ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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風の女神

 

 今日は神奈川のフレンチレストランにやってきている。

 

 ドラマで見て気にはなっていたが、この間TVで紹介されて本格的に行きたくなったのだ。

 比較的リーズナブルながら、本場で修行したシェフが手間暇かけて作る品々はどれも凝っていて非常に美しい。

 つまり行きたい!めっちゃ行きたいというやつだ。

 

 ディナーは予約が二年待ちの凄まじい人気店で、普通に順番が回ってくるのは遥か先になりそうだ。

 流石にそこまでの気力はないため、TVを見ながら「いいなー!」と盛り上がる俺であったが。

 

 その姿を見て、マモーさんがさっと予約を取ってくれたのだ。

 

 流石にすぐ取れたのはランチのみだったが、それでも十分すぎる。

 わあっと喜びに舞う俺に、マモーさんはめちゃくちゃニコニコした。

 

 なお、星の精は嫉妬全開の様子で俺の隣に張り付いて「ゲタ…ゲタ……」と恨み節を漏らしている。

 

 また…星の精の食べれない美味しいものの話してる…。

 なんで星の精はもう大きいのに食べれないの…。

 

 自認はとっくに大きい星の精らしい。

 この間も服部君と大阪のお好み焼き屋に行って、食べられなくて大号泣したからな。

 可哀想だし何か人と同じものを食べられるような魔術をかけてやりたい気もする。

 

 でも、小さいうちからそれだと自分を誤解して、魔術がかかってない時も変なものを食べるようになってもいけないし。

 難しい塩梅である。

 

 

 まあともかく、誇らしげなマモーさんとともに俺たちは本日レストランのある神奈川までやってきたわけである。

 

 店内はドラマに出るだけありおしゃれで、インテリア一つとっても高級そうだ。

 今回ついて来たのは諸伏さんだけ。

 本当は諸伏さんも降谷さんと共に仕事だったのだが、これに納得できない諸伏さんはいきりたった。

 「高級フレンチ俺も行く!!!」と星の精並みに喚いて有給を取った、というわけである。

 

 これには降谷さんに完全にジト目で睨まれていた。

 

「祠の中で思う存分飲み食いできるだろうに。何が不満なんだ?あとヒロがいないと純粋に困る」

『俺にも有給を取る権利はある!高級店の絶品はいつだって別腹なんだよ!ほら、星の精も同意してくれてる!」

【ゲタゲタ!!!】

 

 星の精を味方につけて、諸伏さんは勢い付いたようだ。

 「美味いもんの抜け駆けを許すな!」「ゲタ!!」と徒党を組んでシュプレヒコールし始めた。

 おかしな活動家グループが出来上がってしまったようだ。

 

 というわけで、俺、コナン君、マモーさん、諸伏さんのメンツでレストランに来たわけだ。

 

 優しい星の精は「仲間のヒゲだけでも美味いもんを食べれるようになった。星の精は満足」と涙を飲んでコナン君のポッケの中で丸くなっている。

 可哀想に、とっても優しい星の精だ。

 

 今日の血液製ご飯は擬似フルコースな豪華なやつにしよう。

 

 運ばれてくる料理にまったりと舌鼓を打つ。

 マモーさんはこの程度食べ慣れているのか、大した驚きは無いようだ。

 俺とコナン君が「美味しいね!」と頷きあって堪能しているのを見るばかり。

 にしては幸せそうだなマモーさん。推しに貢ぐ概念かな。有難いけど無理しないでね。

 

 

 

 さて、あらかた食べ終わり、紅茶と共にデザートを楽しんでいるあたりで事件は起きた。

 

 黒服がバタバタと走り回り、叫んでいる。

 「南條社長が攫われたぞ!!」「探せ!!」「警察に連絡!奥方にもだ!」とのこと。

 なんだかとても騒がしい。

 

 コナン君も諸伏さんも俺に視線を向けている。

 俺は軽く頷いて「ハスターの瞳」で攫われた人の行方を捜索した。

 お、ヒット。

 

「んー、南條社長とやらは足を撃たれてトランクに詰められてどこかに連れ去られてるね」

『ッ!なるほど、この間ネットニュースで燃えてた南條欽治か!なら犯人はまだ犯行を重ねるつもりだろう』

「どゆこと?」

 

 二人が完全に理解した顔をしている。

 俺が首を傾げると、コナン君が補足説明してくれた。

 

 なんでも、南條社長はセキュリティ会社の社長らしい。

 その金庫は強固なセキュリティが売りで、あるニュースにて社長が残した発言が話題になったとのこと。

 なんでも、「私を盗まない限り開けられない!」と豪語したようだ。

 

 そこで本当に社長を盗むのがこの世界の犯罪者クオリティなんだよなぁ。

 普通そうはならんのじゃよ。

 

 マモーさんが上品に口元を拭いて話し出す。

 

「如何いたしましょう。早めに会計を済ませて、現場へ向かいますか?」

「んー、そうするには俺たちは縁もゆかりもなさすぎるんだよな。とりあえず諸伏さんにバッドラックの呪いでもかけてもらって、念の為確認にだけ行くか」

『ん?俺?』

 

 諸伏さんがきょとんとして首を傾げた。

 俺が直接手を下すと角が立つし、バッドラックの呪いなら危害は加えないからちょうどいいだろう。

 むむむと腕を組んで諸伏さんが難しい顔をした。

 

『でも俺、見えてる相手しか呪いはかけたことないぞ?』

「でも話を聞いて犯人を不愉快に思っただろ?なら間違いなく行けるよ」

『そういうもん?なら試しに……呪呪呪〜』

 

 グルンと表情が切り替わり、膨れ上がった頭部が歪な笑顔を浮かべる。

 

 凄まじい怨念だ。

 視界に入れるだけで呪われそうな感じがして、反射で認識阻害の結界を張り巡らせる。

 自分で頼んどいてなんだけど、とても平和なレストラン内でお披露目していい絵面じゃなかったんよ。

 

 呪いが完成するのは一瞬だった。

 すんっと諸伏さんの頭部が元に戻り、「良さげにできた!」と、パッと顔を明るくした。

 

 よし。あとは南條社長に保護魔術をかければそれでよかろう。

 マモーさんが悩ましげに眉を顰めてじとっと諸伏さんを見た。

 

「流石にこの規模の怨霊は…人間社会の害となると思うのですが」

『俺は良識あるお化けだから大丈夫。そんな軽率に呪呪呪ってしないし。だから命ばかりはお助けを』

「この悪霊命乞いし始めたぞ。うーん、いや、諸伏さんだしセーフで」

「……………神の御心のままに」

「マモーさん元気出して。黄衣さんの適当さは今に始まったことじゃないから」

 

 ひでぇ言われようである。

 とりあえずダブルピースカニさんチョキチョキしてる悪霊には「そろそろダイエットする?」と声をかける。

 厳しいトレーニングで恨みを抜いて規模縮小すれば危険ではなくなるだろう。

 俺も責任持ってトレーニング場所とメニューは用意しよう。

 

 諸伏さんは「お助け、お助けをー!」と悲鳴をあげて頭を隠した。

 

 そんな間にも、コナン君のポッケからは無音でそーっと星の精が触手を伸ばしている。

 あとちょっと…あとちょっとでこのビスケットは星の精のもの……。

 コナン君が目を三角にして触手を掴んだ

 

「めっ。星の精は食べられません」

【グス…ゲタゲタ……】

「またお腹痛くなるよ?痛い痛いってなるよ?」

【……………グスッ】

 

 星の精は納得しないまま触手を引っ込めてモゴモゴと文句を言った。

 もう星の精は大きいから食べれるもん…きっとそうだもん……。

 ネバーギブアップ星の精。

 この間も給食を盗み食いした星の精に死角はない。

 

 とりあえずそんなふうに雑談しつつ、俺たちは食事を終えてから現場に向かうのだった。

 





・諸伏さんの呪呪呪
ホーミング式。認識された段階で遠隔で呪詛を飛ばされる。
一応名前や顔を知らなければ威力は減衰する。
「居場所」「名前」「顔」「声」等の要素を満たすごとに威力は跳ね上がっていく。
今回は存在の認識だけなので、巡り合わせがひたすら悪くなるだけ。
偶然警察に鉢合わせして偶然車止められて偶然トランク開けられて逮捕されるぐらい。
生存が難しくなるほどの不運ではない。

・ネバーギブアップ星の精
三日に一回ぐらい「星の精は大きくなった!」って言ってチャレンジしようとする。
実際消化器官が発達するのはあと80年ぐらいかかるかも。
大人になるのは300年ぐらい後。
まだ精神が小学校高学年ぐらいの時にコナン君とは死別する。
そういう意味で、「江戸川コナン」を渡されても人間と同じ速度で成長はできない定め。

友達は髪が白くなって、背が曲がって、ベットから出てこなくなって、土の中に入れられても。
星の精はまだ小さいまま。
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