ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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事後大散々そのほか

 

 ニャルを再び月に埋め終えて、俺はほっと一息ついた。

 

 今回は地面の下を這い回らないように壺に入れて封印してある。

 ニャル壺だ。

 

 俺が自分で一から土を捏ねて窯で焼いた「ニャル♡ハスター」の文字入り壺なので、壊して出てくることはあるまいよ。

 ニャルも気に入ってすぐ自ら入ってくれた。

 猫のように収まったところを封をして、ざっくざっくと土に埋めたというわけだ。

 

 一応中にはTVとPCとゲームを一緒にセットしてある。

 壺妖怪に化けて穴を掘り出すことは無いと信じて……いたのだが。

 淡い期待でしかなかったのはご覧の通り。

 

 移動式ニャル壺妖怪を埋め戻すのもこれで何度目かになる。

 

 

 なお。

 コナン君はミッションクリアで無事帰国している。

 

 次元さんと五エ門さんは仕込みが不必要になって残念そうではあったが、ミッションクリアで爽やかにルパンをつつきながら満足感を共有していた。

 不二子さんは一歩遅れてコナン君に擦り寄って原版を貰おうとしたらしい。

 青少年コナン君はセクハラされたと酷く怯えていた。

 

 銭形警部は一息ついたところで、きちんとかつおもむろにルパン逮捕モードに突入。

 混乱する現場に乗じてコナン君はさらっと「門の創造」を起動。

 こそこそと帰宅したというわけである。

 

 しかしながら、世界情勢はやっぱり爆発した。

 

 ミリ・ニグリに国家元首が成り代わられていたことは、やはり深刻な政治不信を招いたようだ。

 

 最初こそ「カリオストロ公国で化け物が溢れ出した」という単なる事件として取り上げられたが。

 それが公国の実質的支配者であったこと、人々が成り代わられていたことがわかると雲行きが怪しくなった。

 

 しかも目撃証言が大量に出て、人々の中には写真をSNSに上げるもの、伝え聞いた話を拡散するものも出てきた。

 

 すると話は単なる怪異ではなく「権力者は怪異に取って代わられているのでは?」という不安と不満へと早変わりする。

 不信感はあっという間に世界中へ蔓延し、この四日間で話はとんでもない騒ぎにまで成長してしまっていた。

 

 デマとして報道を抑制する国もあるが、反体制の勢力と結びついてことは一層ややこしくなる。

「真実が明るみに出るのを恐れているんだ!この国が貧しく国民が苦しいのは、怪異が権力者に成り代わっているからだ!」と声高に叫ぶものが現れればもう始末におえない。

 

 もはや都市伝説、レプティリアンの噂の類が実しやかに広がって手に負えなくなってしまった。

 

 ……まあ、蛇人間は実際いるのだが。

 彼らはハイパーボリア人とも交流があった、おだやかで知的な種族だ。

 俺の存在を知っているのでよくわきまえており、ヴーアミ族共々、今まで人間には手を出したことはない。

 

 ともかく、ニャルの埋め戻し作業は終わったし一旦家に帰るとしよう。

 

「我が夫!怒ってます?」

「怒ってないよ♡」

 

 俺はもう一段深く土を被せた。

 うむ。反省するが良い。

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえり黄衣さん、ニャルさんは大人しく埋まってくれた?」

「埋める時は大人しいんだよな。半日で出てきちゃうんだけど」

 

 事務所に帰ると、コナン君が学校から帰宅していた。

 

 星の精に学校でわからなかった部分を教えているらしい。

 机の上には学習プリントがある。

 簡単な足し算の問題の横に、数えやすいようにイチゴの絵が載っているようだ。

 

 星の精は鉛筆を器用に触手で握って、1+3の横に4と書いた。

 

 コナン君が「わぁ!すごいね!星の精はもう算数も覚えたんだね!」と撫でてやっている。

 星の精は鼻高々でゲタゲタ笑った。

 

 なお、その後ろの仮設ベッドで、降谷さんがうんうん唸っている。

 さんざんガジガジされた挙句、にゃるーの魔術アッパーカットを喰らったからな。

 

 扇風機みたいな規模になって天井に突き刺さったままぶらぶら揺れて、このようにおいたわしいことになったというわけだ。

 

 きちんと俺が存在規模の補填と治療をしているから、降谷さんもだいぶ回復してきてはいる。

 少し小ぶりになってしまうことは避けられないが、まぁ、黒い風としては十分大きいと言える状態には戻るはずだ。

 

 諸伏さんが奥から出てきて「お、帰ったのか黄衣」と挨拶してくれた。

 手には調子の悪い降谷さん用の栄養スープのカップを持っている。

 

 冷蔵庫に入ってるものを諸伏さんが温めてくれたのだろう。

 俺がまとめて作った、降谷さん回復用の特製スープだ。

 

 諸伏さんはほかほかのスープをサイドテーブルに置くと、点けっぱなしのTVを眺めて言った。

 

『なあ。黄衣ってやっぱこれ行くのか?』

「その予定だよ。あー、行きたくない…」

 

 これ、とはTVでやってる政界特集の「二週間後に迫る審判の時について有識者に聞く…」うんぬんというやつだ。

 

 カリオストロのミリ・ニグリ事件は、全世界で大問題になっている。

 

 日本も例に漏れず、国会はまるで魔女狩り状態だ。

 「我が国も危険かも?」から始まり「反対意見を言うということはこいつは怪異だ!」に至るまで時間はそうかからなかった。

 単なる野次だったものはだんだんと疑心暗鬼を呼び。

 

 ついには俺が呼ばれる事態にまで発展したのである。

 

 もはや怪異は人間を脅かす単なる脅威ではない。

 人の中に潜み人を陥れるエイリアンそのもの。

 

 とするなら、あとは神頼みしかなかろう、という話が出たのは昨日だったか。

 

 俺は京都の件で実績もある人間の神だ。

 じんわりと噂で「病気を治してもらった」とか「怪異の封印に使われているらしい」とか、そういう話も出回っている。

 

 頼るにはここしか無いと思ったのだろう。

 

 二週間後にはお偉いさんがみんなしてボロボロ俺の神社に訪れる。

 

 神事が開かれ、呼ばれた俺は参加者に人間であることの証明を付与するのだ。

 人間以外にはつけることのできないペンダントを配り、その無益な魔女狩りに決着をつける。

 そういう手筈になっている。

 

 これは緊急で決定したことで、俺もつい昨日急に電話が来てびっくりした。

 

 昨今の怪異事情もあるし、お偉いさん自身本当に恐ろしくなっている感のあるスピード決定であった。

 

 俺はシクシクと机に突っ伏した。

 

「俺、このままズルズル国政に巻き込まれちゃうのかな…やだな……そうなったらコナン君連れてハリ湖に帰ろうかな」

「なんで僕まで!」

「寂しいから。カルコサの街に良い家用意するよ」

「ヤですけど!?ニャルさんと住んだら良いじゃない!」

「ニャルが来たらカルコサが更地になってしまう。というかなったことある」

 

 「もう更地になったことあるんだ…」とコナン君がドン引きした。

 少し同情してくれたようなので「だからぜひ!」ともう一押しする。

 俺は勝手に人を拉致する害悪旧支配者どもとは違うのだ。

 

 コナン君はすげなく「ヤですけど」と再度丁寧に断固拒否の姿勢を見せた。

 

 しくしく。半日ぐらい連れ去るのはダメかな。

 だめか。浦島太郎になっちまうもんな。

 しくしく。

 

 ちなみに、偽札の件はこの大事件を前に吹き飛んだ感じだ。

 

 ルパンの動きやカリオストロに踏み込んだメディアにより、その疑惑は浮上してはいるが。

 やんわり伏せられているのと、怪異成り代わり事件のセンセーショナルさで完全にかき消されてしまっている。

 

 それより、可哀想なのはカリオストロ公国だろう。

 

 元々面積の狭さゆえに産業も少なく、観光業で成り立っていた国だ。

 カゲや衛兵を務めていた人間が30名以上命を落とすだけでなく、今回の一件が報道されると共に客足は激減。

 地元店も大打撃を受けるだろうとの話だ。

 

 空中分解寸前のカリオストロを、クラリス姫はなんとか旗振り役として支えている。

 

 ローマ時代の新たな遺跡については、黄色の印の兄弟団がハイパーボリアの遺構としてかなりの値段で買い取りを打診したらしい。

 もしかしたら当面の国家財政のために売り払うかもしれないし。

 あるいは新たな観光資源として整備するやもしれない。

 

 遺跡本来の使い方はコナン君がクラリス姫に教えたが、そのまま持っていたところで魔力がなければ意味がない置き物でしかないからな。

 金に変わるならそれ以上のことは無いだろう。

 

 あの遺跡は都市を清潔に保ち、範囲内のあらゆる病を治すハイパーボリア時代の色を色濃く残す機構がある。

 恐らくは、全生活オーガナイザーの機能の一部を優れた魔術師が流用、復活させたのだろう。

 

 しかし、その効果範囲分だけ莫大な魔力が必要となる。

 

 俺が使う分には小指の爪の先ほどの魔力消費も感じないが、人間が捻出するのはキツかろう。

 その取り回しの悪さこそが、この都市が放棄された最大の理由でもあると思われる。

 

 と、そんな回想をしているところで。

 

 降谷さんが起きたようだ。

 ボヤボヤと顔を青ざめさせながら、うめいて片手で吐きそうに口を押さえた。

 

「う、うう……虹色の悪夢を見た…巨大な捻れた宮殿…向こう側に大きな…混沌なる宇宙の始まりが…デスメタルの中眠っている……」

「なんて????」

 

 俺は思わず目を剥いて聞き返した。

 混沌の宮殿ってそんなロックな空気流してたっけ?

 

 いや、降谷さんが変な電波を受信しただけだろう。

 流石にアザトースも起きるだろ、フルート隊がデスメタルかけてたら。

 

 俺はそう納得しそうになって、はたと思いとどまる。

 いや待てよ、父なる神が激怒でこんなとこまで殴り込んできたのは、ニャルがフルート隊にイタズラしたからだったり?

 ピンポイントでデスメタルなのは降谷さんの妄言ではなく、地球に滞在したからこそのニャルの気分だったり?

 

 ………。

 ちろっと分体を作り出し、宮殿に向かわせる。

 

 門のショートカットを作ってあるので、行くのは一瞬だ。

 

 宮殿の外まで爆音で鳴り響くのは、いつものフルートの音ではない。

 呻くようなデスヴォイスに、極めてハイテンポなドラム、重厚なギターがフロアを盛り上げている。

 

 中に入ると、いつもより忙しそうに踊る外神達の姿があった。

 盛り上がり切った曲に全然ついていけず、頑張ってうねうねと踊ろうと触手と肉塊を動かしている。

 やはり曲調には合っていない。

 

 太鼓部隊はドラム役に代わっていた。

 かなりの匠の技だ。

 長年太鼓部隊をやってきているだけのことはある完璧なリズムで、二連ドラムを制御し切っている。

 多分このフロアで一番ノっていた。

 

 宮殿の端っこでトルネンブラさんがやる気なく転がっている。

 音楽性が合わなかったらしい。

 無言だ。音そのものなのに音量もひどく小さい。

 

 そしてその奥では、まったりと満足そうに微睡むアザトースの姿があった。

 爆音は全然気にならないようで、うつらうつらしながらゆらゆら触手を揺り動かしている。

 非常に穏やかだ。

 

 …………Oh。

 

 俺は化身を帰還させて、眉間に皺を寄せて両手で顔を覆った。

 諸伏さんが心配そうにこちらを覗き込んでくる。

 

『どうした、黄衣?顔険しいぞ』

「いや、ニャルが突然爆散させられても仕方のないやらかしをしてたから…ちょっと世を儚んでた」

 

 やっぱり出禁期間は2ヶ月にしよう。

 そのように俺は思ったのだった。

 





・ハスター
心配でこの後一時間おきにニャルの様子を見に行く。
と、何故か月面で妖怪ニャル壺がチャウグナー・フォーンの生首でバスケしてるのを見ることになる。
ニャル壺は「あっ我が夫!人間に酷いことした象頭は確保しておきましたよ!!」って嬉しそうにしている。
どこから突っ込めばいいんだ…?

ひとまずニャル壺は埋め戻して、月面で一人しばらく蹴鞠することにした。
やっぱ2ヶ月な、って言ったらニャル壺が暴れそうだったので言えなかった。

・降谷さん
栄養スープは黒い風にいい成分がたくさん含まれている。
これを大層気に入り、「黄衣君、これの作り方を教えてくれないか?」と真面目にねだるなどした。
なにこれめっちゃ美味いんだけど。無限に食える。

・トルネンブラさん
音楽の神。
なんもいいことない。
別にデスメタルが嫌なわけじゃなくて、ニャルの作ったそれっぽいだけの洗練も何も無いパチモンソングがこれから宇宙何個分も宮殿に流れ続けるのがシンプルに鬱なだけ。
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