ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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百万ドルの五稜星〈ダゴン見学〉

 

 函館である!!!

 

 予告は夜なので、それまでは思う存分みんなで観光地巡りの時間だ。

 箱館奉行所や函館ハリストス正教会、金森赤レンガ倉庫など。

 明日は朝から街に繰り出して、函館ビュッフェ朝食戦争のどこかにお邪魔する予定である。

 

 うむ。非常に楽しみだ。

 

 とはいえ、ワクワクそわそわしてるばっかりでもいけない。

 仕事もせねばなるまい。

 

 現在、俺たちは観光がてら、函館山にある旧日本軍の施設に来ている。

 降谷さんがじとっとワクワクそわそわしてばかりの俺を睨め付けて言った。

 

「君。観光がメインでここはついでみたいな顔してるが大丈夫かな。ここに来ることが僕らの本題だぞ」

「そんな……俺は真面目にやってるっすよぉ」

「一ミリの真面目さも伝わらない返事はどうにかならないのか」

「問題ありません。神はこの程度の輩に本気を出すまでもないとおっしゃってるんです」

 

 マモーさんが俺の加勢をしてくれたので、俺は気を大きくして胸を張った。

 そう。俺レベルの旧支配者になればダゴン程度恐るるに足らず。

 いやこれはマジの話である。あんな肉片如きに俺が負けるかよ。

 

 降谷さんが大きなため息をついた。

 

 場所は函館山の中腹。

 俺の怪異一覧の情報を元に、公安が函館市から許可を受けて横穴を掘り、地下空間への道を整備しているところだ。

 

 函館山は国有地だからな。

 公安としても意外とやりやすかったのだろう。

 

 見張の警備員に挨拶して降谷さんが身分証を提示。

 敬礼されながら奥へと進む。

 

 コンクリをやや進むと、古いレンガ作りの通路に繋がった。

 ここが当時作られた秘密施設の通路だろう。

 しっかりと金をかけ、人為的に作られた場所であることが察せられた。

 

 皆でゾロゾロと進んでいく。

 奥へ進むたびに圧迫感のようなものが増していき、自然と息が詰まる感覚がある。

 

 マモーさんが固唾を飲み、諸伏さんが顔色を悪くした。

 星の精はコナン君のポケットから飛び出して、ブルブルと震えながら勇ましく触手を構えた。

 コナン君の顔面に張り付いたまま「ゲタゲタッ!」と敵を見つけんとあたりを見回す。

 星の精が今度こそ友達を守ってみせるらしい。

 

 コナン君は冷静に星の精を引き剥がし、頭に乗せ直して撫でてやった。

 

 おそらく、まだクトゥルフの加護が残っているのだろう。

 俺も余裕がなくて雑に封印したし、気配が漏れても仕方ない。

 

 自然と皆無言となり、先へ進んでいく足取りも重たくなった。

 

 最奥に辿り着くと、巨大な鉄の扉が聳え立っていた。

 斧江家の家紋が刻んであり、それが斧江財閥の手が入っているものだと示している。

 

 公安はここまでしか踏み込んでないようだ。

 不用意に触れるべきではないことは明白だから、それも仕方ないか。

 絶対これ扉を開けたらラスボスとバトルが始まるデザインだし。

 

 扉に手をかければ、コナン君が「開けるの?」と声をかけてきた。

 星の精もコナン君の頭に張り付いて「クスクス、クスクスクス」と俺に言い募る。

 

 やめようよ、星の精は別に怖くないけど友達が怖いって言ってる!

 そのように言っているようだ。

 

 俺は微笑んで「大丈夫、怖いことは起こらないから」と言って、そっと扉を開ける。

 生ぬるい湿った空気が吹き込んできた。

 

 中は埃っぽく、装飾も何もない広大なばかりの空洞であった。

 ここに運び込むのに多くの困難があったのだろう。

 放置されたままの白骨死体が点々と散らばり、中の冷えた空気にすえた臭いが混じるような感覚に陥った。

 

 そしてその中央に佇むものこそ、封印されし厄災そのもの。

 

 多重にお札と儀式的な模様の描かれた鉄格子に閉じ込められた、巨大な巨大な異形がある。

 魚巨人、という形容が一番端的で的確だろう。

 手を広げれば小山ほどあるそれは、俺の封印により卵型に押し込められて固まっている。

 

 だが間違いなく今でも確実に生きているのだ。

 近付いた作業員を無意識に喰らい白骨死体を周囲にばら撒いて、それは静かに眠っている。

 

 マモーさんが眉間に皺を寄せて嘆息した。

 

「なんと……これでは封印の体を成していない。ただの怪しげなデザインの鉄格子だ。こんなもの憎きダゴンにとって紙屑と違いない」

「こんな怪物が沢山、ハイパーボリアを襲撃したの?」

「そうだよ。あの日のことは今でも鮮明に思い出せる」

 

 コナン君の問いに、マモーさんは悲痛に俯いて口を開いた。

 当時を懐かしむ気持ちと、整理しきれぬ悲しみが混じり合って言葉を暗くする。

 

「50メートルもあるダゴンの軍団が海をかき分けて我らを取り囲んだんだ。奴らが一撃入れるたび、都市結界が軋むギィギィという音が響いてね。悍ましくて恐ろしくて、皆神殿に身を寄せて神に祈ったよ」

「…………」

「都市に残ることを選択した市民のほとんどが、こいつと雲霞の如く湧く深きものどもに殺されてしまった。ヴーアミタドレス山から私も見ていたよ。投網のようなもので一気に人々を捕まえて、踊り食いにするんだ」

 

 短くもその絶望がありありと伝わる言葉に、皆が沈黙した。

 

 あーーーー族滅してぇーーーーー。

 

 俺はマモーさんの独白を聞いて無言で荒ぶった。

 封印されてるし特に意味ないから放っておいたんだが、一匹ずつ解放して生け造りにして回ろうかな。

 豪華な刺身パーティだ。きっととても美味しいぞ。

 

 降谷さんがふるふる震えて「黄衣君、抑えて、抑えて。僕まで理由のない怒りに苛まれてる」と注意した。

 すまんね。つい熱くなってしまったようだ。

 

 ともかく、これはこのままであれば特に処置は必要ない。

 近付かなければいいだけだからな。

 

 俺は「状態は良いから入り口だけ厳重に守ればこのままでいいよ」と言い置いてぐるりと背を向ける。

 諸伏さんが首を傾げて言った。

 

『うーん。ここは観光地だしな。あんまり危険なものは近くにない方がいいんじゃないか?』

「それもそうなんだが。実はこれ、上手く使えばMP炉心にもなるようにしてあるんだ。つまり人間にも使える無限エネルギーだ」

『!!』

 

 降谷さんが目を見開いて「なんだって!?」と叫んだ。

 

 こういう量産型ダゴンはクトゥルフの加護により無限に回復するからな。

 だからきちんと処置してMPを絞り出してやれば、コイツは非常にクリーンなエネルギーとして使うことができる。

 俺もそのために残したわけだし。

 

 そう言う意味で、日本軍が兵器として使用しようとしたのも間違いではないのだ。

 

 降谷さんがジト目を向けて俺を睨んだ。

 

「聞いてないが。怪異報告書にも無かった情報だと思う」

「うん。今思い出した」

「……君、その適当さでよく古代に神ができたな」

 

 クソデカため息をついて降谷さんが頭を抱える。

 いやだって、クトゥルフのアンチクショウの話は思い出したくも無かったから自主的に封印してた的なところがあって。

 へへへ。化身殿や、あとは任せたぞよ。

 

 マモーさんが「これを、エネルギー源、ですか」と静かに呟く。

 憎しみはまだ溢れんばかりに存在するのだろう。

 八つ裂きにしてあまりある憎悪だ。

 

 あの非常時。神殿に身を寄せて神に祈ったと、マモーさんは言っていた。

 俺はそれに応えられなかった。

 

 俺に助けを求め、苦痛と絶望の中死んでいった彼らを思うと。

 俺はやはり憂鬱な気持ちにならざるを得ないのだ。

 





・降谷さん
荒ぶるハスターと接続している影響で、激怒と激鬱が交互にやってきて心を病みそう。
その点、ニャルラトホテプは基本流れてくる感情が悦楽がメインで機嫌が良かったんだなと知る今日この頃。

・旧日本軍
斧江財閥と協力してこの化け物の兵器化を目論んでた。
戦争末期では、日本領土に踏み込まれたらこれを解き放って玉砕するという案まで出た。
が、解き放つ方法がわからずそのまま頓挫した。

・ハスター
クトゥルフの件がトラウマになっている。
そのため太陽系を見回って、侵入者には文鳥ぐらいガチギレ威嚇する。
ハイパーボリア滅亡以前は太陽系巡回斧ブンブン全力威嚇まではやってなかった。
実は旧支配者Tir表では最上位。

・旧支配者Tir表
上位と下位では鯨とミドリムシぐらいの差がある。
さらに外なる神との間には月とスッポンぐらいの差がある。
ハスターは光を換算しない時は普通の最上位旧支配者。
光を換算すると外なる神。

・ダゴン
中の説明も多少載ってたが、あまりに露骨に危険感が漂っていたので公安の人員は誰も中に踏み込めなかった。
実は以前ジンが調査員として派遣されている。
が、入り口でUターンして「黄衣ハスタを呼べ」としか言わなくなってしまった。
あの漁村の洞窟の奥にいたヤバい奴やんけ。
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