ハスターなオリ主と米花町   作:ラムセス_

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時計仕掛けの摩天楼〈この世全ての女を愛す〉

 

「ギャウキャウ。ギャウ!」

 

 ナラトゥースが命乞いを混ぜて語ったのは下記の通りである。

 

 突然毛を毟られてから、ずっと召喚主の命令に従っていた。

 召喚主はもちろん森谷帝二。

 奴は酷くて、ちょっとでもナラトゥースが進言するとパワハラ罵倒を繰り返す。

 自分も女を傷つけるようなことをしたくはなかったが、逆らえなかった。

 どうか許してほしい!なんでもする!

 

 ギャウギャウ言いながら思念で命乞いするナラトゥースの様子は本気だった。

 まあ今回、森谷の悪意がヤバいだけという気もするし、見逃してもいい気はしている。

 

 トカゲは土下座して「ギャウッ!」と重ねて頼み込んだ。

 

 困った様子の降谷さんが「本当に危険はないのか?」と俺に確認してくる。

 ただの神話生物でなく、他ならぬ旧支配者の抜け毛だしな。

 木端怪異とはわけが違うと考えるのも分かる気はする。

 

 俺は腕を組んでしばし考え直した後、頷いて返事をした。

 

「うーん、公安で確保して飼育するのも悪くは無いと思うよ。どうせ契約が切れて魔力がなくなれば霧散するしかなくなるんだし」

 

 そのようにコメントしておく。

 ナラトゥースの危険度は本当に低い。

 ただ願いを叶えるだけな上、本人が人間文化に精通しているから願いを曲解することもない。

 

 ナラトゥースの危険度があるとすれば、その召喚主の危険度そのものだ。

 降谷さんは難しい顔をして嘆息した。

 

「人間に願いを叶える力を与えること自体が危険だろう」

「まあな。この個体は降谷さんが受け取って、あとは召喚口を閉じるとかかな。ポコポコ召喚されたら困るし」

「ポコポコ神が召喚されるのがおかしすぎる」

 

 降谷さんのにがり切った口調には俺も同意せざるを得なかった。

 

 ナラトゥースは召喚が容易だ。

 そしてハズレ主に当たる確率も非常に高い。

 

 いつだったか、十年ぐらい肉の焼いたのをひたすら出させられてて笑った記憶もある。

 全自動焼き肉製造機扱いされてて、流石の俺も笑い死にしかけた。

 枯渇した金山に呼び出されて、最奥に閉じ込められて金を創造させられてたこともあったか。

 

 村の未亡人に呼び出されて「娘を生き返らせてくれ」といわれて、断って泣かれて、俺にヘルプを求めてきたこともあった。

 

 まあそういうむしゃくしゃする奴なのだ。

 やっぱ一発ポコってやってから地球外に蹴り出そうかな、と思うなどする。

 

 俺の結論に諸伏さんは疑問符を乱舞させた。

 

『いや有益性の塊じゃないか?どうしてそこでむしゃくしゃするんだ』

「同担拒否なんじゃないか?人間の神は俺だけじゃなきゃダメみたいな」

『なるほど』

 

 降谷さんと諸伏さんが二人で納得し合ったようだ。

 俺は余計にむしゃくしゃして、しゃがんで床にのの字を書き連ねた。

 

「違うもん…そんな厄介ファンじゃないもん…でも俺は他の誰よりも人間を愛してるし。ニワカに場を荒らされたくないというかぁ。ほら、空気悪くなるじゃん?」

『同担拒否厄介人間ファンかぁ』

 

 さらに納得されてしまった。

 なんでや。俺は地球誕生から見守っとった古参やぞ!

 

 ブツブツ文句を言いながら、恐る恐るこちらを見上げて沙汰を待つナラトゥースに顔を近つける。

 

「そういえば、どうしてお前喋らないんだよ。お前人間の言葉は喋れるだろ」

「ギャウ…ギャウ」

 

 ナラトゥースはキランとキメ顔…キメ顔かこれ?をした。

 

 この星の女性は神秘的なのが好きだから、ミステリアスでクールな俺を演出しているのさ!とのこと。

 きーー!こんな変態トカゲに人間はあげませんわよ!!

 

 俺がいきりたつと、心外そうに器用にトカゲは肩をすくめるポーズをした。

 腹立つなこいつ。昔から皮肉屋なのは知ってるけど!

 

 むしゃくしゃが閾値を超えたので、俺は近場にいたコナン君を抱き上げて高速で撫でる作業に従事した。

 可愛いは正義。間違いない。

 コナン君は猫のように抱え上げられ、ひたすら迷惑そうにしている。

 

 抱き上げた振動でようやく星の精も起きたようだ。

 ポッケから出て「クスクス?」と体を傾げた。

 

 瞬時にトカゲがキリッと凛々しい感じになった。

 そして尻尾と手足を触手に見立てて変な盆踊りを始める。

 

「ギャウ………クスクスクス!」

「ゲタ!?!?!?」

 

 びっくりした星の精が瞬時にコナン君のポッケにすっ飛んで入り込んだ。

 あまりにびっくりしすぎて呆然としている。

 

 というかなんださっきの。

 人間の言葉は喋らないけど星の精の言葉は喋るって話か?

 俺は目を三角にしてナラトゥースを詰問した。

 

「で、なんて言ったんだよ。星の精に変なこと吹き込んでないだろうな」

「ギャウッ!」

 

 何一つ恥じることはないという顔でナラトゥースが胸を張る。

 「子作りしないかお嬢ちゃん。鉤爪舐めていい?俺苗床作れるよ」とのこと。

 

 キッッッッッッモ!!!!

 サブイボが立った俺はゾッとしてコナン君を強く抱きしめた。

 

 犯罪だろ。

 こいつを警察で働かせるのは無理がある。

 

 コナン君がひたすら星の精をヨシヨシしている。

 星の精はカタカタ震えて、友達に縋り付いてクスクス言っている。

 

 ナラトゥースは首を傾げて、「ギャウ?」と困惑した様子で星の精と俺とを交互に見つめた。

 まるでそんな反応されるとは思っていなかったかのような様子だ。

 俺が睨みつけると、慌ててナラトゥースは弁明した。

 

 トカゲの語るところによると。

 どうやら先ほどの行為は、星の精の作法としてはごく一般的なものらしい。

 

 一般に、星の精は広い星々を旅するため、お互いに出会うことが割と少ない。

 だから出会ったら幼子だろうと即求婚。

 それがされないとしたら、よっぽど繁殖にやる気のない劣等個体だけらしい。

 

 鉤爪舐めるのは人間でいう握手。

 苗床を作れるのは立派な男の証で、人間で言うところの収入安定してるよぐらいの意味合いだから、アピールするのは当然だという。

 

 なのにうちの星の精は呆然として震えるから、トカゲはひどく困惑したらしい。

 紳士的に挨拶したら変態扱いされたようなものか。

 まあ、うちの星の精は人間の文化に染まっているから仕方のないことではあるんだが。

 

「ギャウ……ギャウ?」

「いや知らん。ニャルラトホテプが攫ってきたのをウチで保護しただけだし」

 

 なんかよく見ると凄く小さい子だと思うんだけど、どうして苗床から出てるの?と尋ねられる。

 俺は星の精の生態には詳しくないからよくわからん。

 というかこいつが知りすぎ的なところはある。

 

 うむ。

 

 つまり、このトカゲは紳士で、間違っていたのは俺の方ということだ。

 完敗だよナラトゥース。

 あらゆる種族の女性が好きだと言う言葉に偽りなし。

 お前の女性に向ける情熱は凄い。

 

 俺は自席に座って、鷹揚に森谷帝二との繋がりを切断。

 それを降谷さんに仮に繋げ直した。

 

 ナラトゥースは主人が変わったことに気付いたようだ。

 トカゲの手で器用にサムズアップしたあと、揉み手で降谷さんに擦り寄った。

 

 へへっ、旦那、俺なんでもやりますぜ!

 

 降谷さんがかなり困り切った顔で諸伏さんと顔を見合わせている。

 愉快な神話生物しかいない空間になってしまった。

 でもやっぱ同担はいらないし地球外に蹴り飛ばすか。そんなふうに悩む今日この頃である。

 

 

 

 お、再び俺のスマホに着信があった。

 電話をとって素早くスピーカーモードに変更。

 通話を繋げた。

 

「はい、黄衣です」

『次の爆弾を仕掛けた。東都環状線に五つ、お前が対応を誤ればたくさんの人が死ぬ』

「先ほどの爆弾犯さんですね」

『爆弾は5分後に起動。電車が60km未満で走行した場合爆発する。死ぬ気で走り続けるがいい』

「……なるほど」

 

 森谷は実に早口で、興奮していた。

 あまり時間をかければろくな行動を起こさなさそうだ。

 

 降谷さんが頷いてどこかに連絡している。

 時間も無いので、直接鉄道会社に電話しているようだ。

 

 そして同時にトカゲが地図を創造。

 この辺りの地図だが、路線図に近いのか線路が詳細に書かれていた。

 地図の五箇所に赤い丸が付けられているが、これはおそらく爆弾の設置箇所。

 

 歩くトカゲさんマークが上部に印字されているのが確認できる。

 もしかしたらナラトゥースが設置させられたのかもしれない。

 

『ギャウッ……ハァ』

『お前でかいため息つくじゃん』

 

 トカゲは肩を落としてその単眼を黄昏れさせた。

 どうやらまた無茶振りされて、それを律儀に叶えていたらしい。

 ホント奉仕体質なんだよなぁ。

 でも念話で俺相手にギャウギャウ言っても意味ねぇんだわ。

 

 

 ともかく、この図が正しいなら爆弾は線路に置いてあると見て間違いない。

 コナン君がハッと気付いたような顔で「光センサーか!」と唇の動きだけで皆に伝えた。

 なにやらそう言うことらしいが、相変わらず俺にはよくわからない。

 

 悪辣に粘ついた声色で、森谷が「日没がタイムリミットだ。せいぜいあがけ」と言い放って電話を切る。

 

 視界の端ではできる男アピールを欠かさないナラトゥースだけが、せせこましく働いてから気遣わしげに星の精を見ていた。

 





・星の精の生態あれこれ設定
まず星の精は「苗床」を作る。
血の塊を唾液で溶かしてゼリー上にしたものに、獲物を生かさず殺さず繋いでおくもの。
星の精達は苗床を見かけたら整備して、およそ百年ほど幼体は苗床の中で成長する。
立ち寄った成体から言葉を学ぶようだ。
しかし黄衣さんちの星の精は苗床から連れ去られたため、言葉もコミュニケーションもあんまり習得してなかったりする。
星の精の爪舐めるの?こわい。友達は舐めたりしないんだよ?

・ナラトゥース
終電後、作業員が線路の点検を終了した朝方に、運行中の貨物列車に怯えながら素早く完璧に爆弾設置作業をした。
職人の朝は早い。
そして星の精を傷付けてしまって落ち込んでいる。
キュートな鉤爪のかわい子ちゃんを怖がらせるつもりはなかったんだ…。

あらゆる知的生命体のメスが好き。
文化を勉強するのは、メスに自分を選んでもらいたいから。
ムーンビーストの別嬪さんに合わせてクールな拷問を練習し、イ=スの偉大なる種族の才女さんのために知的議論の作法について勉強した。
なお、ここで言うメスとは「子供を産む」の意味合いであり、イ=ス人は半植物で単為生殖するので全部メスの扱い。
少なくともナラトゥースの中では。
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