ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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リャマ回収

 

 事件は俺の証言に加えてコナン君達の推理もあり、いつも通りスピード解決した。

 

 あとは警察による取り調べと送検、そして法廷での裁きを受けることになる。

 しかしやはり世間の注目度は極めて高いようで、俺たちがマンションへ帰った頃にはトップニュースへと成り果てていた。

 

 犯人は実はスリと万引きの常習犯で、巡回中の刑事に捕まりそうになったがために殺して逃げようとしたらしい。

 かなり凶悪な犯行だが、まぁ凶悪犯溢れる東都ではそこまで目立つ存在ではない。

 

 注目度が高いのは、現場が俺の神社だという一点のみ。

 TVはまだ抑え気味だがネットは特に紛糾し、「神に対する冒涜だ」「神の信頼を損ねないためにも急ぎ極刑にするべき」と過激な意見が噴出しているようなのだ。

 これは過激派の一部の発言だが、日本の怪異対策が俺の親切で回っていることは事実。

 

 昨日も政界の偉い人が揃い踏みで神社を参拝し、被害者を悼むとともに国民へのアピールと俺への謝罪をしていた。

 

 降谷さんもこれには「いっそのこと僕たちの方で手を下して、人との距離を適切に取るきっかけにしたほうが良かったか…?」と眉を顰めている。

 別に宗教国家を作りたいわけではないからな。

 あまりに「理解ある神様」をすると人間社会とズブズブになってしまうということを初期段階で知られて良かったと思うべきか。

 

 塩梅が難しいことこの上ない。

 

 

 

 

 さて、今日は長く公安に貸し出していた化身エメラルド・ラマ──小翠リャマの引き取り作業の日だ。

 

 諸伏さんの運転する車で東都内のアパートに向かっている。

 平日昼なのでコナン君達は学校だ。

 急な来客対応をマモーさんに任せ、俺たちのみで出てきた次第である。

 

 俺は後部座席に座りながら、降谷さんに問いかけた。

 

「結局小翠は公安の方で運用できたのか?」

「ああ。何件か便利に使わせてもらったよ。本来の用途とは違うが、触れると危険な怪異の運搬もしてもらったか」

『その件俺も知ってる。前任が厳重に箱に入れて運搬しただけで道中で救急搬送されたやつ』

「やはりジンが拒否する案件は厄ネタばかりだ。いっそあいつに案件危険度判定をしてもらうか」

 

 どうやら銀髪マフィアことジンも便利にこき使われているらしい。

 ジンの苦労に黙祷しつつ、俺はうむうむと頷いた。

 小翠リャマが活用されていて嬉しい限りだ。

 

 今回小翠リャマを回収することになったのは、俺の認知度向上が原因だ。

 

 俺がなんでもしていい人形としてエメラルド・ラマを人間に貸し出しておくのも、体面上問題が出てくるようになったからな。

 回収し、ついでに全国各地にある青仏を扱う仏閣への加護強化のための制御機構に作り替える予定である。

 

 アパートに到着して、なんの変哲もない2階の一室のチャイムを押す。

 するとすぐに管理係の女性公安さんが出てきて、直角にお辞儀をした。

 

 彼女の案内に従って部屋へと入る。

 狭いが清潔な部屋に、小翠リャマは安置されていた。

 

 小翠リャマは椅子に座り、目を閉じて微動だにしない。

 その姿だけでも、作り物めいてすらいる香り立つような清楚な美しさが滲んでいる。

 

 諸伏さんが「ゼロ、アピールしないのか」とニヤついて肘でつついた。

 降谷さんが恥ずかしそうに咳払いする。

 

「アレは本当に正気じゃなかった。世間体が消え失せてたんだ。流石にいつもあんな言動だったらコンプラ違反で処分される」

『でも学生時代のゼロはいつもあんな感じだったぞ?社会人になって大人しくなったけど』

「つまり降谷さんの世間体は社会人になってようやく実装された……?」

 

 俺の発言に、図星を突かれた降谷さんが恨めしげに睨みつけてくる。

 伝説の地雷男の青春時代は貫禄が違うということらしい。

 しかも本心でないとは言ってないから、つまり世間体で隠しているだけということで。

 

 恐ろしいことだ。

 

 俺が身震いしたら、恨めしげな降谷さんに「覚えていろよ君…」と歯軋りされた。

 恨むならネタを暴露した諸伏さんだろうがそこは!

 

 降谷さんがなんとも言えない顔で視線を逸らす。

 

「……それに、なんだか今彼女を見ても…血のつながった姉や妹を見ている気がしてな……」

「同じ俺の化身だしな。でもその話すると俺が父ちゃんになっちゃうからやめような」

『ひいおじいちゃん…』

「やめて!俺はまだまだ現役よ!」

 

 ふざけ合いながらととと、と近寄って手早く回収する。

 ニュルンとエメラルド・ラマを回収し終えれば、後ろに控える女性公安さんが僅かに息を呑んだのが見えた。

 

 これまでいろいろお世話してくれていたのだろう。

 身体を清潔に保ったり、服を着替えて身体機能を保ったりするのは魔術が組まれているが。

 手を引いて場所移動したり、話しかけられた場合代わりに対応するのは彼女の役割だったはずだ。

 大変ありがたい限りである。

 

 この後、エメラルド・ラマは仏閣用システムとして再利用される。

 

 こちらは降谷さんと相談して決めるので、実運用はしばらく先だ。

 表沙汰にしない、かつ日本でのみ運用することを前提に組む予定である。

 

 降谷さんが俺の手を覗き込んで興味深そうにまじまじと見つめた。

 

「それ、前に化身交換時に僕もやられたが、一体どこに吸収してるんだ?」

「俺本来の体の中だよ。権能システム群だけにして消化吸収してる感じ。降谷さんは丸ごと取り込んだから特殊な事例だな」

「なるほど、君はその気になれば僕を一瞬で分解できるわけだ」

 

 クスクスと笑って揶揄ってくるので、俺は憤慨した。

 

「いやそれ言ったら人間だっていつでも人を殺せるじゃんかよぉ!俺を凶悪生物みたいにいうのはやめなさい!」

『今のはゼロが悪い』

「悪かった悪かった」

 

 まだ愉快そうな様子の降谷さんを伴って車に戻る。

 今回の仕事はこれで終わりだ。

 公安さんにお礼を言って解散し、俺たちも帰るのみ。

 このアパートも既に解約手続き済みで、すぐに撤収する手筈になっているらしい。

 

 帰りは降谷さんが運転するようだ。

 降谷さんの運転は機嫌がいいと独特な頭文字Dと化すからちょっと身構えるが。

 

 流石に探偵事務所の車でドリフトはせんやろと思って恐る恐る車に乗り込む。

 

 降谷さんが上機嫌でハンドルを握っている。

 よく理解している諸伏さんは、いつ急発進してもいいように上部のアシストグリップを握ったようだ。

 

 思ったより緩やかに車は走り出し、公道に出る。

 

「前に君に取り込まれたのは一瞬だったが、意外に心地よかったよ。温かいこたつの中みたいな」

『へえ、黄衣クソデカ触手こたつ概念。ねちゃついてそう。喰われそう』

「喰われてはいるな」

「そこ、俺の悪口はそこまでにするんだ!あと俺の中は別にねちゃついてない!俺は星の精と一緒で清潔な触手なんだ!」

 

 俺が抗議の声を上げると、二人は納得したようだ。

 「なるほど星の精なら綺麗そう」「しっとり保湿された赤ちゃんの肌のようなすべすべの触手」と口々にコメントが寄せられた。

 

 星の精の触手、まだ幼児だからもっちりしてて触り心地がいいんだよな。

 触手を握ると握手だと思って優しく握り返して嬉しそうにしてくれるし。

 抱きしめると弾力あるプニプニの触手の感触がして満足感がある。

 

 降谷さんが運転する車が穏やかに国道に出る。

 まだ日は高い。

 日差しがサイドウィンドウから差し込んで、くっきりとした陰影を作る。

 

「───君には感謝してるんだ、黄衣君。君のおかげで、僕は失ったはずの大切なものたちと、この国を護ることができる」

 

 囁くような声は、車内の振動に紛れて消えそうな小ささだった。

 でもそこにこもった想いは溢れんばかりで、俺はハッと息を呑んだ。

 

『いや松田は自分で瓶詰めにしただろ』

「忘れてくれ本当に。ニャルラトホテプに接続してると自分の悪い側面ばかり増幅するんだ」

『そう言って、自分の悪行を全部ニャルさんのせいにしてるとこあるよな』

「ヒロ、それ以上いけない」

 

 本当のことを言ってしまって、諸伏さんは恨まれたらしい。

 機嫌を損ねた黒い風はむっつりと黙り込んで膨れてしまった。

 

 

 しかし空気は穏やかで、午睡の窓の如くに優しさに満ちていたのだった。

 





・抱きしめ星の精
抱きしめられるとゲタゲタと喜ぶ。
学校のみんなもそうやって大きいのに抱っこしてもらってる!
つまり星の精も大切にされてる!嬉しい!!
嬉しいので友達にもお裾分け。
コナン君に頻繁に抱きしめるつもりで巻きついている。
コナン君は当然全身絡め取られて動けなくなる。

・昔の降谷さん
残念ながら若い時は暴れていた。
警察学校で同僚と殴り合う奴がまともなわけない理論。
今では警察学校組から常識力を得て普通の好青年として振る舞えるようになった。
のに、ニャル化で逆戻り。
……と降谷さんは言い張って無実を主張している。
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