ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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36マスの完全犯罪〈ボウズ釣り人の怪〉

 

 白熱のトランプの戦いは、子分の負けで決着した。

 

 最初にババを引いた星の精は可哀想なほどしょげ返っていたが、その後すぐに何の気なしに子分がババを引いて。

 星の精は大得意に「クス!!!」と気分を持ち直したようだ。

 

 その後の子分はその後なんとしてでもジンには渡すまいと奮闘した。

 そしてそのままババを抱えて落ちた、というわけである。

 

 空気もほぐれ、意外と仲良くなれたようで何よりである。

 

 さて、電車を降りた後タクシーを捕まえて一時間半。

 指定された場所は長野の山奥、吹雪の吹く廃教会である。

 黄昏の館は同県だが結構離れている。

 

 雪道を走る中運転手さんに「お客さん、これ吹雪きますよ」と注意を受けながら車を降りる。

 いざとなったら、こっそり魔術「天候を変える」で晴らしてしまえばいいし、そこまで心配はあるまいよ。

 

 廃教会は、人里離れた森の中にあるにしてはなかなかに趣があった。

 

 中は埃っぽく、一斗缶や木片などが落ちて荒れ果てている。

 手入れするものがいないようだ。

 歩くたびに床が軋み、隙間風が体を凍えさせる。

 

 子分が壁に手を当てて、その厚さを確認してニパッと笑った。

 

「へぇ、綺麗なとこだ。水も出るみてーだし、隠れ住むにはちょうどいいな!この埃じゃ、管理人もあんまり来てねぇようだし」

「少し離れた道中に放置林もあった。バラして捨てるにはもってこいだ」

「こらそこ。業界評価しない」

 

 俺が注意すると、マフィア二人は渋々物件内覧をやめたようだ。

 業界基準ではかなりの好物件らしい。

 

 コナン君が胡乱な顔をしてから俺に声をかけてくる。

 

「依頼はこの教会で自殺した人の暗号を解いてほしい、だったんだよね?」

「そうだよ。依頼人とはここで落ち合う手筈になってるから、依頼人が到着するまで先に廃教会内を確認しておこうか」

「そうだね」

 

 そのように相談して、まず奥の礼拝堂に向かうこととする。

 

 分厚く重い礼拝堂の扉を開けると、その先には先客がいた。

 寒そうに寄り固まる五人の男女が、俺たちを振り返ってギョッとしたようだ。

 

 「な、なんだアンタら?」と男性の一人が動揺して後ろに後退りした。

 

 ジンと子分は本日は真っ黒服ではない。

 ジンは普通のややかっちりとしたグレースーツに気品のある黒いシャツ。

 子分は柄物シャツにスラックスだ。

 

 ……いやこれガチガチのヤクザさんだわ。

 

 その強面から隠しきれないマフィア臭を漂わせている。

 まるで押入り強盗が来たみたいな変な空気になり、場が一気に緊張に満たされた。

 

 慌てて俺は前に出て弁明した。

 

「ああ、俺たち怪しいものじゃない!俺は探偵の黄衣ハスタ、こっちは事務所のメンバーだ。ここには依頼人に呼び出されて来てるんだ」

「!!え、あの俳優の?」

「アアウン…まぁ……」

 

 女性の先客さんがぱっと顔を明るくして「何かの撮影ですか!?」と聞いてくる。

 俳優は副業だが、世間的にはもはやそっちの方が有名だもんな。

 あとこのヤクザさんはただの私服であってヤクザ映画の撮影ではないのである。

 

「凄いな!あの、サインもらっていいですか?」と小柄な男性も近寄ってくる。

 俺は「もちろん。ただ今は俺の方のペンの持ち合わせがなくて」と愛想よく返事した。

 このヤクザ二人をせめて通報しなくていいヤクザだと思ってもらえるように振る舞わねば。

 

 俺のフレンドリーな対応に、場の空気が弛緩していく。

 

 よかった、不審者として蹴り出される心配はしなくてよさそうだ。

 

 しかしさっきの入口もそうだが、礼拝堂も隙間風がひどい。

 外の吹雪もあり、寒さが身に染みるようだ。

 

 そうしてコナン君の提案で、俺たちは一斗缶を用いて暖をとることにしたのである。

 

 

 

 

 

 話を聞いていくと。

 今回の依頼人である日原泰生とは、ここで自殺した張本人らしい。

 つまり生きているはずのない、幽霊からの依頼ということになる。

 

 幽霊は通常物質への干渉力を持たないし、生きている別の人物が名義を借りて依頼して来たのだと思われる。

 

 気味悪いのか、子分がコナン君と共に怯えているのが見える。

 

 先客達は皆、俺が受け取ったのと同じような謎の暗号を受け取っているらしい。

 念のため、ジンがそれを集めて全てスマホで撮影してくれた。

 

 撮った写真は今回の任務用のグループSNSで共有してくれるようだ。

 使っているのは犯罪者御用達の、一定時間ごとにデータが消されるSNSだ。

 マフィア二人もアカウントを持っていて使い慣れているからという理由で使用が決まった。

 

 「とはいえ、普段は組織のアプリを使用するからそこまで使ってはいねぇがな」とのことである。

 どんどん闇が深くなるやん。

 

 話を一通り聞いてから、俺は内緒話をするために少しだけ先客達から距離をとった。

 

 コナン君が「今回の件は怪異は関係ない。そうだよね?」と囁いてくる。

 

 なんとか怪異・魔術判定のための魔術を組み終わったコナン君だが、まだ使用するには精度が気になるらしい。

 俺も軽く探査してから頷いて、心配を否定した。

 

「山にはいるけど、事件とは関係ないよ」

「その展開前にもあったよね…大丈夫なやつ?」

「人間は死ぬけど弱っちい怪異だよ」

「またそれ!!!」

 

 コナン君は憤慨していきりたっている。

 中の星の精も一緒に「クス!!」と怒っている。

 お前また友達を怒らせた!本当に悪いやつ!

 すまんて……。

 

 子分が怯え切ってジンに身を寄せている。

 

 ジンが素早くスマホを取り出し、「バーボンに報告する。どの程度のやつだ?」と俺に問いかけてくる。

 全体的に信頼なさすぎないか俺?

 

「怪異一覧には載せてるから大丈夫なはず。沼で釣りしてる人型怪異。『釣れますか?』って通りがかりの人に聞いてくる」

「こんな場所に人は通らねぇだろ」

「うん。だから割と無害」

 

 ちなみに、問いかけられてしまえばどう答えても数日以内に釣られるように上空に体を持ち上げられ行方不明になる。

 凶悪だが、圧倒的に釣り場を間違えている感じの怪異だ。

 

 なお、目撃者が共通して死ぬ前に証言していることによると、本怪異は「釣れんなぁ…」と悲しそうに呟いているらしい。

 お前はずっとボウズでいいんだよ。

 

 おそらく近くにあるという放置林は、この怪異によって管理者がいなくなったためにできてしまったのだと思われる。

 

 さて。

 そのあたりまで話したあたりで「ドン!」と重い何かが落下するような音が響いた。

 

 慌てて外へ出てみれば、駐車場だった場所には床が抜けて、車が地下層に落下していた。

 先客たちは車で来たらしく「俺の車は新車だってのに!」と嘆く声が聞こえてくる。

 

 ジンが駐車場の看板を軽く叩いて、冷静に「足を潰したか」とコメントした。

 

 コナン君も頷いて「地下空間がある場所をわざと駐車場に偽装したんだ。駐車場案内の立て看板だけ新しいから妙だとは思ったけど」と眉を顰める。

 

 けど、こうなると早めに電話で長野県警に連絡を入れたほうがいいだろう。

 

 俺が代表して、先客達にも声をかけて警察に連絡を取ることにした。

 連絡先は大和警部だ。

 知り合いの警部さんという話に、サインをねだった男性がワクワクした顔をして「そういうのって探偵さんだと本当にあるんですね!」と言った。

 まぁあるな。特にコナン君の周りだと。

 

 一応、電話は数コールののちに繋がった。

 

「すまない大和警部、少し時間いいか?」

『アン、なんだ急に。また何か怪異絡みの事件でもあったか?』

「いや、普通に事件。長野の山奥で車を潰されて移動不可。何やらきな臭い。民間人が五名いるから迎えを頼みたいんだが」

『………アンタの引きはどうなってんだよ。場所はどこだ?』

 

 場所を伝えれば、嫌な予感を覚えた大和警部がすぐ来てくれる……はずだったのだが。

 

 道中あまりに吹雪いて危険らしく、そちらには向かえないとのこと。

 しかも途中のトンネルが崩落していて、天候が回復したとして復旧には夜明けまでかかるらしい。

 

 大和警部から電話を強奪した諸伏兄によると、現場からは火薬の香りがしたらしい。

 つまり、何者かによって爆破された疑いが拭いきれないとのこと。

 

 いよいよもって孤立状態だ。

 

 子分が困惑して肩をすくめる。

 

「どうして素人ってのは道を塞ぎたがるんでしょうね。殺ったなら死体を焼いてさっさとズラかるのが一番なのに」

「さあな。手慣れてねぇから殺しに時間がかかるのかもしれねぇが」

「獲物の逃走防止ですかい。それならまぁ、分からなくもないですけど」

「だから業界評価禁止だっつってんでしょ」

 

 俺が注意すると、マフィア二人はえー、と不満そうな様子を見せた。

 

 コナン君は新たな知見を得たみたいな顔をしている。

 本職の考え方を得て推理の参考にしているようだ。

 なんでこんな物騒な空間になってしまうのか、それが分からない。

 いや本職が二人いたら当然か?

 

 

 ともかく、なるべく被害者が出ないようにせねばなるまい。

 俺はため息をついて、もぞもぞと魔術を組んだのであった。

 





・プロのマフィア
考えはいつだって「自分が殺るなら」。
素人さんは仕事が遅くていけねぇや。
そもそも暗号作ってる暇があるなら爆弾で教会ごと吹っ飛ばしたほうがいいのに。
兄貴はどう思います?
フン…さあな。自らの手で惨たらしく殺すつもりなのかもな。痛めつけるなら手作業が一番だ。
なるほど!流石兄貴!その視点はありやせんでした!

・旧支配者ハスター
やっぱマフィア怖E

・星の精
知らない人がいるから静かにしてる。
暇なのでポッケの中でトランプで遊んでる。
1と10なら、10の方がつよい。
合わせて11だから、Jのカードといっしょ。
自画自賛してる。星の精はとてもかしこい!友達にも自慢する!

・ボウズ釣り人怪異
釣り場選択のセンスが致命的にない釣り人怪異。
人を釣って食うタイプの凶悪なやつ。
森の奥の沼に釣り糸を垂らして「今日も釣れんなぁ…」って悲しそうにしてる。
実は見る人の知識に従って釣具が更新されている。
昔は竹の粗末な釣竿だったが、今はメーカー製最新電動式のものを揃えている模様。
いい具合のアウトドアチェアに座り、クーラーボックスも脇に置いて、ライフジャケットに身を包んで。
でも釣れんなぁ…どうしてじゃろ…。
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