ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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県境の遺体〈友情〉

 

 コナン君によって謎は解かれ、事件は白日の元に晒された。

 

 色々な意味で被害者の悪性が露呈した胸糞悪い事件だったが、あまり振り返っても得るものがないので省略させてもらう。

 極論、被害者の動画配信者が暴れて恨み買っただけだしな。

 

 俺たちはその後、諸伏さんたちの幼少の秘密基地へと向かうことになった。

 まだ時間があったので、夕飯を食べる前に覗こうという話になったのだ。

 

 秘密基地は長年の雨風にさらされてボロボロだったが、確かにその形を留めていた。

 

 ボロボロの布と枝木製のそれは、しかし木材を釘で固定したなかなかしっかりした作りをしている。

 小さな入口は大人では入れるかどうかのサイズしかない。

 それでも子供ならばきっと、あつらえたような秘密基地と感じられただろう。

 朽ちかけの入口には「入り口」と看板が打ち付けられている。

 それは確かに立派な秘密基地であった。

 

 山村警部がボロ布をめくって中を覗き、クスクスと笑った。

 

「本当に懐かしいなぁ!入口の布もボロボロ。中も何が何だかだけど。はは、仮面ヤイバーコラボのクッキー缶だよこれ!」

『あ、ミッちゃんが買ってきて最後の一つを取り合いになったやつか』

「そうそう。仁義なきじゃんけん戦争。……ところで」

 

 雑談しながら、ふと思い出したように山村警部が顔を上げる。

 

「僕の家って結局なんのことだったの?ハガキ送ってくれたけど。差出人の名前もなかったけど、あの字はヒロちゃんだよね?」

『………』

 

 諸伏さんは迷った様子を見せて押し黙った。

 

 どうやら諸伏さんは潜入中、名前を伏せて山村警部にハガキを送っていたようだ。

 内容は「君の家に行く」。

 

 一瞬でその意味を看破したのは、諸伏兄、大和警部、降谷さん、コナン君の四人だ。

 大和警部が眉を顰めて息をつく。

 

 諸伏さんは一瞬だけ降谷さんに視線を送って。

 それから降谷さんは静かに小さく頷いた。

 諸伏さんの眼が驚きに見開かれる。

 

 おそらくその内容は「諸伏景光が警察官であることをバラしてもいいか」だろう。

 降谷さんの返事は「許可する」。

 

 俺には見えているのだが。

 入口の看板の裏に「僕も警察官になったよ!」の文字が刻まれているのが確認できる。

 多分「僕の家」の謎を解くと、あの看板の裏にある文字があらわになるのだろう。

 

 彼は死んだとはいえ潜入捜査官だった身。

 そして公安警察は、身分を明かすのは肉親にさえ躊躇われる職業だ。

 しかも諸伏さんは既に死亡している。

 警察の身分が復帰しているとして、公的手続きの痕跡まで隠し通すのは難しい。

 

 いくら組織が既に降谷さんの手の内にあると言っても、諸伏さんの身分はなるべく伏しておくべき情報だろう。

 

 だが。

 降谷さんはすぐに頷き、情報の開示を許した。

 

 きっと諸伏さんの友情を思っての、心を思っての選択だったはずだ。

 諸伏さんが少し笑って、「君の家は、ここだよ」と言って前に出る。

 

「え、どゆこと?」

『この看板、縦にして真ん中に線を足すとミサオって読めるだろう?』

「あ!本当だ……って、なんか文字が……」

 

 むむむ、と目を細めてそれを読む山村警部に、そっと諸伏さんが声をかけた。

 

『俺はミッちゃんに一つ、嘘をついてたんだ』

「なになに?酷い嘘なら僕10分は口利かなくなるけど」

『あはは。どうだろ、俺が実は───警察官やってるって話だけど』

 

 看板の裏に刻まれた文字を指で柔らかくなぞって、諸伏さんは顔を綻ばせた

 

 優しい声色だ。

 山村警部はぱちくりと瞬いてから、目も口も大きく開いて仰天のポーズになった。

 

「え?!?ヒロちゃん警察官になってたの!?え、中途採用おめでとう!!!」

『あっ、いやぁ…』

 

 ブンブン手を取って振ってくれる山村警部に、諸伏さんが目を天にしている。

 祝い方が星の精とおんなじだ。

 

 諸伏さんはかなり困っているようだ。

 その線で誤魔化すのもありかなと一瞬思ったのだろう。

 

 だが初志貫徹、幼馴染に真実を話すことを決意して、諸伏さんが口を開く。

 

『俺は大卒後に警察官になったよ。ただ、今まで危険な任務についてたせいで身分を明かせなかったんだ。連絡も迂闊にできなかったし』

「なーるほど?あー、よくわかんないけどヒロちゃんは警察官として大変な仕事をしてた、と」

『………そうだな』

 

 結局何も成せなかったけれど、という言葉は飲み込んだらしい。

 陰鬱に俯く諸伏さんの片手を取って、山村警部が再びガッチリと握り込む。

 

「僕たち!大きくなったら正義の味方になる同盟!ついに正式稼働しちゃったりするというわけだ!!!」

 

 再び犬の尻尾並みに激しくブンブン振って、おー!と手を上げて、山村警部はテンションマックスになった。

 そこには友を祝う、純粋な友愛が滲んでいる。

 

「これから正義の味方としてバリバリ人を助けてくれちゃおー!ね、ヒロちゃん!」

『……、………そう、だな』

 

 諸伏さんが目を細め、眩しそうに息を詰める。

 救いの光が差し込んできたように、蒼穹にかかるエンジェルラダーを見上げるように。

 

 ただ柔らかく、その言葉を噛み締めているようだった。

 

「ところで僕は警部だけど、ヒロちゃんは今どの辺?」

『え、っと、警部、だよ』

「ということは僕たちお揃い!?ますます盛り上がってきちゃったり!せっかくなので今夜は飲もう!」

 

 ドゥルルルル、と勢い付いた山村警部は止まらない感じになった。

 情緒が少年探偵団の水準なんよ。

 

 大和警部が「なんだこれ。俺もう帰っていいか」とぼやいて、すぐさま諸伏兄に「今いいところですので」と止められた。

 諸伏兄のいいところ概念わかんねぇなぁ。

 

 ちなみに降谷さんには分かるらしく、一大感動ドラマ見たみたいな情緒が化身の繋がりから逆流してきている。

 写真に残せない代わりに心のフォルダに残すらしい。

 みんなテンションおかしいなここ。

 

 しかし、諸伏さん自身はテンションマックスの山村警部に喜びつつ、ちょっと複雑そうな顔をしていた。

 

 諸伏さんは二階級特進を含めて警部。

 山村警部は普通に警部。キャリアどころか準キャリアですらないと来た。

 

 昨今の犯罪多発で警察も超人手不足。

 昇進が早く設定されているとはいえ、よっぽど部下からの信頼が厚くないとこうはならないだろう。

 それか群馬県警が深刻なバグに見舞われているか。

 

 間違いなく善人だし、部下に信頼されていると考えておくことにしよう。

 

 諸伏さんは「俺、下駄はいてミッちゃんと同格かぁ…」と切なそうにしながらも、しかし握られた手のひらの力強さに顔を綻ばせる。

 

 この一連の流れで諸伏さんの溜め込んだ呪詛は大きく減少した。

 全体として見れば減少量は微々たるものだが。

 それでも、今までの不健康さを思えば良いことだ。

 何より魂が補強されて人間性が明確に増強してある。

 

 うむ。

 山村警部には定期的に諸伏さんを浄化してもらおうか。

 

 俺はそのように思いながら、次の美味しいうどん屋さんに足を運ぶのであった。

 





・悪霊諸伏さん
無理ないダイエットをしてから光属性のバフを貰った。
幼馴染が沁みる今日この頃。
でもミッちゃんが警部なのはちょっとどころでなく不安。

・降谷さん
ヒロが救われて心から嬉しい。
親友の座を奪われそうであまりにも憎らしい。
相反する二つの感情で心が張り裂けそう(J-POP)

・星の精
この後みんなにたくさんわしゃわしてもらった。
星の精は大人気!星の精は偉い!強い!すごい!!
そして飲食店には連れ込めないため、車の中に一人取り残された。

あまりにひどい。お前らには人の心がない。たぶんそのうち白黒の車が来てお前らを捕まえる。ゲタ。
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