ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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祠壊したんかお前

 

 結局、政府の要望に従ってダゴンは処分することになった。

 

 封印が解かれるかもしれないことを危惧しての人間の判断だ。

 少し勿体無いが、俺がとやかく言うことではない。

 

 ダゴンの封印体を跡形もなく消し去って、俺たちは公安のメンバーと共に撤収した。

 その姿を、刀を持った深きものどもが一匹、森の中に姿を隠して見守っていたとかいないとか。

 

 彼が今後どうするのか、俺の知るところではない。

 だが、肩の荷が降りたような、ホッとしたような様子が印象的だった。

 

 

 その後、深きものどもの対処は、新たな二つの軸で運用することが決定された。

 

「子供を残すことができない呪詛」。

そして「精神が変貌する直前、眠るように死ぬ呪詛」の二つである。

 

 どちらも降谷さんの疫病の権能を流用している。

 「子供を残すことができない呪詛」は男女ともに、クトゥルフの加護下にない深きものどもにあらゆる病の形で降りかかる。

 しかしそれでは、人間が攫われて里に連れ込まれ、子供を作られることは防げない。

 

 だから「精神が変貌する直前、眠るように死ぬ呪詛」が第二の防壁として作動する。

 苦しみなく命を落とす優しき疫病により、大切な者を手にかけることなく人としての生を終えられる。

 

 残酷な慈悲だ。

 だが俺にはこのぐらいしかしてやれることはない。

 

 深きものどもはクトゥルフが作った種族だ。

 その根本がクトゥルフである以上、俺が手を出せることは非常に少ない。

 

 政府もこの処置に合意している。

 遺族のダメージも最小限にできて、かつ世間に秘密裏に処理できる方法を彼らは両手をあげて歓迎した。

 しかし同時に、人に紛れ込む怪異の脅威がそれでなくなったわけではない。

 

 シャッガイの昆虫、アイホートの雛、旅するもの。

 脅威は数知れず、だからこそ怪異対策法の拡充は急がれている。

 

 現在ただでさえ人々の不安に便乗し、「ここは人の国であり、怪異を排除する法を整えるべき!」と声高に宣言する政党も出てきているからな。

 怪異は既に人間の仮想敵にまでなってしまっている。

 病気も貧困も不運も不平等も、全てが怪異のせいだと陰謀論が渦巻いて。

 ちょっと疑心暗鬼な雰囲気が立ち込めている。

 

 それに呼応するように、俺を信仰する新興宗教が雨後の筍のようにポコポコと現れ、詐欺も横行している。

 怒り狂う黄色の印の兄弟団とガチンコバトルはまだまだ続いてるようで。

 社会不安は止まらないらしい。

 

 とりあえず、ハスター信仰を掲げる詐欺宗教は俺が直々に神罰を下したい気持ちではある。

 近いうちに降谷さんを通じて政府に相談してもらおう。

 

 そのように考える、今日この頃なのである。

 

 

 

 

 

 そして現在、俺はコナン君を膝に乗せてよーしよーしと頭を思う存分撫でている。

 

「うーむフィット感。コナン君はとても良い。良い。イチオシ。今最推しコンテンツだわ」

「シンプルに迷惑なんだけど」

【クスクス!!】

 

 星の精が俺の真横に張り付いてプリプリ怒っている。

 星の精の友達を取った!星の精の友達なのに!取った!!!

 

 へっへっへ、俺の友達なんだよぉ星の精はすっこんでな!

 

 俺がクツクツと笑ってニタリと勝ち誇って星の精に流し目を送る。

 星の精は「グスグスグス!!!」と激しく憤ってバタバタと癇癪を起こした。

 コナン君がひたすら迷惑そうな顔で「星の精をいじめない!」とピシャリと俺を叱って仕事を進めている。

 

 なお、隣では降谷さんが同じように諸伏さんを膝に乗せて「ヒロ〜〜〜」と情けない声をあげているようだ。

 絵面がとても怖い。

 

 諸伏さんが膝の上で体を縮こめながらダブルピースした。

 

『俺、コナン君と同一ポジションな件。つまり俺は小学生だった…?キャッ⭐︎』

「こんなむさ苦しい小学生がいてたまるか。それよりヒロ〜〜心が疲れた〜〜〜激鬱と上機嫌を行ったり来たり。もうこれは病名付くし慰謝料を要求してもいいやつだろ」

『それはそう。黄衣は高額な治療費を支払うべき』

 

 その件に関しては本当にすまんかった…。

 俺はしゅんとしてぺこりと頭を下げた。

 

 降谷さんは諸伏さんを高速で撫で散らかして馬鹿でかいため息をついた。

 諸伏さんがまったり笑って「摩擦、ゼロ、摩擦で俺から火が出る」と注意する。

 これが本当の狐火ってやつか。

 

 俺がふと思い出して、降谷さんに雑談を振る。

 

「そういや降谷さんも神社に祀られることになったんだよな?どんな感じだ?」

「ああ。摂社として扱われるようだ。僕も見てきたが、すごくいい感じだった。こう、収まりがとても良いというか」

「だよな。アレは良い。おっきいビーズクッション的な。沈み込んでまったりできる」

「わかる」

 

 語彙力低めにうむうむと俺らは頷きあった。

 本当にいい感じとしか言いようがないんだよな、あれ。

 旧神が納得するのもよく分かる出来である。

 

 諸伏さんが「へー、そんな良さげなのか。俺も自室にも欲しいな」ともしゃもしゃにされながらまったり言った。

 

 俺と降谷さんが同時にピンときた顔をする。

 そしてヒソヒソ内緒話。

 

「魔術で再現できるか?」

「できる。二社。小さいやつを出して、試しにまったりするか」

「よし」

 

 素早く合意をを取り、俺はしゅるりと事務所の空いているスペースに二つの祠を出現させた。

 

 降谷さんは目を輝かせ、素早く人型を崩して黒い風状態で小さい祠に飛び込んだ。

 不吉な黒い風を纏った社はどこか寂れて、悍ましげに見える。

 中から至極上機嫌な声が聞こえてきた。

 

【おお!いいなこれ!最高級マッサージチェアにはまり込んでる感じがある!】

「……俺の方はちょっと小さすぎたな」

【君は巨大だからな。このサイズの社では不十分か】

 

 俺はしょんぼりとコナン君を撫でる作業に戻った。

 なんというか、食パン一枚程度のビーズクッション、と言った風体だ。

 頭も乗せられないサイズ。これでは流石に寝られない。

 

 降谷さんはいい感じになったまま出てくるつもりがないようだ。

 中から小さく鼻歌が聞こえてくる。

 まあ函館旅行中は俺が心労をかけたからな。

 お詫びに後で彼のアパートに運び込んでおくとするか。

 

 捨てられた諸伏さんがちょんと椅子に残って悲しそうにシクシクしている。

 悪霊セラピー、マッサージチェアに負けるの巻。

 

 

 そこで突然。

 ニュルッと空間の狭間からニャルラトホテプが姿を現した。

 

 ヒュンッと素晴らしい加速度で星の精がコナン君のポケットにホールインワンする。

 トレーニングの甲斐があり、前よりも速度が上がったようだ。

 黒い風は瞬時に沈黙し、社の中で居留守を決めている。

 いないふりをしてうんともすんとも言わない。

 

 ニャルが非ユークリッド幾何学な感じに蠢き、地面に降り立って手を上げた。

 

「ハァイ我が夫!なんか僕以外の親友とか作ってませんよね?」

「お前が俺の親友であることは変わりないよ。どうしたニャル?藪から棒に」

「なんか僕以外の存在が我が夫の心を癒した気がしまして!」

 

 迫真の問いかけに、俺はコナン君をニコニコなでなでする作業に戻った。

 やはり人間。最推し中の最推しが尊くて世界が明るい。

 

 ニャルは瞬時に泣き崩れてひっくり返って爆音で喚いた。

 窓ガラスがビリビリと振動するが、あらかじめ魔術で強化してあるので割れることはなかった。

 

「僕以外の!僕以外の親友作ったんだ!!!」

「いやこれはアレだよ。信じる神はいても好きな人はできる的な。そう言うサムシングだよ」

「ゆ゛る゛さ゛な゛い゛!!!ほろぼ、滅ぼさなきゃ、羽虫ども…」

「コナン君はいい子なんだ。ニャルもそのうちわかる。うん」

 

 ニャルの射殺さんばかりの視線を受け、コナン君が平坦な顔で「僕は謀殺されかけてる…?」とコメントした。

 そんな、俺の親友を殺すなんて酷いことニャルはしないよ!

 

 でもニャルが流石に悲しそうなので、床にひっくり返っているニャルを抱き上げてお姫様抱っこにした。

 今の俺は全てに慈愛が満ち溢れている。

 ディズニー映画の如く突如歌い出すことすら可能な晴れやかさだ。

 

 よしよし、とニャルの額にキスをして頬を擦り寄せた。

 

 機嫌を直したニャルからミョン!と狐耳と狐尻尾、そして巫女服が飛び出してくる。

 ごろにゃん!とニャルが俺に笑顔を見せたようだ。

 突然の致命傷にゴフッと喀血する。油断したところの性癖暴露は殺人未遂になるって知らないのか。

 

 ニャルはニコニコと俺の肩に腕を回して柔らかな声を出した。

 

「まあ今日のところはこの辺で誤魔化されてあげます!」

「助かる。あとニャル、狐っ子スタイルは二人っきりの時でな」

「はい!それとそこの極上の寝床何なんです?最高級犬小屋ですか?」

「いや、俺の家のつもりがサイズミスしただけ」

 

 ニャルはジロジロと祠を見て、眉間に皺を寄せた。

 

「ミスにも程があるでしょう。でも…ふーん。悪くはない設計ですね。センスがある」

 

 俺もそう思う。

 俺は頷いて、いかに省スペースで俺の部屋に収納するかに思いを馳せたのだった。

 





・祠に収まった黒い風
壊したらいけないタイプの祠。
お前あの祠壊したんか!
中ではいい具合に最高級全身マッサージ機に包まれた降谷さんが至福のひとときを楽しんでいる。
重力ゼロのボディフィット構造。上質なプライベート時間が心まで解きほぐす。
壊すと荒れ狂って署に連行してめちゃめちゃ説教してくる。

・嫉妬ニャルニャル
ハスターが救われた気配を察知してやってきた。
羽虫のくせに!羽虫のくせに!!!
……でも、ずっと鬱屈していた我が夫の心を軽くしてくれたことには、礼を言わないでもないです。

・ハスター
狐っ子は二人っきりの時はして欲しい、特殊性癖旧支配者。
あまりに特殊すぎてニャルには「キモい通り越して理解が追いつかない」と思われている。
狐っ子だけでなく、人間の男らしいさまざまな趣味嗜好もある。
人間としてはそこまで変ではないが、旧支配者界ではドラゴンカーセックスガチ勢レベルのイロモノ。
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