーさんの意見は実に残酷だった。

 もうカリオストロで偽札が作られなくなるなら、真実は闇に葬ってもいい、と。

 

 クラリス姫を解放するなら、必ずしも国の悪事を暴く必要はない。

 ただ解放感を演出すればいいだけだ。

 カリオストロ公国での新たなゴート札発行さえ防げれば、国々は勝手に新紙幣などで対応してそのうち偽札から抜け出していく。

 電子マネーの台頭もあり、その影響も限定的。

 

 勝手に滅びてくれるなら、それ以上ありがたいことはない。

 

 財界の重鎮として、マモーさんはそのように言っているのだ。

 

 コナン君は儘ならぬ現実に顔を顰めたようだ。

 彼の苦痛をわかった上で、マモーさんが言葉を重ねる。

 

『もし不安なようなら、私が各国に働きかけよう』

『………』

『君の姿が監視カメラなどで捉えられたとして、各国は見て見ぬ振りをするだろう。それどころか彼らは喜んで「他人の空似だ」と君を庇いさえするはずだ』

『……ありがとう、マモーさん』

 

 それがマモーさんの厳しさであり優しさだと理解したのだろう。

 コナン君は緩く息を吐いたようだった。

 

 マモーさんが静かに視線を落とす。

 

『これは猿の社会の不完全さだな。神によって満たされていなければ、我らは己の敷いたルールを守ることすら満足にできない』

『ハイパーボリアでは、こんなことはなかったの?』

『彼の楽園で法を犯すものなど、ごくごく軽微なものでも千年に一人と言ったところだよ』

 

 もっとも。

 神を食い物にして文明人ぶっているのも、猿と同じだけ下等な振る舞いであったのかもしれないがね。

 

 そのようにマモーさんは自嘲して、わずかに肩をすくめたようだった。

 

 コナン君は「やるせないね」と静かに言って、ため息を落とした。

 

『なら僕は銭形警部を説得して、ここをどうにか再起不能にできないか検討してみるよ』

『ふむ。ならば念のため原板は持って帰るといい。もしかしたらのちの偽札分別に使えるかも知れない』

『そうだね。ありがとうマモーさん』

 

 用件が終わったのを理解して、俺も声をかけることにする。

 

『気をつけてな。油断せずに向かってくれ』

『……そうだね。頑張って無事に事を終えてみせるよ』

 

 ルールに抵触するから言えないが。

 おそらくかの城の伯爵はミリ・ニグリが変化したものだ。

 

 ミリ・ニグリはチャウグナー・フォーンの信奉者たる、両生類より進化した知的生命体だ。

 姿は人間に似ているが、食性はだいぶ異なる。

 人間に変身しているということは、魔術が使えるミリ・ニグリだと言う事だろう。

 

 本物の伯爵がどうなったかは知らないが、現在はせっせと人を捧げてチャウグナー・フォーンの完全顕現を目論んでいる。

 おそらく三十名ほどが既に犠牲になっているはずだ。

 近衛兵の一部と特殊部隊がミリ・ニグリに丸っと入れ代わられて。

 本物は地下に放り込まれて、チャウグナー・フォーンの餌食になった。

 

 ニャルに無理やり連れてこられただけだったなら、蹴り出すだけで済ませようと思ってたのに。

 

 俺が人間を愛していると知っていても、間違いなく人間を軽んじている。

 多少ならいいだろうとたかを括っている。

 

 コナン君に切り掛かって、人を無数に傷付けて食い殺して死体を捨てて。

 人のフリをしてのうのうと過ごすゴミどもが。

  

 

 今回のゲームがどうあれ、後ほどきっちり処分するよりほかあるまい。

 

 

 諸伏さんが「怒ってる?」とそーっと距離を取りながら聞いてくる。

 そんな、怒ってるかだなんて。ははは。

 

 俺はペロリと唇を湿らせて、目を細めたのであった。

 

 

「───さてね」

 





・ハスター
もうあの頭引き抜いて鼻切り落としてバスケ用のボールにしてドリブルするしかないと思ってる。
それはそれとしてニャルは回復したら出禁にする。
お前マジで悪いことしかしねぇな(憤怒)

・にゃるー
あらゆる悪いことする。
コズミック幼児。
残念ながら普段通りに戻ってもコズミック小学生ぐらいの悪ガキ。
蛇(旧支配者)捕まえて嫌がる好きな子にうりうりする概念。
好きな子は泣いて出禁にしてくる。

・チャウグナーフォーン
普通に何も知らずに人間を仕留めてイアイアしてるミリニグリは放置。
どうでもいい下等生物が何やっても別にハスターは気にしないだろうとの判断。
自分が積極的に殺しにいくのはやや控えてる。
捧げられた獲物は美味しくいただくが、それは普通のことだからでしかない。
完全顕現したら、適当に人間をつまみ食いしてハスターに挨拶してドコドコ家に帰るつもり。
顕現した拍子に人間が死ぬことは別に自分のせいではないので気にしない。
常識神ではあるが、やはりどこまで行っても旧支配者なのである。
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