ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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ニャルデートと祠と平和

 

 今日は定期ニャルデートの日である。

 

 一緒に寝起きしてはいるものの、最近は寂しくてぷんぷんしていたからな。

 いつも俺の羽虫趣味に付き合ってもらっているし、愛と労りを込めて、プラネタリウムデートを企画した次第である。

 

 二名で一つの大きな円形ベッドに寝転がって鑑賞するスタイルだ。

 星を見ながら、他の客の妨げにならないように念話でまったりと語り合う安らぎのひととき。

 音楽と映像が順次切り替わるから、飽き性のニャルでも楽しめることだろう。

 

 

 その辺で、ベッドから起き出してきたニャルが猫のような大欠伸をして触手まみれのまま出てきた。

 グネグネと邪悪なイソギンチャク姿で伸びをして、次の瞬間パッと姿が変わる。

 

 どうやらデート用の姿に変わったようだ。

 

 今日のニャルは清楚な夏の装いに決めたらしい。

 小麦色の肌が白いブラウスによく映えている。

 ポニーテールの髪は爽やかで、窓から差し込む夏の日差しの中煌めいている。

 

 ニャルはニタリとしたり顔をした。

 

「ふふ、見惚れていますね我が夫。だんだんわかってきましたよ。あなたの好みが」

「ゔっ……ニャルさんには敵いませんな…。蝉の鳴く中久しぶりに再会する地元の快活な幼馴染、好きです」

「いや正直言ってること一個も分かんないんですけど」

 

 キモげな顔をされてしまった。

 非常に申し訳ない。自認が羽虫な異常旧支配者なもので、ちょっとキモくなりがちなのだ。

 詫びを兼ねて、昨日せっせと作った「外なる神の味覚でも美味しい手作りマフィン」をプレゼントすることにした。

 

 ごそごそと亜空間からマフィンを取り出すと、パッとニャルの顔が明るくなった。

 

 「いい匂い!」と言って喜んで受け取ってくれる。

 とれたて新鮮なダゴンを贅沢に使っているから、存在規模的にもかなり美味しいはずだ。

 ニャルはいそいそと本性を露出させた。

 

 人間体のまま頭から喉まで縦にガバリと裂け、そこから現れた乱杭歯の覗く口でラッピングごとぺろりと丸呑みにする。

 そしてむしゃむしゃもごもご。

 ニャルは口を閉じて頬を染めた。

 

「我が夫の愛を感じます♡濃厚な魂の旨みと肉のまろやかさが舌で蕩けて美味しい。我が夫はとっても料理が上手ですね!」

「嗜む程度だよ。ニャルには及ばないさ」

「えへへ。今日もいっぱい楽しみましょうね!」

 

 ラッピングは外して食べてもらうつもりだったのだが。

 まあいいか。外なる神に食べれないものとか無いし……。

 

 

 門の創造でひとっ飛び。

 やってきたのは東都にあるカップル御用達のプラネタリウムだ。

 

 チケットはあらかじめ買ってあるので、入場して円形シートの上で寝転がり、その時を待つだけ。

 星空など俺たちにとって別に珍しいものでは無い。

 というか、移動中死ぬほど見ることもあり、地球の青い空の方がよっぽど物珍しかったりする。

 

 しかし、改めて眺めれば思い出話も浮かぶものだ。

 

 手を握って寄り添い、やや微笑んで天蓋を見つめる。

 お互いの体温を感じて、どことなく恥ずかしい心地になる。

 家では超巨大ベッドにお互い本性のまま寝ているが、色気より先に神話的恐怖が来るし。

 

 いや、本当はあれこそお互い裸なんだが、こう、俺の人間的感性がベショベショに恐怖を訴えるというか。

 変な巨大深海生物に色気を見出すのは無理というか。

 

 うむ。深く考えるのはやめよう。

 これ逆に羽虫姿で俺とイチャイチャしてくれてるニャルが無限の愛情過ぎて頭が上がらない案件だわ。

 

 ニャルが上機嫌に念話越しに俺に声をかけてきた。

 

『あ、あれ我が夫の最近の住処ですよね!』

『ヒアデス星団、牡牛座のアルデバランだな。ここから見るとほとんど点にしか見えない』

『それは羽虫だけです。僕らの視力なら魔術を使わずともハリ湖を見られる。でしょう?』

『そうだな。時期が来たら俺らも実際に星空を見あげてみるか』

『片方が星に立って文字を書きましょうか。魔術でなんて文字を書いてるか肉眼で見るゲームです!』

『いいなそれ。今度やろう!』

 

 クスクスと囁きあって、薄暗い中頬を寄せあった。

 俺たちの視覚であれば光などなくとも視界は遮られないから、なんとなく見せつけている気分になって恥ずかしい。

 

 ニャルラトホテプが俺の額にキスを落とした。

 

『僕は、貴方が貴方でいられることを何よりも望む。いつでも頼っていい。僕がかつて、貴方に救われたように』

『………ありがとう、ニャル。俺の最愛の妻。俺の唯一無二の親友』

 

 俺もニャルの額にキスをした。

 

 短いデートではあったが、その濃密な時間こそが俺たちの証であった。

 ニャルが迫真の表情で俺を睨んだ。

 

「ところでそろそろ交尾の話とかしたいんですけど我が夫はどう思います?」

「本作品は全年齢となって以下略ッ!!!」

 

 俺は瞬時にニャルにポカッて殴られた。

 すまないニャル、大人の事情でそれは永遠にお預けなのだ…許せサスケ……!

 

 

 

 

 

 

 事務所に帰還すると、何故かコメディ修羅場が生産されていた。

 

 事務所の物置スペースにに放置してあった俺の祠に諸伏さんが収まったまま、中で右往左往しているようだ。

 コナン君が必死に祠の扉を全て開けたり中身を出したりと試行錯誤している。

 

「いや何やってんの」

「黄衣さん!!大変なんだ!諸伏さんが中に入ったまま出てこられなくなっちゃったんだ!」

『迷宮みたいに馬鹿でかいラグジュアリーホテルが広がってる!!!こわい!!!』

 

 そんなことあるんかいな。

 

 俺は困惑した。

 星の精が動揺して祠の屋根をコンコン叩いて中に触手を差し入れて「クス?クスクス??」と声をかけている。

 どうした?なんで出てこない?星の精の触手掴める???

 優しい星の精のようだ。

 

 俺はポリポリと頬をかいて、諸伏さんに声をかけた。

 

「えーっと、とりあえずフロア案内の看板はある?」

『あるけどデカすぎて出口に辿り着けない!あえていうなら東都一帯が全部一個の高級リゾートみたいになってる!道中に美味しいフルーツたくさん無料で配ってる!これ貰っていいやつ!?』

「食べていいやつだよ。害はない」

『なるほど。美味しい!』

 

 もう手に持っとったんか。すぐ食うやん。

 

 恐らくは俺と諸伏さんの規模の違いだろう。

 俺にとってはパン一切れサイズのビーズクッションでしかないが、諸伏さんから見ればそれは無限に続くスパリゾートになっている、と。

 

 いやそこまで無限に続いてたら怖いな確かに。

 

 トントン、と屋根を叩いて空間を諸伏さんに合わせて縮小してやる。

 それでもリソースが余ったので、やや広めに設計した。

 これなら出るのに支障はないだろう。

 

 諸伏さんは「お、お?なんかいい感じのサイズになった!出れる!」と叫んでにゅるんと飛び出してきた。

 そしてぜえぜえと息を荒らげてから、シクシク泣き出した。

 怖かったらしい。

 

『俺は一生マッサージ店とフルーツ屋台とバーラウンジと各種美食揃い踏み飲食店街と風呂とサウナとお昼寝コーナーに囲まれて生きるしかないかと思った…!』

「意外と幸せそうでよかった」

『いや怖かったんだぞ本当に!?』

 

 ゾッとした様子で諸伏さんが体を震わせる。

 なんか楽園っぽく聞こえるんだが違ったのだろうか。

 

 俺は咳払いして胡乱な顔で諸伏さんに問いかけた。

 

「と言うか、なんだってこんなところに入ったんだ?」

『いやぁ、ゼロがあんな高評価してるからよっぽどいいところなのかと思ってさ』

「まあ諸伏さんに対してもある程度リラクゼーション効果はあると思うぞ』

 

 これは原始魔術の一種で、欠落を埋める、望みを淡く満たす、充足の概念が詰まっている。

 古代より続く日本の知恵、旧神の活動を穏やかに封じるための共存方法の一種なのだろう。

 

 魂が露出していない人間等生命体には感じられないだろうが。

 魂のみの悪霊、旧神、そして俺らのように肉体よりも魂の方がずっと大きい旧支配者には、たいへん心地良く感じられる設計となっている。

 つまり日本人は旧神の封印を無料スパ施設を進呈することで成し遂げたというわけだ。

 ダメになった旧神はその施設で長い時をまったり過ごし、そのうち出るつもりがなくなる。

 

 実に平和なシステムである。

 なお施設が壊された場合怒り狂った旧神がまろび出てくる恐れあり。

 

「そういえば降谷さんは?」

『半休取って黄衣が作ってくれた祠でまったりするって』

「さよけ」

 

 すでにダメになった化身が一人いるようだ。

 恐るべし社効果……!

 

 俺ももう2度ほど祠の屋根を叩き、諸伏さんにちょうどいい形になるようにさらに調整を加えた。

 諸伏さん用のリゾートだ。

 

 促すと、恐る恐ると言った様子で諸伏さんが再び入っていった。

 コナン君と星の精がドキドキした様子でそれを見守る。

 

 すると、困惑した諸伏さんの声が中から聞こえてきた。

 

『中、飲食店街しかないんだけど』

「なんでや。いやでもそれが諸伏さんの最も求める形なのは間違いないと思う」

『フードファイター俺。満漢全席食べ放題コース始めます』

 

 そう言って30分ひたすらもぐもぐむしゃむしゃ。

 

 出てきた諸伏さんは超満足状態。お肌ツヤツヤのプルプルとなっていた。

 無闇に太りそうなので使用回数は制限しよう。

 

 そのように思って、俺は祠の前に「営業終了」の看板をかけたのだった。

 





・ダゴンマフィン
人が食べると内側の内臓を全部大量の魚に変換して吐き出しながら壮絶に息絶える、見た目は普通のマフィン。
外なる神の味覚だととっても美味しい。
「我が夫、羽虫にこだわらなければ料理上手なんですよ!」

・諸伏さんの食べ放題コース
幽霊の三年間での耐え難い飢餓がトラウマ気味のようだ。
祠を通して地脈から地道に存在規模を吸い上げる動きになる模様。
営業終了には納得していない。

・祠
その存在に合わせて一番効果的な安らぎを提供する。
無料総合スパリゾート。
旧神をダメにするクッション的概念。
古代、旧神たちの間でブームになって取り合いになった。

・ダメになった黒い風
初めて私事で有給取ったかも。
中で寝こけながらここのところの疲れを癒している。
素晴らしいものを手に入れてしまった。
庁舎にも欲しいんだけど置いたら迷惑かな。
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