ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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カリオストロの城〈朝の光〉

 

 視界の向こうでは、ルパンがお姫様を抱えて逃げ回っている。

 

 コナン君と銭形警部は、印刷室の機械を壊してデータを奪取できたようだ。

 中の住民を考えて、火を放つことはしなかったようだが。

 印刷機はすでに大破。原板は抜き取られ、データというデータが消去。

 紙資料は全て魔術で燃やし尽くされた。

 

 恐らくはこれを復旧するには五年では賄えないだろう。

 

 銭形警部はまだブツブツ文句を言っているようだ。

 何故インターポールで裁かないのだ、と不満を抱いている。

 コナン君に説明はされただろうが、心が納得していないのだろう。

 

 それが終わって、二人はルパンに合流した。

 次元さんは退路の確保をしているらしく、姿は見えない。

 

 そうして。

 ルパンはお姫様奪還作戦を本格的に開始したのだ。

 

 コナンの手引きで空路を使い華麗にお姫様の寝室に再突入したルパンは、そのままノンストップでお姫様を抱えて下へと降りた。

 そして城内を多くの人の目を引くように派手に逃げ回る。

 

 できる限りの人目を集めた後は、高台の上に陣取って、焦れて出てきた伯爵にこう宣言するのだ。

 

「正体を現せよ、カリオストロ伯爵!」

「何を……ッ!?」

 

 言葉と同時に、カリオストロ伯爵の纏っていた魔術が剥がれ落ちる。

 

 「似姿の利用」に近い独自の魔術だったのだろう。

 隠れていたコナン君が解除できるあたり、そこまでの巧者では無かったのかもしれない。

 

 似姿が剥がれたのはカリオストロ伯爵だけではない。

 特殊部隊「カゲ」の人員の一部と、近衛兵が幾らか。

 彼らは人ならざる姿を群衆の前で現した。

 

 隣人が突然醜い黒い二足歩行のカエル人間じみた姿となったことに、群衆から悲鳴が上がる。

 ルパンが滔々と宣言した。

 

「見ろよ。バケモンが国を乗っ取ろうとしてたんだ。お姫様を攫って無理やり連れて来たのも、それを誤魔化すためだ!」

 

 実際のところがどうであれ、この城にいる人間の数は怪物に比べて圧倒的に多い。

 やはり少数に過ぎないミリ・ニグリは圧倒的に不利だ。

 

 所詮はチャウグナー・フォーンが連れてきた小間使いの怪物だからな。

 

 恐怖にパニックとなり、我先にも逃げ出そうとする人々で、広場は大混乱となった。

 

 既にミリ・ニグリの存在は白日の元に晒されている。

 バケモノに国が乗っ取られていた、という話はきっとあっという間に広がり、他国が動く事態になるだろう。

 

 ミリ・ニグリは泡を食って口封じをしようとした。

 しかしこの騒ぎの中で多数いる人間を逃さず殺すなど無理な話。

 加えてコナン君があらかじめ人間には一人ずつ簡易防護を張っている。

 ミリ・ニグリは切り掛かったナイフが弾かれて、広場はパニックが加速していく。

 

「奴を生かして帰すな!殺せ!!」

 

 カリオストロ伯爵の声で、ミリ・ニグリの頭領が指示を出す。

 

 逃げ惑う人並みに構わず、機銃の一斉掃射を部下に命じたようだ。

 ミリ・ニグリの部下が大慌てで銃に飛びついて操作する。

 

 残念ながら、それでもコナン君の防護魔術を突破できず、人に紛れていたミリ・ニグリのみを同士討ちしていく。

 

 お姫様にも防護はかかっていたが、怖いだろうからとルパンが庇って物陰へと避難した。

 

 コナン君が他人にかけて使う簡易防護は、簡易といえどハイパーボリア人のそれとほぼ同一。

 ただの銃火器程度で突破できるものではない。

 流石に地中貫通型爆弾とか投下されると死ぬが、逆にいえばそのぐらい持ってこないと痛痒は与えられないのだ。

 

 混乱に乗じて、銭形警部がミリ・ニグリ達をまとめて手錠で拘束、確保していく。

 

 ミリ・ニグリは人程度の戦闘力しか持たないが……仮にも神の側近を相手に銭形警部の捕縛術は非常に鮮やかだ。

 あっという間に半数以上を捕まえて、銭形警部は高笑いした。

 飛びかかったミリ・ニグリを華麗にいなして手錠をかけ、「ぬわっはっはっは!わしに勝とうなぞ百年早い!」と笑っている。

 〈芸術:逮捕術〉98とかかな。

 

 総崩れの状況に、偽カリオストロ伯爵は歯噛みした。

 両手を複雑な形に組み、苦々しげに叫ぶ。

 

「ならば、ならば神をお呼びするまでだ!我が身、我が祈りに応えたまえ…」

 

 おお、招来呪文だ。

 

 発動予定術式を解析したコナン君が「あの地下にいた化け物を呼ぶ気だ!」と叫んだ。

 血相を変えてルパンが己のワルサーで銃撃する。

 カリオストロ伯爵は強力な防護壁を敷いているようで、銃では突破できそうにない。

 

 コナン君がそれを破りうる魔術を編んでいるようだが、流石にまだ魔術戦用の攻性魔術は不慣れなようだ。

 装填に時間がかかっている。

 

 そして、術式は発動する。

 

 もはやこれまで、と神を讃え、伯爵は自らを贄に神の招来を実行する。

 

 喧騒が遠く、静寂が場に満ちる。

 伯爵は「な、ぜ……」と血を吹いた。

 

 神は応えなかった。

 下等生物の祈りなどより、神同士の取り決めの方がよっぽど大事だからだ。

 

 ニャルラトホテプはゲームルールをチャウグナー・フォーンに説明していたのだろう。

 石像状態の場合は、あの地下空間より出ないように。

 常時一定ルートを巡回するように。

 彼はそのように説明されていたのだ。

 

 だから下等生物がいくら希ったところで、神が来るはずもなかったのだ。

 

 あのミリ・ニグリぐらいの魔術の腕があったなら、普通に魔術で戦いを挑んだほうが勝ちの目はあったろうに。

 特にあの防壁魔術。コナン君のブレスレットの性能であそこまで演算負荷をかけられるなら、種族最高峰の術師だったはずだ。

 

 まあ、いまとなってはどうでもいいことか。

 

 血を吐きながら、何事か呟いて、伯爵たるミリ・ニグリは血溜まりに沈んだのだった。

 

 

 そうしている間にも着々と銭形警部はミリ・ニグリ全員を逮捕して。

 今や全員がお縄についたようだ。

 それだけの戦績を上げて、銭形警部は魔術を撃たれて少しかすり傷を負った程度。

 背中の怪我もコナン君に治療されて、元気万全と言った感じだ。

 

 うーん、さすがはルパン案件専属警部。

 スペックの桁が違う。

 

 ルパンは伯爵やミリ・ニグリの死体をうまく視線誘導で隠して、お姫様の手を引いて移動していく。

 

 明けの空がグラデーションに染まって、空っぽの城の中はまるで異世界のように美しい静寂に包まれていた。

 先ほどの騒乱で住民が皆逃げ出したせいで、城はがらんどう。

 しかし城下が大混乱になっているらしく、遠い喧騒がこちらまで聞こえてきている。

 

 ルパンがお姫様の手を取って、中庭に連れて行く。

 鮮やかな朝の光が、城の尖塔の向こう側から差し込んだ。

 

 やわらかく、静かに。

 ルパンは中庭の中央で、クラリス姫と向かい合った。

 

「クラリス。お前は自由に生きていいんだ」

「───……」

 

 ルパンの言葉に、お姫様は息を呑んだようだった。

 

 まるでおとぎ話のようで、しかし差し込む光の暖かさと、朝の冷たい空気が肌を撫でている。

 

 もうこの城にクラリスを縛るものはない。

 誰もいない城に、優しい日差しが背を押すように届いているだけ。

 

 クラリス姫はしばらく沈黙して。

 それから俯いて、声を震わせた。

 

「おじ様。私、あなたにどんなお礼をしたらいいのかわからないわ」

「泥棒さんにお礼なんてするもんじゃないぜ?」

「っ……!ねぇおじ様。どうか私も」

 

 ルパンはひょい、と薔薇の花を出現させて、お姫様の言葉を遮った。

 

 その言葉を最後まで聞いたら堪らなくなると、ルパン自身わかっているようだった。

 

「そいつだけはできねぇな。泥棒は因果な商売なんだ。自由に生きてくには、誰よりも強くなきゃなんねぇ」

「……なら、自分を磨いて出直します」

「どうしてそうなるの」

「おじ様が言ったのですよ。自由に生きろと」

 

 美しく笑って、クラリス姫は宣言した。

 ルパンの背に自由を見出した、若くしなやかな強さが滲んでいる。

 

 切なさにルパンが何かを堪えるようにそっぽを向いた。

 愛しさがゆえの、精一杯の強がりを見透かされたような気持ちになったのかもしれない。

 

 パキン、という音とともに、空間のズレが解消された。

 魔術による条件が解除されたのだ。

 

 すなわち今、クラリス姫は「解放された」と強い確信を得たということになる。

 

 ルパンは「少し付き合ってくれるか?」と穏やかな声を出す。

 その手を引かれて、クラリス姫はゆったりと歩き出した。

 

 どうやら、コナン君が気を利かせてルパンの手の中に伯爵の持っていたゴートの指輪を転送してくれたらしい。

 

 ルパンとクラリス姫はゆったりと歩いて、城を出て水道橋へと入る。

 二人が外へ出ても、チャウグナー・フォーンは完全顕現しなかった。

 

 コナン君はそーっと二人の空気を壊さないように、壁に隠れて銭形警部と共に様子を伺っている。

 銭形警部が驚愕の表情で目を白黒させている。

 

「も、もしかしてなのか!?ルパンの顔!若い子相手にデレデレしおって!」

「しっ、静かに!いい空気なんだから!」

【クス!!】

 

 星の精に腹をドスドスされて、銭形警部は「すまん…」としおっとした。

 

 時計塔に着くと、ルパンは外側からひっかけ鉤を使ってするすると登っていった。

 クラリス姫は下で待っている、と見せかけてルパンの背にしがみついた。

 なかなか胆力あるお嬢さんのようだ。

 ルパンが困り切った顔で慎重に塔を登っていく。

 

 朝の日差しに作る影が、湖に落ちている。

 雄大な景色に、クラリス姫がほうと息をついた。

 

 そうして、かちりと、時計盤に空いた穴に指輪が嵌められる。

 

 急速に回り始めた長針と短針を「おとと」とルパンがクラリス姫を抱いて避け、下まで降りる。

 針が天辺を指すと同時に、鐘が鳴った。

 

 ごーん、ごーんと、それは魔術を含んだ鐘の音だった。

 

 グラグラと時計塔を含めた辺り一体が揺れる。

 どうやら湖と接する壁に穴が空いたようだ。

 水が城の周辺の溜池に流れ込んでいく。

 

 湖の水が引いたことで露出していくのは、そこに沈んでいたらしい古代ローマの街並みだ。

 

 それそのものが魔術的意味を含んだ、古の都市遺跡。

 ハイパーボリアの名残が感じられる、衛生と住むものの健康を都市全体で担保する魔術が秘められている神秘の遺構である。

 

 湖は、当時の状態をなるべく長く魔術的に保存するための設備だったのだろう。

 

 それは極めて保存状態が良く、魔力を込めるだけでこの都市は再び活性化するだろうと思われた。

 封印せざるを得なかったのは、この都市を起動するに足る魔力を捻出できなくなったからか。

 

 荘厳な古代都市の姿に、ルパンとクラリス姫は息を呑んだ。

 

 露わになった「ゴートの秘宝:古代都市の遺構」によって、チャウグナー・フォーンの退散条件が満たされる。

 静かにかの旧支配者は地球より退去した。

 

 それを知らずに、穏やかに二人は遺跡に足を踏み入れる。

 

 

 そっと、言葉もなくその遺跡を歩く二人に。

 コナン君は優しく微笑んだようだった。

 





・ニャルラトホテプ
ようやく治った。
「はっ!?僕は一体…」って気付いたら、あらゆるものから触手が生えて走り回ってて、自身も倒れ伏すハスターの触手にチュウチュウしゃぶってしがみついてたニャルです。
化身は頭から天井に突っ込んで昇天してた。

・ハスター
あの象頭絶対ぶっ殺す(逆恨み)
「出禁!!!2ヶ月月埋め!!!」とニャルに叫んだら、ショックを受けたニャルは馬鹿でかい声で泣いてまた窓ガラス全部割った。
ニャルがたくさん泣いて可哀想になったので1ヶ月に短縮した。
ニャルはグズグズべそをかいて「毎日来てくれますか…?」ってハスターの服の裾を引っ張った。
仕方ないので頷いたら、月埋め用旅行セット用意し始めた。
こいつ1mmも反省してねぇな???

・クラリス
ひとまず走り込みから始める。
お城の兵士さんに筋トレメニューも聞いて、食生活もタンパク質を摂るようにして。
崩壊寸前のカリオストロの旗にされたけど、自分を磨いてもう一回ルパンに会いに行く志は貫く予定。
泥棒さんは体力勝負って聞いたし、まずは自分一人で垂らしたロープを登れるようにしなくっちゃ。
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