ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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不吉な縁結び〈神の証言〉

 

「あまりに許されない。厳罰に処すべき」

「僕も同意見だ。法改正が必要だろう」

「そこの荒御魂二柱、捜査の邪魔だからどいて」

 

 コナン君にすげなく扱われ、ブツブツ文句を言いながら撤退する俺たちである。

 荒御魂とは失敬な。こんなのどんな善神とて憤る最悪の所業だぞ。

 

 コナン君で言うなら、シャーロック・ホームズ博物館の中で殺人事件があるような物だ。

 いやこれ逆にアガりそうだな。

 ちょっと例えが悪かったか。

 

 どうやら被害者は気を失わせられた後で階段から突き落とされた可能性があるらしい、

 被害者は見当たり捜査班の刑事さん。

 発見した指名手配犯に殺されてしまったと考えられる。

 

 コナン君と服部君が現場を確認して眉間に皺を寄せた。

 

「捜査一課には連絡したけど…この人混みなら誰か目撃者もいるかもしれないね」

「せやな。それにええんか?ここ黄衣サンの神社やろ。人の法で処理されるんかいな」

 

 俺に視線が集中したため、頷いて解説する。

 勿論、流石の俺も独断で犯罪者を裁かせろとは言わないさ。

 それじゃ日本の中に独裁国家があるような物だし。

 

「一応、俺の神社の敷地内でも、人の司法で処理されるよ。ただし、俺も捜査に協力するって形でね。そう取り決めてある」

 

 流石に治外法権は認められないが、神の発言も無碍にはできない。

 怪異関連品を保管しているため、迅速かつ確実な事件解決をせねばならない。

 

 そのような塩梅で、俺の捜査協力が取り決められたわけである。

 

 とはいえ、神を証人とする行為には数々の法的難問が立ち塞がった。

 

 まず人間と俺とでは知覚範囲が大きく異なる。

 「目撃した」の一言だけでもその形態や記憶の確かさまで天と地ほども違うのだ。

 

 法廷での証人尋問をどうするというのも問題だ。

 神が虚偽を述べた場合どうなるのかも決まっていない。

 普通は偽証罪に問われるが、神を逮捕なんてできないし。

 

 というわけでひとまず、現在では暫定で神の発言は物的証拠として扱われることで決着がついたとのこと。

 神は嘘をつかないし、真実そのものであり、客観的だとする。

 おおむね神社全域を360度くまなく監視する監視カメラだと思えば良い。

 

 しかしいいんかなぁ、と思いつつ。

 現在の法制度は人間以外の知的生命体を考慮していないから仕方ないか。

 

 基本怪異対策法も怪異は「物・あるいは危険な野生動物」とする扱いだ。

 権利は人のもの。人間社会が怪異に権利を認めるにはまだ早い、ということか。

 

 捜査一課が到着する前に、俺も姿を変じて神としての形に変わる。

 

 周囲で遠くから見ている人の記憶をすげかえての変化だ。

 よっこいしょと現れるのは、太い触手が尾のように生えた人型である。

 意識を切り替えて、ちょっとばかし威厳が出るように振る舞いを変える。

 

 突如現れた黄衣の王に、皆が目を剥いてこちらを見る。

 

【神としての体裁は整えた。お前は人のまま振る舞うが良い、黒い風】

「良いのか?僕が対処しなくても」

【あまり警察官である降谷零と神の化身とを結びつけられても困るだろう。俺の証言ならば神の証言として説得力もある】

「……そうだな。すまない、頼んだ黄衣君」

 

 服部君が「なんや、常に気ィ抜けとる兄ちゃんかと思ってたけど、本気出すと神っぽいとこあるやないか」と感心したように頷いた。

 うるせーぞそこ!

 俺はいつだって神っぽいわい!

 

 そうこうしているうちに服部君が呼んだ警視庁捜査一課が到着したようだ。

 

 佐藤刑事と高木刑事、そして目暮警部が遠目に車から降りているのが見えた。

 重大事案らしく、次々到着するパトカーから大量の刑事さんが湧き出してくる。

 おお、殺人多発地帯東都にしては思ったより大所帯。

 

 先頭を走ってやってきた目暮警部が肩で息をして一息つく。

 そして眉間に皺を寄せてあたりを見回した。

 

「ん?なんだね、いつもの黄衣君はどうした」

「今日は僕たちだけだよ目暮警部。黄衣さんは別件で用事があって、僕たちだけで参拝に来たんだ」

「ふむ。なるほど。それで、そちらの方は……」

 

 普段の黄衣ハスタと「黄衣の王」では、姿形が異なるから目暮警部も分からなかったのだろう。

 触手はもしやコスプレか何かだと思われてるのか?

 

 身長も220cmとかあるし、死人レベルで青白いし、顔に仮面みたいな変な青い模様があるし…。

 アニメキャラコスとかだと思われても仕方ないか。

 いや、TVでこの姿が映ったことあるから名乗ればわかるかもしれない。

 

 俺は若干風がざわめくような声で自己紹介した。

 

【この神社の祭神たる旧支配者、黄衣の王だ。ヒトの命が失われたことを残念に思う】

「え、………え!?!?」

「警部!この人TVに映ってた神様ですよ!?僕も生中継で見ました!」

 

 ちょっとそれっぽく、演出も兼ねて腰回りより太い触手をいくつかうねらせて、僅かに宙へと浮かんでみせる。

 

 それで、遠目から見ている観光客も俺の存在に気づいたらしい。

 降臨時は記憶の挿げ替えで気づかなかったが、皆驚きと共に声を上げている。

 

 中にはスマホを向ける人もちらほら。

 まったく、俺はともかくコナン君達は撮影禁止だべ!

 黒塗りにさせてもらうからな!

 

 あっ、ライブ配信してる人もおるやんけ。

 こちらも時を遡り、全て動く人型に黒塗りしておく。

 ちょっとだけ怖がるが良い。

 

 目暮警部が目を白黒させているうちに、遅れて公安警察の方が到着したようだ。

 バラバラと駆けつける独特なお堅い空気に、居心地悪そうに高木刑事が肩を寄せる。

 

 場所が場所だからか、怪異対策課のメンバーも混じっているようだ。

 リーダーは風見さんらしい。

 

 俺の姿を見て一部の有識者の面々はかなり狼狽えたようだ。

 直立不動で敬礼するのに合わせ、他のメンバーも同じく敬礼した。

 その場に、一種異様な空気が漂う。

 

 風見さんが一歩前へ出て、目暮警部へと「今回は特例のため、我々も捜査に協力します」と宣言した。

 

 佐藤刑事はやや面白くなさそうな顔をしたが、事が特殊であるのは重々理解しているのだろう。

 特に文句を言うことは無いようだ。

 

 俺を含めた全員が「立ち話もなんですから、場所を借りますのでこちらへ…!」と丁寧に案内される。

 訳がわからないまま、目暮警部達はいつもの現場検証を任されたようだ。

 ポカンと俺たちの後を見送っていた。

 

 

 

 素早く怪異会館を借り切った公安の面々は、ひとまず俺にひれ伏した。

 

 俺がいつもの協力者姿でなく、神としての姿をしていることに危機感を覚えたのだろう。

 「神として言いたい事がある」という無言のメッセージと取ったのだ。

 

 まあそれも間違いではない。

 そう何度も敷地内で殺人が起こっても困るし、再発防止には努めてもらいたいしな。

 一緒に神主さん達もマッハでやってきて同じようにペコペコ。

 

 祭神はちょっぴりお怒りじゃけぇ、次からは気をつけてくれよな!

 

「この度はお手数をおかけして申し訳ございません…!この件については我々で素早く処理いたしますので、どうか、どうかご心配なさらぬよう……!」

【赦す。お前達の仕事は確かだ】

 

 現在、風見さんは降谷さんと今後の処理の相談で席を外している。

 

 俺はといえば、良い感じの椅子に座って茶を出されてまったりするのみだ。

 ずらりと公安の人たちと神主さんとに頭を下げられて落ち着かないが、たぶんこれが公的な事情聴取という形で扱われるのだろう。

 

 録画・録音機材が設置されて、自由に発言しても良い感じの空気が整えられる。

 

 俺はカメラの前でゆったりと口を開いた。

 

【俺の目の届かぬ場所はない。眼鏡にニット帽の女が、氷の張ったバケツで殴り階段から落として殺害した】

「ッ!!」

【名前は「社本鶴美」。我が神域内で人類種の命を奪ったものである】

 

 人差し指を小さく振って、机の上に映像を出す。

 ハスターの瞳から抜き出した当時の映像だ。

 これはカメラにも鮮明に映る事だろう。

 

 柱にワイヤーで繋がれた女が縄抜けし、被害者と鉢合わせして殺害する一部始終が再生される。

 皆息を呑んで、それを確認したようだった。

 

 俺はしっかりと彼らに念押しした。

 

【人の法にて正しく罰されることを望む】

「……はい。必ずや」

 

 再びざっと皆一斉に頭を下げた。

 

 なんかみんな硬すぎなんだけど、まあ仕方ないか。

 人間と旧支配者なんて、ミドリムシと太陽ぐらい規模感違うしな。

 怖いのも仕方あるまいよ。

 

 俺はしゅるりと顕現を解いて光と共に空間転移。

 適当な別の場所で「黄衣ハスタ」の身体を結び直したのであった。

 





・神二柱
行きつけの銭湯で殺人事件あったみたいな不愉快さ。
ハスターはそこまででもないが、降谷さんはかなり気分を害している。
でも人寄りの神なので「ちゃんと罰してよね!!」と憤るだけで特に何もしない。
穏やか。
これが並の旧神なら悍ましい呪詛をかけてた。

・法における神の扱い
一応「物」とされて人権などは存在しない。
怪異関連法案に付随して「神を守る法を作るべき。神のためでなく人のために」という意見も出てきているようだ。
トラブル回避のためにあっても良いと議論が進められている。

・公安の面々
最近段ボール神棚に詰まったり謎の神棚に詰まったりしている降谷さんを見て「やっぱ神様ってああ言うの好きなんだな」と納得感を抱いている模様。
興味本位でメンバーの一人が生米と酒と乾燥昆布をデスクの神棚に供えたら「美味かった!」とニコニコ顔で言ってもらえたとか。
他ある一人は神社開催餅投げで拾った餅を備えたら、「いや…他神の食いかけはちょっと…」と断られたとか。
でも神様は怖いってこともよく知ってる。親しいけど、悍ましい。畏れ敬い、距離を置くもの。
特に、神が我らに親身になっているときは、慎重に振る舞わねばならない。
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