ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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県境の遺体〈呪いと懐古〉

 

 家出した浪人生を見つける依頼で群馬県に来ているなり。

 

 マモーさんを除いたフルメンバーだ。

 既に俺がハスターの瞳で居場所を把握しているので、漫画喫茶で夜を明かす浪人生君をみんなで連れ戻すだけ。

 仕事はスムーズに終えることができた。

 

 星のオウムは浪人生君から豆菓子を貰って、コナン君の頭の上で誇らしげにゲタゲタ言っている。

 がんばれ!がんばれ!って応援してくれたお礼らしい。

 

 一応足には紐がついていて、コナン君の腕と繋がっているように見せかけてある。

 この間、星の精がオウム姿でおしゃべりしながら散歩時にオウム攫いに連れ去られてしまったからな。

 一応攫えなさそうな感じを演出するためにつけている。

 

 米花町は本当にな、もうな。

 

 可愛い星のオウムは、知らん大きいのに鷲掴みにされてメチャクチャに泣いていた。

 星の精はこのまま攫われて触手を一本ずつ毟られて、毎日痛くて苦しい思いをするんだ…とずっとえぐえぐしていた。

 ニャルが本当にすまんかった……。

 

 ともかく、俺たちは仕事をちゃっちゃと終わらせた。

 そしてせっかく群馬に来たのだからと群馬県警の山村警部と待ち合わせ中だ。

 

 彼は諸伏さんの幼馴染で地元の人。

 夜ご飯を食べるのにいい店も知っているかもしれないということで頼った形である。

 

 しかし待ち合わせ時間になっても山村警部は現れない。

 ふむ、と皆が思っていたころに電話がかかってきた。

 

 諸伏さんのスマホにかけてきたのは山村警部その人だ。

 電話に出て早々、諸伏さんが目を見開いたようだった。

 

『殺し!?そうか、了解。俺たちもすぐ向かうよ!』

 

 どうやら急な事件で山村警部は来られなくなったみたいだ。

 警察官はどこも大変そうで困る。

 死ぬほど事件が起こる上に殉職率も高い。

 悲しい社会であることよ…。

 

 そんなわけで俺たちも現場に急行。

 長野と群馬の県境へと足を運ぶこととなった。

 

 

 

 出迎えてくれたのは諸伏兄と山村警部であった。

 

『兄さん!』

「景光、お前もきていたのか。健勝そうでなによりだよ」

「今日は長野で僕とディナーの予定だったんですよー!なのにこんな事件が起きちゃったり。僕も仕事なので頑張りますけど」

「良ければこの後私が近場の美味しい信州そばの店にご案内しましょうか?」

「だめですよ!僕がひもかわうどんの店に連れてくって約束なんですから!あと上州そばの方が美味しいと思います!」

 

 警察官たちは再会にまったりした空気を出しているが、残念ながらここは現場。

 県境にまたがるように男が壮絶な死を遂げたままになっている。

 ナムナム、と俺は死者に手を合わせた。

 

 大和警部と由衣さんは死体の見分中らしい。

 話を聞いていたのか、大和警部が「どう考えても信州そばのが美味ぇだろ…」などとぶつぶつ言っているのが聞こえる。

 そのあたりは譲れない一線のようだ。

 

 ご当地の誇りというやつだろうか。

 

 

 さて、被害者は動画配信者だったらしい。

 県境で信州そばと上州そばの食べ比べをやる企画で、配信者仲間と一緒に集まっていたとのこと。

 

 監視カメラには犯人の顔は映っていなかった。

 しかし、その映像から被害者がなんらかのダイイングメッセージを残しているのは明らかだ。

 県境を利用した謎の暗号、というやつか。

 

 県境の状態を確認し、山村警部がふうむと口元を綻ばせた。

 

「しかし懐かしいなぁ、ヒロちゃんとは県境の秘密基地で仮面ヤイバーカードの交換したりして」

『はは、ミッちゃんいつも引きが良かったからなぁ。俺は目当てのカードを全然引けなくて』

「ふふん。実はヒロちゃんが引っ越した直後に僕が引いちゃってました。例のウルトラレア。交換しようと思ってたのに、全然ヒロちゃん来なくて途方に暮れたよもう」

『………そっか、悪かったよ』

 

 別れも告げずに急に引越しが決まったのは、恐らくは彼の両親が殺害された事件のせいだろう。

 その後ずっと、二人は東京と群馬、別れ別れに過ごしていた

 同じ、警察官になる夢を抱きながら。

 

 いつのまにかまたとんでもなく卑屈な顔をした降谷さんが、星のオウムに慰められているのが見える。

 

「僕が…僕があんなヘマをしなければヒロは……」

「かなしい?ほしのせーがヨシヨシする?」

「今の君の爪は鋭いんだから気をつけてくれ。気をつ、頭、頭に爪刺さってる!」

「ヨシヨシ!あなたは悲しいの無くなる!元気はとても良い!」

 

 星のオウムは翼をわしゃわしゃと降谷さんの髪に擦り付けて胸を張った。

 逞しい爪で頭をわしっと掴まれ、降谷さんは悲鳴をあげたようだ。

 

 コナン君も降谷さんも物理無効だから問題ないのだが。

 少年探偵団の子達に爪をブッ刺す前に危険性を教えてやらないといけないな。

 

 一応星の精にもまだ未発達で丸こい鉤爪が生えてるし。

 爪の扱いに慣れていて損はない。

 

 星のオウムのペースに乗せられて、降谷さんもクヨクヨから脱出できたようだ。

 諸伏兄がフッと笑って背を向ける。

 

 万事お見通しみたいなその様子に、降谷さんは赤面して視線を逸らした。

 

 諸伏さん達はそんな俺たちに気付かず、ぼんやりと山村警部と雑談している。

 

『昔から、俺は運が悪かったな。それも実力の内だと思って努力してきたけど』

「ヒロちゃんは本当に努力家だもんなぁ。僕いつも尊敬してたんだよ?テストでもいつも百点だし」

『ありがとう、ミッちゃん。ミッちゃんも凄いよ、こうして警部になって、部下を率いて事件を捜査してる。それに比べて俺は………』

 

 チリ、と肌が痛むような妙な感触がする。

 閾値を超えた呪詛が漏れ出て、大気を汚染しているのだ。

 体からわずかに立ち上る黒き呪いの影に、大和警部と由衣さんが反射的に重心を低く下げた。

 

 こりゃあかん。

 俺は慌てて星のオウムを鷲掴みにして諸伏さんに声をかけた。

 

「諸伏さーん、これ星の精!!!」

『そうだな????』

「ギャッッッ!!ひとさらい!ひとさらい!!!」

 

 オウム攫いがトラウマになってるらしい星のオウムを前に掲げて、俺はライオンキングの姿勢を取った。

 諸伏さんは立派な宇宙猫へと変貌し、大怨霊への進化はキャンセルされた。

 

 そしてそっとオウムを諸伏さんの頭に乗せる。

 オウムは素早く諸伏さんの服の中に入り込んで震え始めた。

 

『待って待って服の中に入らないで!?』

「へー、探偵事務所で飼ってるペット?可愛いなぁ。手乗りだったりする?」

『そうだよミッちゃん手乗りではある待ってどこ入ってんの星の精待ってパンツの中は良くない!!!』

「ほしのせーは隠れる。モゴモゴ。ヒゲは大きい。ほしのせーが隠れれば見つからない」

『見つかるんだよなぁ!!』

 

 結局ズボンを足場にする形で納得したらしい。

 妊婦さんスタイルの諸伏さんが「娘だったかもしれん…」と大事そうに星の精を抱えるので、場は穏やかな笑いに包まれたのであった。

 

 こっそり近寄ってきた大和警部が俺に耳打ちする。

 

「……高明の弟の、大丈夫なんだろうな?」

「大丈夫だよ。彼は人間だ。驚くほどに」

「ならいいがな。もし何かあったら、高明が変な行動に出る前になんとかしろよ」

「了解」

 

 いつのまにか、呪詛は再び収まっていた。

 彼の類まれなる人間性がどこまで持つかは定かではない。

 だが、呪詛が溜まるならそれ以上の早さで幸せを積み重ねていけばいい。

 

 少なくとも、この人たちが生きている間は、それを実現することぐらい容易いだろう。

 





・オウム泥棒
喋るオウムをかっぱらって動画でバズろうとした不届きもの。
攫ったオウムに「ひとさらい!げたげたげたぁ!!」と怒られてめっちゃびっくりして離したところをコナン君の殺人シュートで仕留められた。
ライオンキングの件は後で黄衣に謝ってもらったから許した。
星の精はやさしい。ゆるす。おまえは星の精に美味しいもの用意しろ。

・諸伏さんの想い
基本は無意識な「なんで俺ばっかり不幸なんだ」という恨み。
それは誰のせいでもない、俺が不運だからだ。
努力しても報われない。純粋な巡り合わせの問題。
不公平だ。妬ましい憎らしい。
みんな俺のようになればいい。
………という呪詛を、人間性で否定して制御しているのが諸伏さん。
だから降谷さんが人間性を失っても指摘しなかった。
無意識にこう思ったからだ。
「ああ、お前も俺と一緒になった」と。

・諸伏高明
弟の悪霊たる所以に気付いている。
気付いた上で災害へと成り果てなら他ならぬ兄である自分が討ち果たそうと思っている。
唯一の肉親だから、自分が救わなければならないのだ。

・山村警部
上記何も気付いてない。
ヒロちゃんちょっと落ち込み気味みたいだし、ちょっと僕が張り切ってカッコいいところ見せちゃいますか!
仕事終わったらみんなでひもかわうどん食べて!秘密基地にもついでに寄って!
楽しみだなぁ!
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