ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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命懸けの復活〈本性〉

 

 今日はキャンプである!

 

「バーベハチ!バーベキュー!俺うな重な!」

「元太君、バーベキューでうな重が出るわけないじゃないですか…」

「歩美、探検がしたい!」

「おめーら、勝手にどっか行くのは無しだからな。探検する時は必ず保護者の阿笠博士か日色さんに一言言ってからにすること。わかったか?」

 

 コナン君の言葉に、「はーい!」と少年探偵団がみんなで手を上げた。元気でよろしい。

 しかしコナン君や、なんで今俺を保護者から抜いた?とやや訝しむなど。

 

 完全に盛り上がりきってる小学生達の間で、引率役をこなしているのはコナン君だ。

 志保ちゃんこと灰原さんはクールに窓の外を見ている。

 それでもこのメンツに囲まれて満更でも無いらしく、歩美ちゃんの言葉に時折返事を返している。

 

「すまんのお、車を出してもらって」

『いえいえ、俺たちも参加させてもらってるんですから当然ですよ』

 

 助手席の阿笠博士の言葉に、運転手である諸伏さんがニコニコと応えた。

 

 ちなみに、車は新しく購入したハイエースである。

 この事務所も人が増えたし、たくさん乗れるようにと大きめのバンを購入した次第である。

 

 今回諸伏さんが参加したのは、暇を持て余した彼が「俺もキャンプ行きたい!!」と喚いたからだ。

 もちろん偽名で、黄昏の館の時と同じ「日色ヒカル」の名前を使っている。

 

 明美さんも誘ったのだが、「私は少し気になることがあるから」と言って今回の催しには参加しなかった。

 それに諸伏さんと違って明美さんは死んだばかり。

 組織に見つかったらまずい、ということもあるらしい。

 

 

 さて。

 到着したキャンプ場は、整備された山の麓にあった。

 登山もできる場所で、季節になると川遊びなんかも盛んに行われるらしい。

 

 まあ今回はまだ冬だし、事故の心配もあるので子供達には川には近づかないよう言い聞かせてある。

 

 諸伏さんが手慣れた様子でテントを組み立てるので、コナン君がひょいと覗き込んで声をかける。

 

「日色さん、あんたキャンプしたことがあるのか?」

『ああ。ゼロ達と一緒によく行ったよ。他のメンツが料理がからっきしだったから、俺が料理作ってたけど。少年も料理は覚えたほうがいいぞ?』

「うーん」

 

 あまり料理に乗り気でないらしいコナン君に、諸伏さんがぼそっと「それに、女の子の心も掴みやすい」と囁くなど。

 コナン君は真っ赤になって俯いて、それを少年探偵団に見られて騒がれている。

 

 いつぞやに蘭ちゃんのことをただの幼馴染だと言っていたが、とんでもない。

 間違いなくこれは甘酸っぺえ両片思いのたぐいだ。

 俺がニコニコしているのはすぐにバレ、コナン君に「そこ!顔がうるさいんですけど!?」と叫ばれた。

 顔がうるさいってなんやねん。

 

 まあ、ともあれ次は待ちに待ったキャンプ料理の準備だ。

 子供達は火にくべるための枝を集めるために山へ。

 俺たちは料理の下拵えをするという手筈になっている。

 

 枝を探しに森へと入っていくコナン君に、念の為俺も声をかけておく。

 

「気をつけてな、コナン君」

「?うん、集めたらすぐ戻ってくるよ」

 

 現在、コナン君は俺特製のブレスレットを着けていない。

 

 どうも装飾品ということで小学校で先生に見咎められてしまったらしく。

 着け続けるのが難しくなってしまったからだ。

 

 今は俺がブレスレットに認識阻害の術式を加えているところである。

 数多ある術式を阻害しないように上手く組み替えながらブレスレットだけを人の認識の外に置くのはなかなかに骨の折れる作業で、時間がかかってしまっている。

 

 子供達と共に森の中に消えていく後ろ姿を見ながら、俺は若干の嫌な予感を覚えていた。

 

 

 

 

 その予感が的中していたのを知ったのは、それから40分後のことである。

 

 枝を探しに行って40分、子供達が戻ってこないのだ。

 探検に興じているのなら分からないでもないが……。

 だが、お目付役のコナン君が付いていることを加味するとやはりおかしい。

 

 灰原さんが冷静な中に少しの心配を混ぜ込んで周囲を見渡した。

 

「流石に遅いわね。そろそろ探しに行ったほうがいいんじゃないかしら」

『そうだな。水場遊びはしないように注意はしてあるが…もしもの可能性もある。手分けして探そう』

「そうじゃな。そう遠くへ行っていないといいんじゃが」

 

 阿笠博士が探偵バッジに声をかけるも、返事がない。

 少なくとも通信圏外にいるか、通信を受けられない状態にあるのは確かだろう。

 

 山の中とはいえ、ここはバーベキュー場としてある程度整備された山だ。

 少し手分けして辺りを探索すれば、怪しげな場所はすぐに発見できた。

 

 立ち入り禁止、と看板のある大きな洞窟。

 その前に置かれた集めている途中と思しき枝の山。

 枝の山を確認していた灰原さんが、大きく息をついて立ち上がった。

 

「この中で遭難している可能性は高いわね。まったく、江戸川君がいながら何をやっているのかしら」

『どれだけ深いか分からないし、素人の俺たちが入るのは危険だな』

「じゃが子供達が…困ったわい」

 

 うろうろと阿笠博士が穴の前で困り果てている。

 その横で、諸伏さんが無言で俺に目配せした。

 どうやら俺に魔術で探せと言っているらしい。

 了解、こういう時こそ便利な魔術の出番だしな。

 

 いつも「目」で見るのも芸がないし、今回は即席の魔術で中を探索することとする。

 

 ちょいと人差し指を曲げて発動。

 長く入りくんだ洞窟を魔術的に全探査する。

 次に、得られたデータを元に3DMAP化して出力。

 中は暗いので適当な箇所に仮想照明を設置して、そのままカメラワークを決めて映像として出力。

 

 反応によると、少年探偵団は出入り口から離れた中腹あたりにいるらしい。

 他にも反応が複数人。他の客が洞窟内にいたのか?

 

 どれ、様子を確認………。

 

 

 そして。

 俺はつい、表情の全てを取り落としてしまった。

 

 自分でも想定外にのっぺりとした声で、諸伏さんに話しかけてしまう。

 

「………諸伏さん、警察へ連絡してくれ」

『ッ!何があった!?』

「殺人だ。中に死体が遺棄されていて、子供達が犯人に追われている。犯人は拳銃を所持してるみたいだ」

 

 阿笠博士が「え、え?」とわけがわからないのか困惑した表情でこちらを見た。

 そりゃそうだ。俺は洞窟の前で突っ立っていただけ。

 洞窟内の出来事なんて分かるはずがないのだから。

 

 灰原さんがやや鋭い声で俺に問いかけてくる。

 

「子供達は無事?」

「コナン君が腹を撃たれてる。出血がひどいみたいだ」

『っ!!俺が行く!』

 

 諸伏さんが単身で乗り込もうとしたので、俺はそれを手で制した。

 

 背広の内側に手を伸ばしたあたり、自前の拳銃を使おうとしていたのだろう。

 だが相手は3人で、3人とも拳銃を所持している。

 元潜入捜査官が遅れをとるとも思わないが、そもそも発砲できないかもしれない拳銃一丁だけで立ち向かう相手ではない。

 

「……諸伏さんは出入り口で張っててくれ。俺が行くよ」

『はぁ!?おま、相手は拳銃を持ってるんだろ!?』

「そうじゃぞ!早く警察を呼ばんと…!」

「大丈夫。俺は死なないし。それに」

 

 魔術で見えた、鮮烈な出血の跡。

 苦悶の声すら子供達を心配させまいと飲み込むコナン君の、苦しそうな笑顔。

 下卑た笑みで子供達を追う男が、わざとらしく拳銃をちらつかせる姿。

 

 こぼれ落ちて行く彼の命の刻限が、俺の目には残酷なほどはっきりと映っていた。

 

 

「────ちょっと、カチンと来た」

 

 

 俺はそれだけ言って洞窟の入り口を滑り降りた。

 

 阿笠博士達が追ってこないことを確認して、ほっと息を撫で下ろす。

 

 中は少しだけ湿っていて真っ暗で、どこか不気味な静けさに満ちていた。

 だからこそ男達はここで悪事を働こうとして、そこを少年探偵団に見つかったのだろう。

 

 なんにせよ、ちょうどいい所だ。

 

 俺は自分の姿が好きではないが、この暗さなら少しぐらい。

 少しぐらい本性を出しても。

 

 問題ないだろう?

 

 風もない洞窟内で大気が揺れる。

 暗闇の中ただ静かに、空間を歪ませる存在感を持つ触手がテラテラとした粘液を垂らしている。

 その触手の先が、触れたところから石の壁を溶かしてゆく。

 黄色の衣はそのままに、ただ人形を失って触手の群れのように波打っている。

 

 俺が本格的に顕現してしまえば影響が大きくなり過ぎるので、小さく小さく、ほんのちょっぴり。

 そのように顕現した姿こそが戯曲にて謳われる異形の怪物。

 人を狂気に貶める旧支配者が化身。

 

 黄衣の王である。

 

 まずは奥にいるコナン君に向けて遠隔で魔術を発動。

 その傷の状態を固定し、それ以上悪化せず、痛みも無いように保護の魔術をかける。

 治さないのは今後犯人の罪状として数えるためだ。

 撃たれて痛い思いをしたのに罪に問えないのは悔しいしな。

 

 次は入口の方を確認しにきたらしい、別行動している男だ。

 

 懐中電灯を片手に呑気に歩いていたので、背後から触手で縛り上げ、洞窟の壁に押し付ける。

 

「っなん…ぎゃあああああ!!!!」

 

 粘液によってとろけた壁と男の腕が一体化して、そのまま男は壁に磔にされた。

 俺の粘液は少しだけ痛いからな。

 叫ぶのも仕方あるまい。

 

 男の目から見れば、突如触手の群れが黄色のぼろ布を羽織って近寄ってきたように見えたことだろう。

 男は怯えて必死で身を捩ったようだ。

 

 しかしいつまで叫ぶつもりなのか、少しうるさくなってきた。

 

【うるさいんだが】

「ひ、ひぃっっんんんんん!!!」

 

 口を同じように溶かし崩して、強制的に黙らせる。

 これで一人目の処理は完了だ。

 

 あとの二人は…と考えたところで、洞窟内に転がっている死体の件について思い出した。

 こんなところで殺人なんてしてる輩だから、他に余罪がいくつかあってもおかしくない。

 この際だからそちらも探っておくのも悪くなかろう。

 

 磔にした男にするすると近寄れば、男は涙でぐしゃぐしゃになりながら首を振った。

 俺が口を溶かしたからか、呻き声しか出ないようだ。

 

 仕方ない。

 そのまま、男の側頭部に触手を突っ込んで、脳から直接情報を吸い上げる。

 男は激しく体を痙攣させ、そのままカクンと全身を脱力させた。

 

 もっと穏当に記憶を探る方法なんていくらでもあったが、そんなふうに気を遣ってやる気持ちになれなかった。

 

 もちろんだが殺してはいない。

 人殺しは悪いことだし。

 傷害だって罪の一つ。

 両手足と口も、警察が到着する頃にはきちんと全て治すつもりだ。

 

 だから。

 少し怖い思いをさせるくらい、誰に咎められることもあるまい?

 

 そのように考えて、俺はするりと目を細めたのだった。

 




・ニャルラトホテプ氏のコメント
「世間にはあまり知られてないですけど、彼ってやる時はやるんですよ。まあ僕の親友ですし?このぐらいはね?まあね?」(誇らしげ)

・降谷零氏のコメント
「どうでもいいが僕の目で24時間ライビュ見ないでほしい」
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