ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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病院へお見舞い

 

 本日は病院にコナン君のお見舞いをしに行くなり。

 

 メンバーは俺、諸伏さん、安室さんの三人だ。

 これはコナン君への安室さんの紹介も兼ねている。

 

 米花中央病院へ行き、受付で手続きをしてからコナン君の病室へ。

 コナン君の部屋は個室で、6Fの南側にある。

 

 病室には先客がいるらしく、曇りガラスのスリットの向こう側に動く影を確認できた。

 横開きのドアを開き、俺たちも中へ入る。

 

 中は明るく、カーテンが開けられて外から日の光が差し込む気持ちのいい空間であった。

 部屋の中央には大きなベッド。

 その上で、コナン君は阿笠博士からのプレゼントらしいゲームに集中している。

 

 横に設えられたテーブルには、子供達が帰ったあとと思しき飲み干した後のジュースの紙コップが残っていた。

 数は6つ。

 どうやら少年探偵団と阿笠博士に加えて、宮野姉妹も一緒にお見舞いに来ていたようだ。

 

 そして、そのコップ類を片付けている、女子高生が二人。

 

 振り返った片方は見覚えがある。

 新一君の麗しの彼女、蘭ちゃんである。

 蘭ちゃんはふわりと笑顔になって、愛想良くこちらへと駆け寄って来た。

 

「あ、黄衣さんたちも来たんですね!」

「んー、蘭、知り合……まっ、いい男!」

 

 もう一人の発言に、「もう園子ったら!」と蘭ちゃんが恥ずかしそうにしている。

 カチューシャのおかっぱで、各種能力値は比較的高めにまとまっている。

 蘭ちゃんと同じ制服を着ているから、同級生とかだろうか。

 

「久しぶりだね、蘭ちゃん。そっちの子は学校の友達かな?」

「ええ。園子は私の友達で、前にコナン君達と米花ショッピングモールで会った時、一緒に事件に巻き込まれて。それで、今回二人でお見舞いに来たんです」

「そっか、わざわざありがとうね、二人とも」

 

 そうお礼をすれば、「コナン君も怪我をして心細いと思ったので」と優しくはにかむ蘭ちゃんは良い子の一言。

 対して園子ちゃんは目をキラキラさせて俺の後から入室して来た連れ二人に釘付けのようだった。

 

 諸伏さんも降谷さんも、困ったように笑っているあたりその手の注目を浴びるのは慣れっこなのだろう。

 

 別にこの顔に造形して後悔は無いが、そこはかとないジェラシーを感じる今日この頃。

 いいんだ別に。APP(容姿)が高いと苦労するし。

 いいんだいいんだ…。

 

 園子ちゃんは姿勢を正して、改めて自己紹介してくれた。

 

「私は蘭の友達の鈴木園子。初めまして黄衣さん。たしか、新一くんと同じ探偵をやってるとか」

「そうだよ。俺は黄衣ハスタ。こっちが従業員の日色さんに、安室さん」

 

 諸伏さんは「どうも、お嬢さん達」と手を振った。

 降谷さんの方は優しげに「初めまして、よろしくね」と人好きのする笑顔を作った。

 

 ふむ。

 降谷さんはあまり人間好きには見えなかったが……いや、そうか。

 鈴木財閥のご令嬢だったはず。

 とすると、近付いておいた方が今後のためにも得策だと判断したのかもしれない。

 

 しかしながら相手も強者。

 

 園子ちゃんは何故か先程までときめいていた視線をストンと落ち着かせ、「こちらこそ」と平坦かつ無難な微笑みでそれを切って捨てた。

 流石にその反応は降谷さんとしても予想外だったらしい。

 ほう、と感心するように降谷さんが目を細めた。

 

 今、もしかしてスパイ映画とか始まってる?

 

 諸伏さんが俺にヒソヒソと「凄いなあの子。さすが財閥令嬢」と俺に話しかけてくる。

 たぶん園子ちゃんは降谷さんが笑顔の裏に隠した思惑を瞬時に読み取って、警戒モードに入ったのだろう。

 それにしても魔術もなしに他人の心を読むとか、一体何をどうやったらそんなことができるのか。

 

 三億年も人間の陰謀に揉まれておいて、いまだに嘘発見魔術使わないと悪意も見破れない俺の立つ瀬がない。

 

 そこで、やっとゲームが一息ついたらしく。

 コナン君が顔を上げてはじめて、俺たちの中に見慣れない人間が増えていることに気がついたようだ。

 

 「黄衣さん、誰、その人?」とあどけない声で俺に問いかけて来た。

 すっかり子供のふりも様になったようで、その姿はただの小学一年生にしか見えない。

 

 降谷さんがゆっくりと歩み寄り、読み辛い笑みを浮かべた。

 

「僕は安室透。ついこの間この探偵事務所に新しく入ったんだ。よろしくね」

「……そっか。僕は江戸川コナン。よろしく、安室さん!」

 

 子供のふりの中に隠して、コナン君は全力で警戒することに決めたようだ。

 何だか様子のおかしい園子ちゃんをチラリと確認していたあたり、彼女が気を尖らせるに相応しい何かがあると踏んだらしい。

 

 安室さんが笑顔のままに目を細めて、値踏みする視線を向ける。

 コナン君がそれを挑戦的に見上げて、口角を上げ───。

 

 と、その時。

 

「無事か工藤!!!これ、おすすめの豚まんや!置いとくで!!!」

 

 ガラッと扉を開けてダイナミックエントリーしたのは西の高校生探偵、服部平次君である。

 しかも工藤とか言ってるし。

 この間のホームズフリークの一件まで「坊主」って呼んでたのに、一体いつの間にコナン君の正体に辿り着いたんだ?

 いや、あの事件の帰り道に何か二人でコソコソしていたな…。

 

 まあ色々考えてみても、服部君の馬鹿でかい「工藤!」呼びは消えない。

 蘭ちゃんも「ん?工藤って今…」とか言うものだから、コナン君は悲鳴のような叫び声をあげた。

 

「わぁぁああ服部!!!」

「ん?あああちゃうちゃうご苦労や!ご苦労言うたんや!な?」

「そうだね平次にーちゃん!!」

 

 ブンブンとコナン君と服部君が二人して頷いている。

 

 一部始終を見ていた降谷さんが、「僕は何を見せられているんだ…?」と虚無顔を晒した。

 ポン、と諸伏さんが降谷さんの肩を叩く。

 

『悪いなゼロ。俺たちはこういうユルユルの空気感のパーティなんだ』

「……まあ、うん。そうだよな。世界を滅ぼす化け物が身内にいるんなら、組織如きを警戒する道理なんてないもんな…」

『そんな黄昏るなよ』

 

 お空キレイみたいな顔で遠くを見る降谷さんを置いて、蘭ちゃん達が「私たち、飲み物買ってくるね!」と病室を出ていく。

 その後ろを「あ、俺も和葉置いて来てもうたわ。ほな!」と言って服部君も嵐のように病室を去る。

 

 その扉が閉まったのを確認してから、ぐるりと険しい顔に変わったコナン君が口を開く。

 

「で、安室さんって本当は何なの?」

「なんのことかな?」

 

 圧の強い笑みで降谷さんが誤魔化している。

 どうやら本人の口から説明するつもりはないようだ。

 諸伏さんがコナン君の隣まで行き、しゃがみ込んで内緒話をするポーズを取る。

 

『こいつは組織で探り屋をやっている幹部、コードネームはバーボン』

「っ、それ黄衣さんを殺したやつじゃ…!」

『安室透を名乗って探偵もしてるけど、本当は警備局警備企画課の潜入捜査官、本名を降谷零という』

「待って待って情報量多い」

『そして俺の幼馴染で親友のゼロだ』

「というかゼロさん放心してるけど俺に言ってよかったのかよ?」

 

 初手でキャラ紹介欄並に丸裸にされるとは思っても見なかったらしい。

 降谷さんが制止することもできず固まって目を剥いている。

 

 一通り謎を暴かれてしまうと、特に興味がなくなったらしいコナン君が早々に次の話題に移る。

 薄情な探偵である。

 

「ところでさあ、黄衣さん。来週、学園祭があるんだけど。蘭が、その」

「ん?ああ、先週言ってたね。俺も聞いたよ」

「あーーー、つまり。えーっと、」

 

 コナン君にしてはちっとも要領を得ない発言に、俺は首を傾げた。

 諸伏さんがポンと手を打って「そう言えば」と追加情報を開示する。

 

『新出って名前の校医の先生がお相手役になって、学園祭で演劇をやるんだろう?』

「そう!それ!」

 

 ズビシッ!とコナン君が鋭く指差した。

 ようやく俺も話が見えて来て、どうにも生ぬるい笑顔を浮かべてしまう。

 

 学園祭でヒロイン役をする蘭ちゃんのお相手が、人気のイケメン校医さん。

 そりゃ彼氏として面白いわけがない。

 だから元の姿に戻ってお相手役をぶん取ってやる、と。

 

 なんとまぁ甘酸っぱい願いではないか。

 おじさんそういうことなら協力しちゃうぞー!

 

「仕方ないなあコナン君は!一晩だけ、」

『ストップ!!!』

 

 俺の快諾に待ったをかけたのは諸伏さんである。

 ずい、と諸伏さんが暗黒の瘴気をたぎらせながらコナン君を睨みつける。

 

『一家丸ごと惨殺。家は火事で全焼。俺、そういう仕事もしたことあるんだけどなぁ。俺の言ってること、分かるか?』

「うっ……だってぇ」

『だってもクソもありません!!このラブコメ探偵は!』

「らっ、ラブコメじゃねーし!」

 

 盛大に反発したコナン君は、照れ臭そうに目を逸らしてボソボソと言い訳を重ねる。

 

「それに、蘭とデートの約束もしちまったし…」

『はぁ!?いつ!?どこで!?』

「来週の学園祭明け、米花シティビルの最上階のレストランで…」

 

 テレテレェ、とコナン君が顔を赤らめて布団の後ろ側に隠れた。

 「隅に置けないねぇこの!」と布団団子を俺が肘でつつけば、諸伏さんに「少年を甘やかさない!!」と怒られてしまった。

 

「………あー、そこのレストラン僕も前にベルモットと行ったよ。結構美味しいよね」

 

 すべての思考を放棄したみたいな顔で発言したのは降谷さんである。

 どうやら会話の内容が常識の外すぎて壊れてしまったらしい。

 「ば な な」みたいな顔をしている。

 

 まあ、真面目に潜入捜査官してきた人が急にラブコメの波動に当てられたら宇宙猫にもなろうというものよ。

 耳聡いコナン君がガバリと布団を剥ぎ取って叫ぶ。

 

「え、ベルモットって誰!?」

「ははは。僕の知り合いだよ」

「もろに組織のコードネームじゃん!!!」

「そんな。組織なんて矮小な事柄、君には取るに足らないことだろう?はは、ははは」

 

 乾いた笑いを出力したまま、降谷さんはバナナから表情が戻らなくなってしまった。

 諸伏さんが怒り心頭でコナン君を叱責する。

 

『ほらみろ!少年が無茶苦茶言うからゼロが壊れちゃったじゃないか!責任とってくれるんだろうな!!』

「えっ、ご、ごめんなさい…?」

『もっと真心込めて!』

「ごめんなさい!!!俺のせいで!!」

『よろしい』

「許された…?」

 

 

 そんなカオスな空気は、蘭ちゃんと園子ちゃんが戻ってくるまで続いたのだった。

 

 とはいえ。

 戻ってきた蘭ちゃんが出し抜けに「私たち、来週伊豆へ旅行に行くんですけど、皆さんご一緒にどうですか?」と善意100%の笑顔で言い出したので、また混沌としてしまったが。

 

「コナン君の退院祝いも兼ねて、ね?それに、私達も女二人だけで海に遊びに行くのは…って父に渋い顔されてたので」

「え、ええ…?」

 

 チラリとコナン君を見れば、コナン君は顔全面で行きたい!行きたい!行きたい!!と訴えかけているようだった。

 彼女の水着姿が見たいらしい。いや、悪い虫が付かないか見張っていたいのか?

 なんにせよ欲望に素直で何より。

 

 どうすんだよ、と諸伏さんが俺に視線だけで訴えかけている。

 

 いくら蘭ちゃん達とはいえ、うら若き女子高生と野郎の群れが2泊3日の旅行というのはちょっと…。

 とはいえ。

 毛利探偵にきっちり許可を取って、彼女達の保護者としてついて行くなら悪い話では無いだろう。

 俺は旧支配者だし諸伏さんも幽霊だし、間違いが起こるはずもなく。

 あとコナン君が目をうるうるさせて俺の服の裾を引っ張ってるし。

 

「えーっと、園子ちゃんが嫌じゃなければ、ありがたくお誘いに乗ろうかな」

「アタシはボディガードになってくれるならありがたい限りだし。日色さんはいい男だし。ね、蘭!」

「うん!コナン君も、いっぱい遊ぼうね!」

『なら俺も行こうかな。少年と黄衣だけにすると何しでかすか分からないし』

 

 何気に失礼なことを言う諸伏さんが参加表明。

 残るは降谷さんだけだが…流石に現役の潜入捜査官は忙しいだろうし、今回は欠席になるだろう。

 チラリと見れば、少しだけ打算的な思考を巡らせているような顔の降谷さんがしばしの無表情を止め、するりと社交的な笑みを浮かべた。

 

「残念ですがその日は少し用事───は特に無いので、僕も行きますね⭐︎」

「本当ですか!」

 

 降谷さんがサッと顔を青ざめさせて口を押さえた。

 露骨にニャル野郎じゃん……。

 

 蘭ちゃん達が「園子、宿まだ空いてるかな?」「まかせなさーい、この園子様がもぎ取って見せるわよ!」と嬉しそうに予定を話し合っている。

 もう断れる雰囲気では無い。

 降谷さんはもはや修行僧みたいな表情になって黙りこくっている。

 ニャル野郎が本当にすまない。

 

 

 そんなふうに、俺たちは2泊3日の伊豆旅行へと行くことが急遽決定したのであった。

 




・降谷さん
SAN値が減ってきた
風見の使ってた胃薬、メーカー聞いとけばよかったな…

・コナン君
蘭の水着…蘭の……水着…デート……
告白の言葉も…それと花束…
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