ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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荒ぶる小さい悪霊

 

 TVではもうもうと立ち込める黒煙の中、東都郊外の森を炎上させる巨人の不鮮明な姿が報道されている。

 

 いくら田舎といえど、一応東都内。

 人がいないわけではなく、アレほど大きく目立つ巨人となると目撃者も多数いた。

 彼らは小神を目撃したSAN値チェックに晒されつつ、スマホでその姿を撮影してSNSにあげるなどしたのだ。

 

 それはあっという間にニュースになり、「京都の悲劇の再来か!?」と半ば恐慌じみたパニックを生み出した。

 

 もちろん、俺が素早くボコったのでこれ以上の被害は出ない。

 映像も京都の件を踏まえてすぐに精神防護を発動したので、見ることでSAN値が直葬される可哀想な人はいないはずだ。

 

 しかし、怪異に対する不安は今、世の中を揺らすほどの大きさとなっている。

 

 

 

 上等なスーツに着替えた降谷さんが、TVを覗き込んでため息をついた。

 

「全く面倒な。僕が本性で戦っていたのは不幸中の幸いだったか」

『だな。こう見ると邪悪VS邪悪って感じの見た目だな本当に』

 

 しみじみとした諸伏さんの言葉に、降谷さんが「誰が邪悪だ」と口をへの字に曲げた。

 

 TVは視聴者から投稿されたらしい、事件当時の様子を映した映像が繰り返し流されている。

 揺れるスマホのカメラで映されるのは山々を炎ごと薙ぎ払う黒い風。

 そして山の木々を踏み潰す燃える一つ目の巨人の姿だ。

 

 コメンテーターが「恐ろしい怪異ですね…!」と嘘偽りない恐怖の声を出した。

 

『京都のそれも恐ろしい物でしたが、この怪異もまた、もし真昼の都心部に現れればとんでもない被害となっていたでしょうね』

『こちらの黒く色づいた竜巻は「日本の守護神」によるものと聞きましたが』

『そちらについてはこの映像をご覧ください』

 

 政府の公式発表に番組が移るのを確認しながら、降谷さんが非常に満足げな顔で足を組んだ。

 計算ドリルができた星の精並に誇らしそうだ。

 

「まあ僕は市民を守ると言う当然のことをしたまでだからな。そうだろヒロ?」

『俺も狐耳が残ってたらゼロの眷属って言い張ってついてくのに』

「狐はそろそろ諦めてくれ。なぜそんな固執するんだ」

『せっかく俺のアイデンティティが生えて来たのに!黄衣が取るから!!!』

 

 諸伏さんはブーブーと抗議の声をあげて俺を睨んだ。

 

『俺以外みんな何か一芸あるだろ!?キャラが立ってるというか、神子だったり古代人だったり!』

「神子って僕のこと言ってる???」

「心配するなヒロ、お前は激強怨霊という唯一無二のキャラ性がある!」

『怨霊は負のキャラ付けだろ!!!』

 

 心外そうなコナン君を置いて、諸伏さんが叫ぶ。

 そして「だって俺がこんな顔してたら良い印象無いだろ!」と両手で顔を覆う。

 いないいないバアの構えだ。

 

 疑問符を浮かべる降谷さんの前で、諸伏さんがそっと手を離す。

 

 そこには、生者を引き摺り込もうとする恨みと憎悪が籠った、血涙を流す粘ついた笑みがあった。

 

 心臓の付近からは生暖かい血がポタポタととめどなく流れ落ち、立ち上る呪詛は息苦しいほどだ。

 窓に煤けた黒いシミが付着し、カタカタと無風の中窓ガラスが揺れる。

 ニタリ、と諸伏さんと降谷さんは目があったようだ。

 

 降谷さんが思わず「ウワーッ⁉︎⁉︎」と悲鳴をあげた。

 流石にこの重さの呪詛は有害なので、フッと息を吹きかけてそれを霧散させる。

 星の精が体調を崩すといけないし。

 

 吹き散らされた呪詛を見て諸伏さんはショックを受けたらしい。

 血涙を拭って断固とした抗議の姿勢に出た。

 

『今俺の呪いフッてやって消した!!フッてやっただけで消した!!!』

「いや仕方なくないかそれは」

『俺の呪いもこんなんで黄衣に効かないし!俺はもう狐耳に頼るしかなかったのに!!』

 

 諸伏さんの魂の叫びに、俺は所在なさげに机の後ろに隠れるなどするしかなかった。

 いや仕方ないだろそれは。

 俺に効く呪詛を放つのはもはや悪霊とか言うレベルの存在では無いんよ。

 

 諸伏さんはメソメソしながら狐耳カチューシャを取り出した。

 まだ余りを持っていたらしい。

 

 部屋の隅でトレーニング中の星の精にそれをそっとはめたようだ。

 星の精は「クス?」といってカチューシャを確認。

 すぐに取り外して横に置き、諸伏さんの頭を撫で撫でしてクスクス言った。

 これはコナン君から学んだ「忙しいからまたあとでね」の仕草だ。

 

 諸伏さんは星の精にまですげなくされて、トボトボと部屋の隅で体操座りし始めた。

 

 

 ちなみに、星の精はドスドスと小さいサンドバッグに頑張って打ち込み中である。

 

 自分でタオルを腹に巻いて汗拭きがわりにして、意気揚々と触手を繰り出している。

 星の精は汗とかかかないけど、気分は盛り上がるとのこと。

 

【クス!クスクス!!】

「うん、星の精はとっても頑張ってるね」

【クス!!!】

 

 コナン君の声援を受け、トレーニングに力が入るらしい。

 これまでに星の精用準備体操もしたし、空中走り込みもした。

 この打ち込みでフィニッシュである。

 

 使われてクタクタになったサンドバッグをついに打ち倒して、星の精は触手を振り翳して勝利のポーズを作った。

 星の精は大変強いらしく、力こぶを作って勝ち誇っている。

 

 サンドバッグは布製で、頭部にはクレヨンで一つ目の頭の絵がセロハンテープで貼り付けてある

 この間星の精がコナン君と一緒にフェルトを貼って作ったものだ。

 

 ファロールのつもりかもしれない、と思って俺が親切心でファロールを中に詰めてやろうとしたのだが。

 コナン君に「星の精の手作りサンドバッグに変なもの入れないで」とピシャリと注意されてしまった。

 

 星の精の訓練にちょうど良いのに……。

 

 この辺りでマモーさんもやってきて、俺に一礼した。

 

「神よ。旅行の準備が整いました」

「ごめんマモーさん、雑用なんてやらせちゃって」

「これこそが私の最大の喜びでありますから。ところで、今回の怪盗キッドの件についてですが……私も同行してもよろしいでしょうか」

 

 マモーさんの申し出に俺はパチクリと思わず瞬いてしまった。

 危険だが、やはりそれを冒すだけの思いがマモーさんにあると言うことなのだろう。

 

 明日から俺たちは函館に向かう予定だ。

 今回の怪盗キッドは、斧江財閥の所蔵する土方歳三ゆかりの脇差が目的らしい。

 

 キッドがそれを狙っている理由はまだ聞いていない。

 だが函館、というのはなんとも嫌な予感が拭えないので、こうして実際に俺たちも向かうことにしたわけである。

 

 コナン君が若干不安そうに星の精を抱き上げてこちらに来る。

 

「古代ハイパーボリアを滅ぼしたものの一部が函館山に封印されてるって、本当なの?」

「ああ。『父なるダゴン』。深きものどもの統率者だよ」

 

 父なるダゴンは、クトゥルフの飛び散った肉片のようなものだ。

 

 深きものどもの統率者であり、小山ほどの巨体を誇る。

 しかし実態はクトゥルフ本体から無限に湧き出る害悪中の害悪だ。

 ポコポコ湧き出て海中にばら撒かれ、俺はそれを戦闘中いちいち封印せねばならなかった。

 倒してたらキリがないから、一括でバッと封印していたのだ。

 

 再生速度や体力の面では俺よりクトゥルフの方が上だからな。

 削られた端からダゴンに変えて面制圧するのもお手のものというわけだ。

 

 そうしてハイパーボリア末期の大戦の際、俺が封印した物の一つが、函館にあるというわけである。

 

 本当はハイパーボリアの末裔が地下に埋めておいたのだが。

 第二次世界大戦の時に日本が掘り起こして兵器に使えないかと函館山にしまったらしいのだ。

 

 まったく。変なおもちゃで遊ぶのはやめなさいと何度言ったらわかるのか。

 

 マモーさんが思い詰めたように俯くので、俺は軽く笑ってそれを元気付けることにした。

 

「大丈夫。前みたいにはしないよ。人間は必ず守る」

「………神よ」

 

 俺が永劫守るのだ。

 もう何者にも奪わせはしない。あの悲劇を、絶望を、滅びを再び起こさせやしない。

 外敵は全て引き裂き、地球の糧としてやろう。

 

 そのように、俺は目を細めたのである。

 





・身体を鍛える星の精
せっせと触手の威力を鍛えている。
トレーニング後は友達のポケットの中で美味しい血液を飲んでまったりするのが日課。
毎日頑張ってるし、そろそろ大きくなって来てるんじゃないかと鏡の前で確認する今日この頃。
じーっと鏡の前でポージングしてニコリ。
星の精、前より一回り大きくなった!(気のせい)

・コナン君
毎日「星の精は大きくなった!!」って見せられるのてたくさん撫でてる。
江戸川コナンが必要なくなったら、少年探偵団に事情を話した上で星の精に譲りたい気持ち。
星の精ならきっとあいつらとも仲良くやれるだろうから。

・諸伏さん
帝とか祟れるタイプの大怨霊。
だがハスターがフッてやるだけで呪詛は消える。
今めちゃんこ凹んでて降谷さんに慰められてしくしく泣いてる。
なお降谷さんでもフッてやっただけで消せる。
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