ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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政治論争とコンバート未遂

 

 定期的にコナン君に人非人扱いされる俺である。

 なんでや……とシクシクしながら仕事をする今日この頃。

 

 TVでは、議員さんがインタビューに答えながら俺の作ったペンダントをカメラの前で掲げて見せている姿が映る。

 

 頑張ってせっせと作った、人類の証明たるアーティファクトだ。

 それは人間以外が触れることも不可能な守護であり、権威の証。

 マウスによる実験も行われているが、それは話題に出ただけで映像の公開はされないようだ。

 

 まあ、一般公開するにはマウスが可哀想すぎる映像だもんな。

 

 ペンダントのデザインは先方と協議して、黒い丸に11枚の花弁がある菊が刻印されている。

 これは議員バッジの意匠に黒きハリ湖のマークを加えたものになる。

 ハイパーボリアでも使われたことのない、他宗教の色のないフラットな俺の権威だ。

 

 結構シックで、全体的にいい感じの形になったんじゃないかと思っている。

 

 最終的に首につけるのではなく、付属の金具につけて胸ポケットにとめる様式となった。

 もちろん首にかけずとも効果は発動する。

 より厳密に人間性を示す時などに儀式的に首にかける、という立て付けらしい。

 

 いよいよ俺の国になって来てしまって、俺は震えが止まらなくなった。

 

 

「降谷えもん!助けて!!!」

「誰が降谷えもんだ。こうなるのは時間の問題だったろうに」

 

 降谷さんに泣きつけば、実に面倒くさそうにのそっとPC画面から目を離してこちらを見たようだ。

 義理で付き合ってると言わんばかりの呆れた視線が俺に突き刺さる。

 

 うわーん!降谷えもんの馬鹿!そこは「しょうがないなぁハス太くんは」と言って秘策をポン!と出すとこだろうに!

 

 すげない返事に俺はシクシク泣いた。

 そんな俺に、優しく諸伏さんが温かいお茶を出して微笑んでくれた。

 

『切腹を拒むのはさすがに士道不覚悟だと思うぞ』

「なんでそんな酷いこと言うの…」

 

 もはや敵しかいない。

 絵本を読んでいた星の精がふわふわとやってくる。

 そして俺の頭を撫でて「クスクス?」と首を傾げた。

 心配してくれているらしい。

 

 良い星の精には美味しい血液グミをあげようね!!!

 

 ポンとグミ缶を具現化して星の精に手渡す。

 ここのところの星の精の大好物だ。

 

 後ろにいたコナン君に「また星の精が太る!」と怒られてしまった。

 すでに星の精は大喜びでグミ缶を大事に大事に抱えて、しゅっとコナン君の隣の席に戻った。

 己の抱えるグミ缶を再度確認して、喜びに震え出したようだ。

 

【クスックスクスッッッ!!!】

「もう…ゆっくり食べようね。すぐ全部食べちゃダメだよ」

【クス!!!】

 

 優しい星の精はコナン君の視線に気付いたようだ。

 内緒だよ?とでも言うように、グミ缶を開けて中身のグミをコナン君の手にそっと乗せた。

 くれるらしい。

 

 コナン君は星の精を撫でて、優しく言った。

 

「ありがとう。でも僕は星の精と同じものは食べられないんだ」

【クス……ゲタゲタッ!?!?】

「気持ちはとっても嬉しかったよ」

 

 星の精は泣きそうになって、しきりにクスクス言いながらコナン君の頭を触手で沢山わしゃわしゃ撫でた。

 しょげかえって触手がしおしおになっている。

 こんな美味しいものを友達は食べれない!悲しい!!ということらしい。

 

 ええ話や。

 俺がまったり茶を飲んでいると、降谷さんに声をかけられた。

 

「ところで、君に自精党瀬戸派…つまり八海研究会のトップから声がかかるそうだぞ」

「ヒェッッ」

 

 突然の悲報に、俺はしめられる鶏の声を出した。

 

 自精党は現在日本の与党だ。

 瀬戸派はその中でも最大派閥。

 つまりバリバリの政界のお偉いさんということになる。

 

「な、なんでそんなの降谷さんが知ってるの???」

「いや、君永副総監から聞いただけだ。副総監も黄色の印の兄弟団の日本支部から聞いただけだそうだが」

 

 黄色の印の兄弟団は日本支部においても各界のお偉いさんが集まる、会員制紳士クラブみたいな側面がある。

 つまり、これもかなり確からしい噂ということだ。

 

 俺はバタバタと暴れて喚いた。

 

「やだーっ!!関わりとうない!場末の探偵事務所で働いてる一般人に何の用だよ!」

「どの角度から見れば君が一般人なのか素で分からないんだが」

「見ろよこのいたいけな姿を!銃で撃ったら死にそうだろ!?一般人じゃないか!」

 

 諸伏さんが「などと供述しており」と俺の言葉を補足した。

 俺が妄言を吐いてるみたいに加工するのはやめなさい!

 

 コナン君が星の精を抱っこして揺らしながら、隣のデスクの席に座って半目になった。

 

「黄衣さん大袈裟すぎ。爆発するんじゃあるまいに」

「爆発するんだよ!俺が!海千山千の怪異みたいな人間に囲まれて!触手全部しおしおになる!やだやだやだ!!」

 

 俺はジタバタして涙に暮れた。

 権力に関わると本当に碌なことにならないのだ。

 

 前ハイパーボリアの村長レベルでさえ、陰謀が渦巻く魔境だった。

 俺は複数の村相手に政治を強いられ、もう言葉にもできない苦労を強いられた。

 

 それが今度の相手は欲望渦巻く現代国家の権力者だ。

 村長達がお山の大将なら、現代社会のそれなんて暴れるニャルラトホテプと大差ないだろう。

 どんな怖いことが起こるか分かったものではない。

 

 うっ…うっ…!誰か助けて…!と震えていたら。

 突然、飛び込んできた影が一つ。

 

「そんな時のために私がいます、神よ!!!」

「マモーさん!」

 

 ちょうどEUの会議から帰ってきていたらしい。

 いつもの格好でマモーさんが現れたではないか!

 

 いや、もしかしたら外でこっそり出ていくタイミングは見ていたかもしれないが。

 どちらにしろ救世主には違いない。

 

 マモーさんは胸を張って堂々たる宣言をした。

 

「私が偉ぶる猿相手の立ち振る舞いの全てをお教えしましょう。神は何も心配されることはございません」

「マモーさん…!」

「まず心を読み解く魔術は一時たりとも解かないことです。値踏みと勿体ぶった言い回しは単なるジャブ。腹を割って話しましょう、と言われてからが真の本番です」

 

 ………。

 おれ……おうちかえる……。

 

 皆なんで怖いことしか言わないの…。

 再びメソメソする俺の手に、星の精がグミを一個そっと置いてくれた。

 元気づけてくれているらしい。

 

 俺はグミを口に放り込んで、「ありがとう、元気になったよ」と星の精をわしゃわしゃした。

 星の精は大きな口でぱあっと笑顔を作って「クスクス!」と笑ったようだ。

 

 降谷さんが覗き込んで訝しげに聞いてくる。

 

「どんな味なんだそれ」

「え、かさぶた味。星の精の体にいい成分が入ってるから、人間が食べたらお腹壊すと思う」

「………なるほど」

 

 人間にとっては間違いなく美味しくはない。

 星の精のために消化しやすいようになっていて、少し固く、噛めば噛むほど味がするように作っている。

 口周りの筋肉を鍛えることにも役立つだろう。

 

 しょぼんとするマモーさんにはきちんと「うん、ありがとう、俺の胆力が足りなかっただけだから、俺の決意が決まったら改めて教えてほしい…」とフォローしておく。

 マモーさんは星の精並みに笑顔になった。

  

 俺はあーーー、と母音を垂れ流してから降谷さんに声をかけた。

 

「政界のお偉いさんが俺を呼んでる理由とかって聞いてる?」

「今回のペンダント制作の礼がしたい、とは聞いているが。表向きの理由だろうな」

 

 ふむ、とマモーさんが首を捻る。

 

「考えられるとするなら、この人類判定を政界以外にも使えないか打診する、などでしょうか。国防上それが必要な組織は山とありますからね」

「警察組織にはびこるニャル化身がいたりとか?」

「黄衣君。その話は真面目に困るんだが」

 

 降谷さんがジロリと俺を睨め付けた。

 

 まあ降谷さんはともかく、「交番に駆け込んだら警官はバケモノに変わってた」なんてありふれた怪談ネタではある。

 この不信が蔓延する現状、各界がそれを求めるのは自然なことだろう。

 

「加えて神への信仰が高まっていますので、蜜月をアピールして得票を狙うのも奇策としてはありでしょうね」

「いや政教分離どこいったんだ…」

「神の神社は宮内省の管轄ということは、宗教ではない扱いなのでしょう。その管理人と会ったとして、宗教絡みとは言えないかと」

 

 詭弁の極みみたいな回答に、俺は両手で顔を覆った。

 あーーー、もう何も信じられない………。

 

 俺はソファに転がって顔を埋めた。

 

 降谷さんが「いやこの流れは冷静に考えたら僕本気で不味くないか?」と深刻そうな顔をしている。

 諸伏さんも同様に「幽霊は人間だろ!人間だよな!?」と俺に同意を求めた。

 ペンダントでは人外扱いですね……。

 

 それに、降谷さんも頑張れば問題なくなるだろう。

 ニャル化身が本気で化けたら、あの突貫ペンダントで見破るのは難しいからな。

 

 ニャルラトホテプ本体にもなると、俺が全力でハスターの瞳を使っても見抜くのが困難になってくるほどだ。

 基本的に「化ける」という分野でニャルの右に出るものはいない。

 

 しかしまあ、不安は不安か。

 

 俺は顔を埋めたまま「それとも俺の化身にコンバートする?」と降谷さんに声をかけた。

 降谷さんが「!?!?」と仰天して立ち上がった。

 

「そんなことできるのか!?」

「ニャルがそのために作った化身が『黒い風』だからな」

 

 俺、すなわちハスターの化身と言い張るための化身が黒い風だ。

 逆に言うと、本当に俺の化身だったとすることも容易い。

 

 ただ、俺は変化が苦手だ。

 あまり降谷さんの姿が定着していない時期にコンバートしてしまうと、降谷さんが人の形を保てなくなってしまうからできなかったのだ。

 

 もし人外の認定を受けても、俺の化身なら、今の日本でやっていくには十分な信頼が得られるだろう。

 

 俺=降谷さんみたいな謎概念になってしまうから、俺としては微妙な気持ちだが。

 

 降谷さんが期待に煌めく瞳でおずおずと口を開く。

 

「その、懸念点やデメリットはあるのか?」

「コンバートにはニャルの許可が必要」

 

 瞬間。

 降谷さんは全ての希望を失って、光を失った目で淡々と仕事に戻った。

 

 ぽん、と諸伏さんが無言で降谷さんの肩を叩く。

 コナン君が目を三角にして「そういう人の心を弄ぶようなことを言うのは良くないよ」と俺を非難した。

 

 なんでや。当然の話やろがい。

 





・ハスターの抱く好感度状況(怪異編)

─星の精
過酷な仕打ちを受けるクマムシを気紛れで保護したら、子犬ぐらい懐いてきて芸も覚えて可愛く思えてきたイメージ。
死んだら悲しむ程度にはお気に入り。

─諸伏さん
親しい人間扱い。
実は過去の嫌な思い出もあって、諸伏さんに会うまでは幽霊は人間ではなくゲジゲジだと思ってた。
出たら「うわキモっ!?」ってなる。
でも諸伏さんと接して「人間だったわ」ってなって穏やかになった。

─降谷さん
親しい人間であり、ニャル化身。
妻が飼ってる人間扱いで、可哀想でも助けるのはどうしても迂遠な感じになる。
でも可哀想なので会うたびに気にかける。
そんなアトモスフィア。

─SAN値の無い狂信者
疥癬にかかったタヌキぐらいの気持ち。
とっても可哀想だけど触りたくはない。

─おでん屋さん
羽虫。こまかいやつ。
羽虫ボール作ってたらキモいので潰すが、一匹飛んでるだけだし特に気にしない。

─ビヤーキー
ペットのハムスター。
死んだら悲しいので守る。可愛いので写真撮ってインスタに上げる。

─ミ=ゴ
山奥に潜む病気持ってる蚊。
駆除せぬ理由がないが、人里に降りてこないなら放置するかも。
でも手間でないならヘリで殺虫剤は散布しておくか。そんな感じ。

─イ=スの偉大なる種族
非常に賢いカマキリ。…というかハリガネムシ。
圧倒的なキモさを賢さで補っている。
人間を乗っ取った瞬間族滅。人型に化ける分には許す。

─テュフォンの獣
森で捕まえてきたおっきなカブトムシ。
かっこいい。妻が虐めようとしてるので止めてる。
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