ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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牧場に墜ちた火種〈ファロール〉

 

 「彼方より来たりて饗宴に列するもの」からの警告が来たのと、コナン君からSOSの念話がきたのはほぼ同時であった。

 

 今日のコナン君は学校の日で、先生と郊外の牧場に寄るため少し遅くなると連絡が来ている。

 だから俺達もまったり待っていて、これまでの依頼の整理や新しい依頼の仕分け作業等を行なっていたわけだが。

 

 突如響き渡る警告音に、俺はざっと青ざめて立ち上がった。

 

 ひとまずはコナン君の方からだ。

 彼がスマホを使わないと言うことは、それができないほど切迫した状況下にあると言うことだ。

 警告の情報を受け取りながら念話に出て、コナン君に問いかける。

 

『どうしたコナン君!?』

『雷と共にとんでもないものが現れたんだ!燃える一つ目の巨人みたいなもの!』

『ッ、こちらでも確認してる…場所は例の牧場だな?』

『うん、今は安室さんが交戦中!僕らは民間人と共に防護壁を張って避難してる!』

『了解、今俺も向かう!』

 

 やはりと言うべきか、コナン君はその召喚の現場に居合わせてしまったようだ。

 まったくなんたること。

 これはもう件の不法侵入害獣をボコボコにせねば気が済まない。

 

 後をマモーさんと諸伏さんに任せて「緊急事態だ!俺は行く!」と言い放って門を開く。

 

 説明する時間が惜しいので、念話を繋げて移動しながらフォローするしかない。

 動揺する二人を置いて、俺は現場へと跳躍した。

 

 

 

 瞬時に到着した東都の森付近の牧場では、派手な山火事が起きていた。

 

 燃え盛る赤黒い権能の炎が木々を焼き尽くし、有害な煙をもうもうと立ち上らせている。

 真空でも水中でも消えない概念の炎だ。

 対象を燃やす……否。「無価値なものに変質させる」力でもって、山々が崩れ落ちていく。

 

 街も近いから、こちらも早めに消去せねばまずいだろう。

 

 繋いだ念話の先から、諸伏さん達が困惑の声を上げた。

 

『おい黄衣!?何があったんだ!』

『旧支配者が地球に顕現したんだ。流石にちょっとまずいから俺が急行しているとこ!』

 

 とはいえ小さめの奴だから、即人類滅亡とはならない。

 ヴルトゥームより小さく、正確には旧支配者と言う括りの下層、「小神(レッサー・オールド・ワン)となる。

 

 俺らが人間だとすれば、マーモット程度の強さしかない奴らと言えるだろう。

 召喚のコストも旧支配者ほど重くはない。

 

 が、それでも神は神。

 やろうと思えば人類種の滅亡など容易い、理不尽の権化である。

 

 マモーさんが事の深刻さを理解して息を呑む。

 

『神よ…空に浮かぶ神体による護りは…』

『安心してくれ、そっちは発動してる。神罰は執行されて、相手は大幅に弱体化してるから』

 

 でなければ、流石の降谷さんといえど旧支配者とガチバトルなどできない。

 

 というか、大抵の神格は俺の神罰が嫌で物の交換などに限定して直接顕現はしないんだがな。

 ハスターリクみたいに元々細かい要素の集合体は体を細くできるから別だが……だからこそグラーキも棘を信者に渡すだけで、あとは自分が直接空路で来ようとしたのに。

 

 チャウグナー・フォーンはたぶんニャルによる不正密輸だ。

 みんな碌でもなくていけねぇ。

 

 煙を掻き分けて俺が軽く存在規模の元を探せば、その姿はすぐに見つけることができた。

 

 燃え盛る体に、一つ目と乱杭歯の覗く口。

 複数ある手足は蛇のようにうねり、その黒い肌が炎の中でテラテラと光る。

 その巨体が木々を踏み潰し、燃やし尽くす。

 

 旧支配者ファロール。火を歩むもの。

 その顕現である。

 

 俺はあまりに気に食わなくて舌打ちした。

 オォン?舐めとんのかワレ。サイコロステーキにしてやろうか。

 

 ちなみに、ファロールは仮顕現で地球にやって来たようだ。

 

 顕現にはいくつか種類があるが。

 おおむね、正式な顕現と仮顕現に分けられる。

 

 正式な顕現とは、俺やニャル、あるいは当時のクトゥルフがやったようなものだ。

 肉体を伴って地道に徒歩でやってくるもので、これには退散魔術が効かないのが特徴だ。

 故にこれを許すと不死の旧支配者を追い出す手段がなくなり、殴り合って封印するしかなくなってしまう。

 

 俺が太陽系を巡回して警備しているのも、これを防ぐためでもある。

 ナワバリを巡回して人を威嚇するヒグマって言うなよ。

 

 そして仮顕現はそれ以外の全てだ。

 門の創造や召喚による移動もこれに含まれる。

 退散・追放魔術が効くので比較的対処しやすい。

 

 ファロールは人の召喚に応じて地球に来たので、仮顕現の区分になる。

 ただ、チャウグナー・フォーンと違いフルサイズでの顕現なので、アレよりずっと厄介だ。

 

 ファロールは俺の裁きを受け、その体をボロボロにしているようだ。

 見た目こそ変わらないが、存在規模がほぼ十分の一ほどになっている。

 権能も封印され、満身創痍といった状態だった。

 

 降谷さんの猛攻の隙を縫って、元の空間に戻ろうとしているらしい。

 門の創造の魔術が嵐に流されて不発で散っている。

 

 おうおう兄ちゃん、こんなことしといてタダで帰れるとでも思ってんのか?

 

 というかこいつもしや、移動先を大して確認もせずに召喚に応じたのか。

 もしそれでノコノコ地球にやって来たならお笑い種だ。

 生きてることを後悔させてやんよ……。

 

 瞬間。

 山々を薙ぎ払うような強烈な暴風が吹き荒れた。

 

 降谷さんが山の岩と木々を纏った悍ましい攻撃をファロールに浴びせかけたのだ。

 ファロールは身に纏う烈火の炎で岩と木を焼き払い、ノーダメージでやり過ごす。

 

 しかし降谷さんもそれは牽制目的だったのだろう。

 己の身体を巨大な竜巻の槍に変え、ファロールに突き立てた。

 

 ファロールが風を振り払い、肉体を瞬時に再生する。

 

 権能の出力が足りず、ファロールに疫病が効かないので苦戦しているようだ。

 ファロールの方も魔術でもって黒い風を退散させようとしており、状況は一進一退。

 

 存在規模はほぼ互角である以上、長期的に見れば降谷さんの方が不利、か。

 

 というか降谷さんはキレすぎだろ。

 瞳孔開いたままガチギレ状態で荒い息のままファロールを睨みつけている。

 

 ともかく、そろそろ俺も加勢すべきだろう。

 

 周囲に多重の認識をずらす結界を付与。

 そのほか俺の存在規模を抑える億を超える結界を一つずつ丁寧に構築していく。

 これも何回目かのことなので慣れた物だ。

 

 そうして、上空に展開した亜空間からずるり、と太い触手を一本垂らす。

 

 ゆっくりとファロールを巻取り、空中へと持ち上げた。

 

 触手は当然ファロールの炎に晒されるが、さほど気にすることでもない。

 俺と奴の存在規模の違いなら、ノーガードでも何の痛痒も与えられない。

 

 さて。お楽しみの時間ですね。

 

 持ち上げられたファロールが俺に念話を繋ぎ、哀れな命乞いをし始めた。

 

『はーい。こちらハスター。何だね君』

【───、───!!!】

『うっかりだったと。ふむふむ。用が済んだらすぐ帰るつもりだったということか』

【──!!!!!】

『なるほどなるほど』

 

 ───遺言はそれだけってことでいいですよね。

 

 俺はぬぷりと亜空間内にファロールを引き込んだ。

 ファロールは悲鳴のようなものをあげて頭から亜空間に突っ込んだ。

 

 

 後には、静かに燃えて黒い煙をあげる山並みだけが、広がっていたのであった。

 

 

 

 

 

 空から恵みの雨が降り注いでいる。

 

 まだ山は燃えているが、この雨は降谷さんの権能によるものだ。

 上手く雨だけを降らせられるようになった降谷さんに隙はない。

 この炎も権能を失っているし、じきに鎮火されるだろう。

 

 コナン君も今ここに向かっているようで、先ほど念話で無事の確認ができた。

 多少の事件にはなったが、最小限のダメージで済んだと言うべきだろう。

 

 これが東都の都市部で起こっていたら取り返しがつかないことになっていた。

 

 現在、俺たちは避難した牧場の建物内で腰を下ろしている。

 戦闘でお疲れらしい降谷さんが、大きなため息をついて肩を落とした。

 

「疲れた……魔術の基礎知識の足りなさを痛感したよ。あんなふうに牽制目的でばら撒かれると、魔術ってあんなに厄介なんだな」

「いやまあ、ファロールが使ってるのは原始魔術だからな。そりゃ読み解くのは難しいさ」

 

 降谷さんが雨に濡れた髪をかきあげて、一瞬風に変えた。

 瞬時に人間体に戻せば、乾いた髪の毛の出来上がりということらしい。

 おお、意外と使いこなしておられる。

 

 降谷さんが視線を落として不機嫌そうに腕を組んだ。

 

「しかもあれを見た瞬間、頭がカッとなって冷静でいられなかった。ぶちのめしたくて怒りでまともにものも考えられない」

「それは全面的に俺のせいだわ。ごめん」

「君キレやす過ぎじゃないか」

「いやでも不法侵入したクソ野郎は素早くぶちのめすべきだろ」

「それはそうだな」

 

 降谷さんが同意してくれて、俺は満足した。

 なんか洗脳している気がしないでもないが、気にしないこととする。

 

 体を軽く拭いて服を乾かしていると、コナン君もここに到着したようだ。

 駆け込んできてまず、降谷さんの安否確認をしたようだ。

 

「降谷さん!?無事!!」

「ああ。ジリ貧だったが、黄衣君が駆けつけてくれてね。あの化け物は撃破したよ」

【クスクス…ッ!!】

 

 星の精がバイブレーションしたままコナン君の服のポケットから声を出した。

 ブルブルブル、とコナン君のお腹のポケットが振動している。

 怖くて出られないらしい。

 

 でもコナン君のことは心配のようだ。

 触手だけコナン君の手に回して、しっかりと手を握っている。

 

 俺はコナン君に問いかけた。

 

「先生と少年探偵団はどうしたんだ?」

「子供達を家に送ってもらったよ。僕も親と合流するフリしてここに来たんだ」

 

 なんでも、避難する途中に山の中で焼死体を見つけたらしい。

 この牧場主が招来魔術でファロールを呼んだことはまず間違いないとのこと。

 

 もう招来魔術全部禁止しようかな、と俺はため息をついた。

 

 前はビヤーキーとか呼んで乗り物として使ってもらったりしてはいた。

 宇宙探検のための一番手軽な移動手段だし、色々商取引にも便利だし許可していたんだが。

 こうも悪質な使い方が目立つとな。

 そろそろ禁止にせざるを得ない。

 

 牧場の建物内を軽く探せば、どうやら金銭目的で召喚を成したことが明らかになった。

 

 兄弟に向けた手紙が残っていたのだ。

 悪化した牧場経営を立て直すため、神に祈るより他ないと外法に手を染めることにしたと。

 

 人間における富なんでファロールの理解の外だろうに。

 まったく、昨今の怪異ブームに乗っかっての行動だろうが、素人の生兵法には困ったものだ。

 





・ニャル
なんでまた呼んでくれなかったんですか!!!
この昂り切った憎悪を晴らす先が見つけられず泣いている。
今はファロールの残骸をサルベージして回復させては潰すなどして心を慰めている。
我が夫のバカ……(ぐすん)

・降谷さん
外から来た害悪神話生物=日本に有害な外国人犯罪者=おおむね赤井……?
アイディアをクリティカルした模様。
素早く全ギレ。
オラァン舐めてんじゃねーぞッッすぞオラ!!
そこに黄衣氏の怒りが加わって、完全に激昂する黒い風が出来上がる。

・コナン君
極限の状況下で対赤井さん向けと同じキレ方をする安室の様子に内心めっちゃ突っ込んでた。
落ち着いて、ね???

・星の精
怖くて震えて友達にしがみついてる。
星の精も…星の精も大きくなったらあれぐらい強くなるもん…まだ小さいだけだもん…。
日々のトレーニングに力が入る今日この頃。
リンゴぐらいなら触手一本でメシャッてできるようになった。
星の精はとても強い!友達に自慢する!

・ファロール
呼び出されたからちょいと覗いたら「大金持ちにしてくれ!!!」って言われて疑問符乱舞。
この羽虫何を言っとるんだと、のそのそ穴の向こうから出てきた。
分からんのでたくさん炎出す?→羽虫死んだ→結局何だったんや。
そして雷に打たれた辺りで「ここってまさか噂の危険地帯なのでは?」って気付いたが後の祭り。
すぐに全ギレした黒い風と交戦状態になり、そのまま昇天した。
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